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バレエツインズの一件から数週間、いまだに郊外でのパールマン捜索の目途が立たないということで俺はしばらく暇になっていた。
ということで、体も全快したということで白祇重工のバイトへ復帰する旨をクレタに伝えあちらもOKしてくれたので早速今日早朝から、走って現場に向かっている。
『ナナシ、あの距離を走っていくの?』
とリンに驚かれはしたが、朝で体が完全に目覚めていない俺にはちょうどいい距離だ。
そして、全身が少々汗ばんだ所で工事現場に到着した。
「よう、ナナシ。もしかして走ってきてんのか?」
「おはよう、クレタ。そうだけど、変かな?」
タオルで顔についた汗を拭い、水筒の水を軽く口に含む。
「いや、変だろ。普通はビデオ屋からこんなとこまで走ってこねぇって」
「まあ、そっか――でもわざわざ早朝からリンに車出してもらうのも悪いからね」
工事現場の朝は早い、今ですらアキラに朝早くご飯を作ってもらうのですら申し訳ないのに車も出してくれなんて言うわけがない。
(それにしても、アキラには俺も朝は作れるし大丈夫って言ってるんだけどなあ)
『気にしないでほしい、ナナシには朝は僕が作った朝食で元気に仕事へ行ってもらいたいんだ』
とのことで、今はそのご厚意に甘えさせてもらっている。
「な、ナナシがいいならよ。うちに泊まるか?」
確かに、工事バイトは何回も行くからいっそのこと泊まってしまうのは合理的だと言える。
けれど、やっぱり一番安心できるのはビデオ屋だ。それに、何かあったときすぐ対応できるし、パールマンのことで何かわかったらバイトも切り上げないといけないから便利というのもある。
「気遣いありがとう、けどビデオ屋の方がなんというか落ち着くんだ。それに、パールマンのことがわかったらすぐ動かないといけないからね」
「そうかよ――じゃあ一緒に朝飯ってのはどうだ?最近、練習してんだ味見してくれねぇか?」
「それは喜んで!!」
俺もご飯が食べれて嬉しい、クレタも味見してくれて嬉しいまさに一石二鳥と言うやつだ、それにこうすればアキラの負担をなくせるかもしれないからね。
(まあ、それでも拒否されたら朝食を二つ食べればいい話だからな!)
必殺技の燃費は毎夜の特訓のおかげか改善はしているものの気にせず連発したらすぐガス欠になる。
アキラが携帯食を持たせてくれているとはいえ、それにも限度はある。あと、単純に食べるのが好き。
「あ?ナナシ、その歯形どうしたんだ?」
「ん?ああ、これね――この間友達と遊びに行ったんだけど、その時にパクリと行かれちゃってさ」
首を傾け服をずらし、エレンに付けられた歯形を見せる。
リンに付けられた方は翌日には消えていたが、かなり深くグサッと血が出るくらいは行ってしまったので、未だに後は薄く残っている。
「――ちっ、マーキングじゃねぇかよ」
どう考えてもわざとの位置につけられた歯形を見てクレタはふつふつとこみ上げてくるものを感じた。
「え、クレタなんか言った?」
「なんでもねぇ」
あからさまになんでもないことはない口調に俺の勘が反応するが、こういうの時は無理に詮索をすると相手を不快にするというのはよくわかってる、ということでクレタの言葉をあえて間に受け早速現場に向かった。
「ナナシ、そっち行ったぞ!!」
「おう!」
いまこそ特訓の成果を示すときだ、いつぞやに言われていたがアルターエゴから『気の操作が雑!』と指摘されていた、そしてマジン・ザ・ハンド右手での発動の場合相手に背を向ける必要があることを相談したら、アルターエゴから『右と左を同時にやればいいだろ』というアドバイスをもとに完成させた必殺技。
要するに腰の捻り、へその下に力を入れ、全力で踏ん張るこれらのフェイズは正面を向いても可能なのは左手マジン・ザ・ハンドでわかっている。
だけど、右手のマジン・ザ・ハンド気が霧散する問題があった、でもそもそも心臓がある左側がやりやすい理由は近いと気が流れやすいイメージがあったから。
でも、人間の血液って循環しているわけだし、本来なら右手でも発動できてもおかしくない。
(要はイメージだ、頭で出来ていないのに体で出来るわけがない――それに、ムゲン・ザ・ハンドを習得するときに気のコントロールは死ぬほどやったからね)
左手を上げ、右手を腰あたりに置き引く心臓にある気が体全身を回り、オーラが立ち昇る。
「『マジン・ザ・ハンド改!!』」
右手を天に振り上げ、黄金の筋骨隆々のマジンを出現させる。
「食らってろ、エーテリアス!」
握られたマジンの拳はエーテリアスに迫りそのまま潰し粉々にした。
「倒したみてぇだな、ナナシ。わりぃな、復帰早々こんな大型と戦わせちまって」
「いや、むしろ準備運動にちょうどよかった。それに、戦闘勘を戻すリハビリにちょうどいいよ」
「準備運動って――さっきのエーテリアスはそう簡単に倒せる相手じゃねぇんだぞ?」
と言っても、さっきのエーテリアスは一撃で倒せてしまったしここら辺で俺の命を脅かすほどのエーテリアスはいないだろう。まあ、危険がない方が白祇重工の皆が安全に仕事できるから嬉しいのだが――。
(やっぱり、命を懸けた戦いが一番成長できるんだよな――)
アフロディとの戦いを思い出す、あの時は全身の細胞がどうやって皆を守るかということに総動員して立ち向かっていたのを感じた。
そして、この現場を邪魔していたエーテリアスは駆逐したため、拠点に一度戻ることになった。
「なあ、ナナシの『マジン・ザ・ハンド』進化してねぇか?あたしらで完成させた時より完成度が上がってねぇか?」
「ああ、実はあの後ちょっとごたごたに巻き込まれてね。そこで、右手でマジン・ザ・ハンドを出す方法を編み出したんだ」
「――ナナシが怪我したのって左腕だよな、それってあたしらと一緒に完成させたマジン・ザ・ハンドが破られたってことだよな」
クレタの表情に影が落ちる、おそらく何か責任を感じているんだろう。
「そうだね――でも、みんなと完成させたマジン・ザ・ハンドが無かったら本当にやばかった。だから、ありがとうクレタ――君もアンド―もベンさんもグレースにも他の白祇重工の皆にも感謝してるんだ。あなた達のおかげで俺は今、仲間を守れましたって」
そもそも、左手マジン・ザ・ハンドがゴッドノウズに敗北したのは俺が未熟だった故、そのことについてクレタが何か責任を感じる必要はない。
説明しながら歩いていると、クレタの目尻にうっすりと涙が浮かんでいるのが見えた。
「――あたし、心配だったんだ。プロキシからナナシが大けが負ったって――目を覚まさないって連絡受けてよ――怖くなったんだ、親父みたいに――死んじまうんじゃないかって」
「クレタ――」
名前を呼ぶのが精いっぱいだった、なんて言えばいいかわからなかった。どう頑張っても俺の目的であるすべての聖剣を集め破壊する――その最後は俺の死で締めくくられる。
だから、こそ『俺は死なないから大丈夫』なんて無責任なことが言えるはずもなかった、加えてクレタは父親も失ってる。
だからこそ、言わなきゃいけない――
「――俺は死なないって言いたいけど、人には必ず死は存在するんだ。だから、必ず死なないって断言はできない、けれど――約束する、出来るだけ死の運命に抗って見せるって」
「ははっ――ずりぃよ。そんな目で言われちまったら納得するしかねぇじゃないかよ――ナナシ、この仕事が終わって生きてたら――また、一緒に仕事してくれねぇか?」
この仕事の工期はかなりの年数を要する大工事だ――それが終わったころ――きっとその頃俺は既に――。
「ああ、もちろんだ!!」
うまく笑えていたかは自分でもよくわからなかった。
「話は変わるんだが――ナナシ、お前どこで特訓してた?」
「ぶっ!!」
すっかり忘れていた、なぜ俺がバレエツインズで特訓することになったのか、すべてのきっかけはクレタからの電話。
『全治一か月って言われてんだろ――じっとしてろよ、あたしがそっち行くからよ』
つまり、白祇重工だと特訓できないからバレエツインズで特訓しようという話だった。クレタの心配をよそにこっそり特訓してたわけだ。
「な、なぜそのことを?」
「あ、見りゃわかんだろ――明らかにパワーアップしてるしな、あらかた別の奴を頼って特訓場所を提供してもらったんだろ」
クレタの言うことがぴたりと当たり内心焦りまくりだが――それ以上にクレタが悲しそうな表情を浮かべてるのが気がかりだった。
「その――ごめん!クレタの心配を蔑ろにしたかったわけじゃないんだ、その――体は回復してたのは本当だし、とにかく――」
「あたしはわかったるぜ、ナナシはまた誰かのために特訓してたんだろ?」
「――ああ」
目覚める前、俺のオリジナルの仲間が次々倒れていく姿を見た。それが、段々とアキラやリン、ニコやアンビー、邪兎屋の皆―――クレタやアンド―、白祇重工の皆―――ライカンさんやカリン、ヴィクトリア家政の皆に置き換わっていって、最後に残ったアポロの姿、未来の自分になるかもしれないと思い知らされた。
「でもよ――危険なことはすんなよ!そんなに、特訓がしてぇなら今度からはあたしらが引き受けてやるからな!」
「く、クレタ――いいのか?」
「ああ、今回ので学んだぜナナシは見えるところに居させておく方がいいってな!」
内心俺は犬か猫かと疑問が浮かんだが、白祇重工の力を貸してくれるのはありがたい。
話はここで一時中断し再び作業に戻った。
そうこうしているうちにお昼ご飯の時間になっていた。
事前にクレタと食べる約束をしていたので事務所へ向かう。
事務所の中に入ると、弁当を広げたクレタが待ってくれていた。そして、彼女の手にはもう一つ可愛らしいナフキンで包まれた弁当箱があった。
「よう、ナナシ。――ほら、こいつ」
彼女が持っていた弁当箱が渡される。
「おっ、弁当箱――くれるの?」
「ああ、ナナシにあたしの飯を食ってもらいたくて作ってきたんだ」
朝食の話ではなかったのかと首をかしげたが作ってもらったのであれば食べて感想を言うべきかと思い椅子に座る。
仕事に行くときは必ず持ってきているリュックを下ろし、中から弁当箱“達”を取り出す。
「な、ナナシ何でそんなに弁当箱持ってんだ!?」
「実はさ、ここに来る前――」
数時間前
起床時、眠い目をこすりながらリビングに目をやると机にアキラが作ってくれた弁当と朝食が置いてあった。
身支度を整えさあ出発!玄関を開けると目の前にはニコがいた。
『お、おはよう――ほら!工事現場って大変なんでしょ――こないだお金貸してもらってお礼よ』
その手には弁当箱が握られていた。
出発して5分くらいした後、見覚えのある影を見つけ立ち止まる。
『な、ナナシ様!工事現場でバイトをしていると伺ったので――どうぞ!』
カリンから二つの弁当箱を受け取った。
『ありがとう、カリン!――ところで、この紫のオーラを放っている物体は一体?』
サイズは小鉢程度だがその存在感はまるで『サクリファイス』のようだ。
『リナさんから、味見をして欲しいとのことです!』
『――そ、そっか』
すぐクーリングオフをしたいが、小鉢程度のサイズなら死なずに済むかと考えそっとリュックの中に入れる。
事務所に入る数分前――。
『やあ、ナナシ。無事でよかったよ』
『グレースも元気そうでよかった』
もちろんすでに無事かは確認しているが、改めて職場で会うと日常に戻ってこれたと実感できる、心なしかグレースも胸をなでおろしている様にも見える。
『これからおチビちゃんの所でお昼を食べるんだろう?私はまだ仕事が残ってるから行けないが――その代わりこれを』
グレースから弁当をもらった。
『ありがとう、グレース。これで午後も元気に行けそうだよ』
『それはよかった、その弁当は私だと思って食べてくれよ』
最後はよくわからない不思議なことを言っていたがクレタのいる事務所へ向かった。
「はあ、何でこうなっちまうんだろうな」
「いやーたくさん食べれて嬉しいよ!――まあ、一つだけ細胞が拒否しているものがあるんだけどね」
目線をやる先にあったのは小鉢ほどのサイズながら圧倒的存在感と紫のオーラを放つ特級呪物であるリナさんの料理だった。
「なあ、それ本当に食えるんのか?」
「――食えるはず」
早速開けてみると、もはや何の料理かもわからないほどの黒い何かが現れた、匂いもキツイ一体何が入っているのやら――。
(これ食べて、午後の業務大丈夫かな?)
「なあ、そんなにやべえならあたしが食べてやろうか?」
「え?」
クレタが顔を赤らめる。
「――だ、だってよ――こういうのは分け合うもんだろ――」
迷わず俺はリナさんの特級呪物、否料理を口に運んだ。リナさんには悪いがこれをクレタに食べさせるわけにはいかない。ここは、俺が盾になるしかない。
「うぅがあっぁあふぁあぁ!!」
相変わらずの破壊力。この世界の悪意、疑念、絶望、恐怖などを煮詰めて作った何かが俺の内臓と言う内臓を犯し、心をもゴリゴリ削ってくる味が数分間続いた。
「な、ナナシ!」
だが、途中で耐えきれなくなり椅子から転げ落ちる。
「うっ――戻ってきた!」
危うく途切れそうだった意識を繋ぎ合わせ机を頼りに立ち上がり椅子に座る。
「無事――じゃねぇなナナシ。」
「いや、この程度で済んだとむしろ喜ぶべきかも――それじゃあ、他のみんなの弁当を食べよ!!」
もちろん、他の皆はとてもおいしく、少し涙が落ちるほどだった。
特に、カリンのお弁当箱を開くと、紙が挟まっておりそこには――
『リナさんのお料理の味を打ち消すために味を濃くしていますので、リナさんのお料理を食べてから食べてください。あなたの大切なカリンより』
と書いてあった。
その後、午後の業務も終わりいつもの鉄球特訓場に来ていた。
「ナナシ、早速行くぞ!」
「ああ、来てくれ!『マジン・ザ・ハンド改!』」
まずは手始めにとマジン・ザ・ハンドを発動させ鉄球を軽々と受け止める。
だが、問題は次だ――『ムゲン・ザ・ハンド』
「行くぜ、ナナシ!」
「止める!『ムゲン・ザ・ハンド』」
手を合わせ4本の腕を出現させる。だが、4本のうち2本しか動かず鉄球を完全に止めるごとができなかった。
「ぐっ――やっぱり動かないか」
今の課題はムゲン・ザ・ハンドを4本展開してそれを操ることになっていた。
昨日――。
『よし、かなり気の操作はマシになったな。これなら次のフェイズに行ける、よし早速ムゲン・ザ・ハンドを使うんだ!』
『――2本から4本にってことだよね――『ムゲン・ザ・ハンド』』
2本が4本になろうが作るのにはあまり差はない――問題は。
『ふぬぅぅぅ!!』
全く動かない2本の腕、2本までは俺達は2本腕の為軽く動かせたが4本目になると勝手がわからず動かない。
『はぁはぁ――アルターエゴ、全然動かないんだけど――ていうか、人間に手は4本もないんだよ!』
『そりゃそうだろ、第一段階がさっき終わったばかりなんだから――よし、ムゲン・ザ・ハンドを習得する上で必要なのが、反射だ』
『反射?』
反射というのはつまり、頭で考えず脊髄で考えろということか。
『反射って言うより勘と言った方がいいかな、君にとってはそっちの方が身近だと思う』
『――なるほどね、流石に700本もどうやってオリジナルが動かしてたか謎だったけど、アレ考えてないのか』
700本のムゲン・ザ・ハンドを展開、反射と勘でムゲン・ザ・ハンドで攻撃。
『そもそもお前、常に腕を動かすとき考えてからやってるわけじゃないだろ?』
『なるほどね――理屈はわかったけど』
つまりどうすればいいかなんて全く分からない。
『ムゲン・ザ・ハンドは、マジン・ザ・ハンドと違ってなんというか――文字で覚えるわけじゃない、体で覚える必殺技なんだ。でも、一度覚えたら忘れない』
なんてことがあったわけで、体の感覚が強い現実でもムゲン・ザ・ハンドの手は動かせずにいた。
テイク30くらいやってもびくともしない。
「やっぱり、これしかないか――」
目の前には立ち昇った鉄球がつるされていた。
「いいのか?ナナシ、当たったらやべぇぞ」
「ああ、未来の為にやらなくちゃいけないことなんだ――」
俺の両腕は現在ムゲン・ザ・ハンドの手の形で縛られておりムゲン・ザ・ハンド以外の必殺技は打てない。つまり否が応でも鉄球を止めるにはムゲン・ザ・ハンドを出すしかない。
「はあ――はあ――はあ――」
思わず、息が荒くなる。そして、そのムゲン・ザ・ハンドすらギリギリまで動かさない。
「行くぞ、ナナシ!」
「――来い!『ムゲン・ザ・ハンド!』」
4本の腕を展開しその場で待機させる。
その間にも鉄球は勢いを増しこちらを粉砕せんと迫る。
「ナナシ!!」
もう眼前だ、発動しないと――発動しないと――となるはずだったが。
(―――)
極限まで集中していた俺の頭の中は空っぽだった。
その瞬間、まるで俺の体に第3、4の腕があるような感覚に襲われる。
(つかんだ!)
4本の手は等しい動きで鉄球に迫りその威力を減衰させ受け止めた。
「――できた」
腰が抜け、その場に座り込む。確かに、俺には本来ないはずの第3、4の腕を使った感覚が残っていた。
それと同時に、迫りくる鉄球に対する恐怖が俺を震わせていた。
「大丈夫か、ナナシ!」
すぐさまクレタが駆け寄り手にかけられた縄を切る。
「あっ――大丈夫――本当に感覚をつかんだ――見てて『ムゲン・ザ・ハンド」』
手の平を前で会わせ4本の腕を展開する、4本の腕はそれぞれグー、パー、チョキ、そしてクレタの頭に手を置いてなでなでし始めた。
「こんな風に遠距離からでも精密な操作ができるようになるんだけど――おっと」
体がふらつく、まあ勘と反射で操作ってものすごい負担がかかる――これもいずれなれるだろうが――当面は4本で戦っていく必要があるだろう。
「あっ、ごめん――すぐ解除するね」
ムゲン・ザ・ハンドを解除すると同時にクレタの頭に乗っていた手が消える。
「あっ――よかったじゃねぇかナナシ!これで、目標達成だな!」
「ああ、本当にありがとう。クレタ、この技の習得には君の助けが必要不可欠だった!」
バレエツインズでは命を脅かすようなことをするとライカンさんが現れて即刻中止だし、今の鉄球もある程度安全性が保障されて、俺なら死なないという確証を持っているからこそできたが。
それでも、ここまで設備を貸してくれるのはここしかいない。
「俺さ、クレタ達に何かお礼がしたいんだ――何かないかな?」
マジン・ザ・ハンドの時もなあなあで終わっていたがあれも白祇重工の力なくしては完成しなかった。常日頃からお世話になっている職場に還元するのも良いことだろう。
「あ、あたしらにか?そうだな――」
「別にクレタ個人が俺に何かしてほしいことを言ってもいいよ!クレタにも常日頃からお世話になってるからね!」
「――な、ならよ。ナナシが、言ってたバレエツインズってとこの屋上の景色を一緒に見に行かねぇか?」
「それでよければ、もちろん!!」
バレエツインズの屋上に行くのはこれが四回目。一回目は飛行船を取り返すためにアフロディとの戦いを挑んだ場所として、二回目はライカンさんとお酒を酌み交わした場所として、三回目はカリンへのお礼を失敗したときに、四回目は――
翌日の夕方ごろ、この日はちょうど休みでクレタと合流しバレエツインズの屋上に向かった。
「うわ~綺麗だな!」
「――ああ、本当に綺麗」
四回目だというのにその輝きは色褪せることなく俺の胸を温めてくれている。
クレタは数秒、その景色を見つめた後こちらを振り返る。
「あたしは、絶対白祇重工をでかくする。そのためには、ナナシの助けが必要だ――改めて、プロキシを辞めて白祇重工に就職しねぇか?」
「それは、出来ない」
回答に普段迷う俺ですらこのフレーズだけはスラっと出てきた。
「――白祇重工の皆が悪いってわけじゃないんだ、ただ――」
アキラがいて、リンがいて、イアスがいて、フェアリーがいて、そしてプロキシとしての仕事もある。
「そんな毎日が――何よりも俺が守りたいものだから」
自分でもわかるくらい俺はいい笑みを浮かべていた。
「そうか――なら仕方ねぇな、いつでも、白祇重工に就職してぇときは声をかけな」
「何かでプロキシを首になったときはお願いするよ」
こういうことを言うたびに大根泥棒の時の記憶がちらつく。
「そうだ、ナナシちょっと屈んでくんねぇか」
「う、うん」
何かデジャブ的なものを感じながらも大人しく屈む。
―――頬に何か柔らかい物が触れる感覚を覚える。なんだろうと、クレタの顔を見ると真っ赤に染まっていた。
「な、何したの?」
「―――なんでもねぇ!」
さっきまで、和やかな雰囲気だったクレタが急に顔まっかになってカリカリしだす。
この音速の豹変ぶりに俺は頭をひねるしかないのだった。
次回予告
我々、パエトーン一行はパールマンを探すために郊外へ!
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次回Season5 ツール・ド・インフェルノ~灰に飛び込む英雄~編
お楽しみに!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け