「どうだった?彼の最後を見て」
アルターエゴは呆然と動かなくなっている俺に話しかける。映像を含めれば同じ顔の奴が3人もいるというドッペルゲンガーも驚きの事態ではあるが、それよりもアポロの戦い方を見て思ったことがあった。
「――本当に聖剣使いなの?」
確かに、俺も戦いには基本的な体術や、周りの物を使う戦い方も多い。しかし、アポロがやっていたのは――戦闘と言うより、戦争だ。
「そもそも、聖剣の力を防御に特化させたのがアポロが初めてだったからこその戦い方だろうね、彼なりに一人で戦う術を模索していたんだ。」
銃火器に、爆弾、果ては毒ガスに水素爆弾。やりたい放題とは彼のための言葉だろう、と言うかこいつそのコピーのくせにやけに他人事のようにしゃべってやがる。
「ずっと、気になってたんだけどお前ってコピーなんだろ?なのに、何でそんな他人事なんだ?」
「君こそ、彼のクローンだろう?でも、他人事のようにしゃべっている――。それは俺達が彼みたいに狂ってないからさ、だから俺も彼のことを他人事のようになるべく話す――つもりなんだ」
そういえば、言っていた。このアルターエゴはアポロが狂ってしまう前にコピーされた人格であることを――。だけれど、ならアポロを理解してあげられたのは、同じく狂った影山だけだったのかもしれない。
「つもり?」
「――やっぱり自分のもとになった人間だからね。少しは思うことがないわけじゃないんだ、もしもあの日仲間がミサイルで死ななかったら――影山が裏切ることも無ければ――なんてね」
遠い何かを見つめるアルターエゴ、俺も自分と同じ顔の奴が――ここまで狂う姿を見て何も思わないわけじゃない。
「―――さて、じゃあ聞こうかな、ナナシ。君は先代の戦いを見た、その生き方もその果ても、君は何をしたい?」
それは、聖剣を集めて何をしたいか――。どういう人生を望んでいるのか、きっと全部何だろう――。
「――俺は、聖剣を破壊する」
一瞬目を大きく見開いたアルターエゴ、どうやら俺の選択肢に戸惑っているようだ。
「理由を聞いてもいいかな?」
「――先代の話を聞いて、思ったんだ結局聖剣がすべての原因だって――もちろん、わかってる聖剣が使いようによっては多くの人を幸福にする代物だって、だけど――」
それ以上に、聖剣は恐ろしい代物だ。使いようによっては、世界を実際に滅ぼしかけた――そして、そんな中でも人々は毎日を全力で生きている。
「もう人に聖剣はいらない、必要ないんだ。人はもう自分の力で歩んでいける――むしろ邪魔かもね」
幕を引けるのは俺しかいない、それがどういう結果をもたらすのかも薄々理解している。
「ふふっ――いいね、君はこのホロウが蔓延する世界に生まれて、人々と触れ合った――君らしい答えだ」
ずっと悲し気な表情をしていたアルターエゴがやっと笑顔を見せた。その時、視界がぐらっとする。
「な、んだ――」
思わず、その場で膝をつく。
「どうやら、体が目覚めようとしているみたいだね。――縁はここに繋がった、また次に眠ったとき俺が必殺技を教えてあげる。どうか、君の人生が後悔のないように終わることを願っているよ」
ナナシの体が消滅し、最後には意識も消え“元の体”に戻っていった。
「―――はあ、話すべきか、どうなのか」
ここは、ナナシの夢の世界などではない。正確には、ここはアポロの精神世界なのだ。と言うのも、アポロが絶命した後、アルターエゴも時期に消滅していくはずだった。
だが、聖剣『ジ・アース』によって四肢と頭を失ったアポロの体に貯蔵されているのだ、そしてその本体も現在は奇しくもツァーリボンバによって崩壊したセントラルドグマに納められている。
俺にはアポロの戦いの記憶が納められている。
ナナシの体内にある『ジ・アース』は俺から記憶を取り出し、夢と言う形態でナナシに見せることによって必殺技を習得させていた。
だが、それも一つ問題があった。『ジ・アース』を経由しているせいなのかわからないが、ノイズが発生するようになった。
もちろん、この問題は『ジ・アース』を経由しなければ解決するのだが、俺からナナシへのアクセスは『ジ・アース』のプロテクトが原因で難しかった。
一回、縁を作ればどうとでもなる。そのため、アフロディとの戦いによって負傷し聖剣が力を使わざるをえないようにしそのすきにプロテクトを突破したのだ。
【はあ、お兄ちゃんったらナナシに何余計なこと言ってるの?】
暗い精神世界に現れたのは白髪の碧眼、顔は色白で整い、淡い雰囲気を感じさせる少女。
「――サクラ」
アポロがかつて守れなかった妹、サクラだった。
初めて知ったときには驚いた、まさか自身の妹の魂が聖剣に入っていた何て夢にも思わなかった。
だが、サクラとの関係はあまりいいものではない、あちらからすれば俺は助けてくれなかった兄だ。
助けに来た時にはもう遅く、サクラと『ジ・アース』の融合実験は終わっていた。
「なあ、ずっと聞きたかったんだけどさ、何で俺――アポロを選んだんだ?」
唐突に、生前聞けなかったことを聞いてみる。意志を持つ聖剣『ジ・アース』彼女は自分の意志で担い手を選ぶことができる。その中で、サクラはアポロを選んだ。
【唐突に聞くんだね――まあ、いいけど。最初は、復讐だったの――私を助けてくれなかったお兄ちゃんへの!ずっと、守るって言ってくれたお兄ちゃんへの!!】
その言葉からは確かな怒気を感じる、薄々わかっていたがそう言うことか。
【でもね、すぐ変わったよ――お兄ちゃんはずっと私を愛してくれてた、忘れないなかった!毎年墓参りに来てくれた、ずっと私との写真を思い出を離さないでくれた!ずっと、私のことを後悔して、苦しみ続けてくれた――!】
「そうだね、アポロはずっとサクラのことを愛してたよ」
だから、アポロの必殺技はほとんどが守るためのものになった、もう二度と大切なものを失わないように。失ったけど。
【だから、許せない!お兄ちゃんをいじめ続けた世界も!お兄ちゃんが守ったものを壊したあいつらも!英雄って言って戦いに繰り出させた奴らも!救うって言って結局殺した影山も!みんな、みんな許せない!!】
美しい髪をかきむしりながらサクラは訴えかけるように叫んだ。
【だから、あんな結末は許さないの――あんな最後は認めないの!!】
「あれは、アポロが考えて答えを出した一つの結果だ、それと認めないのはアポロのこれまでの戦いを否定するのと同じじゃないのか?」
確かに、アポロは後悔していた。だけど、それと同時にあの最後は何もかもをやり切った上での一つの終わりだと納得していた。
「それに、もう――アポロは死んだんだ、蘇ることはない。結果を覆すことはできないんだ」
【――あはは!!わからないの?一つだけ方法があるじゃない――聖剣が】
ッ!確かに、聖剣を使えば、あの時の結末をやり直すことができるかもしれない、だとしてもそんなことをすればホロウの膨張は止まらず世界は終わる。
「過去の改変なんてやっちゃいけない!それは、その時代に生きた全ての生命への冒涜だ!」
【別に、過去を変えるなんて言ってないよ?――よみがえらせるの!アポロお兄ちゃんを!そして、聖剣で私も蘇ってお兄ちゃんと一生暮らすの!】
もっとやばかった。――でも、まさかこいつがナナシを作ったのは単なる聖剣を取るための駒じゃなくて――。
「お前、まさかアポロの魂を!」
【うん、持ってるよ!アルターエゴはそのス!ぺ!ア!ナナシの体がお兄ちゃんの魂に耐えられるくらい成長したら――お兄ちゃんの魂を入れて蘇らせるの!】
「そ、そんな簡単に人が蘇るわけがないだろ!」
そんな、中身だけ変えればいいじゃないか戦法が許されていいはずがない。と言うか、そんな簡単に魂が移動出来てたまる――か?
よく考えてみよう、目の前のサクラは一体なんだ?サクラは、魂を移され誕生した意志を持つ聖剣、ならばアポロの魂をナナシの体に入れるなんて造作もないだろう。
そして、聖剣4つのエネルギーで願いを叶え、サクラ自身も蘇るこれが計画の全貌。
【な、の、に?お兄ちゃんが、ナナシに余計なことを言うから――聖剣を破壊するなんて言いだしちゃったし――わかってるの?お兄ちゃんそれがどういうことを意味してるのか?】
「ぐっ」
痛いところを突かれ思わず声が漏れる。
ナナシは聖剣と融合した存在、生命活動の根幹をなしているのは聖剣だ。つまり、それを破壊するということは――。
【最後には自殺しますって言ってるのと同じだからね?】
それは、ナナシの死を意味する。
「ナナシも覚悟を決めてる。なら、その意見を尊重し叶えさせてやるのが――一番じゃないのか?」
【――はあ、相変わらず狂ってるんだから、あんな乗り気な自殺志願者を止めない理由があるの?それに――もし計画が失敗してもナナシかアポロお兄ちゃんは生かして見せる、絶対に死なせないから】
「え?」
サクラが執着しているのはアポロだけではなかったのか、そこまで肉体に執着しているのだろうか。
【――お兄ちゃん?ナナシはね、お兄ちゃんのDNAが99%で作られてるんだ】
「う、うん」
何だろうものすごい嫌な予感と、悪寒を感じる。ついでに目が怖い。
【残りの1%ってなんだと思う?】
「は、はは」
なんとなく察せてしまい、言葉が詰まる。
【ナナシはね、私とお兄ちゃんとの愛の結晶なんだよ?――ちゃんと認知してね】
「い、いつの間に俺は父親になったんだ!」
嫌な予感は的中する。どうやら、ナナシはアポロのあのボロボロの体から取り出した細胞から遺伝子と核を取り出し、聖剣の力で作り出された核を取り除いた未受精卵子と電気的な刺激で融合――その後なんやかんやあって受精卵になりそれを聖剣の内部で育てのがナナシらしい。
記憶と人格を構成する段階でサクラの遺伝子を多少入れ、耐久性をより高め、アポロが持つ記憶を多少入れ基礎的な知識を習得させる。
その過程で、アルターエゴの人格情報を取り出しナナシに投入などのおぞましい手段の数々によってナナシはこの世界に生を受けた。
【本当は――その、嫌なの――ナナシは私がお腹を痛めて産んだ子だから、入れ物にするのなんて――】
「お前が、聖剣の中で成長させたんだろうが!!」
思わず、突っ込んでしまう、急に母性を爆発させるサクラに頭が痛くなる。ていうか、結局、情が移ってしまったということなのだろう。
【だから、私ナナシが女の子としゃべってるとものすごーく、嫌な気分になるの――】
「そ、そうなんだ」
(ハイライト消えてやがる)
まあ、正直目をそらしたいが、サクラにとっては愛する兄とその兄との間に生まれた子は同じ顔、同じ体をしている。そのため、他の女と喋っているのが気に食わないということだろうか。
【大体、お兄ちゃんもナナシも人が良すぎるの。だから、あんなに雌が近寄ってくるんだよ!二人とも優しいから、強くは断れないのはわかるけど――あんなに愛想振り撒かなくてもいいじゃない!私がいるんだから!大体、何よ!乳牛女がそんなにいいの!ずっと、ずっとわかってるんだから!女の乳ばっかりに視線が行ってることなんて!確かに、私は――ちょっと慎ましいかもしれないけど、それでも、なんでぇ!どうして、親子二世代でどっちも巨乳好きなのよ!!それに、ナナシはあった雌全員に好意持たれてるじゃない!やめてよ!ナナシのいいところは私だけが知ってたらいいのにぃ!!私は、ずっとナナシの中にいるのよ、おはようからお休みまでずっといるの!せっかくボンプに乗り移っても気が付いてくれないし!もうナナシなんて知らない!!嘘!お母さんを見捨てないでぇ!そうだぁ!その気になったら、ナナシの体をいくらでも操作できるんだから!ずっと部屋に監禁して――ダメダメ!そんなことしたら嫌われちゃう!ああ、でも私だけ見てほしい!】
長々と長文を早口で述べ、自分の発言に一人で待ったをかけているサクラの姿に俺は何も言えなかった。
なぜなら、今の早口はアポロ、ナナシ、そして俺に対しても言われているのだ。
ここで、下手なことを言えば俺に何が降りかかるかわかったもんじゃない。
「なあ、さっきボンプに乗り移ったって言ってたけど、もしかしてフェアリーに勝手にナナシをマスター登録して、あんな音声を残したのもサクラの仕業なのか?」
【そうよ?だって、あれが一番聖剣を集めさせるのに効果的じゃない?】
確かにパエトーンの二人も巻き込めるいい手段だったがサクッとこいつ、あの人工知能ハッキングしてやがるな。
でも、チャンスかもしれない。こいつは今、自分の兄兼夫を蘇らせるか自分が生んだ子供でどちらを取るかおそらく迷っている。これなら、ナナシを守れるかもしれない。
今できるのは暗闇の中で、ナナシの今後の幸せを願うことくらいであった。
ナナシはついに覚悟を決めました。この先、彼の道がどこへ繋がっているのかはわかりませんが、少なくとも茨の道でしょう。ですが、きっと歩んでいけるはずです、その最後が何であろうと。
後、怖いですねこの聖剣ちなみに、妹が連れ去られず、アポロ達が平穏な毎日を過ごす場合、なんやかんやアポロがサクラに刺されます。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
-
読みたーい!(特にヤンデレ)
-
読みたーい!(ラブラブ!)
-
読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
-
いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
-
作者さんの自由で!
-
こんなアンケートする前に書け