ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第38話・自称神への贈り物

 

 

ヘブンズタイムが切れ、時間が戻り、皆が動き出す。だが、すぐ視線はある一点にくぎ付けになった。

 

『ナナシ!!』

リンが叫び後を上げる。そこには、頭から出血し血を流し、崩れたマジンの下に仰向けの体制で倒れるナナシがいた。

 

「くっ」

 

「ちっ」

 

誰が、やったのかなんて一目瞭然、すぐにライカンさん達が保護に向かおうとするも、その足は止まる。

 

「少しでも動けば、彼の命はないよ」

ナナシの喉元にアフロディが剣を突き立てていたのだ。これでは、ライカンさんがナナシを回収するのは間に会わない。

 

 

(どうすれば――。あれは、もしや)

すぐにライカンは思考を切り替え、周りを観察する。すると、ある不自然な光景が目に留まる。ナナシの崩れたマジンの手の先、本来なら先ほどまでナナシの背中に背負われていたはずのリュックが中身を出しながらちょうど、自身の方へ口を開いていたのだ。

 

 

(通常、あのようなことになるとは考えにくい。つまり、ナナシ様が何か意図をもって私のもとへ投げた)

それは、私なら気づいてくれるという信頼にも感じられた。

 

「――御意に」

チャンスは一瞬、隙を見逃してはならない。さもなくば、一時とはいえお客様を死なせることになる。

 

 

「君は最後まで聖剣を抜かずとはね、ナナシ」

仲間と力を借りたとはいえ、力の差は圧倒的な僕と競り合って見せた。それに敬意を示して、一瞬で終わらせてあげよう。

仰向けに倒れたナナシに馬乗りになり、体を触る。

 

(やはり、剣らしきものはない。だとすれば――)

服のどこかに隠し持って、そこから力を引き出しているというわけではない。つまり、聖剣はナナシの体内にある。

 

 

「僕の聖剣と呼応させれば、彼の体に溶けた聖剣も回収できそうだね」

特殊な体だ。体に聖剣が溶けあって、いわば体が聖剣となっていたのだ。アフロディは手に、聖剣が纏っていたのと同様の光を手に纏う。

 

 

 

『やめろ!何をするつもりだ!!』

アキラが必死に叫ぶ。その声は、イアス越しではあったがその必死さがわかる。

だが、ヴィクトリア家政は動けない。なぜなら、不用意に動けばナナシの命はティッシュを握るように、たやすく奪われてしまうとわかっているから。黙って、唇をかみしめるしかない。

 

 

「何か――。こうするのさ!!」

淡い光を纏いながら手刀がナナシの腹にねじ込まれる。ねじ込んだ先からあふれ出す血、だがナナシはまるで死んだみたいに表情が動かない。

『ナナシ――。そんな!』

 

 

 

(さぁ来るんだ、僕のもとに)

ナナシの深層に踏み込んでいく。抵抗はない、このままいけば聖剣はアフロディのもとに現れるだろう。だが、ここで予想外の事態が起こった。

 

 

『誰――?あなた、触らないでよ!!』

まるで、イナズマが走ったような感覚と同時に先ほどまで抵抗の気配すら見られなかったが手はすぐ押し戻された。

(な、なぜ!?――聖剣に“意志”があるのか!)

 

 

だが、わかっているならより強力な力で無理やりものにすればいい話だ。そして、再び聖剣を奪おうと手刀を伸ばした。

けれども、この時アフロディが失念していた。あまりにも、聖剣を奪うことに執着しすぎて、周りの警戒が解けたのだ。

 

 

(今!)

ライカンは動き出した。転がっている鞄のもとに。

油断はほんの一瞬、凡百では到底気づかないほどのものだったが、ライカンはすぐに気づき。鞄にあったあるものを思いっきりアフロディに投げた。

 

 

 

「神には通用しない!!」

だが、飛んできたものをたやすく手刀で真っ二つに切り裂きく。

(なぜ、彼はしてやったりと言う顔をしているんだ?)

アフロディがライカンの表情を見た時の感想はそれだった――。

 

 

理由はすぐにわかることになる。

切り裂いた瞬間、黒い粉末が空を舞う。当然、視覚から飛んできたのと油断していたことも相まって避けられはせず、顔面でもろに食らう。

 

 

「なんだ、これは――ごほっ!ごほっ!」

粉末が喉に、鼻に目に胡椒が入ってきたのだ。

 

 

ガバッ。

 

ナナシが、上体を起き上がらせ右腕を構える。

「胡椒で咳なんてまるで、人間みたいだな!!いい加減馬乗りは止めろ!『真・熱血パンチ!!』」

止まらない咳で苦しんでいるタイミングで鼻呼吸をせず、目もつぶったまま気配だけで位置を探った後、アフロディの顎に向かって、渾身の真・熱血パンチがクリーンヒットしひらりと空に舞う。

 

 

 

人間、顎に拳がクリーンヒットすれば脳が揺れる。普通ならそれで気絶は少なくてもするんだけど、こいつは普通じゃない。

「私共の客人を害した罪を贖っていただきましょう」

 

ライカンさんの踵落としがヒットしアフロディが地面に叩きつけられる。

(こいつを倒すには今は時間が無い――)

叩きつけられて動かなくなったアフロディの服の襟をつかみ引っ張る。

 

 

「くっ、なめるな!」

意識を取り戻したアフロディが襟から俺の手を外そうと手を伸ばす。

 

「こちらのセリフでございますわ」『セリフ!セリフ!』『こっちの!こっちの!』

瞬間、電撃がアフロディに降り注ぎ、手が垂れる。

 

 

 

「ここだ、落ちろ!!」

ある穴までアフロディを運び、その穴に落とす。

 

「こんなもの!すぐに飛び上がって!」

「――上がれるもんならな」

最後の抵抗をさせないように、最後は塩をぶっかけ嫌がらせをする。それが、決め手となりアフロディは落ちていく。

 

(まぁ、普通に飛んでこれるだろうけど――。普通の穴ならね)

そう、アフロディが落ちているのは先ほどエーテリアスが落っこちていった穴と同じもの。とすれば当然同じものがある。

 

 

「ッ!バカな!!」

そのまま、アフロディは裂け目に飲み込まれていった。

 

 

 

「ありがとう、ライカンさん。気づいてくれて」

だけれど、左手はゴッドノウズを受け止めきれずボロボロになってしまった。おそらく、骨は折れてるだろう。少なくとも、今日、明日で直るケガではない。

 

 

「こちらこそ、力になれず申し訳ございません。」

「いいや、ヴィクトリア家政の皆がいなかったら普通に負けてたし、ここで確実に死んでた」

アフロディはそれほどの強敵だった。単純な体術では俺が上だろうが、技の練度が違いすぎる。

 

「いいえ、客人にこれほどの怪我を負わせてはヴィクトリア家政の名が廃れます。これからの働きで挽回させていただければと――。今一度、私共が誓いましょう。必ずや、ご友人を無事に救出すると」

「そ、そこまで?ま、まあ命は拾ってるし、気にしなくてもいいんだけど――」

命が拾えれば十分な気がするし、これ以上何かを望むのは罰当たりな気がする。それに、アフロディのヘブンズタイムはチートと言っても差し支えないものだった。仕方がない、それで済ませる以外にはない気がするが。

 

 

 

何にせよ、過去出会ったことがない最大の危機を前にして全員無事だったんだ。

ゆっくり、肩の力を抜くのだった。

 




鞄に胡椒入れっぱなしで助かったー!
幽霊には効かないけど、神には効いた様子。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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