ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第45話・明日がある世界

『やっと、隙を見せてくれた!』

背を向けた瞬間、アポロの腹に何かが突き刺さる。

『がっ!ぐ――ッ!どういうことだ!』

刺さっていたのは聖剣だったのだが、それ以上に気になる事がある。なぜこいつは生きている?

 

 

『――ははははははははは!!わからないんですか?彼の聖剣の必殺技を忘れましたね』

『ヘブンズタイム!』

でも、あの必殺技は影山には見せていないはず――。なぜ、本来知らない必殺技をこいつが使える?

 

 

『なっ――お前、まさか!』

こいつが会釈したときから感じていた違和感。存在そのものへの違和感。

 

『気づきましたか!私は今他の聖剣使いの魂と融合しているんですよ!それ故、彼らが使っていた本来僕が知らない技を俺は使用できるんだ!』

口調がぐっちゃぐちゃになりながら影山は叫ぶ。

 

 

『そしてぇ!アポロさん、あなたの魂も俺と一つに融合するんですよ、俺は、私は、僕は、はははははは!』

聖剣が腹から引き抜かれる。それと同時に、跳躍し距離を取る。

 

 

『お前、俺と同じくらいいかれてるよ――プランBだな』

刺された部分を圧迫し止血する。幸いにも致命傷は避けられている。それにしても、ミサイルを使っても無傷とは。

 

『発狂しているとこ悪いんだが――ここら辺、ちとくぼみができてるよな』

『――はい?それがどうしたんですか?』

何かのボトルを開けちょうど影山がいるくぼみに放り込む。

 

 

『なんですかこれ?』

『うん、毒ガスだけど?『絶イジゲン・ザ・ハンド!』』

自分事、影山をホール状のイジゲン・ザ・ハンドに格納する、これによりそう簡単に影山は出られないし、毒ガスも拡散しない。

そもそも、俺に毒ガスは効かない、まさに影山にとって死のフィールドが完成した。

 

 

『逃げられないというわけですか――これって何の効果が――おえぇぇぇぇっ!』

影山が胃の内容物を吐き出す。呼吸も困難になっているのか、その場で悶えている。

 

『まあ、いわゆる嘔吐剤って奴だよ。』

俺が投げたのは旧日本軍でいわゆるあか剤と呼ばれていた兵器。ニンニク臭とアーモンド臭漂う、いかにもやばそうなもの。

低濃度ですら鼻、喉、目の粘膜に激しい刺激を与え、くしゃみ、前額部に痛みを感じさせる。高濃度では、呼吸器深部を冒し、嘔吐、呼吸困難、不安感を生じさせ最悪死ぬという激ヤバ物質だ。

『おぇぇぇぇっ!た、だずげでぇ――おえぇぇぇっ!』

まあ、くぼみかつ、イジゲン・ザ・ハンドの内部にぶっ放したためかなりひどいことになっている。

 

 

苦しみ悶えながらどうにか対抗策を考えている影山をしり目に、次の準備を始める。

どうせこの程度では死なない、さっきのことでもう容赦と言う容赦はしない。

 

 

ガチで殺す。

 

『『がおずぶれいぐぅ!』』

どうやら、カオスブレイクを思いっきり暴発させることによってイジゲン・ザ・ハンドを内部から破壊したらしい。そのおかげで、早々に毒ガスは拡散していった。

 

 

地図を再び確認し、準備を始める。

『意外と抜け出すのは早かったな』

『アポろぉぉ!』

イジゲン・ザ・ハンドは砕かれ、体は自身の嘔吐物で汚れまくっている影山がこちらを睨んできている。

 

 

『殺す、殺すぅ!!『カオスブレイク!!』』

『バカの一つ覚えじゃないんだからさ――ちょうどいいか』

目の前で手をクロスさせ、その中心に気を溜め解放する。すると、赤のマントを付けた黄金のマジンが現れる。

『マジン・ザ・ハンド』とは違い両手でドカンとカオスブレイクを受け止める。だが、受け止めただけで相殺したりはせずそのまま地面にカオスブレイクを付け爆破させる。

 

 

同時に落ちていくアポロと影山。

そう、爆発した後その地面の下には巨大な空洞があったのだ。

 

『ここは一体?』

『――ここは、かつて聖剣の実験が行われていた場所、研究員セントラルドグマって呼んでたかな。――ところでさ、俺は妹をもてあそんだ奴らを皆殺しにした後この研究所の自爆プログラムを起動させたんだ――。なのに、なんでここは残っていると思う?』

 

辺りを見渡しても、物々しいという雰囲気しか察せられないほど無機質。聖剣の実験は過酷だったと聞く、こんなところで研究されていたのであれば、地上ではバレることはないのもうなずける。

 

 

『ここだけ、自爆プログラムが別に組まれてたんだ。で、これがその自爆プログラムを作動させるリモコンな』

『――それで?わかってると思いますが、僕も『タマシイ・ザ・ハンドG5』が使えるんですよ?並大抵の、爆破で殺せるとでも?』

全方位を防ぐことはできないがそれでも生き残るには十分、生き残れば『ゼウス』の自己治癒能力ですぐ復活できる。

 

 

『そんなのわかってるさ――。けどね、この研究所は元々政府直属の組織でね、特にセントラルドグマは外に出てはいけない実験を扱う場所でもあった。だからさ、それ相応の自爆プログラムが仕込まれてるわけよ。それも、数年?いや、数十年は近寄らせないほどのな』

『“近寄らせない?”』

自爆で近寄らせない、これが一体何を意味するのか。影山は考え続ける――だが、そんなはずないと思考を切り捨て、これはアポロのはったりだと確信する。

 

 

『はったりだ!爆弾があったとしても数年、数十年近寄らせない抑止力にはならない!』

『なるんだよ――ここには――』

電気がつく、それと同時に物々しい爆弾が姿を現すその姿に、影山は目を丸くする。

 

 

『ツァーリボンバ!俺とお前、両方火葬するにはいい焼き加減だと思わないか!』

かつて、実験では50メガトンに制限されているのにも関わらず広島の原爆その約3300倍の威力を有し、その核爆発は2,000キロメートル離れた場所からも確認され、衝撃波は地球を3周したとされる。

 

 

ソ連が開発した世界最強の水素爆弾。

それも、制限なしの100メガトンを投入した、激やばツァーリボンバだ!

 

『待て、アポロ!そんなもの使えば、俺達どころかあたり一帯が地図から消えるぞ!』

どうやら、状況を察したらしく必死に止めようとしてくる。

 

『色々試したが、ホロウ内部で起きたことは外部にほとんど影響しない――まるで、世界が違うみたいな。だから、ここで吹っ飛ばしても俺達以外死なない!その上、放射線もホロウの中ならすぐに分解されることもわかってる!これ以上ない爆破スポットだ!』

ここに来るまでに、原爆なら何回か爆破させて試したが、放射能はすぐ消えるし、爆破も外に多少被害が出るだけ。

 

 

『アポロ!やめろ、お前も死ぬんだぞ!』

『どうかな!もしかしたら生きているかもしれないな!』

覚悟は決めた。後は進むだけ、恐怖はとっくに捨ててきた。

 

 

『さようなら、みんな今俺もそっちに行くから――』

 

『やめろ―――!!!』

影山が近づき、俺が持っているスイッチに手を伸ばす。

 

カチッ。

 

―――音はなかった。ただ、すべてが終わるただそれだけ――。

爆発すると同時に、地面も、植物も、動物も、等しく塵へ帰っていく。

 

 

 

 

 

全てが終わった後、そこにあったのは果てない地平線とでこぼこの地面。

 

 

 

『ウソだろ――俺、ツァーリボンバの爆発にも耐えられるのかよ』

無傷とまではいかないが、まだ生命活動を維持できるほどは無事だった。逆にどうすれば死ねるのだろうか。

だが、それよりも先に確認するべきは影山だ。

 

『――ア、ポロさん』

満身創痍だが生きていた。下半身は完全に消し飛び再生する様子も見られない、手元には聖剣はなくおそらくもうここにはない。

 

『お前の負けだよ、影山』

『――っはい、負けです。――やっぱり強いなぁ――どうして、こんなことをしたと思いますか?』

ぐったりと体を動かすこともなく、口だけがもそもそと動いていた。

しかし、俺はその問いに沈黙で答えた。

 

『僕――は、救いたっかたぁんです――あなたを――永遠の地獄にいるあなたぁを――。僕はあなぁたに助け――もらって、幸せぇ――もらいました。』

『――そうだな、あの日宗教戦争でミサイルを落とされた場所から俺はお前を拾った』

凄惨な戦いだった。その原因になった国は知らぬ存ぜぬで逃げ、宗教間の対立は深まり戦争が起こった。その結果、多くの難民が生まれ、ミサイルも落とされるなど本格的なものになっていた。

 

 

そこで、拾った少年にアポロは自身の苗字である『影山』と名付けた。

 

『ずっとぉ――ないてぇいたあなたを――すくいたかっぁぁ――聖剣ならあなたを――』

 

『自分の思い通り――なるせかぁいだったら――あなたがぁもうなかなくてぇいいせかぁい――を――つくれぇると――』

『もう、いいんだ。ゆっくり眠りなさい』

力尽きた影山の目をそっと手で閉じる。

 

 

 

『最後の仲間も失ったか――』

拳を握る、もしかしたら影山を救える方法があったのではないかと思うと歯がゆい。

それに、この先一体どうすればいいのだろうか――。

 

 

願いの主が死んだ今、時期にホロウは消滅するだろう。そしたら、人間たちは再び世界を復興させ――前に進んで行く。

でも、俺はずっと止まったままだ。

 

 

『ッ!おかしいぞ、ホロウの消滅の予兆すらない!?』

『――わかぁってたんです。アポロは僕たちのヒーローだからぁ――ぼくがぁ負けるって』

先ほどまで、目を閉じていた影山がそうつぶやく。

 

 

『ねがってぇおいたんです『世界を滅ぼしてほしい』って』

天を見上げると聖剣たちが確認できた。だが、様子が変だ、まさか本当に世界を滅ぼすという願いが叶えられようとしているのか。

 

 

もし、それが本当なら止めるすべはない。そして、一つの仮説にたどり着く、それは願いが二つ願われているということだ。一つはホロウを作るという形でかなえられた、ならば重複している今、実質ホロウの拡大は世界の崩壊そのもの。

 

『ホロウを拡大して世界を滅ぼすつもりか!』

だが、だが!それならばチャンスはあるかもしれない、願いを叶える機構はあくまで聖剣4つの力を合わせて発動する。

 

 

すなわち、力の一部が奪われただけの『ジ・アース』のエネルギーは相当枯渇してもおかしくない。

その上ツァーリボンバが外にもたらした影響のおかげでホロウを拡大するだけの燃料を確保できない可能性がある。

 

 

だから、俺は走ってホロウの外に出た。

出ると、黒い幕のようなものが段々と膨張しているように見えた、だけど中の聖剣の気配も強くなっている時期に爆発的に広がってもおかしくない。

『もしも、このホロウが市街地まで拡大すれば――』

 

おそらく、市街地にある資源を使い無限ループのようにホロウは膨張し続け、結果聖剣の手を離れ世界を滅ぼす災害になるだろう。

 

 

 

『世界を救う方法はただ一つ』

市街地がある方角はただ一つ、そこを抑え込むことができれば世界を救える。

でも、それは影山が願った世界を受け止めるに相当する。一つの世界を止めるなんて、それこそビッグバンを抑えるようなものだろう。

 

 

『止めて見せる』

この世界には何の未練もないし、何なら滅んでくれとすら思っていた。世界は美しくない、だから美しくしようと頑張った。けど、それも粉々に破壊された、だけどここはみんなが愛した世界であることに変わりはない。

 

 

 

 

指定のポイントまで到着する。すでに、ホロウは膨張をはじめいつ爆発的な膨張が始まるかわからない。

 

 

【やめて、逃げようよ】

誰かの声が胸の中から聞こえる。――ああ、わかってるよ――サクラ。でも、これが最後だから、これが俺の結末だから、どうか見届けてほしい。

 

 

【おかしいよ、お兄ちゃん!何で、お兄ちゃんばっかりこんな目に遭わないといけないの!この世界は、お兄ちゃんのことをあんなにいじめたのに!】

仕方ない、世界は美しくはないんだ。だからこそ、愛する仲間に出会えたし、数年くらいだったけど心から幸せと思える毎日は過ごせたから。

 

 

【まだ、戻れるんだよ?まだ、やり直せるんだよ?世界が滅んだってお兄ちゃんは生きていけるし、滅ぶのだってお兄ちゃんのせいじゃないよ!】

俺は十分、戻ったし、やり直したしさ。俺一人生きたって何も嬉しくない。罪も罰も全部分かち合ってこそ、仲間だと思うんだよね。

 

 

きっと今も、こんなつらい世の中で必死に生きようともがいている人がいる。

 

 

自分のことで手一杯な人もいる、苦しんでもがき続けている人もいる。

 

 

一杯頑張った人が報われないのは――俺も嫌だから、報われない苦しさをよく知ってる俺が、守りたいんだ。

 

 

この世界を俺は愛していないけど。

 

 

この世界を生きる人を俺は愛している、それが今俺の体を動かしてくれている。

 

 

戦えないすべての人のために――。

 

『俺が戦わなくちゃいけない』

ドガァァァァァァン

 

 

ホロウの膨張が始まる。

 

手を前にクロスで構え、気を溜め解放する。赤いマントを身に着け。顔つきも神々しく威厳に満ち、黄金のオーラが漏れ出している。

 

『『ゴッドキャッチG5!!!』』

ドオォォォォン

まるで、爆弾が爆発したような爆音が響く。

 

 

アポロは膨張の勢いに負け、徐々に後退していく。

『ぐぉぉぉぉッ!!』

その時だった。

 

ボギャッ

手首から先が消し飛んだのだ。

『あぁぁぁっっぁっ!!』

 

でも、それに臆することなく必死にぐちゅぐちゅと音を立てる腕でホロウを止める。

 

ぐちゃっ――。

だが、次は肘から上が全て消し飛んだ。あまりの痛みに声にならない叫びがこだまする、目頭には涙すら浮かんでいた。それと同時に、拮抗していた状況は徐々にホロウ優勢へ移っていく。

 

 

 

そして、再びホロウの勢いが衰えたかと思えば、更に勢いを増し今度は――。

 

ぶつっ。

まるでブドウをもぎるように、左腕が肩の所まで消し飛んだ。

『ああぁぁぁだぁぁ!!!!』

それと同時に解除されるゴッドキャッチ。

 

 

 

残ったのは、肘から上がない右腕のみ。

『頼む、俺に人を守れる力を!!『ゴッドハンド!!』』

肘から上はないが5本指のゴッドハンド。

 

 

だが、止めるにはあまりに脆弱。

 

すぐさま指の部分は吹っ飛び、あろうことかその破片はアポロの顔面に直撃する。これまでツァーリボンバやら何やらを相手にしてきたせいでかなり聖剣は力を失っていたため容赦なく――。

 

グギュッ。

アポロの頭を消し飛ばした。一瞬ふらつくアポロ、しかし思考をアルターエゴに移すことによってゴッドハンドは最低限起動したままホロウと拮抗し続ける。

 

 

 

やがて、ホロウは燃料を失い完全に動きを止めた。

アポロは、最後の戦いに勝利したのである。

 

 

 

膝から崩れ落ちるアポロ、否。

彼にはもう、足の付け根から下がなかった。踏ん張るときの摩擦で足が擦り切れてしまったのだ。

左腕は完全に肩の根元から飛び、右腕は肩から少しだけ露出した骨が見えるだけである。

頭は完全に消し飛び、首の骨が露出し、接続してたのだろう血管は、主を失い、揺れるばかりであった。

 

最後、胴体だけとなった体が前にポトリと倒れる。

 

 

 

かくして、聖剣使いアポロの戦いは終幕を迎えた。

 

 

 

【こんな結末――。認めないんだから】

その姿は、いつぞやにアキラがラーメンを作ったときつい錯乱してしまった情景と同じだった。

 

 




自分でもかなり”ヤバい”ものを書いたと思うで今回は本当に皆さんからの感想が欲しいです!!

さようなら、俺が初めて書いた主人公『アポロ』後、多分別の作品を書くときに適当に使うかもしれないからまたよろしくね。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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