ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第47話・強襲

 

「どうやら、みんな無事みたいだな」

「うん、ナナシが抱き寄せてくれたおかげで無傷で済んだよ」

ホッと胸をなでおろす。完全にフラグ回収という形で落下してきたが――どうにも先ほどのトラックには違和感があった。

運転手に目が合った瞬間、それを振り切るようにさらにアクセルを踏んできたし、危うく死ぬとこだった――はず。

 

「ナナシは大丈夫なのかよ?とっさにハンドルを切っちまったらナナシの頭が俺にぶつかっただろ」

「大丈夫だけど――流石の硬さだな」

頭を押さえながら傷が無いか確認する。流石機械人と言ったところだが、ちょっと視界が歪んでいる。

 

「でも、リンが機転を利かせてくれたおかげで車も無事ですんでよかった。だけど、あの逆走タンクローリーには危うく殺されかけたな」

「全くだぜ!けど――俺たちはすっかりホロウん中だ。これからどうするよ?」

辺りを見渡しても一見脱出できそうだが、ホロウの中は未知と言う言葉が道を作っているため難しいだろう。

 

「とりあえず、何か使えそうなものを探すか、リンは長時間ここに居たらまずいしな」

「おお!それならいいもんがあんぜ!カリュドーンの子に買っといてくれって頼まれたんだよ。抗侵蝕薬!それに、街で廃棄されたホロウ用のデータスタンドがいくつか車の中につんである」

「データスタンド!リン、それを使えばホロウから脱出ってできたりしないか?」

リンはプロのプロキシだ、たとえHDDシステムがなくてもその実力をいかんなく発揮できる場所さえあれば脱出の糸口くらいは作れるかもしれない。

 

 

「ひらめいた!カリュドーンの子のボンプ、きっと『キャロット』を積んでるよね。それに、データスタンドがあれば最新のデータも取れるし――うん、行けそう」

「わかった――ビリー俺がデータスタンドを設置してくるからリンを守ってくれ」

「え?俺は行かなくていいのか!?」

データスタンドはそこまで大型と言うわけでもないし、設置するときにはエーテリアスもわんさか現れるだろう。そして、防衛という面ならば俺とビリーでは俺の方が向いている――等々理由はあるが。

 

「ビリー後何発経費で落ちるんだ?」

「あっ!!」

邪兎屋には経営問題がある、アンビーから聞いたが赤字ではない月がないらしい。

そんな文字通り火の車状態なため、とてもじゃないがビリーの弾代が全て経費で落ちるとは思えない。

 

「――頼んだぜ、ナナシ」

「ああ、なるべく急いでくる」

共にグーサインをかわし、俺は指定されたポイント向かった。

 

 

 

「設置っと――」

設置すると予想通りエーテリアスが群がってくる、数は10体。

見事にデータスタンドを中心に囲まれている。

 

「はぁ!」

飛び上がり、近くの屋根に乗る。その後、群がってきたエーテリアス共に向かって足元にあった手ごろな屋根をはぎ取りそれに乗り着地する。

着地と同時にグチャと何かをつぶしたような音が出たと同時にエーテリアス一体の後ろに回り込み、両腕をつかみ背中に足を置き思いっきり肩の関節を破壊する。

 

「うーむ、罰当たりな気がするが――いいか」

だらんと腕を振るエーテリアスの足を掴み、一回試しに振ってみる。耐久性に問題はないようでシュッと風を切る音を鳴らす。

 

 

エーテリアス共が思わず後ずさりする、ムリもない。先ほどまで隣で戦っていた同胞が今は目の前の人間に武器として振るわれているのだから。

「範囲を殲滅するなら武器がある方がいいからね――さようなら」

 

 

数分後、設置が終わりナナシは帰路につこうとし、連絡を取ろうとするもつながらない。不審に思いながら小走りでさっきまでいた場所に戻る。

だが、角を曲がると――。

 

「おっ、ナナシ!気を付けろ、デカブツが来てるぞ!!」

ビリーとリンが体はゴリラ、頭には闘牛のような角を生えさせたエーテリアスに追っかけまわされていた。

「うわぁ、デカ!」

素早いし、正義の鉄拳は当たらないだろう。それに、ほっとけばリンに危害が及ぶ。

 

「ビリー!俺が動きを止める、そのすきに攻撃だ!!」

「わかったぜ!」

懐かしい、この動きはデッドエンドブッチャーとの戦い以来だ、なんだかんだ邪兎屋の面々がいるとほっとしている自分がいる。

 

「行くぞ!『ムゲン・ザ・ハンド!』」

目の前で手を合わせ、4本のゴッドハンドを出現させる。それらは、それぞれ腕と足を掴み動きを制限する。

 

「うぬぅぅぅ!!」

ザザッと足が引きずられるような感覚を覚えながら、歯を食いしばり必死にゴリラの動きを止める。

「今だな、やってやるぜ!レッツショータイム!」

ビリーのリボルバー2丁から発射される銃弾の嵐はたやすくゴリラの装甲を貫きエーテルに還した。

 

 

「ナイス、ビリー!助かったよ」

「そっちこそ、ナナシのおかげで弾代が節約できたぜ!」

互いに握手を交わし、感謝を示す。後は、トラックに乗って脱出すればいいはずだった。

 

 

 

 

パチパチパチ、手を鳴らしながらこちらに向かう足音が聞こえる。

 

「素晴らしいよ、あの大きさのエーテリアスを二人掛かりで瞬殺とはね――」

「誰だ?」

影から現れたのは赤髪色白の少年だった。だが、見た目に惑わされてはいけないここはホロウの中、しかも郊外だ一般人がいるはずがない。

 

「俺の名前はグランよろしくね。聖剣に選ばれていない者」

「グラン?――ッそれに今聖剣って!」

何だか鼻につく自己紹介だったが、それよりもこいつは今聖剣と言った。聖剣の関係者なら、アフロディみたいに問答無用で襲ってくるのを除いて交渉で何とかしたいが――。

 

 

「ああ、俺も聖剣使いなんだよ君もそうなんだろう?」

「――どうかな」

「隠さなくてもいいさ、はたから見れば聖剣使いだというのはわかりやすい」

(隠しても無駄か、それに俺とアフロディ以外の聖剣使いとよりにもよって今出くわすとは――)

横目でここからトラックまでの距離を測るが、とてもじゃないがエンジンをかけて聖剣使いから逃げられるような時間はない。

 

「そうだが、それならどうするんだ?」

「そんなの一つだけだと思わないかい?聖剣使いが出会ったならば――」

グランは何もないところから何の変哲もない短剣を取り出す。

 

「さあ、戦いを始めよう」

「ビリー!リンだけ先にトラックに避難させて、戦うぞ!!」

「わかった!それまで持ちこたえてろよ、ナナシ!」

戦うにせよなんにせよ、リンに攻撃が行くのがマズイ。ビリーなら数発くらいは耐えそうだが、ただでさえここでの活動はリンには適していない、怪我したところから浸食が進むかもしれない、だから今俺がすべきは時間を稼ぐこと。

「ナナシ!絶対、生きて帰ってきてね!」

「もちろん!」

振り向かず、返答する。

 

 

 

「来い!『ムゲン・ザ・ハンド!』」

手を重ね4本のゴッドハンドを展開する、先ほどと違うのはすぐさま攻撃ではなくその場に待機させる。こうすることで、発動までの時間を削減できる、空いた手で『マジン・ザ・ハンド』も発動可能だ。

 

「積極性が足りないんじゃないか?『アストロブレイク!』」

短剣に紫のオーラが纏ったと同時にあたりの土煙や礫が吸い込まれ粉々になる、この時点で避けたいが、後ろにきっちりトラックがあるのでよけられない。

紫の斬撃が途中の柱をえぐりながらこちらに迫る。

 

 

左手を上げ、右手を腰あたりに置き引く心臓にある気が体全身を回り、オーラが立ち昇る。

「『マジン・ザ・ハンド改!』」

オーラを開放し黄金のマジンを出現させ手のひらを突き出す、少し押される感覚はしたが止めることができた。

 

(まずいな、このレベルの必殺技を何発も打たれたらじり貧――俺の敗北は確実だ)

再び横目で二人の位置を確認する、途中リンの足が止まりかけたのをビリーが必死に抱えながら走っている。どうやら、普段からの運動不足が響いているようだ。

 

(攻撃に転じるしかない!)

マジン・ザ・ハンドを解除せず、ムゲン・ザ・ハンドを待機させながらグランに迫る。

 

「それが君の聖剣の力か――おもしろい!『グングニル!』」

グランの短剣が槍へと変わりマジンの拳と拮抗する、だが片腕では止めることが出来たかったのかすぐさま両手に持ち替える。

 

「これならどうだ!」

槍を持つ手を両手に持ち替えた瞬間、待機させていたムゲン・ザ・ハンドのうち2本を向かわせグランの脇腹に打撃を加える。

「ぐっ」

口から空気が抜けたような音がした瞬間、拮抗していた拳はバランスの崩した槍を突き抜けグランの頬に突き刺さる。

そのまま、拳をふり抜き後方に何回かバウンドしながら吹っ飛んでいった。

 

 

 

(通じる!成長してる!)

「ふふっ――ぺっ、歯が折れちゃったよ」

立ち上がったグランは口から血の塊を吐く、だがその表情は余裕そうな笑顔のままだ。

その不気味さから思わず一歩後ずさる。

 

「――君名前はなんて言うんだい?」

「ナナシ」

「いい名前だね、少し謝らせてほしい。俺は君を見くびっていた――だけど、予想以上の力を見せた。だから、俺も少し本来の力を見せようと思うこの俺の聖剣『ジェネシス』の」

 

(ジェネシス!?それが、奴の聖剣の名前――ていうかアルターエゴに聖剣の能力とか聞いておけばよかった!でも、奴が使った必殺技は夢で見たことがある――確か人工聖剣の――)

その時自分の手が妙に震えていることに気づく、一瞬なんか怖くなったのかと思ったがそれはないとすぐ理解した。

 

 

「温度が下がってる?」

「そうさ――君は知ってるかい?凍てつく闇の恐怖を!」

よく見れば、グランの聖剣は先ほどまで銀色の一般的な色だったはずなのだが、今は氷が張ったみたいに白く透き通っている。

 

(凍てつく――)

この言葉が妙に引っかかった、どこかで聞いたわけではないが――アポロの記憶でそんな話が在ったような気がした。

 

 

 

『何発も食らってたまるか!『ノーザンインパクト!』』

聖剣から放たれる、氷の柱そのスピードは弾丸も優に超えている。

 

『かわしきれないか――『絶ゴッドハンド!』』

ここで、アポロは初めて技を使用、絶まで進化させたゴッドハンドがノーザンインパクトを完璧に防いだ。

 

(そうだ『ノーザンインパクト!』もし俺の予想が正しければ技が出た後だと間に合わない!)

「『マジン・ザ・ハンド改!』『ムゲン・ザ・ハンド!』」

相手が発動するよりも先に必殺技を起動しておく。実際に弾丸を優に超えるスピードで飛んでくる氷の柱それをキャッチするのは難しい。

 

 

「それで、耐えられるのかな!『ノーザンインパクト!』」

聖剣に氷の礫が集まり巨大な柱が形成される、そして聖剣を振るうと同時に放たれた。

予想通りの技が飛んできたが、スピードは予想以上、すでに技を発動させていたのにも関わらずまだ未熟なムゲン・ザ・ハンドは間に合わず素通り状態。

 

 

「ぐっ!」

ギリギリのところでマジン・ザ・ハンドが軌道をずらし頬を多少かすめる程度で済んだ。

「へぇ、それを防ぎきるなんて!先に知っていたのかい?」

「どうかな」

頬から垂れた血を拭い、行幸と言うべきか――残った4本のうち3本のムゲン・ザ・ハンドを突撃させる。

(ノーザンインパクトやっぱり、弱点はその予備動作!見てから技の発動は間に合わないけど、出す前ならある程度対応はできる!)

 

「厄介だね、その腕!『フローズンスティール!』」

氷を纏った薙ぎ払いが、3本の腕を一蹴する。だがこちらは、俺は思いっきり足を振り上げ、ドンと踏み込む。

「そっちも厄介だ!だが、隙が大きいみたいだな『正義の鉄拳G3!』」

 

薙ぎ払いの影から迫る拳、薙ぎ払いの後聖剣があらぬ方向を向いていたため抵抗できず、そのまま吹っ飛ばされるかに見えたしかし――

 

 

 

 

「なんだ?何が起きた?」

爆発音と同時に正義の鉄拳が突如として破壊され、多少傷はついたが五体満足のグランが現れた。訳が分からず、頭のなかで情報を整理しようとしてもさっきのグランは聖剣を発動できる状態じゃなかった。だというのに、あれはどう見ても聖剣の力で脱出した。

(――いや、考えても仕方がない。相手にはおそらくまだ未知の力がある――そうだ、そう結論付けよう)

未知の力の正体もわからぬまま、突撃していくのはかなりリスキーだ、最悪手痛いしっぺ返しを食らいかねない。

 

「って俺一人ならそう思ってたけど!遅いよビリー!」

「悪かったな、ナナシ!だけどよぉ、ヒーローは遅れてやってくるもんだろ!それに、援軍も連れて来たぜ!」

リンをトラックにまで届けていったくれたビリーが戻ってきていた。それも、頼もしそうな援軍を連れて。

 

「――四体一か甘くはないね、ここは引かせてもらうよ――俺としてもツール・ド・インフェルノ前にここまで痛手を負う気はないんだ」

「「逃がすか!」」

その瞬間、土ぼこりが巻き上がり止むとそこにはグランの姿は見えなかった。

 

 

「どうやら、逃がしちまってみてぇだな」

「――あなた達は?」

ビリーが援軍と呼んでいたが、ニコではなくバイクに乗り、手にはそれぞれ円盾と片手剣を握った女とサングラスに赤マフラーとげとげしいジャケットを着た男がいた。

 

「いい表情してるじゃねぇか!俺様はシーザー!オレらは『カリュドーンの子』郊外の走り屋チームだ!」

この時の俺は少し緊張感のある顔をしていたはずなのだが、本当はシーザーの――その、放漫な胸に目が行かないように表情を固めていただけだと知るものはいないのだった。

 




『アストロブレイク』に『グングニル』そして『ノーザンインパクト』か~嫌な予感がするな~。
現在登場済みの聖剣

ジ・アース

ゼウス

ジェネシス ← NEW!!

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