女神異聞録デビルサバイバー外伝 アツロウENDその後 作:XX(旧山川海のすけ)
「アツロウの新住所って都内の一等地よね」
アンタの新住所が家に届いて検索掛けて、ビックリしたわよ。
そんなことを、ソデコがコップのビール片手に言ってくる。
住所変更の葉書を知り合いに出して。
しばらくした後。
親友夫婦に久々に話がしたいから飲まないかと誘われたので。
都内のタイ料理屋に来ている。
俺は
「ああ、そだけど?」
「大出世じゃん。どうなの? 住み心地は?」
……住み心地、って言われてもな。
「騒音が聞こえないのが良いかな」
「それだけ?」
なんかソデコはそれ以上の答えが訊きたいらしい。
うーん……。
正直、前の官舎で俺は十分で。
それ以上の生活なんて別に要らなかったしな。
何か他に良いことと言われても……
思案しつつ、右手で自分の分のタイビールが注がれたコップを傾けると。
ススムが
「それはそうと」
テーブルの上に乗ってる、俺の左手の薬指を指摘する。
「その指輪、どうしたわけ?」
……気づかれたか。
まぁ、隠して無かったし当然か。
「それ、私も気になってた。ひょっとして入籍したの? 例の宮内庁の女の人と?」
ススムは純粋な疑問の確認、という風に。
対してソデコは興味津々。
俺は
「いや、してない」
できない、とは言えない。
安易に教えて良い情報でも無いし。
「何で?」
ソデコはわけわかんない、と言いたげな口調でさらに突っ込んでくる。
まぁ、普通に訊いたらわけわかんないだろうな。
お前の中では、俺は恋愛にエンタメを求めて、入籍するつもりのない女性と交際をする人間では無いだろうし。
実際、俺の方もおそらくそう言う人間では無いから、間違ってはいないけど。
「事情がある。言えないけど」
タイビールを飲みながら。
「……まさか相手既婚者とか?」
「んなわけあるか!」
ネタだろうけど、一応言い返す。
俺たちの関係は別に普通だし。
普通の事実婚だ。
「軽い冗談じゃん。……でも、ということは、アツロウは結婚はしないんだ?」
「うん、まぁね」
ちょっと色々あったから、答えることに抵抗はある。
なのでちょっと言いにくい。
その辺の雰囲気が伝わったのか
ススムが
「アツロウの選択がそれなら、それはしょうがないけど」
俺たちのときにご祝儀貰ったから、貰いっ放しは気分悪いな。
……そんな一言。
まぁ、お前ならそう言うよな。
「でさ」
俺がススムの言葉に感じ入っていると。
ソデコが目をキラキラさせて
「どんな人? 見たい!」
写真か何かを見せてくれ。
そう言いたいのかね。
……だが生憎、そういうものは持ち歩いて無いんだよね。
呪詛の材料になりかねないと思うし。
あとさ。
他人に自慢したいから、俺はミヤコと関係を結んだわけじゃないしな。
好きだから一緒になったんだ。
それがあるから、余計持ち歩く理由もない。
「生憎だがそういうのは全く持ち歩いてない」
「……何で? アツロウ、初カノじゃないの?」
理解できないという顔でソデコに見られた。
コイツの中では、男は初カノが出来たら彼女の写真を持ち歩いて見せびらかすものってことになってるのか。
「別に見せびらかすようなもんじゃないから」
「……見せびらかすって発想、気を遣い過ぎで私は不満なんですけど」
……え?
聞こえてきた声に、俺は振り向いた。
そこに居たのは……
「ライドウさん……」
とっさだったので、一瞬名前を呼びそうになるくらいビックリした。
彼女は白基調の上品な服装で。
笑顔でこのタイ料理屋に来ていたんだ。
「アツロウさん、行き先を言わないで出て行くから、どこに行くのかと思いました」
ニコニコ。
……客観的にはストーカー一歩手前のような気がするけど、実のところありがたくもある。
今、ソデコが会いたがっていたわけだし。
それに、本音は俺の大切な人を親しい友人たちに紹介したかったのは事実だし。
俺が彼女に同行を頼まなかったのは、単にトロフィー扱いされたら嫌だろうな。
そんな俺の勝手な想像なんだ。
ライドウさんを目視したソデコは……
すごーく驚いていた。
驚いて、次に
「……お綺麗ですね」
やや興奮しつつ、ソデコ。
ライドウさんは
「ありがとうございます」
ソデコに頭を下げ。
俺の隣の席に腰を下ろす。
そして挨拶をした
「はじめまして。17代目葛葉ライドウを襲名している者です。大切なアツロウさんの親しい方とお会いできて嬉しいです」
その彼女の言葉で。
俺は何だか本当に自分は彼女のパートナーなんだな、という実感を持ったんだ。
思えば……
自分が置いて行かれているのではと焦ったこともあったけど。
大切なのは、そこだよな。
<了>
次、あとがきです。
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