ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第51話・板挟み

 

 

その後、俺はリンに断りを取り一人先に拠点に入り椅子に座って工芸品をいじっていた。

(――やっぱり、これ盗聴器だ)

マイクがついていることから間違いないだろう。この前、グレースからもらったごつごつとした人形に仕掛けられていたものに入っていたものと仕組みは同じ――では、なぜこんなものがあるのか。

答えは簡単、カリュドーンの子の情報を抜き取るため誰かが仕掛けたに違いない。

 

(怪しいのは、カーサだけど――いや、なら工芸品の山に積まれているのは不自然だな)

あのまま放置しておけば、やがて工芸品は全て大型の発注元へ――。

 

 

 

(そうか!大型の発注元か――)

カーサがやった可能性も残っているが、それ以上に怪しいのは大口の契約先だ。もし、そいつらが仕掛けたのであれば、物の受取りついでに盗聴器も回収することができるだろう。

(いや――だとしたらカーサが口ごもった理由はなんだ?ごまかさないといけない理由があったということだ)

 

誤魔化さないといけない理由――カリュドーンの子――『ツール・ド・インフェルノ』――トライアンフ――覇者――。

この時、ルーシーとの会話が頭の中で再生される。

『この半年間ずっーと、『トライアンフ』は私達にすべての中でも最悪のルートを割り当ててきてるんですの。裏でよからぬことを企んでるに違いありませんわ!』

『――単純にカリュドーンの子の実力を恐れてるとか?』

裏でよからぬこと――グランの顔が一瞬ちらつく、それにあの暴走トラックは本当に事故だったのか――相手の目は何かに発破をかけられたような感じだったが――もしや。

 

 

(大口発注の正体は――トライアンフか!そうなれば、あらゆる辻褄が合う。カーサが言っていた“この町は昔、カリュドーンの子の世話になってね”――言い淀んだのは、後ろめたさがあったからか)

もちろん、確定ではないが辻褄が合う可能性の一つでもある。こればっかりはカーサがトライアンフと取引する瞬間を目撃しないとどうにもできない。

その上、取引場所はホロウの中の可能性が高い、もちろんフェアリーの助けを借りて乗り込めばいい話なのだが――。

 

 

 

「はぁ――ッ」

盗聴器が前にあるというのに思わず声が漏れる、寸前に口を手でふさいだため二次災害は出なかったが――。

(これ一つじゃないだろうな、盗聴器――きっとこれ以外にもたくさん忍ばせられているはずだ。)

ならば、すぐさまカーサと大口発注先との取引を辞めさせるべき――と行きたいのだが。

問題は、なぜ取引をしているかだ。引っかかる話はいくつかあった。

 

『仕方がないだろう、町への送油管は壊れたままなんだから。ガソリンスタンドが営業できないなら、工芸品でも作って売るしかないのさ――』

トライアンフを頼った理由はわからない。でも、ここに来る途中――明らかに町の雰囲気が高まってはいるのだが――空元気のようにも思えた。

 

(町の物資――とかの場合、中止にさせるのはマズイ)

その上、俺たちは新参者カーサと言い合いになって信用されるのはどちらかと言えばカーサ。そして、本当にカーサが裏切っていた場合それをシーザーには知らせたくない、出来ればカリュドーンの子全員にバレたくない。

 

 

 

色々手を考えたが、答えは一つにまとまった。

(後で、めちゃくちゃ怒られるんだろうな――)

言い訳を考えながら、そろそろHDDの機材が来ると連絡があったので盗聴器を持ち向かった。

 

 

リン、ルーシー、バーニスが話しているところに向かうとちょうどアキラも来ていた。

「アキラ、お疲れ様――どう、HDDの調子は?」

「そっちもお疲れ様、ナナシ。幸いにも、さっきここの電圧と回線速度で試運転してみたけれどHDDはちゃんと動いた。郊外に来れたからか、フェアリーもイアスも大はしゃぎだ。とはいえ、全くの新しい環境だからな。今すぐ適応ってわけにはいかないだろう」

「『ツール・ド・インフェルノ』に備えるためにも、今手元にある仕事で練習しに行こう――それじゃあ、行くよナナシ!!」

手を引っ張られる、戦場に近い場所でリン、アキラと一緒に仕事に取り組むのは初めての為、楽しみではあるのだが今回は手を振りほどく。

 

「悪い、実はちょっと野暮用があって――一緒には行けないんだ。もしかしたら、すぐ用事が終わるかもしれないからさ、“行先”だけ教えてくれない?」

「う、うん――来れないんだ――べ、別に寂しくないから――いいけど。私達が行くのは近くの郊外のホロウだけど――えっと、確か中にリサイクル工場があるところって言ってたかな――そこで、バイクのパーツを買いに行くって来るから」

「ありがとう、リン。それじゃあ後で――ルーシー、パイパーどうか二人をお願いします」

(よし、これでマイクは音声を拾ったな――電池の消耗具合から最近つけられたもののはず――これで――)

 

 

そして、俺は踵を返し目的地に向かおうとする、するとアキラが近づいてきて俺を抱き寄せ耳打ちする。

「何かわけがあるんだろう?どうせ危険なことだ、後できっちり聞かせてもらうよ――だから、生きて帰ってきてくれ」

「ああ――最近、土下座は慣れてきたんだ――きっと、神速の土下座を見せられるよ」

小声でそう返し離れる、今度こそ俺は目的地に足を運んでいった。

この時、俺は気が付かなかった、アキラに襟元に盗聴器が仕込まれたことに。

 

 

 

岩の上で、シーザーたちがイアスを乗せバイクで人の気配がない道を爆走しているのが遠目で見える。

残念ながら、見える奴らがそれだけならよかったのだが。

 

「カリュドーンの子やっぱり来たね」

崖の上、猫のシリオンと熊のシリオン、そして狼のシリオンがバイクにまたがりながら激走していくカリュドーンの子を眺めていた。

 

「行くぞ!計画通りにな!」

熊のシリオンの合図と同時に3人は崖をまるで一の谷戦いで源義経が平家へ攻撃を仕掛けた、いわゆる『逆落とし』のように崖を下っていく。

 

 

「止まれ!」

だが生憎、今回は滅ばされるわけにはいかない。

シーザーたちが見えなくなったと同時にそこに男が現れる。進行方向の間の前に突っ立っていたため、3人はバイクを止めざるをえなかった。

 

「な!危ねえじゃねぇか!オレッちの進行方向を塞ぐとはどういうつもりだあ!?」

「どうも、こうもない。この先はカリュドーンの子が向かっている、なのに“トライアンフ”のあんたらた行くと面倒ごとになると思ったんだ」

トライアンフの名前を出した瞬間、猫のシリオンの方はプロなのか無反応だったが、熊のシリオンと狼のシリオンの方は一瞬驚いた顔をしていた。

 

「私達がトライアンフ?どこからの情報かしら――ともかく、私たちは無関係よ――さっさとどきなさい」

「いやいや――無理があるよ?ねえ、そちらの狼のシリオンさん?」

事前に、ルーシーから見せてもらったルシウスの写真にちらりと写り込んでいた狼のシリオンと全く同じ顔だ。そして、俺が流した情報からこいつらが来た、つまりあの盗聴器を仕込んだのはトライアンフで確定だ。

 

「ちっ――だが、一人か――」

「そうだけど――どうするんだ?」

挑発するように、口角を上げ。上から見下げるように顎を上げ挑発する。

 

 

「殺せ、終わったらすぐにカリュドーンの子の妨害に向かう」

「了解」「仕方がねえか」

猫のシリオンと熊のシリオンどちらもバイクから降り各々武器を構える。

(猫のシリオンと言っても猫又みたいな剣じゃなくて拳銃みたいなやつなんだな――あ、でもアレ近接も行けるな、たいして熊のシリオンか――ベンさんで慣れたつもりだけどやっぱりデカいな――遠目に援軍も複数いるな)

熊のシリオンは持っている武器がかなり大振りなので100%近接主体。盾とチェーンソーが一つになっているのでかなりダメージを当てるのは骨が折れそう。

狼の方はまだ何もしてきていないけど――注意はしておこう。援軍の方は合流する前にどうにか対処したいが、難しいだろう。

 

 

 

「よし――ぶっ飛ばす!」

拳を鳴らしながら、駆け出した。

 

 

 

ホロウの中に入りしばらく経った頃、リンたちは前ナナシがやったようにデータスタンドの設置を行っていた。

 

「――順調だな」

ライトが突然つぶやく。

「順調だね」

もちろん、順調以外ないのでイアス越しにそう返すほかない、最初のようにエーテリアスとの鬼ごっこが始まるわけでもなく、聖剣使いが現れて戦闘になるわけでもなく、ましてや盗人が現れるわけでもなく順調に進んでいた。

 

 

だが、リンとアキラは不思議と何か抜けたような感覚に襲われていた。

「――あー、プロキシ。もし、気になるんだったら――連絡とってもいいぜ?外にいるもう一人がナナシと連絡できんだろ?」

「えっ!?――で、でもまだ全部のデータスタンドの設置が終わったわけじゃないし悪いよ!」

「気にすんなプロキシ、うちの大将がいいって言ってんだ。それに、心ここにあらずって感じだぜ――大事な奴なんだろ?」

サングラス越しでうまく見えなかったがライトの目には寂しげな影が宿っていた。

 

 

「わかった――ごめん、みんな!お兄ちゃん!」

「ああ、早速電話を――」

当然だがつながることはない、絶賛交戦中だ。ならばとメールを送るが既読は一向につかない。

「ナナシが連絡に出ないなんてことあった?」

「――いや、ナナシはいつも連絡はマメに返すタイプだし、基本的に電話に出ないなんてなかったはずだけど――ちょっと待っててナナシについている発信器の場所を確認する」

「は、発信器なんてつけてんのか――」

ライトが思わず声を漏らす。

 

勘が良すぎるナナシだが、それは身内には全く適用されない。むしろズボラなほうで、発信器を複数つけていても本人は全く気が付かないほどだ。

 

「――ここは!さっきまで通った道のど真ん中だ!しかも、何個か発信器が壊れてる」

「それって――戦ってるってこと!?お兄ちゃん、盗聴器の方は!」

「ああ、ちょうどさっき付けた奴がある――」

「盗聴器もついてんのかよ!」

シーザーですらやれやれと言う感じに首を横に振る。

アキラが接続し、音声を拾うかなりノイズがうるさいが襟元に取り付けたおかげかナナシの声はくっきり聞こえる。

 

 

「『ムゲン・ザ・ハンド!!』子分だろうが行かせない!」

「ちっ!―――だね、―――でも食らいな!!」

「―――!」

ナナシの声以外は途切れ途切れだが、十分状況は理解ができた。

 

「ナナシは誰かと戦闘してるみたいだ――それも複数と」

「戦闘だと?一体、何があったんだ?」

ライトが首を傾げたその瞬間、この場に緊張が走った。

ドガァァァン!

マイク越しでもわかる、手榴弾のようなものが跳ね返る金属音、その数秒後爆発音と同時に音声はこちらへ届かなくなった。

 

「ナナシ!!」

「こいつはやべぇな――全員、ナナシを助けに戻るぞ!!」

「了解だ、大将」

一刻を争う状況、カリュドーンの子のメンバーは全員頭を縦に振る。そして、ライトはすぐさまイアスを抱える。

 

「っ、みんなありがとう!!」

迷いなく、ナナシを助けることを選んでくれたカリュドーンの子のみんなに感謝しつつ全員はホロウを脱出した。

一方外のアキラは――。

(待て、ナナシが理由なく戦うなんておかしい。つまり、僕たちに言えないようなこと――いや、正確にはカリュドーンの子の皆に知られなくなかったこと――いや、ともかくナナシの安全が最優先だ)

残りの生きている発信器“達”から、ナナシの生存は確認できているだというのに恐れからか震えが抜けない手を強く握る。

 

「帰ってきたら、ナナシに握ってもらおうかな」

きっと震えが抜けることを信じて――。

 

 

 

 




ちなみに、ナナシには常に3個以上は発信器がついていて、盗聴器は1~2個普段からついているみたいですね。
閑話・ナナシとエレンで、酔っぱらっていたナナシの居場所をエレンに教えたり、たまに時間に余裕があったらタイミングを合わせて白祇重工のバイトの迎えに来る時などに使われているらしい。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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