「好きです! 付き合ってください!!」
高校2年の夏の始まり頃、俺はクラスのアイドル的存在の女子に告白した。
しかし……
「あ〜、ごめん。私、自分より身長低い男子と付き合うとか、生理的に無理だから」
「…………!!」
俺は玉砕した。一応言っておくが、勝算は少なからずあった……と思う。
こう見えて俺はクラスでは結構な人気者なのだ。学業成績は悪いが、運動神経は良くて体育の授業ではよく活躍できていたし、女子グループからもよくキャーキャー言われて頭を撫でられていた。
だから自分は人気があるんだと、そう信じていた。だけどそれは間違いだったらしい。
「ふ……ふへへ……」
窓ガラスに映った自分の姿が目に入る。中学生……いやヘタをすれば小学生に間違われてしまうようなちんちくりんな姿。
ああ、そうか……
女子達が俺にキャーキャー言っていたのは、俺が小さいからで、ただぬいぐるみ扱いしていただけだったんだ……
決して男らしくてカッコ良いからではなかったのだ。
「……」
頭の中で鳴り響く、「私、自分より身長低い男子と付き合うとか、生理的に無理だから」という言葉。
男がモテる3つの条件。高収入、高学歴、高身長……
じいちゃんが言ってて、それは昔の考え方だとばあちゃんが笑っていた。だけど高身長は今でもモテる条件に当てはまるんだと俺は思う。
低身長男子は、マスコットにはなれても男としては見られないのである。
絶望感に苛まれながら一人トボトボと帰路につく。するとそんな俺の心を写し取ったかのように空模様が暗くなってきた。
ポツポツと雨が降ってきて、ザーザーと激しさを増していき、あーもうびしょ濡れだよ……と、そんな風に考えた次の瞬間──
ゴロゴロゴロ……ドカシャーーンッ!!!!
「────ッッ!!?」
一説によると、人間が雷に打たれる確率は100万分の1程度だそうだ。
そして今、俺はその100万分の1の確率を引き当ててしまったらしい。
(雷? え? うそ……? 俺、死ぬのか……?)
全身が痺れ、焦げ付き、命が消えていく、そんな感覚。嫌だ、死にたくない……
だって俺はまだ人生を謳歌していない。
可愛い彼女を作って、そんで、イチャイチャエロエロ幸せに暮らしたいのだ。
彼女が欲しい……彼女が欲しい……
あ……だけど俺、チビでモテないから、たぶんこの先一生恋人作れないかも……
「………」
それなら、せめて……
「う゛…まれ、かわっだら……高身長に゛ぃ……」
そんな事を考えながら、俺は息を引き取った……
・
・
・
……というのが、俺の前世の物語である。いや〜、何度思い返しても泣ける話だ〜。うんうん。
お察しの通り、俺は雷に打たれて死んだ。そして生まれ変わった。転生というやつである。
現在の俺は、『ライン』という名前を授かり、第二の人生を歩んでいる。
前世の記憶を持ったまま生まれ変われたというのはとてつもない幸運だろう。
いるのかどうかは知らないけど、転生の神様がいたなら俺は全力でお礼を言うと思う。そして、全力で文句も言うと思う。
何故なら……
「う、うぅ……どうして……どうしてこんな事に……」
小さな小さな手鏡で、今の俺の姿を確認する。するとそこに映っているのは……
スラっと尖った鼻、キリリとした瞳、チリチリッとした茶髪……うん。パーツパーツで見たなら結構イケメン要素は詰まっている……と思う。
だけどこの身体には致命的な欠点があったのだ。それは……
「どぉしてこんな小っせぇんだよぉおお〜!!! うおお〜ん!!」
俺は死ぬ間際に願った。もしも来世というのが存在するなら、今度は今みたいなチビ男ではなく、高身長なイケメン男に生まれ変わりたいと。
だけど実際問題、この状況はどうだろうか。
またもや低身長な人間へと生まれ変わった……とかならまだマシだった。今世の俺はそれすらも下回り、トンタッタとかいうよく分からん小人族へと転生してしまったのである。
小人である! 小人! 高身長を夢見ていた俺が、まさかの小人に転生。こんな悲劇があっていいのか!
今の俺の身長はだいたい20cm程度。何でも吸い込むピンクボールと同じくらいのミニマムサイズである! ポヨぉ……
「高身長の人間に生まれ変わりたかった……それがダメなら、せめて巨人がよかった……なんでよりによって小人なんだよ……」
俺が新たに転生したこの世界、どうやら地球とは全くの別世界であるらしく、普通サイズの人間がいれば、俺のような小人もいる。巨人やら魚人やら人魚やら足長やら……とにかくまあ色んな種族がいるらしい。
そんな中で、俺は俺にとって最も最悪な種族を引き当ててしまったという事だ。
ガシガシと地団駄を踏みながら俺は地面を叩き割る。
「あーもーやってられねー、やる気でねー」
不貞腐れた俺は、いつものようにお気に入りのふかふかキノコの上へと寝そべった。天然素材のキノコベッド。この柔らかな感触をベッドに出来る事だけが、小人に生まれ変われた唯一のメリットかもしれない。
あー、デカイ男になりてーなー。
そんな感じでキノコの上でグダグダ〜っとだらけていると……
「こらー! ライン! ナニをサボっているのれすか! 花畑の手入れの時間れすよ!」
チャチャチャチャっと足音を立てながら、クソ真面目な雰囲気を醸し出す、クソ真面目な男がやって来た。
「はぁ……お前か、レオ。めんどくさ……」
「めんどくさとはなんれすか! めんどくさとは!」
この面倒くさいクソ真面目な男の名はレオ。
身長は俺と同じくらい……つまり俺と同じ
今世での俺の幼馴染であり、一応まあ……親友でもある。
「まったく! どうしてラインはそんなにも不真面目なのれすか!?」
いまだキノコの上でぐでたま状態な俺に対し、ぷんぷん怒りを露わにするレオ。相変わらずの堅物め。
悪い奴ではないのだが……正直面倒くさい。
幼馴染で親友だけど……面倒くさい。
というかトンタッタという種族全体が面倒くさい。
ただひたすら面倒くさい。
ああ面倒くさい。
「どんだけ面倒くさがりなんれすか!」
「あれ? 声に出てた?」
「思いっきり出てたれすよ!」
「ふへへ、悪い悪い。じゃ、そういう事で……」
「逃げるな!!」
「うおおおーー!?」
キノコの上から立ち上がり、その場からトンズラここうとした俺の体が、一瞬にして地面へと縫い付けられる。
「何するんだレオー!!」
「ラインが逃げようとするかられすよ!!」
地面へと縫い付けられた俺の体は、まるでアップリケされたフェルト生地みたいになっている事だろう。
体が全く動かない。人体が地面に痛みもなく縫い付けられるだなんて、物理的に考えてまずありえないのだが、この男、レオにはそれが出来るのだ。
「僕の奇術、ヌイヌイの力からは逃げられないれすよ!」
「ぐぬぬ……」
この男、『ヌイヌイの実』とかいう訳の分からん果実を食べてからというもの、あらゆる物を縫い付けられる不思議パワーを得たのである。
流石は異世界。ファンタジーだ。
「さあライン! おとなしく花畑に行くれす!」
手も足も出せなくなってしまった俺だが……今この状況を何とかする方法は知っている。
それは……
「分かったよ、レオ。もう逃げないから、ほどいてくれよ」
「うそをつけ! どう見ても逃げる気満々の顔してる!」
「うそじゃないよ〜、逃げないよ〜、ホントだよ〜」
「え!? ホントならいいれすよ」
ウソじゃないと聞いた瞬間、安心した様子でするすると俺に縫い付けた糸を解いていくレオ。
うん……ちょろい。「ホントならいいれすよ」じゃねーんだわ。今の俺、超棒読みだったろが。
「さ、解いたれすよ。それじゃあ一緒に花畑まで……」
「レオ、今俺が言った、逃げないっていうのはな……」
「?」
「ウソだよ〜!」
「えーー!?」
ベロベロベーしながら、俺はその場を離脱した。そう、この状況を何とかする方法……
それは『ウソ』をつく事だったのだ。こいつら
「うわー!? またラインに騙されたれすー!」
「これで何度目だよ。いい加減学びな! 人を疑うって事を! じゃないといつか取り返しのつかねー嘘を信じ込まされる事になるぜー! そんじゃーなー」
「ああ! 待てー!」
「ふへへっ!」
へらへら笑いながら、俺は今日もレオと追いかけっこをするのであった。
勢いだけで書きました。
とりま書き溜めが数話分あるので、その間はチャカチャカ投稿していきたいです。