デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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VS大将(青)

 地下室を抜けて、屋敷を抜けて、住宅街みたいな所からも抜けて、後ちょっとでマリージョアから皆で脱出できるといったところで……

 ついに出くわしてしまった海軍の最高戦力、その一人……青キジ。

 

 出会い頭に地面を凍らせてきたところから見て、氷タイプの能力者と見て間違いないだろう。

 ユキユキの実とかその辺かな?

 

「た、大将だ! 青キジだ!」

「勝てっこねぇよ! 逃げるしかねぇ!」

「やっと解放されたと思ったのに!」

「奴隷に戻るのは嫌だぁ!」

 

「……悪いがお前達を逃がす訳にはいかんのよ。アイスタイムカプセル!」

 

 青キジが手のひらを向けると、そこから冷気が吹き出し、走っていた魚人の何人かが氷漬けとなった。

 

「ぬおあっ!? 一瞬で凍った!」

「こ、これが大将……!」

 

 凍らされた魚人達の動きは……当然だが止まってしまう。

 これじゃあ、あいつらはこのまま捕まって、再び奴隷に落とされてしまう……

 

「ぐっ! くそっ!」

「お兄さん!?」

 

 1度助けた奴らを見捨てておけるか! Uターンして俺は氷漬けになった奴らの元に向かう。凍り付いた地面もなんのその! スケートは元々得意なのさ! “不可視の怪盗”と呼ばれた者の腕の見せ所……

 俺は、氷漬けになった者達を全員、全速力で掻っ攫い担ぎ上げた。

 

「ちべたっ!! そして持ちづら!」

「お兄さん! 大丈夫ですか!?」

 

「……大丈夫な訳ないでしょ……わざわざ戻ってくるとか、命知らずか、もしくは馬鹿か……“アイス(ブロック)”『両棘矛(パルチザン)』!!」

 

「うおわああーーッ!?」

「きゃあああーーッ!!」

 

 氷の槍が何本も飛んできた! 俺はそれをすんでの所でかわしていく。

 危っな! これ一本でも当たったらオシマイだろ! とりあえず担ぎ上げてるこいつらが邪魔だ!

 

「おい! 前走ってる魚人ら! お前らこの凍った奴ら持ってけ! 割るなよ!」

 

 俺は青キジにまだ凍らされていない魚人達に、氷漬けにされた魚人達を全員押し付けた。

 

「冷たっ! 俺達がこいつらを運ぶのは別に構わないが、チビッコ兄ちゃんはどうするんだ!?」

「俺はちょっと、青キジと遊んでから行く! お前らはその隙に全員逃げろ!」

「お、オトリになるってのかい!? チビッコ兄ちゃん」

「…………一度逃したからにゃあ最後まで守るっていう責任が俺には生まれるんだよ! 俺も逃げたいからさっさと逃げろ! 急げ! あとチビッコ兄ちゃんて言うな!」

「わ、分かった! 恩に着る! ありがとう! チビッコ兄ちゃん!」

 

 クソっ……

 本来なら、こいつらをオトリに使って、俺とエスネだけでも何としてでも逃げ延びる……

 それが賢い選択……それは分かってる……

 だけど奴隷に落とされた者の末路を見させられちゃってるから、捕まったら死んだ方がマシだって思わされる程、酷い目に遭わされるって知っちゃってるから……

 どうしてもこいつらを見殺しにする事が俺には出来ない……!

 

 あ〜ヤダヤダヤダ! 奴隷と関わり合いになるんじゃなかった!

 

「はぁはぁ……エスネ、お前も行くんだ」

「え……」

「俺の背中から降りて、てきとーな魚人の背中に飛び移れ! そしたらそのまま逃げて……痛っ!!?」

 

 ここは俺に任せて先に行け! 的な事を言ったら……ビスンッと、エスネに脳天チョップをされた。

 そしてぎゅう〜っと首を締められる。

 

「ぢょっ!? え゛、エズネ゛!? ごんな時に何しでる゛……! 早く降りで……」

「降りない!!」

「!!?」

「お兄さんさっき、私に怒りましたよね! 私を置いて一人で逃げてって言ったら、こうやって怒りましたよね!」

「く、首までは締めてない……」

「お兄さん一人じゃ青キジには絶対勝てません! 100%殺されちゃいます!」

「……ぬ、ぐ……!」

「お兄さんが幸せになれない世界じゃ、私も幸せになれません! だ、だから私もお兄さんと一緒に戦います! お兄さんは殺させない! 私、絶対に役に立つから……! 青キジを振り切って、一緒にシャッキーさんのお店に帰ろ!」

「……エスネ……」

「………」

「エスネ、お前、良い女だな」

「ふぇ……ッ!!?!?」

 

 魚人達が全員走っていくのを見届けながら、エスネを背中に乗せた俺は青キジと対峙する。

 

「ふへへ……青キジ……あいつらを再び奴隷に落とす事なんざ、俺達がさせやしねぇ……!」

「……!! はい! 私達が相手です……!」

 

「……あららら……これじゃあこっちが悪者みたいじゃないの……」

 

 そう思ってくれるんなら見逃してくれませんかね? くれませんか。そうですか。

 ジリジリと睨み合って……

 そして……

 青キジが動いた!

 

「“アイス(ブロック)”『暴雉嘴(フェザントベック)』!!」

 

 冷気を纏った、氷の鳥が飛んできた。

 なんだこのマヒャド版、カイザーフェニックスは!? そういやこいつ、バーン様と声が似てるな……って、そんな事はどうでもいい!!

 

「うおおっ! 加速ぅ!!」

「ーーッ!!」

 

 猛ダッシュでのギリギリ回避。俺のスピードでもギリギリとか、半端ない速さだな。

 

「……割と本気で当てるつもりで放ったんだがな……アイスサーベル!」

 

「!!」

 

 地面を蹴り砕いて、その破片を使って青キジが氷の剣を作る。

 なんでもありかこいつ!!

 

「そおりゃ!」

「うわっ!? 加速……!!」

「!!」

 

 そこそこ離れていたのに、一瞬にして距離を詰められ、斬りかかってこられた。

 それをなんとかジャンプで回避して、俺は尻尾を振りかぶる。

 

「トンタッタコンバット・しっぽハンマー!!」

 

 バギィインッ!!

 

 俺の攻撃は見事命中。青キジの体は氷のように砕け散り、そして……

 

「冷ッッた……!!」

 

 俺の尻尾はガチガチに凍り付いてしまった。

 

「……おっとっと、油断した……速さだけは大したもんじゃないの……」

 

 そして砕けちった青キジの体は一瞬で元通り。

 なんじゃそのチート性能は!? こんなんどやって勝てっちゅうねん!!

 

「お兄さん! 尻尾、大丈夫ですか!?」

「大丈夫とは……ちょっと言いづらいかな……もっかい尻尾で殴りかかったら、俺の尻尾のが砕けちゃいそう……」

「青キジはヒエヒエの実の“氷結人間”。自然(ロギア)系の能力者なので、普通の物理攻撃じゃ一切のダメージは与えられません」

「黄猿と言い、青キジといい、揃いも揃ってチートな実ィ食いやがって!! どうする!? やっぱ氷には火か!? 火なんてねぇよ! どうするよ!」

「お兄さん……落ち着いて。私が……私が青キジに攻撃を当てます……」

「ど、どうやって……?」

「私シャッキーさんに習ったんです。お世辞かもしれないけど、才能あるって、褒めてもらいました……」

「褒めてもらったって、何を……?」

「…………九蛇の覇気!!」

 

 

 

 

 

 

 ……天竜人の命令を受けて、マリージョアにやって来た俺。まあ……なんだ、あれだ……

 パンゲア城の庭先で、なんだかんだのんびりしていた。そこまでは良かったんだが……

 

 まさかこの地で戦闘になるとは思ってもみなかったな……

 

 今俺と相対しているのは、6年前、黄猿に一杯食わせた事で一時話題になっていた、懸賞金1億2000万ベリーの小人、“不可視の怪盗”ライン。

 

「“アイス(ブロック)”『両棘矛(パルチザン)』!!」

 

「うおおお!! 危ねぇ!!」

「〜〜!!」

 

 左足を怪我した喋るウサギを背中に抱えながら、俺の攻撃を全て紙一重でかわしているこのおチビさんは、俺に攻撃こそ与えられないものの……無意識下で“見聞色の覇気”を使ってやがる……

 

 身体の小ささに加えて見聞色の覇気……それにあのすばしっこさ。

 こっちとしては攻撃が当てづらいったりゃない。まったくもって、めんどくせぇ……

 

「あー、お前ら……奴隷の解放なんて、なんでこんな大それた事しでかしちゃったの? これ大犯罪よ? 分かってる?」

「はぁはぁ……別に解放したくて解放した訳じゃねぇよ。俺の妹が天竜人に捕まったから助けにきて、そしたらたまたま奴隷も助けちゃったから……まあ、成行き?」

「……成行きで命かけてんのかい」

「ふへへ、俺も自分で馬鹿だと思うよ……だけど奴隷からやっと解放されて、そんですぐにまた奴隷に逆戻りって、あまりにも可哀想じゃないか」

「………」

 

 あー、分かった。こいつは馬鹿だ。愛すべき馬鹿だ。嫌いになれねぇタイプの馬鹿……ホントやり辛ぇ……

 俺は後ろ頭をボリボリかく。

 

「……お前の気持ちは痛い程共感できるけど……それでも俺は海軍大将……! お前らをとっ捕まえないと……始末書書かされる事になるんだよ……!」

「始末書くらい書けよ! そんで俺達を見逃せ!」

「そいつは出来ない相談だ……!! アイスBALL!」

 

 冷気を飛ばし、氷の球体の中に閉じ込めてやろうとしたが、やはりかわされる。

 ……どこ行った? 小さいから見つけづらい……

 

「うおおお!! 隙有りィ!!」

「!!」

 

 気付いた時には懐……死角に忍び込まれていた。

 ……しかし潜り込んできたところで、“自然(ロギア)”の俺に攻撃は当てられな……

 

低い兎の蹴り(ネザーランドキック)!!」

 

 ドムゥウウッ!!

 

「!!!」

 

 腹に……めちゃくちゃ痛てェ一撃を……モロに入れられちまった……

 

「ゴホッ……!!」

 

「効いてる! 効いてるっ! 凄いぞエスネ! 青キジに一発入れた!」

「やった……! 当たったぁ……!」

 

 あの背中のウサギ……足を怪我したウサギ……

 怪我してねぇ方の足で、“武装色の覇気”を纏って、俺を蹴り飛ばしやがった……

 それもかなり強い覇気……

 

 なんだこいつら?

 見聞色特化の小人と、武装色特化のウサギ……

 バランス悪いようでめちゃくちゃ良い組み合わせは……!

 

氷拳(アイスグローブ)!!」

 

 拳に氷を纏わせ、直接殴って仕留めにかかる。

 しかし見聞色特化の小人がそれをギリギリでかわす。

 

「よいしょお!」

「くっ……」

「行きます!」

 

 そして武装色特化のウサギが、俺に蹴りかかってくる。

 ……だが甘い。ウサギの蹴りを、俺は頭を軽く引くだけでかわしてやる。

 お前たちの弱点、それはリーチの短さだ。身体の小ささは攻撃を回避するのには向いてるが、当てるのには向いていない。

 

 そう思ってフッと鼻で笑ってやると……

 

低い兎の長い蹴り(ネザーランドロングキック)!!」

 

 バキッ!!

 

「ブッ!!?」

 

 ウサギの足が、急に伸びてきて、俺の鼻先へと、ぶち込まれた。

 

「……ッ! かっ……ふぉ……!! このガキ共……!!」

 

 そうか、後ろのあのウサギは能力者……!

 蹴りの瞬間に、足だけ人間に戻して攻撃のリーチを伸ばしたんだ。

 こいつら、揃いも揃ってこざかしい真似を……!

 思わず尻餅ついちゃったよ。

 

「うおおお! 尻餅つかせた! 今だエスネ! 全力で逃げるぞ! しっかりしがみつけぇ!!」

「はいぃ!! お兄さん〜〜!!」

 

 俺が尻餅付いてる間に、全力ダッシュで逃げていく小人&ウサギ。

 ここで追撃するんじゃなくて、迷わず逃げを選べるのは賢い選択だと思うぜ?

 ……個人的にはこのまま逃してやりたいんだけど、流石にマリージョアで、そんな大それた職務怠慢は……許されないよな……!

 

「えっ!?」

「や……」

 

 本気の剃で追いかけ、本気の見聞色を使い、俺は逃げる二人に向けて広範囲の冷気を飛ばす。

 悪いな……

 本気、出させてもらった……

 

「アイスタイムカプセル……!!」

 

 そして俺は、“不可視の怪盗”およびその背中にへばり付いていたウサギをまとめて凍り付かせ、その身柄を拘束する事に成功したのだった。

 

「……お前たちの助け合い、自らが犠牲になってでも他者を助けようとする心意気、見事だった……」

 

 海軍大将として、お前らをとっ捕まえなくちゃならないのを、心から悲しく思うよ……

 精一杯の敬意を込めながら、凍り付いた二人を捕獲しようと、手を伸ばしたところで──

 

 バチィインッ!!

 

「!!」

 

 俺の手は弾かれてしまった。

 何だと思って視線を上げてみると……

 

「……あららら……これは……想像だにもしなかった超大モノの登場だ……」

「……」

 

 俺の手を弾いた人物、それは、元ロジャー海賊団の副船長……

 冥王と呼ばれた男、シルバーズ・レイリーだった。

 

「………」

 

 笑ってるような、怒ってるような、そんな何とも言えない表情を浮かべながら、こちらの動きを伺ってくるレイリーさん。

 俺はボリボリと後ろ頭をかく。

 

「……はぁ……レイリーさん。何やってんすか? ここどこだと思ってんの? マリージョアよ? ……まさか冥王ともあろう人が、ただ散歩しに来たって訳じゃねぇよな?」

「フフフ、青キジくん……そう警戒してくれるな。私はただ、息子と娘を迎えに来ただけだよ」

「息子? 娘?」

 

 カチンコチンに凍り付いた二人を、両手で抱きかかえるように持ち上げたレイリーさん。

 

「……まさかアンタの……実の子供って訳じゃねぇよな、その二人……」

「血は繋がってないから安心しなさい」

「そりゃまあ……そうなんだろうけど……えー? 俺、この情報、本部にどうやって報告すりゃいいのさ!? レイリーさん……その二人、大人しく引き渡してくれない?」

「その場合……私も全力で抵抗させてもらうが……構わないかね? 青キジくん」

「…………勘弁してよ、マジで、もう……」

 

 流石にこの場所で冥王と本気で()り合うなんて出来ない。

 もしも戦う事になった場合、負ける気はさらさら無いが、確実にこちらも深手を負う事となるだろう。そしてマリージョアもただではすまない……

 逃しても怒られる。逃さなくても怒られる。それなら……逃して怒られた方がまだマシだろうか……?

 

「はぁ……わかったよ……冥王が出たとなれば、本部も納得せざるを得ないだろうし……」

「ありがとう。ああそれとだね、青キジくん」

「……なんすか。まだ何か……?」

「ラインはもうどうしようもないとして、こっちのウサギの子はまだ間に合う。この子は、天竜人に目を付けられただけの、ごく普通の女の子なんだ」

「……」

 

 普通の女の子が武装色の覇気使えますかね……そう思ったが黙っておく。

 問題はそこにあるのではなく……彼女がここに来た理由が、天竜人に目を付けられた“だけ”という所だから……

 

「何が……言いたいんです?」

「別になんでもないさ。ただ、今回の戦い、きみさえ黙っていてくれたら、この子はお尋ね者にならないですむという話さ」

 

 そう言って氷漬けとなったウサギの子の頭を撫でるレイリーさん。

 

「……は〜、何その脅迫じみた要求……」

「脅迫じゃないさ。どうするかはあくまで、きみの自由、きみの正義だ」

「…………わーったよ。今回の事件、マリージョアで大暴れして大勢の奴隷を解放、そんで海軍大将青キジから見事逃げ延びる事に成功したのは……“不可視の怪盗”と“冥王レイリー”。そこにウサギの女の子は関わっていなかった。それでいい?」

「フフ、ありがとう。それじゃあ私は二人を連れて帰るとするよ。早く氷を溶かしてやらんと風邪を引いてしまうかもだからね……」

 

 そう言ってレイリーさんは赤い土の大陸(レッドライン)の崖を、氷の塊となった二人を抱えながらスルスルと素手で降りていった。

 一応ここ、雲よりも高い場所にあるんだけど……

 

「はぁ……それにしても、義理とはいえまさか“冥王”に子供がいたなんてな……これ、本部の奴らが聞いたら何て言うか……」

 

 ボリボリと後ろ頭をかきながら、俺はゆっくりとパンゲア城へ戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 





今回、大将青キジが海軍本部に伝えた情報。

・マリージョアで大暴れしていたのは“不可視の怪盗”ライン。
・“不可視の怪盗”は魚人、人魚、総勢50名以上の天竜人の奴隷を逃してしまった。
・奴隷を逃された天竜人は水槽部屋にて溺れかけている所を救出されたが、間もなく自らの吐瀉物により窒息死。
・青キジと戦った“不可視の怪盗”は氷漬けにされ敗北。しかし青キジも何発か攻撃を喰らってしまった。
・“不可視の怪盗”を捕らえる一歩手前までいったのだが、“冥王”シルバーズ・レイリーの介入によりそれを阻止される。
・“不可視の怪盗”と“冥王”の関係は親子!!

以上。


おかきおじさん「ぶわっはっはっはっ! こりゃ傑作じゃ!」
カモメおじさん「何がおかしい! ガープ! これは前代未聞の大事件だぞ!?」

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