デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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小金首

「お゛にぃざぁあんっ!! ぅああーーんっ!!」

 

 黄猿から逃げ出し、なんとかシャッキーの店まで戻ってくる事が出来た俺に待っていたのは、号泣しながら抱きついてくるエスネであった。

 

「おわっぷ!? え、エスネ……」

「お兄ざ……よがっ……よがっだぁ……! いきて、いぎでて……!! お兄さんまでしんじゃったらって、私、ごわかった……うぁああんっ!!」

「分かった! 分かったから一旦離れて、俺今傷だらけなんだ、痛いよ」

「!!! ご、ごめんなざぃぃ……!!」

 

 俺を離すエスネ。だが離れてはくれない。

 一瞬で抱き付けそうな位置でジッと待機している。……逃げないからもちっと距離とってほしい……

 まあとりあえず、無事だったみたいで本当に良かった。

 

 ようやく一息つけたと、ペタリと座り込んでいると、奥の部屋から救急箱を持ったシャッキーが出てきた。

 

「大丈夫? ラインちゃん。手酷くやられたわね。救急箱用意しといたわ」

「あ、ありがとシャッキー」

「島を出るって言ってから、半日もしないうちにボロボロになって帰ってくるなんて……流石に予想出来なかったわよ」

「……申し訳ない……」

 

 何とも言えない表情でポンと救急箱を置くシャッキー。本当この人には頭が上がらないな。……ところでその救急箱、俺よりサイズ大きいけど薬とか使って大丈夫なの? 成分とか。小人サイズの救急箱ってない? ないですか。そうですか。

 

「ハハハ、それにしても、海軍大将からの襲撃を受けて、その程度の傷で生還出来たのは大したものだ。億超えの海賊でも中々出来ない事だぞ」

 

 レイさんは相変わらずの様子だな。いつもの席で酒を飲んでくつろいでる。

 

「……って、何で俺が大将と戦ってたって、レイさん知ってんの?」

「そりゃあこの目で見てたからな」

「はあっ!?」

 

 

 俺がオトリになっている間に、なんとかこの店へとたどり着く事に成功したエスネ。

 わんわん泣き続けるエスネに、シャッキーもレイさんも何事だと混乱したらしい。

 そしてエスネは泣きながらも俺が危ない状況にあるとレイさんに伝えてくれたんだと。それでレイさんはすぐに俺と黄猿が戦っていた場所に向かってくれて──

 

「いやいやいや! じゃあ何で助けてくれなかったの!? 俺、黄猿に殺される寸前だったんすけど!? 生きた心地しなかったんすけど?!」

「私がたどり着いた時には既にキミは天竜人を人質に取っていた。つまり、私が助けるまでもなく、キミは一人で逃げ出せる状況を作れていたという訳だ」

「い、いや、だからってさぁ……」

 

 帰りに一声かけてくれるとかしてくれても良かったんじゃないかなぁ……

 ここにたどり着くまでの間、ずっとドッキドキだったんだぞこっちは。一足先に帰って酒飲んでるんじゃねぇよ。

 

「……私のせいで、私の為に、こんなに……本当にごめんなさい……お兄さん……」

 

 エスネはまだ泣き続けている。……ついさっき両親が殺されたんだ。今のエスネのメンタルは相当に疲弊しきってるだろう……

 

「いいよ、エスネ。お前が気にするこっちゃない。悪いのは天竜人だ。お前だけでも無事で良かった……」

「うううう〜! お兄ざんん〜!」

「うぶぉ!?」

 

 再び俺に抱きついてくるエスネ。

 抱きつくならせめて獣型になってくれ。人型だとデカイから苦しい。

 俺はポンポンとエスネの肩を撫でた。

 

「ロマンスしてるとこ悪いけど、ラインちゃん、これからその子どうするの?」

「え……?」

「ラインちゃんも知っての通り、うちの店は13番GR(グローブ)の無法地帯にある。人攫いや無法者が他よりずっと多い場所。私もレイさんも、ずっとこの子の面倒をみていられるとは……とてもじゃないけど約束出来ない」

「………」

「ラインちゃんは今日、この島を出ていくつもりなんでしょ? ならこの子の面倒は、一体誰が見ればいいのかしら?」

 

 シャッキーの言葉は、突き放してるようにも聞こえるが、一応は的を射ている。

 エスネはまだ12歳の子供だ。誰かが面倒見ないといけない。そしてその“責任”は、彼女を助け、連れ去った俺にあるのだろう……

 無関係で他人のシャッキー、レイさんに押し付けるなんて出来ない。

 

 俺は、両手を床について、シャッキーに頭を下げた。

 

「俺を、もう一度この店で雇ってください……!!」

「……」

「エスネの面倒は俺が見ます。だからせめて、エスネが大人になるまでの間……俺達二人をこの店に置いてください。お願いします……!」

 

 俺の言葉に、シャッキーはタバコをスゥ〜っと吸いきり、ふぅ……と濃い煙を吐いた。

 そしてちらりとエスネの方を見る。

 

「!! お、おね、お願いじまず……私、他に行くところが無くて……雑用でも何でもやります……ここに、いさせてください……お願いします……! お願いじます……!」

 

 エスネも俺と同じように頭を下げる。

 それを見たシャッキーは、新しいタバコを取り出し、口に咥え、火を付けたところで、ゆっくりと微笑んだ。

 

「いいわよ。二人とも面倒見てあげる」

「「!!」」

「ラインちゃんのお友達なら見捨てるなんて出来ないし、そんな風に本気のお願いされたら……断るなんて出来ないわよ」

「あ、ありがとう! シャッキー!」

「ありがどうおじゃいまずぅう……!!」

 

 ワ〜〜! っと、シャッキーに抱きつく俺とエスネ。そんな俺達の頭をシャッキーはポンポンと撫でてくれた。これが母性……!?

 ママって呼んだらいかんかな? いかんよな。ママー!

 

「わはは、まるで二人の子持ちだな。シャッキー」

「あら、なら父親はレイさんね。アナタって呼んだ方がいい? ウフフ……」

 

 おい、イチャイチャすんなや老夫婦。

 

 とりあえず、シャボンディ諸島を出るのは延期だな。

 せめてエスネが大人になるまでの間は、俺がこの子の面倒を見る。そう誓ったのだ。

 

 

 

 ……

 

 

 

 シャッキー'S ぼったくりBARに、新たにエスネを加えた翌日。

 朝俺が目覚めると、そこには厨房でシャッキーと共に料理をするエスネの姿があった。

 

「そうそう、上手いじゃないエスネちゃん。その調子よ」

「あ、ありがとうございます! シャッキーさん!」

 

 フライパンを使って、何やら難しげな料理をジュワ〜っと作ってる。

 流石は料亭の娘。この店でもなんとかやっていけそうだな。

 俺は寝ぼけ眼を擦りながら、コーヒー片手に新聞を読んでるレイさんの隣へと座った。

 

「おふぁよぉ……レイさん」

「ああ、おはよう。ライン。今日の新聞の記事は中々に面白いぞ。見てみるか?」

「いや……前から言ってるじゃん。俺新聞読まないんだって。長ったらしい活字読むと眠くなるからさ」

「ならこっちはどうだ? きっと目が覚めるぞ」

「んぁ?」

 

 レイさんが1枚の紙切れを渡してきた。

 何だと思い目を通してみると……

 

「は……?」

 

 

 WANTED

 “不可視の怪盗・ライン”

 懸賞金・120,000,000ベリー。

 

 

「なんじゃあこりゃあああーーッ!!?」

 

 気が付いた時にはもう既に叫んでしまっていた。

 厨房の方で「ぴゃっ!?」とエスネが声を漏らし、「朝からうるさいわね」とシャッキーが呟いている。だがそんな事はどうでもいい。

 

「お、お、お、俺の写真!! 俺が賞金首!? ななな、なんで!?」

「エスネちゃんを助ける為とはいえ、世界貴族である天竜人を殴ったんだ。こうなるのは当然だよ」

「だからって1億2000万ベリーは意味不明だろ!? なんでこんなに高いの!? 億超えって、滅多な事ではつかないんじゃないの!?」

「………」

 

 レイさんは黙って俺に新聞を渡してきた。

 恐る恐る目を通してみる。すると……

 

 

─────

 

 近頃シャボンディ諸島で話題となっていた、“不可視の怪盗”の正体が明らかに!?

 

 その正体はなんと、ラインと名乗る体長数センチしかない小さな小人であった。

 昨日正午過ぎ、不可視の怪盗ラインは、天竜人ボミオール聖を殴り飛ばし、彼の妻を奪い去ってしまった。

 それを取り押さえようとした何人もの海兵達が倒され、さらには海軍の最高戦力、“大将黄猿”までもが“不可視の怪盗”により大怪我を負わされ、そして取り逃がした。

 

 “不可視の怪盗”は今もなお逃走中である。

 

 

──────

 

 

「何だこの、嘘と事実が微妙に織り混ぜられた記事は!?」

 

 まず天竜人の妻を奪い去ったってなんだよ!? エスネは天竜人の妻じゃねぇよ! あのち○ぽ頭が勝手に言ってただけだろ!

 そして大将黄猿を大怪我させたって、確かにそれはまあそうなんだけど……まるで俺が直接ボコったみたいな書き方をするなよな!? 

 そして何より……“体長数センチしかない”って何だ!? 20センチはあるわい! 人の身長を勝手に縮めるなコラ! 一番腹立ったわ! ボケェ!!

 

「フーーッ! フーーッ!」

「まあまあ、落ち着けライン。初頭でこの額は前代未聞……誇っていい」

「誇れねぇよ!!」

 

 何で指名手配されて誇らにゃならんのだ!

 

 前から思ってたけどレイさんの価値観て結構ぶっ飛んでるよな。異様な強さ含め、謎が多い人だ。

 

「それにしても……はぁ……賞金首かぁ……」

 

 俺がお尋ね者になったって知ったら、レオ達は一体どんな反応するだろうか……

 モネやヴィオラは、こんな俺とデートしてくれるかな……?

 

 自分の手配書をくしゃくしゃと丸め、俺はそれをゴミ箱の中へポイッと投げ捨てた。

 

 

 

 

 




主人公、ラインくんのイメージイラスト描いてみました。
イメージ崩したくないって人は見ないで大丈夫です。


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