ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第42話・事実は小説より奇なり

 

 

おぼろげな意識の中――目に映るのは暗闇だった。こういう時に決まってみるのは過去の自分が体験したことを夢に見るのだ。

凄惨な場面だったり、神妙な場面だったり、全速力で何かから逃げていたり状況は千差万別だ。

やたら、まとまりがないがその都度必殺技を習得するきっかけをくれる。

 

 

(おかしいな、そろそろ何か出てきてもおかしくないんだけど――)

しかし、今回は様子が違う。いつもなら、そろそろ映写機に映し出されるがごとく出て来るのだが、何も映らないまま俺の意識はぷかぷかと暗闇を漂っていた。

 

 

「あーテステス、聞こえますか~?」

(ッ!?)

驚いたのは決して、急に声が聞こえたからではない、そう言うことは稀にあるし。驚いた理由はその声が“俺の声”だったからだ。

 

 

 

聞こえたほうに視線を向けるとそこには――。

「は?」

“俺”が立っていた。

「あれ?なんだ、聞こえてるのか。だったら、返事してよ」

気づけば、先ほどまで漂う意識だけだった俺は、手も足もあった。

しかも、これは過去の記憶とかそう言う次元じゃない、目の前にいる俺?が意志を持って俺に話しかけているのだ。

 

 

 

だが、目の前の俺を見て瞬時に誰か察する。

「お前――過去の俺か!!」

「いや違うけど」

(なんだ、てっきり俺の過去が意識の中に現れたのかと――いや、それもおかしいか。何で俺と別に過去の俺がいるんだよ。記憶喪失なんだから、いないはずだろ)

 

 

 

「じゃ、じゃあお前は誰なの?」

急に怖くなってきた、俺の形をしたこいつは一体何なんだ。

 

 

「俺?俺の名前はアポロ、よろしくね」

「ア、 アポロ?よ、よろしく」

出された手を取り、握る。触った質感も俺と同じ、全く同じだ。

 

 

 

「それで、俺が誰だって話だよね――。うーん、俺は前任者って奴かな、君が持っている聖剣『ジ・アース』と共に戦ったんだ」

「せ、聖剣『ジ・アース』!?前任者!?」

こいつが言うことが本当なら、俺の体に入っている聖剣も『ジ・アース』ってことになる。

 

「ちょっと待って、頭が追いつかない――。それで、その前任者様はどうして今になって現れたわけ?」

もし、こんな風に現れられるのであれば、あんなわかりにくい映像ではなくこいつから技を教えてもらえれば一番手っ取り早かったはずなのに!

 

「ああ、実はね。俺は色々あったせいで『ジ・アース』からブロックされてるんだ。今は、君も大けがを負ってそれを直すために聖剣が力を使ってるおかげでそのブロックが弱くなってるからこうやって君の前に現れることができたんだ」

「へ、へぇ――聖剣にブロックされるって一体どんなことをしたらそうなるんだ――」

 

 

それよりも、一番聞きたかったこと、こいつが前任者なら俺のことを知っていてもおかしくない。もしかしたら過去についても聞けるかも。

(あ、でもなんでこいつ俺と同じ姿なんだ?)

 

「そういえば、なんで俺と同じ姿をしてるんだ?ここに居る影響?」

「うん?別に俺は姿を変えてるわけじゃないよ。むしろ、こっちのセリフだからね」

 

「は?」

どういうことだ、こいつが姿を変えていない。なのに、俺と同じ姿、そしてこっちのセリフ――。

 

 

「あーそっか、知らないんだね。―――君」

 

 

 

 

 

アポロの一言で妙に頭がすっきりした。あらゆることに合点がついた。

俺は失ったんじゃない、最初から何も持っていなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「俺のクローンだから」

 

 

 

 

 

 

 

「――は?嘘だろ?」

納得はしても、信じたくない思いから思わずそうつぶやいた。

「――ああ、そっか記憶喪失って思ってたんだっけ?――ゆっくり思い出して、目覚めた日のことを」

「目覚めた日――」

気づいたらどこかの路地裏で目を覚まして――そこから大根泥棒に――。

 

 

 

「その時さ、目立った外傷あった?」

「――なかった」

俺の体には全く傷もついてなかった。まるで、生まれたばかり見たいに。外的要因で記憶喪失にはなっていなかったということだ。脳の損傷もない。

 

 

 

「そもそもさ、都合よく頭に必殺技の記憶だけ入ってくるっておかしくない?」

「――おかしい」

まるでインストールされているみたいに熱血パンチとゴッドハンドは使えるようになった。

 

 

 

「と言うかさ、なんだか記憶喪失の割りになんだか覚えてること多くない?とか思わなかった?」

「――確かに」

やたら、俺は記憶喪失の割りに重機の名前とか料理の名前とか知っていた。都合よく、それ以外の部分が抜けていた。

 

 

 

「サクリファイスの記憶に触れた時に3人称視点だったよね、あれもおかしいよね?」

「――そうだな」

記憶を思い出すのであれば必然的に記憶は1人称視点であるべきだ、なのにあれは他人が見た光景がそのまま俺の記憶として映し出されていた。

 

 

 

「もし、精神的な要因なら――まあ、当てはまるのは解離性健忘かなぁ――。でも、戦ってた時君に、何かトラウマを呼び起こすようなことはなかっただろう?」

「――ああ」

むしろ、戦っている時が一番生きていると実感できていた。だというのに、戦いについての記憶が抜けるのはおかしい。

 

 

 

「何より、君が過去だと考えるあの映像と君、どれくらい違う?」

「――あぁぁぁ!」

あの映像に写る俺と、今の俺、対して差がない。それはおかしいのだ、前回の戦いはアフロディによれば旧時代に起こったはずだというのに――。

 

 

 

「俺は、成長していない」

「そう、本来ならもっと老けてるはずなのに全く成長していないんだ。――ああ、一応言っておくけど、聖剣に老化を遅らせるとかないから。変な希望は持たなくていいよ」

膝を落とす、下を見ても果てない暗闇が広がるだけだった。

 

 

「――クローンってことは代わりはいるのか?」

「さぁ?そこまでは知らないかな、でもクローンなんだからいっぱいいてもおかしくないよね」

(俺が死んでも、代わりはいる――)

憶測の段階を出ないがそれでも、ありえない話じゃない。と言うか製造側だったら確実にたくさん作る。

 

「クローンは――どのくらい生きれるんだ?」

「い、いや知らないけど。――ああ、でもクローン羊が通常より短命だってのは聞いたことあるかな」

「そうか」

通常より長くは生きられないと思っていいだろう。結構体を酷使してる分、もしかしたら――1年?2年?もしかしたら、もっと短いかもしれない。

 

そう実感すると手が震えだしてくる。濃厚な死が近くにいるような感じがして。

 

 

「――別にさ、君を怖がらせるために言ったわけじゃないんだよ。ただ、自分のことを知らずにさ、怖がっていただろ?この先きっと他の聖剣使いとも戦うことになる、なのに自分の身の上もしないなんて、嫌だろ?」

「そうだな、ありがとう。アポロ」

確かに俺は、度々電車を持ち上げたりして自分に対して恐怖を抱いていた。そんな姿を見て、聖剣が弱っている今がチャンスと思って教えに来てくれたんだろう。

 

 

「何を気にしてるんだ?」

「え?」

 

「お前の正体が何であれどうであれ、お前にはそれを受け止めてくれる仲間がいるだろう?それとも、お前がクローンだか何だかを気にするような奴らか?」

「――違う」

ニコも、アンビーも、ビリーも、猫又も、クレタも、アンド―も、ベンも、グレースも、カリンも、エレンも、ライカンさんも、リナさんも――リン、アキラたちがそんなことするはずない。

 

 

「そんな程度で信頼は揺らがない。それをナナシ、お前はよくわかってるだろう?」

「――ああ、アポロ。なんだか、気持ちが楽になったよ」

 

今更の話だった、俺は覚悟で道を切り開いて勇気と根性でその道を進むんだ。

 

「それじゃあ、本題に入ろうか。確かアフロディから色々話は聞いてるんだよね」

「ああ、願望機とか、前回の戦いでホロウが生まれたとか――」

待てよ、それじゃあ俺のオリジナルが敗北したからホロウが生まれたのでは――?

 

 

「話は君たちが旧時代と言うところまで遡ります――」

 

旧時代――。

全ての始まりは、ある研究からだった。聖剣に、聖剣の使い手の魂を融合させて誰でも意志を持つ聖剣を作り。誰でも使えるようにしよう!!と言うやっべぇ実験が繰り広げられていた。

 

「それで、連れていかれたのは俺の妹だった」

「妹?」

 

 

色々あって、アポロと妹は親に捨てられ、祖母を名乗る誰かと貧しいながらも楽しい生活していた。そんな中、アポロが家に帰ると妹は研究員に連れ去られる寸前だった。

妹は聖剣使いだったのだ、つまりアポロは聖剣使いではないということになる。

 

「もちろん、俺は戦った。妹を守るためにね」

 

でも、当時まだ13歳ほどだったアポロでは歯が立たずやられた後気づいた時には家はもぬけの殻だった。

 

「そこからかな――本格的に戦いを学んだのは」

 

妹を取り返すために日夜情報収集をしながら、戦い方を学んでいった。

それが、あの暗殺者みたいな動きだったのだ。

 

「数年経った後妹が連れていかれた研究所の場所を掴んで――乗り込んだんだ」

だけど、すでに実験は終わっていて、残っていたのは冷たい妹の体だけだった。

せめてもの弔いと復讐のため研究所を自爆させ、研究員を皆殺しにし、自身も死のうと思っていた。

 

 

「そこだったんだ俺が『ジ・アース』と出会ったのは」

爆破と同時にそれに巻き込まれ妹の死体を抱き寄せながら死を悟ったが、どうやら俺は予想以上にしぶとかったみたいで瀕死の重傷で生きていた。

 

 

「で、起きたら聖剣『ジ・アース』が俺の体に入っていて俺は聖剣使いになったわけよ」

「――さらっと言うなぁ」

割りとこいつもこいつで苦労してるんだなぁとしみじみ思う。

 

 

「そこから、俺は『ジ・アース』から聖剣の話について色々聞いて、俺は妹を蘇らせるために、他の聖剣を集める旅に出た。どうせ、親もいない根無し草だったからな」

 

旅に出ていろいろなところを回った。中東の内戦にも表れて、物資を強奪したり、宗教戦争の傭兵として戦ったこともあるらしい。

なんやかんや騒がしい毎日だったが、心のどこかでは楽しいとすら思っていた。

 

「気を付けろよ――戦うこと=人生になったら俺みたいになるからな!」

気づけば人を殺すのに何の躊躇もしなくなったらしい。

 

「それで、聖剣は集まったのか?」

「ああ、まぁ正確に言うなら聖剣使いを仲間にしていったが正しいかな」

聖剣を同じく持つ者同士、なんとなく気が合い。色々話合える良い共になっていたらしい。俺も、願いは叶えたかったがこいつらから無理やり奪うのも嫌だった。それは、相手も同じ気持ちで、結局争わなかったんだ。

 

 

 

「でも、その平穏は長くは続かなかった」

アポロの仲間に『影山』と言う男がいた。そいつは、俺達を裏切り聖剣3本と俺のジ・アースの力の一部を強奪しどこかへ逃げていった。

 

「なるほどね、アポロの聖剣は体内にあるから奪えなかったわけか」

「ああ――。最初に言ったこと覚えてるか?研究所云々」

「覚えてるけど」

確か、聖剣に聖剣使いの魂を入れて誰でも使えるようにしよう――なんて、アホみたいな倫理観から生まれた実験だったはず。

 

 

「それに、俺以外の聖剣使いは犠牲になった」

「――ッ!」

それによって、影山は聖剣の力を行使できるようになり、俺から奪っていた力も合わせて完全とはいかずとも願いを叶えてしまった。

 

「それって、どんな願い何だ?」

「――自分の思い通りなる世界だってさ」

その願いは歪み、不完全な状態で叶えられ、自分の思い通りになる世界、現代でホロウと呼ばれる空間が生み出された。

 

 

それが、すべての悲劇の始まりだった。

 




今日も平和!!最初から意識して伏線は張ってるつもりでした。気づけましたかね?

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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