「自分の思い通りになる世界――?それが、結果的にホロウを生み出したのか」
「ああ、奴は今ではエーテリアスと呼ばれている怪物を自由に使役することができたんだ――。まあ、結果的に自分に従うものしかいない世界が作られたってわけだな」
もちろん、そんな世界が許されていいはずはなかった。多くの国は同盟を結び、ホロウの拡大を防ごうと考えた。
だが、ことごとく失敗し結果的にサクリファイスにエサを与えるなど散々やらかしまくってしまった。
「それで、俺達が討伐に向かったんだ。非難は多かったけどね、主にホロウが終息した後他国との間で有意な立場になりたかったお国の方々から――な!!」
そうとう切れている。おそらく白祇重工が『敵』の皆様からやられたくらいの嫌がらせは受けたのだろう。今現在のホロウの拡大から見ても当時、かなり深刻な問題になっていたのだろう。
それで結果的に国際的な同盟を結ぶほどになった。そこで、ホロウを収束させることができれば、発言権を増させることができる――なんてところだろう。
それを、どこの馬の骨かもわからないやつらに解決されると面子は崩れ、下手をすれば自国に不利益が被ると思ったんだろう。
「何したと思う?そいつら」
「え、銀行口座を止めるとか?」
「その程度ならどれだけよかったか――。俺達が主犯格の影山と戦っている時、少なくともホロウ内部でやりあえるわけがなかったから頑張って外に引きずりだしたわけだよ」
自分の思い通りになる世界で戦うなんて不利もいいとこだ。場を返るのが先決と考えたんだろう。
外に出て、アポロ達11人は影山と戦闘した。もちろん、3種の聖剣を使いこなし戦ってくる影山は11対1などもろともせず圧倒的な力を見せた。
「でもさ、はっきり言って俺達結構強いのよ。それで、影山を倒すことができた――けどね、そのタイミングで俺達をよーく思わない国の方々達が俺達が戦っている戦場に大量のミサイルを投下してきやがったんだ!!」
アポロはその場で地団太を踏む。まさに、青天の霹靂と言うやつだったんだろう。それも、大量、つまり政府の人間は影山とアポロ達を同時に殺そうとしたわけだ。
「それで、どうなったの?」
「彼奴は俺の力も取り込んでいたから『タマシイ・ザ・ハンドG5』で防ぎきったよ」
知らない必殺技が出てきたが、大量のミサイルを防ぎきる必殺技、マジン・ザ・ハンドを優に超えるだろう。
「アポロ達は?」
「――ミサイルが投下される寸前に、影山が『プラキオンネット』って言う必殺技で動けなくなったんだ。結果的に、俺は――まあ、体がやたら強かったから死ななかったけど、俺以外の仲間は全滅、影山も生きてた」
「――そうか」
世界を守るために戦ったら、世界に仲間を殺された。なんというか、報われないという言葉がこれ以上に似合うやつはいないだろう。と言うか、サラッとこいつミサイルをまともに食らって生きてやがるな。
「お前もいずれミサイルくらいじゃ、死なない体になるさ」
「――それは人間なのか?」
「さあ?」
怪物と形容した方がいいのではないか、だからこそ同時の人々は影山事殺そうとしたのかもしれないが。
「――で、その後は、まあ――ミサイル打ってきた奴らは、殺したよ」
「躊躇ないよなお前」
「仲間の弔い合戦だからね――でも、その後結局ホロウの拡大は止められず世界は崩壊に向かって行った――」
最初は村一つが飲み込まれる程度だった、しかし時間が経つにつれ、力をつけていったため最終的には数々の国がホロウ中に沈んだらしい。
「――その時は、影山を倒そうとか、そんなのどうでもよくなってむしろ世界が終わってくれとすら思ってた。――いや、今も思ってる。」
「――そう、か」
結局この男は何一つ報われることはなかった。妹を失い、友に裏切られ、友を失い、仲間を守ろうとした世界に殺された。
「今はさ俺はギリギリ正常な人間に見えるだろ?でも、実際はあの時、もっとひどかった」
「いや、正常ではないだろ」
アポロは頭をかかえる。
「――正常なんだが、当時の俺は――その、頭を改造してたんだ」
「え?改造」
頭を改造とか聞いてはいけない、ワードな気がする。
「ある戦いで俺は恐怖で動けなくなったんだ、いくら聖剣使いと言えど人間が元から持っている潜在的な恐怖を拭いきることはできなかった。でも、目の前で仲間が殺される寸前、俺は聖剣の力を使って頭に恐怖を感じないようにしたんだ」
「そ、それって――」
恐怖をなくした人間は一体どうなるのか、今さっき俺が感じた死が近づく恐怖も、戦いへの恐怖も、誰かを失う恐怖も、自分が傷つくことに関する恐怖も失ったら――。
それは、果たして人間と呼べるのか?
「そこからは、常に冷静になったかな。でも、戦えば戦うほど――俺の中にある大切なものが消えていった。初めに、感情が死んで、戦うのに不要と判断された人間の機能も失われていった。ついでに罪悪感も消えたから、人を殺しても何も感じなかった。」
「でも、今目の前にいるアポロはそこまでいかれている様には見えないけど」
少なくとも、感情が死んで、頭がおかしくなった奴には見えない。ちゃんと人のことを思いやれる人間に見える。
「それはそうさ、俺はアポロですらない。正確に言うなら、アポロと言う人間の感情パターンやらなんやらを模倣したアルターエゴそれが俺なんだ」
「は!?じゃあ、お前もコピーかよ!」
なんだか、自分がクローンと知ってうじうじとしていたのがバカみたいだ。
「でもなんで、アルターエゴなんて――」
「そうだな、自分がいかれていなかった時の自分を残しておきたかったというアポロの願いだったのかもしれないが――まあ、一番有力なのは頭がもしも潰されても戦うためだろうな――聖剣のなかに人格を移しておけば最悪頭がなくても戦えるからな」
「――――ッ」
絶句、何も言葉が出てこない、本当に恐怖がないのか、自分と同じものが生まれる恐怖も。結果的に戦い勝利するためなら何の恐怖もない。それが、たとえ常人では届かない発想、否、届いてはいけない場所に到達することもいとわなかった。
「でも、そんな狂った男に転機が起きた――まあ、仲間の死だよね。それによって、アポロは壊れてしまった」
「そうか――仲間を守るために頭を改造までして戦った。仲間を愛していたんだな」
アルターエゴはうなずく。
「彼は恐怖が消えるという恐怖に覚悟で打ち勝ち、その道を歩いて行った。だけど、歩いて行くうちにたくさんの物を失い。最後に残った、守りたかった仲間も失った――。」
その時、アポロはやっと正気を取り戻した。最悪のタイミングで、木っ端みじんになった仲間の体を抱き寄せながら、妹を守れなかった時を思い出した。
『あの時と何も変わっていないじゃないか!』
その現実に、押しつぶされたアポロは仲間の死体すら置いてどこかに消えてしまった。
「そこからはひどかったよ、ただの廃人だった。見たくない現実から目を背けるために酒もたばこも薬物もやってどうにか精神を保たせてた」
目の前に映し出されたのは、自分に注射器をさしながらうずくまっている俺だった。
(これが――俺のオリジナル)
状況が違えばきっと俺もあれになっていた。最初、パエトーンのリンとアキラに出会わなければつらい現実に押し物されてあんなことになっていたかもしれない。
「自殺をしようとは思わなかったのか」
現実から逃げるのであればそれが一番手っ取り早い、何よりオリジナルが苦しんでいる状況は死よりつらいのではないかとすら思えた。
「思ったよ、ずっと思ってた。だけど、ナイフを刺そうと思ってもナイフが折れるくらいに皮膚が固くなるし、溺死しようとしても周りの水分が吹っ飛ぶし、焼死しようとしても聖剣が自動で体を再生して生き地獄。などなど、たくさん死のうと思っても、彼には死すら許されなかった」
自分のオリジナルが何回も自殺を試みようとした映像がながれつづけている。
「アポロは聖剣の力で多くの人を救ってきた。戦争を止めたり、発展途上国まで行ってその土地に産業を根付かせたり、世界の脅威とも戦った。でも、皮肉なことに彼は救われることはなかった――」
何回も自殺を試みても、出来ないことに気づいた俺はいっそう薬物にのめり込んでいった。酷いときはオーバードーズ気味になっても気にせず服用を続けていた、なぜなら死なないしから。
『あっ、リブラ、タウラス、レオ!どうしたんだよぼーっとして――え?嘘つき?――ああ、いなくなっちゃっ――早く飲まないとッ!――あははははははッ!そうだな、まさかエリシオンの奴がね――!』
狂ったオリジナルから目が離せなくなる
そして、スラム街のような場所にも出向き、金目のものを巻き上げ、それを売り薬物を買うなんて生活を1年くらい続けていた。
「なあ、俺もこうなるのか?」
映し出された、映像を見てそうつぶやいた、自分と同じ姿をしているものが段々と終わりに近づく姿を見て、どうしても聞かずにはいられなかった。
「さあ?でも、自分でもわかってるんだろ、その兆候は出始めてるって――いつか、お前の誰かを守るために脳を改造する日が来るかもしれないな」
「―――」
『“そんなこと”って本気で言ってんの?』
『え?』
『――呆れた。どこか狂ってるんじゃない?』
エレンが言っていた言葉が脳内で再生させ続けられる。
「でも、更なる転機が起こった。その日はたまたま違う種類の薬物を同時に摂取していたんだ」
「これ以上転機があっても碌なことが起こらない気がするんだけど」
発狂し、笑いながら自分の髪と顔をかきむしるオリジナル、もう、楽にしてはやってくれないのか。
「いや、本当に正気に戻ったんだ」
「――うん、いやでもさもう今更正気に戻ってどうするわけ?」
今更正常になっても過去のことを思い出してまた発狂するだけじゃないだろうか。
「いや、正気と言うか、恐怖を感じない状態に戻ったんだ」
「それを、正気とは言わないわ!」
超やばい状態が、やばいに戻ったくらいである。たいして、変化はないしむしろ状況はあの時より悪化している。
「正気に戻ったアポロは影山へかつての仲間――つまり他の聖剣使いの弔い合戦を始めることにしたんだ。」
当時、影山は魔王と呼ばれホロウは全世界に拡大していた。もう、世界の終わりは近かったが、再び聖剣使いは立ち上がった。
一人の聖剣使いが行きついた地獄の果ても果て。いや、とっくに地獄なんて超えていたのかもしれない、だけれど彼には死すら与えられなかった。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け