女神異聞録デビルサバイバー外伝 アツロウENDその後 作:XX(旧山川海のすけ)
「まずは女! お前からだ!」
サルガタナスは蠍の下半身で硬質的な音を立てて接近し。
ライドウさんとの間合いを詰めて剣を振り上げる。
……男と女では味が違うらしいんだな。
子供と大人でも違うそうなんだけど。
悪魔の実体化のために要求されるエネルギー「マグネタイト」の味が。
それは一般には血液中に多く含まれているらしい。
ただ、赤血球や白血球のような、目に見える成分として入ってるわけじゃないのだが。
あくまでエネルギーなんでね。
血液中に宿っている、って表現がより近いかもしれないな。
まあそれはそれとして。
悪魔は女性と子供のマグネタイトを好む奴が多い。
女性のマグネタイトは甘いそうなんだ。
そして子供のマグネタイトは爽やかなんだと。
男のは、苦みがあってツウしか喜ばんと、以前悪魔の口から聞いたことがある。
サルガタナスは血を味わうためか、魔法を使わずに剣を使って襲ってきている。
その斬撃は袈裟。
ライドウさんの左肩から斜めに振り下ろされる剣。
だけど
ライドウさんは体捌きだけでその斬撃を回避し、踏み込んだ。
斬撃の軌道から自分の身体を外している。
巧みだ。
回避と踏み込みの両立。
サルガタナスの懐に入り込んだライドウさんは、アセイミーナイフでサルガタナスの腕に斬りつけた。
「ぐぉっ!」
斬撃を喰らい、怯んだ声を発したけど。
サルガタナスは念を込め、気合を発する。
……魔法が来る!
「喰らえッ!」
発した声と同時に解き放たれる魔法。
氷結の魔法だ。
サルガタナスの周辺半径2メートル前後に冷気が吹き荒れ、凍てつく。
ライドウさんが一瞬早く、その効果範囲から飛びのいて回避に成功してたけれど。
かなり無理があったのか、着地の体勢に乱れがあった。
サルガタナスはそれを見逃したりはしない。
追い縋る。
が
俺は首狩りスプーンを振り上げて、突っ込んだ。
相手の斬撃を気にしながらだから、かなり腰の引けた一撃だったかもしれない。
「ぬるいな。恥を知るがいい」
衝撃波を伴った俺の一撃は、ただデカイだけ。
足止めを一瞬するだけにとどまり、有効打にはなり得なかった。
けど
そのサルガタナスの身体に、無数の布の帯が巻き付いた。
「ぬぅ!?」
視線を向ける。
そこには……
試験管に似た透明な管……封魔管を左手に握ったライドウさんと。
その傍らに立つ全身包帯の、エジプトのファラオのような姿をした悪魔……魔神オシリス。
エジプト神話で主神を務める神の1柱だ。
司るのは死と復活。
「拘束で良いのか召喚主?」
オシリスの確認。
このまま倒してしまわなくて良いのだな?
声にそんなニュアンスを感じた。
オシリスはその両手から無数の包帯を伸ばし、サルガタナスを拘束している。
「ぬううう! は、離せッ!」
対してサルガタナスは、拘束を解くことができないようで。
それを受けて、いや含めて。
ライドウさんは
「ええ、この悪魔はただ倒すのは惜しいですから」
そう、オシリスに返した。
で。
俺たちは1番条件の良い自転車の鍵を解除し、1台パクった。
いや、接収したというべきなのか?
堕天使サルガタナスは、全ての鍵を解除する魔力を持っているので、その力で放置自転車の鍵を開けたんだ。
あの後、拘束したサルガタナス相手にライドウさんが
ここで一方的に情けなく返り討ちで退治されるのと、木原篤郎の仲魔になって誇りを持って永らえるのと。
どちらか好きな方を選べと突きつけて。
サルガタナスは仲魔になる方を選んだんだ。
とりあえず、正式契約は後回しにして。
サルガタナスには、魔王アスタロトの名に誓って仲魔になることを宣言させた。
で、今。
自転車に乗っている俺たちの後を走ってついてきている。
大人しく、仲魔として。
……こういうのは、悪魔は破ることが出来ないんだよな。
自分の直属の上役の名前を持ち出されると、それだけで拘束力が出て来てしまうんだ。
もっとも。
契約内容をまだ詰めてないので正式契約は速やかにしなきゃいけないけどね。
このまんまは良くない。
「でんでんタウンまで何分の予定ですか?」
接収したのはトンボ自転車。
荷台がついてて、ライドウさんはそこに乗ってる。
2人乗りで、俺が男の役目として必死でキコキコ漕いでいた。
「大体40分くらいですかね」
漕ぎながら答える俺。
徒歩だと2時間くらいだったはずだから、これでも早い。
今は4時40分くらいで、まだ周囲は夜とあまり変わらない。
到着予定時刻は5時20分か。
時間がないから、速やかにいかなきゃな。
COMPも無いのに契約してどうするの?