女神異聞録デビルサバイバー外伝 アツロウENDその後   作:XX(旧山川海のすけ)

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第104話 この国のかたち

 声の方角に急ぐと、シャッターの降りた何かの店舗類……入居者の居ないテナントか、何かの店を閉めた残骸か……?

 良く分からないけど。

 

 不景気の象徴のような建物の前に、ちょっとした広場があって。

 そこに2人の男女が居た。

 その2人は、一見して清潔さと正義を感じる衣装……

 白基調で、青と赤で彩られたRPGの神官を思わせる衣装……

 

 通称メシア服を着用していた。

 

 メシア服とは、メシア教徒が着用を義務付けられている服装で。

 彼らは特別な理由がない限り、この服を脱ぐことを許されていない。

 

 彼ら2人は片方がまだ若い少女で。

 一見して清楚な感じ。

 

 もう片方が、少し年配の男性で。

 髪に白いものが混じっている。

 見た印象は誠実そうに見える。

 

 ……見た目だけは「善」だな。

 

 彼らは大声でそれなりに集まっている聴衆に訴えかけていた。

 

「皆さん、メシア教は決して信者を見捨てません! 皆が平等である最高の宗教です! 何でも1流が最高のはずでしょう!?」

 

「あなたたちが苦しい立場に追い込まれてしまったのは、全てメシア教が動かす社会で無いせいです! そこに気づけば誰でも幸せになれるのです!」

 

 ……彼らの口癖に「世界中の人間はメシア教徒になるべき。拒否する人間は神に裁かれるであろう」ってのがあるんだよね。

 日本が上手く行かないのは、国教がメシア教で無いせいだ、なんてことも言ってる。

 

 そこから考えると、典型的勧誘文句だわ。

 

 そっと隣を見ると、ライドウさんが真顔になっていた。

 そして

 

「この国は、全ての国民がキチンと生きる権利を保障されています! そして政府が何もやっていないなんて大きな嘘です!」

 

 かなり大声で、言い返したんだ。

 

 

 メシア教徒2人の勧誘が止まった。

 

 そして……

 

 一瞬、とても醜悪な表情をした。

 敵意と悪意塗れ、というか。

 

 ……ああ。

 こいつらにとっては俺らは敵だものな。

 

「……あなた、愚かな国粋主義者? それとも卑しい政府の人間かしら?」

 

 にこやかな笑顔に戻り。

 メシア少女がライドウさんに質問する。

 

 まあ、あまり意味のない質問ではあるけど

 

「……自分の国を肯定的に捉えてたら悪いのかい?」

 

 俺がまあ、ライドウさんの代わりに無難な答えを返した。

 ライドウさんは真面目だから、こういう返答はしにくいかもしれないし。

 

 すると

 

「……全く、無知もここまで来ると罪悪だな。インターネットでも増えているよ。お前のような頭の悪いおめでたい若者が」

 

 その隣の年配メシアが、少女の言葉を繋ぐ形で返して来る。

 彼は続けた。

 

「この国はとっくに終わっているんだ。だから我々が速やかな救済を行おうとしているのに、お前たちはいつもそうだ。邪魔ばかりする」

 

 完全にこちらを見下しているな。

 さて、何を言うのかね。

 

 そんなことを思いつつ俺は

 

「何を根拠に終わったと言ってるのか分からんけどさ、俺はそうは思わないな。別にこの国は餓死は常態化してないし、一応職業安定所だって機能してるだろ」

 

「平等では無いではないか。それに神の祝福を受けていない」

 

 そんな俺の返しに、年配の方が食い気味でさらに返して来る。

 そして完全に生徒に説教する教師の顔で

 

「……いいか? よく聞け? この国は神の祝福を受けておらんのだ。その意味を、その足りない頭で考えるがいい若者よ」

 

 ……あー、はいはい。

 まあ本人は煽るとか、罵ってる気は無いんだろうな。

 本気で言ってんだよ。

 

 だからなお性質が悪いけど。

 俺はなるべく平静を保って

 

「受けてるさ。アンタらの奉じるカミサマの祝福では無いけどさ」

 

 そう返答したけど。

 

「それに何の意味があるのよ?」

 

 ……今度は食い気味に少女の方が返して来る。

 

「この国が奉じている神は、全て邪神よ! そんなものの祝福なんて穢れてるわ!」

 

 ……相手の敬う神様を、平気で邪神と言ってしまえる精神性。

 それを言えばあとは戦争だ。

 その意味をこいつらは理解してない。

 

 だからこいつらは他人を笑顔で侮辱し、同時に温厚や平和を唱える。

 

 ……ライドウさんは内心怒り心頭だと思うよ。

 この人、国に仕えている人だしな。

 

 まぁ、俺も一応そうなんだけど。

 

「卑しい神が支配する国だから、悲劇ばかり起こる! この大阪の難事も、そして東京封鎖もそう!」

 

 俺が少しウンザリして黙っていると。

 これ幸いと少女は熱心に訴えかけた。

 

 いかにこの国がダメなのか。

 

 その根拠の中に……大阪封鎖と。

 あと、東京封鎖があった。

 

「あなたたちは知らないかもしれないけど、あのとき政府は東京の人間を全員抹殺しようとしていたのよ!?」

 

 勝ち誇ったように

 そしてその、あのときの政府が考えていた最終決断の話をしたんだ。

 

 ……どこから知ったのか知らんけど。

 それは、事実だ。

 

 だけど……

 

 あのときの政府は、そうしないと日本自体が無くなると思ってた。

 悪魔の能力の大きさに、そういう判断を下していたんだ。

 

 そしてそれを回避するために

 

 ライドウさんの先代の16代目を派遣したし。

 俺たちが中で頑張って、今に繋がる道筋を作った時。

 時間が足りないから最終決断を待ってくれと訴えたら、聞いてくれた。

 

 だから、苦渋の決断だったんだよ。

 嬉しくはないけど、しょうがないだろ。

 

 人間が運営している政府なんだから。

 

 俺が言い返さないので、勝ったと思ったのか。

 少女の表情が、また醜く歪む。

 

 だけど

 

「……いい加減にしてくんないかねぇ?」

 

 そのとき。

 

 メシア教徒たちへの異見は、別のところから上がった。

 

 それは……

 聴衆たちの1人からだった。




次回、反撃パート

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