レインを助けるために、階段を駆け抜けていくと一部崩れている場所の吹き抜けから誰かがいるのを確認できた。
一方――。
「むー・・むー!」
口は塞がれているため、もがく事しかできないがほぼ無抵抗と変わらない。
そのまま、私の胸倉をつかみ、この階の崩れた部分まで運ばれていた。
「待ってください隊長。こいつが外部にどれだけ情報を漏らしたか、突き止めろという雇い主の指示は――。」
今、落とされそうになっている理由は私が、隙をついて送った空メール。だが、2週間ほどたってやっと助けが来たと思ったら――。
(いやっ)
「道中はもうすぐ追いつくだろう。どのみち、アフロディがやられてはこいつを連れたまま我々は逃げられん。雇い主の最優先事項は完了した。我々は金をもらって仕事をするのみ。これ以上命を懸けるのは損だ。―――なに、こいつはエーテル浸食で死んだことにしておけばいい」
用済みになって捨てられる。そして、そのまま死ぬ。
「悪く思うな。そもそもは、知るべきでないことに首を突っ込みすぎた、お前自身の過ちだ」
胸倉をつかんでいた手が離される、それと同時に体を包む浮遊感。それが、私に濃厚な死を告げていた。
だが、すぐそれは晴らされた。何かの駆動音のようなものが聞こえれば、私はすぐ何かに包まれていた。
「『正義の鉄拳G3!!』」
声が聞こえる、その時にはさっき私を落としたやつらが踏んでいた地面を突き破り、黄金の拳が天に昇っていた。
「クソ――人質は諦めろ、総員、今すぐ撤退だ!」
目の前で地面が破壊され、隊員たちが落ちていく様を見た者たちはすぐさま背を向けてどこかへ去っていく。
「ライカンさん、追いかけた方がいいかしら?」
「いいえ。今は、レイン様と飛行船を救うことが先決です」
謎の戦闘員たちを見逃し、レインのもとに駆け寄る。
『レイン、レイン!大丈夫?怖がらなくていいよ。もう大丈夫。私達はニコの友達で、あんたを助けに来たの!!』
幸いにもレインに何か爆弾が埋め込まれているだとか、怪我があるようには見えない。
どうやら、けが人ランキング1位は俺のままのようだ。
「きみたち――本当に、私を助けに来てくれたの?」
すると、レインが何か焦った様子で、喋りだす。
「――早くビルの屋上に行かないと!もう時間が無い、司法府の飛行船が――」
瞬間、上から爆発音がこだまする。
「――ちっ、どうやら屋上までの経路を立ってきたようだね」
今逃げた奴からすれば、アイツらは別に正面戦闘なんてする必要ない。俺達を屋上まで上がらせず、飛行船をホロウに突っ込ませれば終わりなのだから。
ここは、ホロウだ。単純なビルであれば『正義の鉄拳G3』で天井を突き破り屋上までの道を作ることができるがそうもいかない。
『マスター、ビルの上層構造に明らかな変化を検知。屋上への最短ルートが無効になりました』
「――フェアリー、別の出口は?」
『すでに検知済みです。該当出口は、バレエツインズB棟1階のロビー付近にあります。予想される移動時間、およそ7分。ですが、高度侵蝕エリアを通過する必要があるため、危険度の高いエーテリアス個体に遭遇する可能性があります。実際の通貨にかかる時間は予測不能です』
下手をすれば、さっき戦ったバレエ姉妹よりも強い奴が現れるかもしれないということだ。
「私共に憂慮は不要です。所詮はエーテリアス、ヴィクトリア家政を止めることなどできません。しかし――」
ライカンさんの視線が俺の方に向く。もし、アフロディが出てきたらと言うことだ。
「大丈夫だ。ここまで来た時点で覚悟は決めてるさ」
(と言っても、マジン・ザ・ハンドが使えないのは痛いな)
完成したとき、リンにも聞かれたが同じ方法で右手のマジン・ザ・ハンドは成功しなかった。過去の俺も左手でマジン・ザ・ハンドをやっていた。心臓から気を送り出す技なのできっと左手でしか発動できないのだろう。
「御意に。――レイン様、身も心もお疲れであることは重々承知しております。ですが、飛行船の件はあなた様にしかお願いできないのです」
「飛行船に制御を返すだけなら、屋上へ行って制御装置を取り除くだけでいい。けど――!」
そう、問題は飛行船の内部ではビリー以外誰も起きていないのだ。
「ねえ、ビリーに飛行船の操縦って行けると思う?」
『あー、そこが問題なんだよね――ビリー、飛行船の操縦なんてきっとムリだよ!』
無情、俺もビリーが飛行船を操縦する姿なんて想像できないし、この世界にどれだけ飛行船を操縦できる人間がいるのだろうか。
「飛行船を操縦できる人なんて――ここには「私が可能でございます」いたよ!?ライカンさんできるの!?」
「はい、このような技能は、家事代行スタッフにとって、極めてありふれたものでございます」
「いや、いや――いやぁ――ま、まあ――確かにVIPのプライベートジェットとかなら操縦したりするのかなぁ」
もしも、家事代行スタッフの入社要項に『飛行船操縦可』とかあったら一体何人くらい応募が来るのだろうか。
きっと、その分野で仕事をした方がいいだろう。
「入手した情報によれば、飛行船はバレエツインズの上空からわずかの所を、かすめるように飛ぶとのこと――急ぎましょう」
そして、俺達はB棟一階ロビーに向かった。
複数の裂け目を抜け俺達はB棟一階のロビーに到着していた。
内装はA棟のロビーとそう変化はないが。全体的にこちらの方がエーテル浸食度が高い。フェアリーがエーテル濃度が高いといっていたが、これなら何が出てきてもおかしくない。
『ついた、出口はあそこだよ!』
イアスが指さした先――。確かにあそこだけ、ちょっと歪んでいる気がする。
「突破の準備を、ナナシ様はそのままカリンの背に」
「わかった、ありがとうカリン。でも、なんだか気配がする」
同時に、電球が点滅しだす。
(まるで、最初に来た時みたいだな――でも、操っていたやつらはもう逃げたし――待てよ)
不届き者が足を踏み入れた時明かりを点滅させて警告する――。
「本家が出てきたかな」
『あの噂って本当なの!?でも――もう時間が――』
ちょうど、あの時鞄から流れてきた音楽も流れ始めてきた。どうやら、ここのバレエツインズの主様が登場のようだ。
頭の上にあるシャンデリアから順番にすべての光が消え。前の前のホールのような場所が照らされる。
「あれはアトリウムにいた――!」
しかも、今回は最初から二体ならんでご登場していた。
だが、妙に動かない――。その瞬間、二体のエーテリアスはまるで糸が切れたようにその場に倒れ伏す。
「お前は――!!」
ちょうど、二体のエーテリアスがおり影になっていた場所から姿を現したのは。
「ナナシィ!!」
今、最も会いたくない相手。アフロディがそこにいた。
頭には落ちる瞬間、振りかけて置いた塩がまた残り節々から胡椒の香りがする。おそらく、エーテリアスと同じ裂け目に落としたのでバレエ姉妹と鉢合わせ抹殺。と言うところだろう。
『さ、最悪のタイミングで来たね。行ける?ナナシ』
「やるしかない。でも、逆にチャンスかもしれない。よっと――」
カリンの背から降りる。彼奴は先ほど俺達と戦闘し、エーテリアスとも戦いかなり消耗している。
(いくら強いからって無限に続くなんてありえない)
左腕はまだ動かない。体の方も多分骨は折れてる。幸いにもアドレナリンドバドバで、そこまでの痛みじゃない。
「さっきぶりだな、アフロディ。どうしたんだ、正面から素直に出て来るなんて、ご自慢の『ヘブンズタイム』は発動させなくていいのか?」
「君たちにはそんな小細工すら必要がない――全員、今殺す!!」
肌で殺気を感じる――。そのプレッシャーはアクアリウムで会った時とは違う、確実にこちらを殺そうという雰囲気だ。
「“できない”の間違いじゃないのか、アフロディ?神様にも限度があるんだな?」
煽れ、煽り続けろ。相手が、本気でこちらを殺そうとしているなら、なめてかかってきたさっきみたいなことにはならない。少しだけでも冷静さを奪わないと。
「黙れ!『リフレクトバスター!』」
空に鏡のような反射板が現れ、そこにアフロディの聖剣から放たれた矢が反射していく。
「ライカンさん。時間が無い、アイツ事屋上に出よう」
アフロディといちいち戦っていたら飛行船がついてしまう。ならば、こいつ事裂け目に飛び込むのが一番手っ取り早い。
「でしたら、こちらを――」
「これは――助かります」
なぜ持ってるかはわからないが、ライカンさんから渡されたものを懐に忍ばせえる。
「何よそ見をしているんだ!」
飛んできたリフレクトバスター。先ほどより、反射量が上がっているからか明らかに威力が高い。でも――状況が違う。
矢なんて、別にわざわざ迎撃する必要なんてない。よければいいだけだ。
「お前よく言われない?遅いって」
「ッ!」
どうやら、図星のようだ、俺はずっと不思議に思っていた。なぜこいつはわざわざヘブンズタイムなんて使うんだろうと。
だけど、考えてみればすぐ思いついた。
こいつ、技の出が遅い。時を止められ、防ぐしかないという状況にいたからあまり気にならなかったがこいつは技の出がとことん遅い。
リフレクトバスターなんて、会話する余裕もある。
ディバインアローは出も早いし、速度もあるのだが、いかんせん一直線だから防ぎやすいしよけやすい。
ダッシュストームは発動し始めたら距離を取ればいい、エレンがいたからこそ分かったのだが。
ゴッドノウズは特に初見だったから攻撃に移れなかったが、隙まみれだ。光の収縮に時間をかけすぎている。
しかし、これらはヘブンズタイムと併用すれば大体解決する、俺も時間が止まっていれば不用意に攻撃には移れないし。
「ッ!『ディバインアロー!!』」
ディバインアローを3射放つ。だが、今度は狙う人数が増えたせいか、相手に狙われていると気づかせ簡単によけられる。
「お前、多対一向いていないよ」
容易く接近した俺は、先に発動していた『ゴッドハンド』でアフロディつかみそのまま射出し壁に拘束する。
「無駄だ!」
光の収縮が始まる。この光の波動でもゴッドハンドくらいなら敗れるんだろう。だが、収縮が遅い。
駆動音が、アフロディへ迫る。
「はぁ!」
俺のゴッドハンドは胴体を拘束した状態で壁に張り付いているため、頭と足は出ている。そこへ、思いっきりライカンさんの蹴りが頭に命中する。
「がっ――はっ!」
普通なら脳震盪、あんな蹴りをもろに食らえばただでは済まない。だが、奴は蹴りを食らってなお光の収縮をやめていなかった。
「うそだろ!」
「僕は、神になったんだ!!」
ゴッドハンドは粉々にされアフロディが出てくる。
「『ダッシュストー「ロビーではお静かに」』」
技の発動の瞬間、リナさんの電撃がアフロディを襲う。
(よし、これならもう一度拘束できる。そのまま、屋上へ――)
「『―ム!』」
途切れかかった言葉をつなぎ合わせせるように、アフロディは目を見開きダッシュストームを発動させる。風が吹き荒れ、近くにいた俺とライカンさんとカリンは吹き飛ばされる。
「はあ、神様はいないし、いらない」
エレンが時間差でとびかかる。
「同じ行動は神には通用しない!『ヘブンズタイム!』」
時間で表現するなら僅か2秒のヘブンズタイム、しかし不意を突き返すならばこの上ないほど十分な時間だった。
確かに、アフロディの技の出は遅い。しかし、俺の腹をさばいた手刀程度であればすぐ用意できる。
しかも、エレンの命を奪うのにも十分なものだった。
ヘブンズタイムが解け、エレンの目の前に迫る手刀。瞬時にそれが、自分を害するのに十分な殺傷能力を持つものだと、この後どうなるのかも察せた。
だが、エレンの察した通りにはならなかった。アフロディが2秒の猶予を得たように、同じ2秒の猶予を得たものが駆け抜けていたのだ。
エレンを助けるため、ダッシュストームで叩きつけられた体を起こし、熱血ジャンプでエレンを抱き寄せながら守った。
「はぁっ!」
しかし、アフロディの手刀が空を割くことはなく、ナナシの横腹にめり込む。
「はッ――ぁぁぁ!」
肺に含んでいた空気が口から洩れる。幸いにも、跳びながら右腕で真・熱血パンチで迎撃し、少し威力が弱まっていたおかげで大したダメージにはなってはいない。
「あっ、ごめん。汚しちまった――「動かないで」」
口から思わず血が漏れる。血は滴りエレンのメイドの服に赤い点を作り上げていく。
エレンはそんなこと気にも留めず、俺の体をあちこち触る。
「ふぅ、口を切っただけ。大丈夫、命に別状ないよ」
「いや、それよりごめn「何に対してのごめん?」――い、いやメイド服汚しちゃったし」
“わからない”――エレンがものすごく怒っているのだけわかる。
「はあ、あたしのことより自分のことを心配しなよ」
「そ、そんなことか――。大丈夫だよ、俺頑丈だから」
右手を上げ、無事なことを見せる。出血は止まってるし、左手以外はそれほどダメージはない。
「“そんなこと”って本気で言ってんの?」
「え?」
「――呆れた。どこか狂ってるんじゃない?――でも、ありがとう。助けてくれて」
エレンはそう言い残し、戦いに向かって行った。
(狂ってる?)
俺が狂ってるのだろうか。まあ、間違いなくそう言うつもりで言ったのだろうが――。
今は考えるべきではないと思考を切り。
再び、立ち上がった。
いや~40話ですね。なんだか、皆さんも気づいてきたんじゃないのでしょうか。”このオリ主どこかおかしくね?”ちなみに、どこがおかしいのかは、このSeasonで明かされれるので、しばしお待ちを!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
-
読みたーい!(特にヤンデレ)
-
読みたーい!(ラブラブ!)
-
読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
-
いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
-
作者さんの自由で!
-
こんなアンケートする前に書け