ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第39話・迫るリミット

 

 

アフロディをホロウの裂け目にぶち込んだ後、ヘブンズタイム中にアフロディが話していたことを俺は聖剣の話などは伏せ話した。

 

「ともかく、ここは一時撤退いたしましょう。ナナシ様のお怪我がどれほどかはここではわかりかねますので」

「だめだ。このまま、レインを――ッ。捜索しよう」

体を動かそうとするも、さっき手刀を入れられたところとマジン・ザ・ハンドが破壊された時に左では折られ上がらず、頭も打って血が出ている。

 

どう見ても、満身創痍。

 

「それはいけませんわ。このまま動けばナナシ様の命にかかわります」

『ナナシ、僕も同意見だ。早く帰って治療するべきだ』

「――そうだけど、多分今戻ったら間に合わない。パエトーン、ちょっとニコに電話してくれ」

なぜ、レインをさらったのか。さっきまでわからなかった、しかしゴッド・ノウズをまともに食らいなんだか絡まりあっていた糸がほどけるように真っすぐ点と点がつながったのだ。

 

 

 

『う、うん――つながらない!!』

「やっぱりか――多分、飛行船で何かあったんだ。きっともうすぐ、レインが危ない――」

 

俺の予想が正しければ、もうすぐレインは用済みになる。用済みになれば現在俺達が来ていることも考えて、レインをホロウの中に放置するかもしれないし、人質になるかもしれない。

(でも、飛行船の内部状況がわからないのはかなりマズイ――)

だとしても、ここでレインの正体を話していいものだろうか。だが、これ以上の協力を仰ぐのならばこちらの事情を明かさずにはいられないだろう。

 

 

(いや、もうバレてるか。なら、こっちから話した方がいいか)

レインを助けるのを妨害するためにわざわざあんなチート野郎が現れたのだ。ただの一般人にあんなのがつくわけがない、ヘブンズタイムの時、起こったことを話した時点でライカンさんならすぐ考えついただろう。

 

 

「ライカンさん。気づいてたんだよね、俺達が探しているレインがただものじゃないってことをさ」

ライカンさんはうなずく。

 

 

 

俺は言葉を続ける。

「俺たちは一応だましていたってことになるのかな。――重要な情報を黙ってたわけだし、だから別にこの先一緒にこの件を追ってくれなくても大丈夫」

もし、ヴィクトリア家政の皆が来てくれなかったら、一人で戦えばいいだけの話だ。

 

 

「ナナシ様は私共をその程度の者と、お考えなのでしょうか?あまつさえ、お客様にこれほどの傷を負わせ、おめおめと置いて逃げ去るものたちだと――」

「い、いえ――そ、そんなことは思ってないけど――。ほら、こっちは一応隠し事をしてたわけなんだよ?」

何だろう、なぜだかわからないが。ライカンさんの言葉に僅かながら隠しきれていない怒気を感じる。思わず、語彙がおかしくなる。

 

「ですが、隠し事をしていたのはお互いさまでございます。そして、我々はまだあなた様へ恩を返せておりません」

「恩?」

シャッターの時の恩はバレエ姉妹エーテリアスの時に返してもらったし。それ以外に、俺が彼らに恩などかけているだろうか。思い当たるところはないかと頭を働かせるも、出てこない。

 

 

「ナナシ様はなぜここまでボロボロになったのですか?」

「そ、そりゃあアフロディの『ゴッド・ノウズ』に負けたからだけど――」

あんまり掘り起こさないでほしい話なのだが、白祇重工の皆と作り上げたマジン・ザ・ハンドが破られて内心ショックなのだ。

 

 

「そう言うわけではございません。私が知るナナシ様は勝ち目が薄い戦いには挑みません。何よりも、仲間の命を大切に考えるお方です。」

初めて会った時を思い出す。あの時も、勝ち目が薄いと考え早々に両手を上げ投降していた。

「――私とエレンを守るために戦いましたね?」

「―――」

言葉が出なかった。ヘブンズタイムで時は止まり。動き出した時には突然の敵襲、焦っていてもおかしくないはずなのにそんなことまで考えていたのか。

 

「ナナシ様が倒れている位置からそう推測しました」

そういえば、あの時ライカンさんとエレンの前に立ちふさがるように倒れていた。まあ、無我夢中で止めようとした結果ではあるのだが。

これ以上、どうたらこうたらいうのは野暮な気がする。

 

「じゃあ、聞いてもいい?…一緒に戦ってくれる?」

 

 

「もちろん、この先もご同行させていただきます。ですが、我々は、依然として目的を同じくしているものと信じております。あなた様方も同様にお考えでいらっしゃるのであれば、何卒、情報を共有していただけば幸いです。」

「パエトーン――」

イアスの向こう側にいる、アキラとリンに目線を向ける。

『うん、そうだね。本当ならレインの秘密を守ってあげたかったけど――。もう義理がどうとか言ってる場合じゃないよね。実はね、レインはハッカーなの――』

「なるほど、彼女がハッカーなのであれば、誘拐はその能力に目を付けたものである可能性がありますね。そこから、ナナシ様は彼女が飛行船で何かをしているのではないかと考えたわけでございますね」

 

 

その時、俺の左側のポケットに入っているスマホが鳴りだす。

 

「失礼。私が出てもよろしいでしょうか?」

「お願いします。左腕上がらないし」

 

ライカンさんがポケットからスマホを取り出し、画面を見せてくれる。

そこには、ビリーと書かれていた。

 

『ナナシ!ナナシか!!』

通話に出ると開口一番、スマホ越しからビリーの焦ったような声が聞こえた。

 

「ああ、ナナシだよ。一応パエトーンもいる」

『お!店長もいるのか、そいつはラッキーだぜ!』

と言うか、パエトーンの二人じゃなく俺にかけてきたとは――。ビリーからの信頼を感じられてなんとなくいい気分になる。

 

 

「それで、飛行船で何かあったんだろ?」

『な、なんでわかるんだ!?実はさっき、パールマンが守衛に、スーツケースをあけて中を確認したいって言いだしたんだ。ところが、奴がスーツケース開けたとたん、中から煙が噴き出してきやがってよ!』

パールマンが明けたスーツケースから出てきた煙によって操縦士を含め、飛行船にいる全員が気を失ってしまったらしい。

幸いにもビリーは呼吸器システムが故障していたため難を逃れたらしい。

 

 

「操縦士ごとか――。ビリー、もしかしてその飛行船って自動操縦機能とかついてないよな?」

『ついてるみたいだ。しばらくの間、墜落の心配はなさそうだ!』

ホッと胸をなでおろす。どうやら、最悪の状況は回避できたらしい。

 

(でも――自動操縦機能かって!もしかして)

「ビリー!自動操縦の行先を見てくれ!」

『な、なんだこれ!航路設定が改ざんされてやがる!今、こいつはバレエツインズのあるホロウに向かって飛んでるんだ!あと少しで俺ら全員、ホロウの中に突っ込んじまう!』

「レインか――」

外部から進路がずれているなんて速報は来ていない。つまり、進路通り飛んでると見せかけつつハッキングしているのだ。とんでもない腕前――。

おそらく狙いはパールマンの救出か、抹殺。そのどちらかだ、そういえば住民爆破事件で猫又が話していた幹部が捕まっていないということを思い出した。

 

 

(まさか――な)

 

「何で、レインがここで出てくんだよ!?

「ビリー様、手短に申し上げます。レイン様は何者かに誘拐され、あなた方の飛行船を掌握している可能性が非常に高いです」

「待ってくれ、本当にレインの仕業なら治安局如きじゃどうにもならねぇぜ!俺ら、もうオシマイなのか!?」

焦るビリーの声。もしこの状況を好転させるなら――。

 

『うん、レインを取り戻すしかない!』

「ああ、行こう。ビリー、待ってろよ絶対助けに行くからな!」

「わかったぜ!――ナナシなんだか疲れてねぇか?」

 

 

俺は何も言わず通話を切った。

『ナナシ』

「わかってるよ。大丈夫、動けないわけじゃないから」

 

『マスター、飛行船の軌道を割り出しました。飛行船は35分後にバレエツインズの上空15メートルを通過し、その後30秒でホロウと接触します』

時間はアフロディのせいで削られたが、出来ないほどでもない。

 

 

俺達は全速力でレイン救出へ向かった。

 

 

「ナナシ、あんたはできるだけ下がっててよね」

「私共がお守りいたします」

だが、腹の傷は血がすぐ止まったし頭も包帯で何とか止血はした。左腕は添え木付きと言う状態。

 

今の俺は――カリンに背負われていた。

 

「カリン――ごめん」

「謝らないでください!ナナシ様の力になれてうれしいんです!」

ぐっ――。カリンの満面の笑みが今の情けない俺にはクリーンヒットしてしまう。

こういう時力になれないのがとてももどかしい。だが、もしもアフロディが出てきてヘブンズタイムを発動させてきたら俺が戦うしかないのだ。

 

 

 

仕方ない、仕方ないのはわかっているのだが結構身長差のある少女に自分を背負わせいると考えるとなかなか申し訳なくなる。それに、たまにチェーンソーが当たりそうで怖い。

今俺ができることは目を閉じての気配察知である。

 

 

「その階段を上ってすぐに人の気配を感じる!――数は、たくさんだ!」

階段を上りあがると、見慣れない兵士のような装いのいかにもと言うやつがたくさんいた。

 

 

一番近くにいた二人が俺達を目にするとすぐさま逃げ出し始める。だが、そこはリナさんの射程範囲内だ。

 

 

「お二人とも――そんなに急いでどちらへ行かれるのですか?」

背中をリナさんのボンプにぶつかられ倒れた後もろに電撃をくらいその場に倒れ伏した。

「これで、終わり」

更に奥にいた奴は、エレンとライカンさんに掃討された。驚きなのは、アトリウムに行く前はあくびをしながら常に省エネという感じで戦っていたエレンが、積極的に動き倒しているのだ。

(一体、何があったんだ?)

 

 

「はあ、疲れる――」

「エレン、よかったら飴でもいるか?あき――パエトーンに持たされてるんだ」

まあ、別にヴィクトリア家政の皆はアキラとリンのことを知っているので問題と思うがこのご時世どこに聞き耳を立てている奴がいるかわからない。

 

「お、ありがとナナシ。ナナシも栄養補給は甘いものなんだ、好きなの?」

「うーん、まあ技を出すたびにお腹が減るからね。やっぱり両手を使わず食べれるものがあれば便利ってだけかな、でも甘いものは結構好きだよ。この間行ったパンケーキ屋さんがこれまたおいしかったんだ」

思い出す、ニコとアンビーと一緒に行った思い出を――。

 

 

「へぇ、いいじゃん。今度、紹介してよ」

「もちろん。あそこのパンケーキ本当においしいんだから!」

まあ、ちょっと思い出も多いんだけど。

ゾクッ!なんだか、再び背筋が凍るような寒気が走る。

 

 

 

 

「プロキシ様方、どうやらレイン様はいらっしゃらないようです。ただの雑兵のようで、人質がいるとしたら、隊長の所でしょう」

『ライカンさん、戦闘員が持ってたこれ、なんだろ?何かの送信機みたい』

「ご名答です。そちらはG03型多周波数信号送信機――軍用の、とても高出力なものでございます。適切なマルチメディア機器と併用すれば、諜報員が高度なセキュリティシステムを突破する助けになります」

送信機と言うことは、やっぱりレインはハッカーの能力を買われて連れ去られてと思っていいだろう。

でも、どっからそんな知識を仕入れているのだろうか。それとも、それがヴィクトリア家政では普通の話なのか。

 

「早く行こう、ライカンさん。もうすでに、飛行船は進路を変えてる。俺たちのことに気づいた、奴らがレインを人質にしたり、そこら辺に放置してもおかしくない」

 

 

そうして、レインを取り戻すため先を急ぐのだった。

 




ちなみに、ナナシが感じた寒気は。閑話・ナナシとアンビーを見ればわかります。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
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