「――最終奥義だなこれは」
手に下げたビニール袋の中身を見ながらそうつぶやいた、現在俺はヴィクトリア家政のいわゆる隠れ家的な場所に向かっているのだが、その理由と言うのが――。
『よ、用事とはリナさんの味見役だったのですか?』
『うん、そうだけど――何かあるの?』
正直、ヴィクトリア家政の中では完璧超人と言うイメージがあるライカンさんとリナさん、その料理が食べれるとなって少し興奮していたのだが、そのことをカリンに伝えるとメール越しに注意文が送られてきた。
一応、ライカンさんにも確認したがリナさんは相当なメシマズのようだ。
あのリナさんが不味い料理を提供するとは思えないが――一応、最終奥義としてお酒作戦を採用した。
と言うことで、リナさんが迎えに来てくれる場所に行く道中にストロング系チューハイを買っておいた。
だけど、ライカンさんから聞くには俺はお酒が入ると精神年齢が幼くなるようだが――まあ、大丈夫だろう――うん。
「おはようございます、ナナシ様。本日は、味見役を引き受けてくださりありがとうございます」
「いえリナさんの料理が楽しめるなんて楽しみすぎて眠れませんでしたよ!――ところで、どうして俺を誘ってくれたんですか?」
誘いが来たのはライカンさんと一緒にお酒を楽しんだ翌日のことだった、メールで味見役を頼まれたのだ。
「はい、実は最初はライカンさんにお願いしようと思っていたのですが、用事があると断られてしまいまして今回のお料理はお酒のつまみを作ろうと思いまして」
「なるほど、確かにカリンとエレンは未成年ですもんね――そう言うことなら任せてください」
ポンと胸を叩き意気込む、しかしここで俺は悟った、ライカンさん――逃げたな。
そのまま車に乗り込み、リナさんの運転で隠れ家に向かった。
「付きましたわ」
「あ、はい――すみません、寝てしまって」
リンの運転と比べてリナさんの運転は各段に落ち着いてそのまま寝てしまった。
「いえ、むしろその方が好都合かもしれませんね」
「――ああ、そうですね。まあ、隠れ家ですし」
やっぱり、リナさんはメイドとして一流だまさかこれでメシマズなんて世界が終わるくらいありえないだろう。
「それでは少々お待ちください」
「はい!――楽しみだなぁ!」
まさか、この時の俺はすっかり忘れていた、この世界は終わっていること。つまり、メシマズはあり得るということだ。
数分後――
(――おかしいなぁ、料理だよね。どう見ても、公害が起きた現場の匂いがする――)
台所は直接見えないのだが、どう見ても紫色の煙が宙を舞っている。
「お待たせいたしました。こちら、魚のパイでございます」
「―――」
言葉を失うとは聞くが実際に起きることはほぼない。
だけど、その現象は魚がこちらにこんにちはしながらブルーベリーらしきものを加えているというなんとも先進的な料理の前に現れた。
(な、なんだこれ!?料理なのか――それとも、何か芸術の類?)
「それではお召し上がりください」
「は、はい」
確かに、見た目は――うん、あれだが一口食べれば案外おいしかもしれない。ナイフでパイを切り分け一口運ぶ。
「うぐっ」
「どうでしょうか?」
(なんだ、これは――めちゃくちゃマズイ!!しかもなんというか、味覚だけじゃない触覚、視覚、聴覚、嗅覚全てに訴えかけて来るぐらいマズイ!――うっ、何と言うか心も削られてきたような)
正直、一口食べて意識は跳びかけたがこちらも歴戦である、ぎりぎりで踏みとどまる。
「えっと――その、先進的な味がします」
遠回しに、この時代にあった味じゃないと言っているようなものだがリナさんからの笑顔の圧でぽろっと言ってしまった。
「ふふっ、それはよかったです。では、こちらもどうぞアジの叩き・なめろう風でございます」
「アジ、なめろう――なるほど」
俺が知っているアジの叩きと言うのはアジの頭が入っている物だっけ――それに、これって火とか使わないはずなのにもはや腐ってると大差ない色をしてる。
「こ、このアジって結構いいやつなんですかね?」
「はい、こちらのアジはまさに今朝獲れた新鮮なアジでございます」
新鮮?と言う単語を今すぐ単語帳を開いて確認したいが、とにかくアジって紫色だっけ。
「り、リナさんこれを次のご主人様に提供するんですか?」
「いえ、今日作ったのはあくまで練習ですわ。普段はライカンさんから止められていますの、ですがいつかご主人様に提供してみたいと思っています」
誰かがリナさんを止めないといけない気がする。と言うか、これを何回も食べてたら――YOU DIEDになりかねない。
「それでは、お召し上がりください」
「はい――」
(ええい、ままよ!!)
一口、口へ運ぶ。箸が口に入った瞬間もう吐きたくなったがリナさんの視線から逃れることも出来なさそうなのでまず噛む。
不思議なことに納豆のような粘り気、この世のありとあらゆる絶望が心に衝突するような衝撃、圧倒的不味さと言うパーフェクトパーフォーマンスで再び意識を失いそうになる。
(ぐっ、やばい。と言うか、味見が一品二品で終わるとも思えない――このままだと本当に死ぬ)
「どうでしょうか?」
「うっ、はい――ぅうっ――結構、味付けが濃いと思います、うっ」
「貴重なご意見ありがとうございます」
すらすらと持っているメモ用紙に書き込むリナさん、一体何人がこの料理の犠牲になるのだろうか。
(こうなったら――)
ビニール袋にある最終奥義、ストロング系チューハイに視線をやる。これを一発キメれば、もしかすれば圧倒的破壊力を持つリナさんの料理も完食できるかもしれない。
そう思い、チューハイに手を伸ばした手を寸前で止める。
(いや、それはリナさんに失礼じゃないか――腹をくくれ、しっかり味わうんだ、うっ――ぐぅ)
胃の中で魚が暴れているのだろうか、胃酸の逆流を感じる。
「でしたら、次はこちらを――ほうれん草のバターソテーでございます」
「ほ、ほうれん草?バター?これは本当にベーコンなの?」
幸いにもある程度原型から近い料理のおかげか、ほうれん草が変色してるなどはなかったがベーコンの色がどう見ても黒ずんでいる、一体全体どうなったらこうなるんだ?
しかも、料理が紫のオーラを纏っているどう考えてもラスボスの風格だ。
(思い出せ――俺が、二人に拾われる前どんな生活をしていた――別に生ごみを食べたことがないわけじゃないだろ。それに、オリジナルだって『味わからないし――まあ、これでもいいか』なんて言ってプラスチック食べてたし――行ける!!)
何も行ける確証はないが――とにかく、行けると自分に発破をかけ、一口勢いでもう味覚で何かを感じる前に食べ進める。
「――ふぅぅ、ぅ。っあ。あぁ――あうぅぁぃぇ――ッ!」
言語があやふやになるほど追い詰められたが何とか自分のほっぺを引っ張り覚醒する。
「どうでしょうか?」
「――リナさん、一緒に料理しませんか?」
何の言葉のキャッチボールにもなっていないが、俺に反射的に出てきた言葉はこれだけだった。
悟った、このままだと本当に死ぬ。きれいごとをつらつら並べるだけでは正義は成り立たないのと同じ、我が道を突きとおすだけではどうにもならない現実がまさに目に前に牙を向いているのだ。
「え、えぇ――料理も切らしてしまいましたので作るつもりではありましたが今回はナナシ様がゲストですのでそのようなことは」
「いえ!!なんか!!めちゃくちゃ!!料理がしたいんです!!」
命の危機を前にして俺の生存本能は見事フル回転していた。
そう『どうにかしないと死ぬ』本能でそうわかっているのだ、それにこれ以上リナさんの料理の犠牲者を増やすわけにはいかない。
「まずは、食材を確認しましょう!一応これでもある程度作れるんですよ?」
「ふふっ、心強いですわ」
冷蔵を開け確認すると、ちょうど新鮮なイワシがあったので取り出す。
「これを使ってイワシの煮つけを作りましょう!」
「それは、パイにするつもりだったのですが――いえ、ナナシ様と一緒に料理と言うのも悪くありませんね」
イワシを取り出した後、幸いにも臭み消しに使えるショウガもあったので取り出す。
だが、横目でリナさんが下ごしらえをせずに直でイワシを焼こうとしているのが見えたので慌てて止める。
「り、リナさん。料理の基本は下ごしらえです、まずは内臓とかを取りましょう」
「そうなのですか?いつも、焼いた後に取り出しておりました」
早速マズイ原因が発見されたが、ともかく回避は成功したみたいだ。
だけど、どうにもリナさんの手先がおぼつかない、普段の家事ではあんなに出際よくやるリナさんが落ち着いていないように感じる。
「リナさん、俺が手を置きますから一緒にやりましょう」
「はい――申し訳ございません。ゲストに、こんなマネをさせていただいて」
リナさんの後ろに回り手を回し、リナさんの両手に手を携える。これなら、流石にマズイ何かができるとは思えない。
まずは、イワシのうろこを取り胸びれの後ろで頭を切り落とす。
「こうでしょうか――」
「はい!すごい、リナさん、すごい!!」
まさかと思ったがどうやらあの魚の硬さはうろこも食べていたかららしい。
あらゆるメシマズの障壁を突破し、おいしい料理を食べて見せる。
「このように作業していると――その、夫婦のようですわね」
「夫婦ですか、確かに!共同作業ってこういう風のことを言うんですかね?」
その時、リナさんの表情は見えなかった。
その後、尾ビレまで腹の部分を切り内臓を取り出し、流水でさっと流す。
そして、しょうがを千切り皮付きのままが良いでしょう。
「リナさんの料理は――その自己主張が強いので、しょうがなどを使ってちょっと――その、抑えたほうがいいと思います」
「なるほど、しょうがですね」
下ごしらえは終了したので、イワシを煮る工程に入る。
フライパンに、イワシを並べ水と酒、醤油、みりん、砂糖、酢を入れ、千切りにしたしょうがを散らします。
「ここで注意するのは、沸いた煮汁にイワシは入れないことです。水から煮込むことでイワシの煮崩れを防ぐことができます」
「水からですね――それでは、煮込みの工程ですね」
何も言わず、リナさんは強火でいわしを煮込み始める。
「はい――それでは落し蓋をと!リナさん、中火で煮込んでいきましょう」
煮込み時間は沸いてから5~6分。落し蓋の下で煮汁が湧いてきたらまた5~6分そして落し蓋を外し、その後煮汁が2/3くらいになるまで煮詰めれば。
「完成です、イワシの煮付け!」
「これは――先ほど、私が作ったものよりも輝いているように思えますね」
先ほど、食べたものとは違い紫のオーラを放つわけでもなく、どこかが焦げているというわけでもない、ちゃんとした“料理”が目の前に誕生していた。
「早速食べましょう、リナさん――いただきます」
「はい、それではいただきます」
アキラから作り方を聞いただけだったが何とか再現することができた。
まあ、俺もそこまで上手と言うわけではないからところどころ粗が目立つものの、及第点と言うところには収まるだろう。
一口ほおばる、思わず先ほど食べたものとの落差で笑みがこぼれる。
「あら、おいしいですわ――よろしければ、レシピをお教え下さいませんか?」
「はい、もちろんです。ぜひ、役立てください」
よし、少なくともこれで食中毒で死ぬ人数は大分減らせたんじゃないか。
「そうだ、つまみって聞いて少しお酒を買ってきたんです。――実は、ストロング系チューハイがずっと気になっていたんです、一緒に飲みませんか?」
「ふふっ、お誘いの所申し訳ありませんが、流石に勤務中ですので――それに、ナナシ様を送る際は車ですので」
「あっ――すみません」
ヴィクトリア家政関連で最近失敗が多い気がする、ライカンさんには秘密の特訓がバレ、カリンは行くスポットをやらかし、リナさんには車を運転してもらうのにお酒を勧める。
(でも――お酒、もったいないよな――目の前にいいつまみもあるし――よし、飲もう!!)
一杯早速開けてみた、今度は意識は失わないぞと意気込みながら。
数分後――。
「えへへ!リナさん!リナさん!」
「あらあら、ライカンさんから聞いていましたが酔うと少し精神年齢が低下されるのですね」
ストロング系チューハイは依存性が高い、一本飲んだらまた一本と言う具合に見事にナナシは出来上がってしまった。
「リナさん!ぎゅーして!」
満面の笑みで手を広げ、ハグを要求してくる普段は見れないナナシに興奮を覚えながらそれに答えるようにリナは抱き寄せる。
「いい子、いい子ですよ」
頭をなでるリナ、ナナシがかなり前かがみになっているおかげで身長差を気にせずだきよせることができる。
「えへ~、いい子!!あれ、メロンが二つある」
「ふふっ、そのメロンは今は触っちゃいけませんよ」
アポロと言う方のクローンであることを偶然知ってしまったからもしかしたらこれが本当のナナシなのかもしれないと邪推するも、それにしては普段のナナシとの違いが多いので酒の力で少し大胆になっているんだろうと結論付ける。
「すぅ~」
「寝てしまわれましたか」
自分の手の中で大きな子供が眠っている、思わずその光景を見て笑みがこぼれるリナ。
後片付けをするために、ナナシを離そうとするが――強く握られているのか中々離れない。
「おかーさん、離れないで」
「お母さん?」
クローンに母と言う概念が存在するのかわからないが、ともかく今のリナにナナシから離れようとする意志は消えた。
一方その頃――。
(ここは――夢?しかもアポロのだ)
久しぶりにみる、アポロの夢――彼が戦ったその記憶が映し出される。
『答えろ、お前が村にナノマシン型のウイルスをバラまいた張本人だな』
目の前には、小さい十字架を首から下げ、頭にはいわゆるウィンプルと言う頭巾のようなものを着る修道女風の女が薄気味悪い笑顔で立っていた。
『これは、これは救国の英雄様ではありませんか――初めましてで疑いを向けて来るとはかなり短気なお方のようですわね』
『――短気で悪かったな、だけどおあいにく様お前のバックがつらつら喋ってくれたよ。村の川にナノマシン型のウイルスを流し、その川の水を聖なる水と言い張り販売してるってね、これ以上言い訳を続けてもいいが証拠は十二分にそろってる』
アポロが持っている書類には、この宗教の教祖が諸外国と契約を交わしたこと、聖水の成分分析表などが書いてあった。
『どうやら、全てお見通しのようですわね』
『――何人死んだと思ってる。いいから、大人しく捕まれ!』
追い詰められてなお、女の薄気味悪い笑顔は変わらなかった。
『――ふふっ、あははははは!!』
『何がおかしい』
『まさか、この期に及んで大人しく捕まれ――とは、どこまでも甘いお方です事――誰一人殺していないというのも本当のようですわ』
悪びれもせず、女は笑い続けている。
『――逃げられるとでも思ってるのか?』
あまりにも異常者ぶりに、思わず確認するもその笑みは変わることはなかった。
『なぜ、私が敗北することが前提なのでしょうか』
『は?』
『あなたのような弱い方には、この程度で十分です。おやりなさい』
女の号令と同時に物陰からまた別の女がナイフを持って現れる。
『――嘘だろ』
呆然と、現れた女を見つめる。
『教祖様!“あれ”を殺せば息子は助けてくれるんですよね!』
『えぇ、お願いしますね“影山”さん』
ナイフを持って走ってくる女に反応できず、ナイフは寸前まで迫る。
『ぐっ――』
途中で受け止めるも、その細腕に似合わない力でナイフを押し込もうとしてくる。
『ほらほら、早く何とかしないと殺されちゃいますよ?英雄様』
『黙ってろ!』
だが、体中の斑点はまさにウイルスの症状だ、体中から蝕み、食い破り、そして死亡する。その過程ゆえか感染者の体は非常にもろくなる、下手をすればあっさり殺してしまいかねないほどだ。
『死んでよ!死んでよ!死ねよ!死ねよ!』
発狂しながらナイフを押し込んでくる、目は完全に逝ってしまっている。おそらく、教団からの薬物操作も受けているんだろう。
『はあ――つまらないですね、早く死んでください』
更に力が強くなる女、その時扉が開き教団員の足止めをしてくれていた仲間が一人やってきた。
『アポロ、大丈夫か!――っ今何とかする!』
『待って、感染者だ!何かの拍子に殺しかねない!』
だが、馬乗りにされすぐそこまでナイフは迫ってきている。
『――だけど、お前が危ないだろ!お前が殺せないなら僕が殺す!』
『ッ、いや――ごめん。俺が、終止符を打つ』
心臓に力を込め気を回す馬乗りの体制で放てる技は一つだけ。
『さようなら“母さん”『ゴッドハンド』』
発動と同時にできるだけ加減したとはいえ吹っ飛ばされた母さん。
『あ、アポロ――今、母さんって』
『――リブラ、足止めに戻って――後は俺がやる』
その表情から何かを察したリブラは来た道を引き返し、扉を閉めた。
『おっ、おえぇぇぇぇ――うっ――ぅぅ、おえぇぇぇ』
胃の内容物をその場にぶちまける、手に残った殺した感覚と頭の中では優しかった母親の姿が蘇る。
『どうですか?自分の母親を殺した気分は――まあ、あなた達兄妹を捨ててほかに男と息子を作った女ですけど』
『――母さんが他に男を作った理由も、わかってる。許せはしないけど――母親の愛を俺は覚えてる、だから――てめぇはぶっ殺す!!』
口もとを拭い、教祖を睨みつける。
『――ふふっ、貴方を殺すための兵がこれだけだと?来なさい私の兵士たち、そして――』
ぞろぞろと現れる、教団員たち。そして、女の手には見慣れたものが握られていた。
『人工聖剣か――だけど、使いすぎれば死ぬぞ』
『えぇ、その通りですが――いるじゃないですか、電池が』
教祖の一言で全てを察した俺はすぐさま臨戦態勢に入る。
『死ね!『正義の鉄拳G5』』
足を振り上げ、踏み込み放つ拳それが空を切り裂きながら教祖に迫る。
『私を守りなさい肉壁たち』
『『『『教祖様のために!!』』』』
『そこまで――ぐっ』
正義の鉄拳に当たった教団員たちはまるで新幹線で引かれたようにバンバン吹き飛んでいく。
『あらあら、今日でどうやらかなり殺すことになりそうですわね『グングニルV3』』
聖剣に紫の光が集約され放たれる、それは正義の鉄拳G5と相殺され消えるかに見えたが粉砕し俺にめがけて飛んできた。
『『真・ゴッドハンド』』
正義の鉄拳G5でかなり弱めたというのにゴッドハンドでもかなりの衝撃がきた、よほど大量の教団員の命を使っているらしい。
然も、たちが悪いのは今肉壁になっている教団員は全員ウイルスに感染済みと言うことだ。
(――俺が甘かったのかもしれない、最初から本気でやれば母さんも死ななかったかもしれないし――どっちみち、この病気から救う手立てはない――殺すしかない)
何かが切れた音がした。
『――終わりにしよう』
『終わり?あなたのですか、それとも私?無駄ですよ、私と貴方では電池が多い私が勝利するに決まっています』
『――一つ、言っておこう。お前は、聖剣使いをなめすぎだ、だから負ける』
『何が言いたいんですか!死になさい『アストロブレイク!!』』
辺り一帯を侵蝕しながら進む渦のような何かそれは教団員もかまわず飲み込み塵に変えていく。
『『絶マジン・ザ・ハンド!!』』
左手を突き上げ心臓から力を送り出す、そして形成されたマジンの手はたやすくそれを飲み込んだ。
だが、アポロはマジンを消さずそのままに次は手を重ね合わせた。
『『ムゲン・ザ・ハンドG5』』
『その必殺技は知っております、ムゲンとうたいながら36本程度しか展開できない名前負けの――ひ――一体』
呆然とその光景を見上げる教祖、36本?誰が言ったんだそれ、確かに通常はその程度だが、マジン・ザ・ハンドと併用することで出せる場所を物理的に増やし、加えて途中の手から枝分かれさせるように展開したムゲン・ザ・ハンドは――。
『ざっと700本だ、生きていられるといいな』
『う、嘘よ!!もっと命を捧げなさい!!『グングニルV3!』』
放たれたグングニルは確かにムゲン・ザ・ハンドの手の一つを貫いた。
『あと699本か――さようなら』
降り注ぐ無限の手、それは教団員を等しく殲滅していくあるものは顔面がつぶれ、あるものは心臓を穿たれ、あるものは半身が丸々消えていたという。
そして、教祖は――。
『ははは!!『ワームホール』を使って脱出なんて気づかないでしょう!』
高笑いしながら、大聖堂の外の壁に腰かける。
『いいや、気づいてるさ――』
『うっ――』
その瞬間、大聖堂の壁を手が貫き教祖の体に入る。
『『ゴッドハンド』』
手が体に入った状態でゴッドハンドを“ゆっくり”発動し段々と体の中で展開していく。
『やめ、やめてぇ!痛い!痛い!あぁぁぁぁ!』
『みんなもそう思ってたさ』
最後は血しぶきを上げその肉片はあたりに散らばった。
血まみれの大聖堂のステンドグラス、積み上げられた死体の山、そしてその中央で己の手を見つめるアポロ――。
『――こんなに殺して――その果てに希望はあるのか?』
そのつぶやきを最後に俺の意識は浮上した。
「お目覚めになられましたか、ナナシ様」
「は、はい――なんだかものすごく嫌な夢を見てたみたいで」
何だか、アポロの源流を見たような気がするいつか俺もああなってしまうのだろうか。
「そのようですね、うなされていましたから」
「あ、あの~これって今どのようなじょ、状態ですか?」
「膝枕でございます、手ごろな枕がございませんでしたので」
(すごいな、全くリナさんの顔が見えない)
完全に酔いは冷めたものの酔っている時に何をしたのかは全く覚えていない。
リナさんの膝枕は名残惜しいが起き上がる。
「リナさん、俺――酔ってましたよね」
「はい、それはとても」
顔が青くなるのを感じる
「何をしていましたか?」
「内緒です」
「内緒ですか――」
内緒なら仕方ないともう一周回って吹っ切れた俺はその場で背伸びをした後、時間を確認すると――。
「え?17時!?」
12時にイワシの煮付けを食べたと考えると大体5時間くらい寝ていたことになる。
「ええ、ですので今から車を出しますのでお送りいたします」
「ありがとうございます、リナさん」
その日はリナさんに送ってもらい事なきを得たが、今後酒は飲んでも飲まれるなと言う教訓を胸に刻むことになったのだった。
「お酒、やめるか」
ちなみにその後――
その日の夜
「アキラのご飯おいしい!!!」
いつもの2倍くらいの速度でアキラのご飯を貪っていた。
「僕としてはうれしいんだけどどうしたんだい、ナナシそんなに勢いよく食べるなんて」
「いや~、リナさんって料理を食べたんだけど――その、メシマズでね」
「あっ、私知ってる!ライカンさんから聞いたよ『リナの料理を食べないように』って警告されたからね、多分ナナシが寝ていた時期だと思う」
ちょっとライカンさんに思うことがないわけではないが、それよりも目の前のおいしいご飯をとにかく胃袋に入れていく。
「いつもありがとう、アキラ。なんだか、今日のご飯はアキラに数十倍の感謝を伝えたくなったよ」
「う、うんそうなんだ。こっちこそ、たくさん食べてくれてありがとう」
そうして、ナナシは夕食を楽しんだ。
その間、リナはと言うと――
「さて、今日もコレクションが増えましたわ」
アルバムに写真を入れる。それは、今日ナナシがぐっすり寝た後撮られたものだった。
そして、そのアルバムには『ライカンと一緒に修行するナナシ』『カリンを泥水から守るナナシ』などの写真も入っていた。
「ナナシ様と言えど、胡椒の罠がなければ気づかれることはないようですわね」
全く気が付かなかったナナシなのだった。
メシマズ属性があるメイドっていいよね!
人工聖剣の設定は次の章でまた登場するので覚えておいてください
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け