トラックに戻り事情を聴くと、俺がグランと戦っている間にリンの方に限界が来て倒れてしまったらしい。
その後、俺は疲れですっかり爆睡してビリーの運転の下、ホロウから脱出していた。
カリュドーンの子達を呼んでくれたのはどうやらアキラのようで俺達が落ちた時、リンが救難信号を出していたおかげで助けに来たというわけだ。
「それにしても、本当に助かったよ。もし来てくれなかったらリンが危なかったかもしれないからな」
「ま、あんだけスゲェ剣幕で電話が来たらな。それに、伝えてきた情報は精確だったし、ご丁寧に救助ルートの説明まであったからな。特にお前らの戦闘は端から見てもド派手だったからなすぐ気づけたぜ」
「――やっぱり、わかりやすいのか」
グランが言っていたが聖剣のことを知っていれば俺が聖剣使いだというのは一発で分かる。
今後は、なるべく開けた場所での必殺技の使用を考えなければいけないかもしれない。
そうこう話しているうちに俺達はホロウを抜けることができた。
「う、うぅぅ」
棘のついたメット、そして赤い体に豚の鼻、一体何の生物かは皆目見当もつかないが、すすり泣く声を出しながらソファに眠るリンに郊外でとれた葉をお供えしていた。
「クソッ責任感じるぜ――カリュドーンの子は客人をキッチリと弔って見せっからな!」
亡きリンの前でシーザーは拳を握り誓う。
「ライト!棺はお前が担げ!」
「責任重大だな――」
そっとずれたサングラスを目元に運ぶ。
「霊柩車は安全運転でなパイパー!」
「あいよ。ゆ~くり走るぜい」
短く、あくびを混ぜながら手を振る。
「バーニス!強火で送ってやってくれ!」
「おぉ~!骨になるまで燃やしちゃうんだね!?」
満面の笑みで両手に付けられた火炎放射器をぶっ放しながらその場で一回転する。
「ナナシ!葬式へ参列してくれよな!」
「ああ、リンは本当に――ふふっ」
涙を隠すようにそっと手のひらを顔に置き表情を隠す。
「ルーシー。ルーシー!?」
その時、バイクを吹かしながら金髪の少女がドリフトを決め滑り込んでくる。
「茶番は終わりですわッ!」
そのままの勢いで跳躍し、シーザーへ己の改造バットを振った。もちろん、シーザーの盾によって攻撃は軽くいなされ被害が特に無かった。
「怒んなよ荼毘に付すってやってみたかったんだ」
「客人で遊ぶんじゃありませんわ!大体、客人の一人であるあなたもなぜこんな茶番に付き合っておりますの!」
「いや~ノリ?」
気づいたら、なんとなくやっていた。あまりの茶番ぶりでちょっと吹き出してしまったが。
「あーーもう!アホまみれですわ!」
ルーシーはその場で叫び、地団駄を踏むそれを諫めるように赤い豚たちが彼女の周りに群がっていった。
心配してくれたのかアキラが少し息を切らせながら現れる。
「リン、ナナシ無事か!?怪我はないかい?」
「わ、私は無事だけど――ナナシは?」
リンはビリーに守られながらいち早くトラックに逃げ込んでいたためナナシが何をしていたのかわからないが、どう考えてもエーテリアスじゃない戦闘音が鳴っていたのかは覚えている。
「ん?無事だけど――多少のかすり傷で済んだよ」
「本当かい?他の聖剣使いと戦ったんだ何かあればすぐに言ってくれ」
「他の聖剣使い!?すごい音が鳴ってたけど、本当に大丈夫?」
凄い音か、いくらでも思い当たる場面はあるがともかく無事であることを手を上げながら唯一のかすり傷であるノーザンインパクトがかすった頬を見せながら説明する。
「――これは、軽い凍傷になってるみたいだ。幸いなことだけど、ほぼ回復しているみたいだね」
「だから、ちょっと痺れてたのか」
それにしてもノーザンインパクト少し掠っただけなのに凍傷とはもろに食らったら普通に死ぬのでは?
話を一時中断し、カリュドーンの子に視線を向ける。
「おっ、話は終わったみたいだな――灰から蘇ったな!歓迎するぜ!」
それからしばらく経ち、落ち着いたころシーザーから話を切り出された。
「全く――こんなことになるとは思わなかったぜ『パエトーン』とんだアクシデントだ――結局三人ともおいでいただくことになっちまったなあ」
「俺は正確に言えばプロキシってわけじゃないんだけどな」
しかし、フェアリーとなぜか主従は結ばれているため一応プロキシモドキのようなことはできる。それでバレエツインズやデッドエンドホロウなどを動き回っていたのだ。
「そうなのか?ま、何でもいいぜ。おたくも、ビリの字とは同じ穴のムジナなんだろ?なら、オレらはダチだ」
「そうそう、同じ穴のムジナ――えっとこれって褒めてる?」
邪兎屋と同じと思われてるならば異議を申し立てたいが、これ以上ややこしくするわけにはいかないのでグッと我慢する。
「ちゃんと自己紹介しとこう。オレらは『カリュドーンの子』。郊外の走り屋チームだ。そんで俺様はここの首領、シーザー!」
シーザーがなぜ俺達をここに呼んだかというとやっぱり必要としているのはプロキシの力なようで『パエトーン』の協力を得て『ツール・ド・インフェルノ』をガイドしてもおうというわけらしい。
「オマエらがご執心のパールマンだが、やつの飛行船は墜落してぐちゃぐちゃだった。奴自身はしぶとく生きちゃいるものの結構重傷でな、まだ意識は戻ってねえ」
憎まれっ子世に憚るというやつだろうか、なかなかにしぶといパールマンに関心を覚える。だが、そこまでして郊外へ逃げたかったということだろうか――やっぱり、治安局辺りにはパールマンを始末しようとする勢力がいると思って間違いないだろう。
(それに、パールマンが何か重要な情報を知っているのも間違いないみたいだな)
「なるほど、パールマンの身柄を引き渡す代わりに協力を仰ぎたいってわけね」
「いや、きちんと治療が終わって目ぇ覚ましたらオマエらに任せる――人の弱みに付け込むようなやり方は覇者の気迫ってもんに欠けるからな」
「は、覇者?」
覇者が何なのかはわからないがともかく、シーザーが交渉をする気がないこと、そしてかなり損をしやすい性格なのはわかった。
「シーザー!相手が交渉を持ち掛けてくれたというのにそれをバッサリ切って、こちらの切札も切るなんて――あなた、ドのつくアホですの??」
「うん、同感。こっち側の俺が言うのもなんだけど時にはしっかり交渉すべきだよ?」
極端な話ではあるが、取引やら人間関係は相手と対等であるから強い信頼関係は結ばれる。むしろ、交渉しないのは怪しいし、タダより高いものはないと相手を警戒させる要因になる。
「交渉?カード?ルーシー、ナナシ――そんな小せえこと気にしてんのか?それに、さっき言っただろ!覇者の気迫に欠けるってな」
「客人に言われてはお終いですわ――私が情報を漏れないように今日まで身を砕いてきたのは何のためだと――!」
再び地団太を踏むルーシーだが、それよりもツール・ド・インフェルノについての情報が知りたかった。
「そうかっかすんなって――安心しろプロキシ、オマエらが郊外まで来てくれたことで、オレらのメンツは立った。そっちが手を貸さないと言おうが、パールマンについて、オレ様は言ったことを違えるつもりはねぇ」
「どうする、リン、アキラ?俺は受けたい」
もちろん、パールマンのことだけを考えるのであれば別に受けなくてもいい、けれど彼女らがいなければ先ほど死んでいたかもしれないし、リンも危なかった。
ここで親切に報いるべきだと思うのだ。
「そうだね――僕もそうすべきだと思う『旅は道連れ、世は情け』だ。けれど、聖剣使いが現れたとなれば話は別だ、ナナシ――君の話によればグランは『ツール・ド・インフェルノ』に出場するんだろう。だったら、戦いは避けられない――僕は、断るべきだと思う」
「私も同感――けど、ナナシは行きたいんだよね」
頷く、どう考えてもグランをそのままにしておくわけにはいかない。それに、もしも新エリー都に戻ったとしても聖剣使いとの戦いが終わるわけじゃない。
「俺はグランを野放しにしておけない。それに、いつか必ず戦わなければいけない――だから、居場所のわかってる今のうちが一番いいタイミングだと思う」
アキラは目をつぶり考えているようなしぐさをした後――目を開けシーザーの方を向く。
「聞いていた通りだ、僕たちパエトーンは君たちに協力するよ」
「うん、そっちだって誠意を示してくれたんだもん。出来るだけ、力になるよ」
「ハッハッハッ!実に気持ちいのいい答えだぜ!聞いたかルーシー?これでオマエの心配事も、消えてなくなっちまったな?」
「――コホン。感謝しますわ『パエトーン』そちらから協力を申し出て下さるなら。こっちとしては大助かりですもの」
これにて、協力関係は結ばれた。だが、リンとアキラは知らなかったこの決断が後々―――取り返しのつかない後悔を生む序章になる事を――。
「それで『ツール・ド・インフェルノ』って何なんだ?さっき言ってた“覇者”てのと関係があるんだろう?」
グランが出場と言っていたことや、走り屋が出場することからなんとなくレース系の大会であることは推測できるが、それがなぜ覇者に結び付くのかまではわからない。
「おうよ!よく聞いてくれたな!『ツール・ド・インフェルノ』ってのはな――オレらのいる旧油田エリアの一大イベントだ。最強と謳われる走り屋チームだけが参加できて、ホロウで真の強者を決めるために競い合うんだぜ!」
「シーザー?そんな説明じゃ誰一人理解できませんことよ――」
ルーシーが補足的に『ツール・ド・インフェルノ』について説明してくれた。
いわゆる、オートバイでホロウを突っ切るクロスカントリーの一種、参加できるのは2チームのみで、ルールもとっても簡単。ホロウを突っ切りい、先にゴールの『シンダーグロー・レイク』に『火打石』を投げ入れたチームの勝ちになる。
「それだけではありませんわ。レースの形式をとりつつ石油資源の安全を定期的に確保する目的があるんですわ。石油は旧油田エリアの命ですもの――まあ、当然私達走り屋にとて『ツール・ド・インフェルノ』にはもう一つ重要な意味があるんですわ――」
「意味?レース勝負だけじゃなくて?」
「レースの勝者は、旧油田エリアにおける 走り屋連盟の『覇者』たる地位につけるんですの!」
なるほど、覇者と言うのは相当高い地位らしい。確かに、郊外の暮らしに走り屋は必要不可欠、その連盟の頂上たるや喉から手が出るほど欲しいものだろう。
「なんか言いぐさ的に今はカリュドーンの子が覇者ってわけじゃないんだな」
「ああ、今の覇者陣営は『トライアンフ』ってチームだ。連中の大将張ってるおっさんが、もう何年もこの地位に居座ってやがる。オレ様はずっと昔から、あいつとやり合ってみたいと思ってたんだ!」
不動の王様と言うわけか、それでこちらが挑戦者とにしてもシーザーと話しているはずなのに頭の影からちらちらとアンド―の気配を感じる。
「でも、最強ってためだけに戦うのか?」
「お~っほっほ――そんなわけがありませんわ!格闘漫画に夢中の小学生じゃあるまいし、旧油田エリアの石油産業は、様々な意味で走り屋連盟の支援によって存続できてるんですの。覇者になれば、連盟のトップとして輸送ルートの割り当てを決める権限が手に入るんですわ。実質的に、その利益を思い通りにできも当然ですわね」
「う、うわぁ――」
かなりゲスイ顔したルーシーに少し引きながら、とにかくこの郊外では実力が全てなんだと思い知らされる。
「この半年間ずっーと、『トライアンフ』は私達にすべての中でも最悪のルートを割り当ててきてるんですの。裏でよからぬことを企んでるに違いありませんわ!」
「――単純にカリュドーンの子の実力を恐れてるとか?」
裏でよからぬこと――グランの顔が一瞬ちらつく、それにあの暴走トラックは本当に事故だったのか――相手の目は何かに発破をかけられたような感じだったが――もしや。
「どうかしら、あちらのナンバーツー、ルシウスが君の悪い作り笑顔でこうほざきやがりましたの。『覇者の親分は今、旧油田エリアにはいない。ルートはくじ引きで決めた』――」
「絶対、何かあるな」
相手方からすればツール・ド・インフェルノに出場するカリュドーンの子はライバル、ルーシーが言っていた覇者の特権が本当ならどんな手を使ってでも守り切るのは想像に難くない。
(あれ?でも待てよ、ツール・ド・インフェルノに出場できるのは2チーム。カリュドーンの子とトライアンフだ。つまり、グランはトライアンフに所属していることになる)
何だか、きな臭さが増してきた。
「あれ?二人は?」
考え事を中断し、頭を上げるとシーザーとルーシーはその場からいなくなっていた。
「二人なら、さっき口げんかになって決闘しに行っちゃったよ」
「え、えぇ――まあ、喧嘩する程仲がいいか――いいのか?」
突然の状況の変化に戸惑いは隠せないが、向こうからパイパーとバーニスがやってくる。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ~プロキシさん達、気にするこたないぜい。日に2、3回は起きることだからな~」
「そーそーホント大丈夫だから!捕まって立会人にされちゃうと――下手したら二人から同時につめられちゃうから、それだけは気を付けてね!」
遠目で戦っているシーザーとルーシーの決闘を見届けた後、今日は休むことになった。
嫌な~予感が~するよ~
というか、皆さん深夜にこんなの見てちゃんと寝れてます?UA見ると普通に深夜に見ている人がいるので、皆さん睡眠時間は確保しましょう!
まあ、大部分の原因は俺がこんな時間に投稿しているからな気がするけど!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け