女神異聞録デビルサバイバー外伝 アツロウENDその後 作:XX(旧山川海のすけ)
ヨシツネは投げや関節技を狙ってる。
多分、鎧組討術ってやつ……ようは柔術の源流みたいなものをやるつもりなんだろう。
相手が打撃のプロだから、同じ土俵で戦うのは分が悪いって思ったのか。
……とはいえ。
「……レスリングか? そのようなもの、我が対応不可だとでも思ったか?」
相対するアポロンは強気の姿勢を崩していない。
まぁ、オリンピックにレスリングはあるし。
そもそも、レスリングの起源もギリシャだった気がするし。
投げや組みつきにアポロンが対応不可ってのは甘い見通しだ。
「れすりんぐというものが何なのか知らぬが……拙者はこのように正面から貴殿に挑む。存分に打ちかかってこられよ」
対するヨシツネ。
多分あれは胴体への攻撃を誘ってる。
ヨシツネの胴体は鎧で守られているけど、アポロンの拳はおそらくその守備力を凌駕する。
だからアポロンの脇腹へのフックなんかは、ダメージとして通ってしまうんじゃないか。
だがそれを承知の上で、おそらくヨシツネは胴体への攻撃を誘ってるんだ。
多分、鎧でいくらか威力を殺され、その一撃を耐え抜くことが可能であると踏んで。
その上で、強引に投げか関節技に持っていくつもりなんじゃないだろうか?
アポロンもその意図を察したらしい。
「……面白いではないか。ならば我が拳の一撃を極限まで高め、仕留めてくれるわ」
その言葉を発すると同時に。
アポロンの真っ赤に燃える拳が、白く輝く拳に変化していく……
ただの炎じゃ無く、太陽の炎の力か……
あんなの、まともに貰ったらどうなるか分からん。
ヨシツネに全部任せてしまうのは良く無いだろ。
この戦いは勝たなきゃいけないんだよ。
武芸者同士の果し合いじゃないんだから。
とはいえ。
キングフロストのアイスブレス、サルガタナスの氷結魔法を浴びせようとしても、アポロンの飛行能力を併用した足さばきで絶対に回避されてしまうだろうし……
俺は頭に手を当て、悩み……
そして、あることに気づいた。
「おい、アポロン!」
だから俺は口を出したんだ。
アポロンは無視している。
多分、ヨシツネをどう打ち倒すかに集中してて、俺なんか眼中に無いんだろうよ。
だけど
「では異国の戦士よ! 我が拳の前に沈むがいい!」
アポロンがヨシツネに向かって弾丸のように飛び出した瞬間に
「……お前の発した暑苦しさで、この下でやってた美術展の美術品が軒並みダメになったぞ!」
その瞬間。
アポロンの拳が鈍った。
それが俺にも分かった。
……こいつは太陽の神であり、芸術の神でもあるんだよ。
だから……
美術品の価値が分かる。
そんな奴が、自分の発生させたあの異常な暑さのせいで、美術品がダメになってしまったと聞かされたらどうだろう?
発言内容を聞き流すのは難しくなる。
コイツの言ってることは本当なのか? という意識が働く。
それを見越した。
そして……
ヨシツネはそれを見逃さなかった。
鋭さの落ちたアポロンの拳を躱し、その右腕を掴み取り。
ブン投げて。
アポロンを地面に叩きつけ、最後にその腕を一瞬でへし折ったんだ。
「ぐああああああっ!」
アポロンの悲鳴。
……ちなみにこの策は、ヨシツネの本性も計算した上でもあったりする。
ヨシツネは鎌倉武士だ。
鎌倉時代の一般的武士は、現在の価値観で行くと
芸術を嗜む心を持たない。
まあ、上級武士は読み書きと一緒に、歌を嗜んだのも居たような気がするけど。
……で、ヨシツネはどうなのかという話だが。
彼は上級武士のはずだけど、壇ノ浦の合戦で、船の漕ぎ手を弓矢で射殺してるんだよな。
当時は戦争の不文律で
「船を戦争で使う場合、矢で射ていいのは武者のみ。漕ぎ手は狙うな」
こういうルールがあったのに、この人はそれをガン無視したんだよ。
……その辺から考えて。
美術品がダメになったなんて言われても、全く気にしない。
そう、踏んだんだ。
「……お、おのれ卑怯な……」
右腕をへし折られ、何とかヨシツネの手から抜け出したアポロンは。
ヨロヨロと怒りを滲ませた声で立ち上がろうとするけど。
その前に
「ヒィーホー!」
キングフロストがアポロンに激しい吹雪の吐息……アイスブレスを吐き掛けて。
傷ついたアポロンを氷の像に変えて。
その一瞬後、粉々に粉砕してしまったのだった。
This is Kamakura!