「俺――また、意識を飛ばしたのか」
最近よく来るこの暗黒世界、もう慣れたもので辺りを見渡すと顎に手を置き何かを考えるそぶりのアルターエゴが座っていた。
俺を見つけると手を振りこちらに誘導する。
「あ、ナナシ――やっちゃったな。あれは、愚策だよ?報連相が大事なんだぜ、難しくても最低限リンとアキラには伝えるべきだったね」
「――わかってたけど、確信を持てない間にカリュドーンの子の皆に不信感を抱かせたくなかった。出来るだけバレる口はない方がいいだろ、それに俺はカーサさんが本当にやったと信じたくない」
「希望的観測だってわかってるんだろ?」
まるで、鏡合わせのように俺の考えていることを的確に当てて来る。あの状況で一番怪しいのはカーサだ、トライアンフにとっても一番彼女が味方だったら都合がいい。
そして、彼女の家から発見された発信器が入ったお土産に居場所を伝えたらその通りに現れた。
だが、痛いところを突かれたので早速本題に入る。
「――それで、何で人工聖剣があんなに小型化されてるんだ、それになぜ存在している?」
「それを俺に聞かれてもね――一応言っておくけど製造場所はネズミ一匹逃さない勢いで潰したからね。――まあ、国単位での協力があったから完全に潰せたかと言えば確証は持てないけど――」
そういえば、人工聖剣が作られた目的は他国との戦争のための兵器だった。ただでさえ広い地球だ、国単位で物を隠されればすべて潰すのは至難の業だ。
「でも、あったってことは――確実に仮面神教が裏にいるってことだろ、そいつらが研究してたわけだし」
「あるいは、研究を引き継いだ他の組織か――禄でもないとこなのは間違いないね。教祖は既に死んでいるし俺の案が一番ありそうだけど」
教祖は既に、アポロによって殺されている。アルターエゴの話によれば、その後に続いた教祖たちもアポロがぶち殺しまわっていたらしい。研究所もそのたびに潰し、潰し、ぶっ潰しまくっていた。
「とにかくわからないってことか――待て、そういえば聖剣って何で作られてるんだ?」
「え?魂鋼と魂とか――何とか言っていたような」
サラッと恐ろしいことを言ったが、今聞きたいのはそれではない。
「それは、人工聖剣だろ。俺が聞きたいのは聖剣は一体何から作られているって話だ」
よくよく考えれば、すべての諸悪の原因はこの聖剣だ。然も、アフロディの聖弓、グランの短剣、俺の――とにかく俺は破壊しようとしている対象について何も知らない
「――ああ、そっちね。他の聖剣は知らないけどジ・アースが何で出来てるかは知ってるよ」
「あ、知ってるんだ。でも、どうしてジ・アースだけ?」
「最初にも話したけどジ・アースに妹の魂を詰め込まれたわけなんだけど、つまりこれはジ・アースが長い間研究者たちの手に堕ちていたのが原因なんだ」
確かに、一番最初こいつに会った時言っていた。そもそもなぜジ・アースがそこにあるのか、最初は疑問に思わなかったが――今考えると違和感が残る。
「アポロの先代、つまりナナシの先々代は研究者によって脳みそだけを摘出されて培養液で生きる生活となった。その結果、聖剣が次の所有者を見つけに動けず――そのままなすすべなく研究されたってわけ」
「――脳みそ」
何だか、聖剣使いって大体散々な目に遭ってる気がする。まさか、アポロに続き俺の先々代までもそうだとは思わなかった。
「で、その研究結果って言うのが――ある宝石4つで構成されていることが確認された」
「宝石?」
宝石と言えば思い出されるのは指輪型人工聖剣に内蔵されていた宝石だ。あれが光ると必殺技が行使されていたのは記憶に新しい。
「ああ――」
聖剣使いが誕生するまでのもっと昔、崩壊という現象が世界を襲っていた。それに対抗するために、当時の戦士たちは戦い何とか抗っていた。だが、その状況は長く続くことはなかった。
「ある日、突然現れた神如き存在――律者だ」
「律者?」
「俺もそこまでは詳しくは知らない、あくまでアポロが妹を救出する過程で、聖剣から妹の魂を元に戻せないか苦悩していた時の副産物だからな。とにかく、強い奴がいたんだ」
ざっくりとしすぎているような説明だが、相当前の話なのだろう――少なくとも今、崩壊や律者なんて存在はこの世界にはいない。
「その律者って言うのがそれぞれ律者コアと言うのを持っていてな、それが聖剣に使われている宝石の正体だ」
「なるほど――じゃあ、人工聖剣はその律者コアを限りなく再現したわけか」
「そうだね、律者コアの数は合計で15個。人、理、空、雷、風、氷、死、炎、識、岩、支配、約束、浸食、終焉――そして、すべての聖剣に組み込まれている勇気の律者のコア」
聖剣使いが超常的な力を扱えるのはこれらの律者コアを使うことができるから――だけれど、違和感が残る。
「何で、勇気の律者だけすべての聖剣に組み込まれているんだ?」
「――さあ?そこまではわからないかな。そもそも、崩壊と呼ばれる現象があったのも相当昔で記録も残ってない。知りたいなら実際に“見た人”にでも聞かないと無理だね」
相当昔と言うことは聖剣使いとして戦った人も何人もいるということだろうか。それにしても、実際に見た人に聞くなんて絶対にできないことだ。
「そして、ジ・アースは勇気の律者コアを除くと三つのコアで構成されている――一つは理の律者のコア、二つに識の律者コア、そして人の律者のコアだ」
「神の如き力――もしかして、それぞれかなり強いのでは!」
期待に胸を膨らませる、どんな能力かは知らないがさらに戦いのバリエーションが増えると考えたら大きい。
だが、アルターエゴはスッと目を逸らす。
「――理の律者は物体を無から想像できる。識の律者は意識を操作する能力を持つ。そして、人の律者は――」
「人の律者は!!」
「人になれる、それ以外に能力はない」
唖然、思わず口を半開きのまま数秒動けなくなる、期待していた分反動も大きい。
先ほどの神の如き力はどこに言ったんだろうか、人の律者だけどうにも型落ちと言うか――雑魚と言うか。
「後、付け加えておくけど――他の律者の力はほとんど行使できないから」
「え?」
「理は“構造原理”を理解している物体を無から創造できるんだけど――律者の力は基本的に脳への負担が大きくてね。だから、技という概念に当てはめて力を行使してるわけなんだけど、識の律者は色々あって今使えないんだ――主にサクラのせいで」
「うん?」
最後の方が早口すぎて聞き取れなかったが、なんとなく絶望的な真実がわかった。
「つ、つまり俺は聖剣の力のうち理と識が使えなくて――人しかないってこと!?」
「いや、一応ゴッドハンドとか、マジン・ザ・ハンドとかは理の律者の延長線上の能力ではあるから――だからこそ、イメージ力が重要になるんだ」
「そ、そっか~」
だが、ジ・アースと同じように他の聖剣にもそれぞれ律者コアが使われているとすれば―――なんというか、ジ・アースだけ弱い気が。
考えてみれば、最初からおかしかった。俺は最初『熱血パンチ』から始まって、必殺技を会得していったというのにアフロディと会ったら開幕『ゴッドノウズ』どうなってるんだ。
明らかに、俺の必殺技だけ殺傷能力低いなあ――『ヘブンズタイム』みたいな技欲しいなあとか思ってたけど――。
「うっ――」
「お、どうやら意識が浮上していったみたいだね――体も十分回復したみたいだし、ご飯くったらすぐ回復するさ――じゃあね」
ナナシがその場から消えた後、アルターエゴは深いため息をつく。
その原因はなぜ、識の律者の能力は使えないのか――その原因はサクラにある、本来なら識の律者の能力で幻覚を与えたり、他の人の自身の意識を植え付けたり、記憶を見たりできるというのに使えない。
『仕方ないでしょ、あなたとお兄ちゃん、そして私の魂が入っているのよ――それでキャパシティーの限界に来てるんだから』
「――俺も原因の一つなんだな」
そう、アルターエゴと言うのは識の律者の能力で分けられた人格の一つ。死んだ、アポロの魂も同様にストレージに収まっているのだ。
結果的に識はナナシには使えず、理はゴッドハンドやマジン・ザ・ハンドにして使えてはいるが本質的な能力は使えない。人は、もはやあっても無くても変わらない――
「――はあ」
再度、アルターエゴは深いため息をついた。
ミスって書き溜めていた2話分1話にして投稿してもうた。ということで、2話投稿や!
なんとついに53話で聖剣の核心的な話が出てきましたね。複数の律者コアの塊って時点で禄でもない存在だし、特級呪物と変わらないですね。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け