首輪の鍵を見つけてくると言って、ケイミーと別れてから十数分……
俺は未だに鍵を見つけられないでいた。
「くっそ、どこにあるんだよ……! こういうのって普通、引き出しとかにあるんじゃないの!?」
鍵を探して三千里。
人知れずこっそり探すとなると、やはりそれなりに時間はかかってしまう。
ガサガサといくつもの引き出しを漁っていくも、無い、無い、鍵が無い……
見つけた物といえば、手鏡、マッチ、3万ベリー、コーヒーカップ。うん……全部いらん! いや、一応貰っとこ。
これがドレスローザ出身の小人の習性。とりあえず貰っちゃう……言っとる場合か! 必要なものは鍵なんだよ!
「ぐぬ〜、どこにあるんだ……」
一旦思考をおちつけようと、先程開いた引き出しの上にポスンと座る。するとジャラジャラとした感触が尻の方から……
なんだと思って見てみると、そこには『首輪』と付箋の貼られた鍵の束があった。
「は? あれ? ……あった? これ、だよね……首輪の鍵……」
既に探し終わったと思っていた場所から、ひょっこり出てきました。
探し物あるある。灯台下暗し。
「め、めちゃくちゃ時間を無駄にした……! とと、とにかく! ようやく見つけたぞ首輪の鍵! よっしゃよっしゃ!」
これでようやく助けてやれる。
俺は急いでケイミーが閉じ込められていた檻へと戻った……が、そこにケイミーの姿は既になかった。
「あれ? いない……ま、まさかもう奴隷のオークション会場に……? やっべ……」
冷や汗がだくだくと流れる。俺が鍵を見つけるのに手間取ってたせいで、ケイミーが既に売られちまってたとか……洒落にならん!
「うおおおーー!! ケイミーー!!」
会場はどっちだ!? 見聞色発動! たくさんの人の気配がある場所……あっちだ!
そうして勢い良く駆け出したところで──
パァンッ!!
「へ……?」
オークション会場から、銃声のような音が聞こえてきた。
なんだ? なんで銃声? 慌てて舞台裏からステージへ上がってみると……
「は……? な、何……? この状況?」
舞台上には、丸い水槽に入れられたケイミーの姿があった。……それは良い。ようやく発見できた。
だがそれ以上に目を引いたのは、客席にて「魚人を仕留めたえ〜♪」と騒ぎながら小躍りしている天竜人の姿だった。
天竜人……3人いる。騒いでる奴と、女の奴と、おじさんと……
魚人を仕留めたえ〜って、まさかその魚人て……
「にゅ、ニュ〜〜……」
そこには血塗れでうずくまるハチの姿があった。
はあっ!? なんだこの状況?
いきなり過ぎて訳分かんない。……要するに攫われたケイミーを探して、ハチもこの場所へとたどり着いたって事なんだろけど……
なんで天竜人に撃たれてるの? そう思っていたら……
ドゴォンッ!!!
「!!?」
また銃声……ではない。何かを殴った鈍い音。
その正体は、ハチを撃った天竜人をルフィが思っきり殴り飛ばした音だった。
いや何やってんだよ!!??
「……悪いお前ら、コイツ殴ったら、海軍の“大将”が軍艦引っ張って来んだって」
なんて事のないように、ニカッと笑いながらそう言ってのけるルフィ。
そして次の瞬間には……
当たり前だが客席で大パニックが起こった──
「うわーー!! 天竜人暴行事件だーー!!」
「海軍大将がやって来るーー!!」
「逃げろ逃げろ!!」
「天竜人が殴られた!!」
「“不可視の怪盗”の再来だーー!!」
我先にと逃げ出そうとするお客達。そんな中で、天竜人の護衛達は麦わらのルフィを捕らえようと動き出す。
しかし既に集まっていたルフィの仲間達が、天竜人の護衛に対して斬ったり、蹴ったり、雷落としたりで暴れまくり。
マジで何やってんのー!?
「お、おぉいルフィ!!」
「お、ラインじゃねぇか! お前そんな所で何やってんだ?」
「こっちのセリフじゃい! 天竜人殴るなんて正気かお前!? せっかく誰にも見つからないようにケイミーの首輪の鍵、取って来たってのに!」
「ししし! ナイス! それじゃあライン、ケイミーの事は任せた!」
そう言ってルフィは天竜人の護衛をボコし始めた。
……ったく、勝手な奴め。何はともあれ、まずはケイミーの救出が先か……
血塗れのハチの事はチョッパーが見てるっぽいし、そっちはそっちで任せた。
「我流・トンタッタコンバット・しっぽ割り!!」
ズザンッ!!
ケイミーの水槽をバリィンッと尻尾で叩き割る。
そうして出てきたケイミーを受け止め、盗ってきた鍵を使って首輪を外す。
「あ、ありがとうラインちん……」
「ん。必ず助かるって言ってたろ。ハチも絶対助かる。安心しろ」
「ま、待て! その人魚は5億ベリーで売れたんだ! 5億だぞ!? 今なら1割……いや、3割! お前にもくれてやるから……だから人魚を返……ぐはっ!?」
すぐ近くにいた、奴隷オークションの司会者が、何やらぎゃーぎゃー騒ぎ始めたので顎を蹴り上げて気絶させてやる。
俺は奴隷を買う奴も売る奴も嫌いなのだ。
そんな中でも特に嫌いなのが……
「おのれ! 下々の身分でよくも息子に手をかけたな! 海軍“大将”と“軍艦”を呼べ!! 目にもの見せてやる!!」
「そうアマス! チャルロス兄さまの仇! お前ら全員打ち首アマス!」
こいつら……
天竜人である。
海軍大将を呼ぶぞという脅し文句で、散々好き勝手しまくる、虎の威を借るち○ぽ頭共に、俺はギロリと睨みをきかす。
さて、どうするか……
あの天竜人の言うとおり、このままじゃ100%大将がやって来てしまう。
黄猿や青キジの悪夢再びである。
海軍大将が来る事を止める事が出来るのは…………やっぱ天竜人だけだよな!
「ケイミー、ちょっとここいろ」
「え?」
「加速!!」
一旦ケイミーを床に下ろし、いつも通り俺は、目にも留まらぬ速さで飛び出した。
向かう先は当然天竜人。海軍大将を呼べと叫んだ、その男の首元に飛び付き、そして──
ガチャリ
「んおっ!? なんだ? 小人? お前私に何をしたえ!」
「ふへへへっ! これを着けてやった!」
「!? それは……!!」
お前らなら、よ〜く知ってる物だろ?
今まさにケイミーから取り外したばかりの、史上最悪の拘束具……爆弾首輪だ!
「て、天竜人に!! 奴隷の首輪をッ!? スゲーーッ!!」
……なんか向こうで服着たシロクマが叫んでいるが……とりあえず無視。
俺は首輪の鍵をくるくる回しながら天竜人に交渉を持ちかける。
「ふへへ、そいつの威力は知ってるだろ? 無理に外そうとすると爆発する。外す為にはこの鍵がいる。どうだ〜? 奴隷と同じ立場に落とされた気分は〜?」
「き、貴様……! この世界の創造主の末裔である我々に、こんな事してタダですむと思うなよ!?」
「タダですませる為にしたんだよ」
「なんだと!?」
「海軍大将を呼ぶ事をやめろ! そうしたらその首輪を外してやる!」
「!!?」
途端に天竜人の顔が驚愕に染まる。
「な、何を……」
「このまま俺達を無罪放免で見逃せって言ってんの。じゃないと、その首輪……爆発しちゃうぞ〜? ふへへ〜」
「な、なんてこざかしい真似をしてくる奴だえ!?」
どうとでも言え。
まさか自分達が奴隷首輪をハメられるとは思わなかっただろう?
ほら、ガチャガチャ弄って外そうとしても無駄だぞ? ピピピピと音がしてきた。
天竜人の顔色が悪くなる。
「ほ〜ら、音してるぞ? もうすぐ爆発しちゃうんじゃないの? 早いこと判断した方がいいぞ? じゃないと死んじゃうよ〜?」
ニヤニヤ笑いながらそう煽ってやれば、青筋を立てながらも天竜人は観念したのか、「分かった……海軍大将を呼ぶのはやめよう……」と言った。
勝った! そう思った次の瞬間──
ガシャアンッ! ドシーンッ!!
「ぎゃああああ!!」
「お父上様〜〜ッ!!?」
突然天井から、鼻の長い男が落ちてきて、天竜人のおっさんを下敷きにしてしまった。
は? 何こいつ?
ルフィが「ウソップ!」とか言ってるので、どうやらルフィの仲間らしい。どういう登場して……って何やっとんじゃ!? せっかく人が穏便にすませようとしてたのに──
ピピピピピピピピピ……ドガアァンンッ!!!
「あ……」
ウソップとやらが踏み潰してしまった衝撃で、天竜人に着けた奴隷首輪が作動し……爆発してしまった。
『天竜人・奴隷の首輪で・大爆死』
ライン心の俳句。
やっべ……
「お父上様ーーッ!!?!?」
顔面黒焦げになってバタリと倒れる天竜人。
それを見た天竜人の娘が、特大の悲鳴をあげて、そのままバタリと気を失ってしまった。
あ〜、えっと、どうしよ……
大将来させない為に、牽制の為にハメさせてやった首輪だったのに、思いっきり爆発しちゃった……
これじゃあ……100%大将来ちゃうじゃん。
「お、おい! 長っ鼻!! 何してくれとんじゃ! せっかくの俺の作戦をォ!?」
「うおっ!? なんだ? 小人?」
なんだ? 小人? じゃねぇよ!
今は俺の存在に驚いてるフェーズじゃないだろがい! そんな風に頭を抱えていると……
ドゴーーンッ!!
「お兄さん! ケイミーさん! 大丈夫ですかーっ!?」
「わはは、なかなか面白い状況になっているな」
レイさんを連れてきたエスネが、壁を蹴破って登場してきたのだった。
いや、ドアから入って来いよ……
「レイさん! 遅いよ! もう俺……天竜人に奴隷の首輪をハメちゃって、そんで爆発させちまったよ!」
「天竜人に奴隷の首輪を? わははははっ!!」
「笑い事じゃないから!!」
「え!? この黒焦げになってる人……まさか天竜人? お兄さんが天竜人をこんな目に遭わせたんですか?」
「いや、エスネ……これは事故みたいなもので……」
「ナイスです! お兄さん! ざまあみろ天竜人!」
「…………」
エスネの天竜人に対する殺意がヤバイ。
と、そこでようやく天竜人の護衛を全員倒した、ルフィとその仲間達が集まってくる。
血塗れのハチは、なんかムキムキゴリラに変身したチョッパーが抱えてきた。……こいつ、ムキムキの実の能力者だったのか?
「ニュ〜〜、れ……レイリー……」
「おお!? ハチか、その傷はどうした!? 見たところ……天竜人の仕業というのは分かるが……」
キョロキョロと辺りを見回すレイさん。
麦わらの一味の顔を、一人一人眺めていき、そして……フッと笑った。
「お前達がハチを助けてくれたのか。ありがとう」
「……おっさんが、コーティング職人か?」
「そうだ。はは、その麦わら帽子は、精悍な男によく似合う……」
……??
なんか知らんが、ルフィの麦わら帽子を見てレイさんはニヤリと笑った。
なんで? シャッキーの推しだから?
そんな風に思ってたら、客席の上の方……
さっきシロクマが騒いでた場所と、出入り口付近の場所から、レイさんに声がかけられた。
……ルフィ達以外にも、まだ会場に残ってた奴がいるんだな。
「……まさか、こんな大物にここで出会うとは……」
「“冥王”シルバーズ・レイリー……! 間違いねェ。何故こんな所に伝説の男が……」
声をかけてきたのは……雪豹柄の帽子を被った男と、ゴーグルを着けた赤い髪の男。
うん。どっかで見たことある気がすると思ったら……こいつら最近新聞記事に引っ張りだこの億超え海賊じゃねぇか!!
“死の外科医”トラファルガー・ロー。
ユースタス・“キャプテン”キッド。
こいつらなんで平然と
キッドとロー、話題の海賊達との会遇にも、レイさんは冷静な態度を崩したりはしなかった。
「……この島じゃコーティング屋の“レイさん”で通ってる。ヘタにその名で呼んでくれるな。今は息子や娘達と平穏に暮らしてるだけの、ただの老兵だ……」
そう言ってしゃがみ込み、俺とエスネの頭をよしよしと撫でるレイさん。
キッドとローは「「息子!? 娘!?」」と目を見開いて驚いている。
うん。レイさん……せめて義理のってつけようか?
レイさんの発言に、キッドはゲラゲラと笑い出した。
「はははは! なるほど……天竜人を殴った“麦わらのルフィ”もそうとうイカレてるが……天竜人に奴隷の首輪を着けさせ爆死させた“不可視の怪盗”は、それ以上にイカレてる。その理由が冥王の息子ってんなら納得だ……!」
「ふっ」
ふっ、じゃないよレイさん! 何でドヤ顔してんだよ!?
あと首輪が爆発したのは俺のせいじゃないし! ウソップとやらのせいだし! ……きっと。
そんな風なやり取りをしていると──
『こちら海軍! こちら海軍! 聞こえるか!? お前達は全員包囲されている!! 犯人はすみやかにロズワード一家を解放しなさい!! 直に“大将”が到着する。早々に降伏する事をすすめる!!』
──そんな声が会場の外から聞こえてきた。
どうやらちんたらしている間に、この
大将がまだ来てないって事だけが救いか……
「へっ……上等だ。全員蹴散らしてやる……」
海軍からの降伏しろアナウンスに、キッドが殺る気満々な様子で外に出ていく。
「もののついでだ、お前ら助けてやるよ! 表の掃除はしといてやるから安心しな」
どうやらキッドさん、外の海軍と一人で戦ってくれるもよう。マジか!
俺としては、どーぞどーぞ! どんどんやっちゃってください! へいへい旦那〜! って感じなのだが……
キッドのセリフに、ルフィとローが『カチーン!』と反応した。
え? そこで負けず嫌い発動すんの?
3人の億超え船長達が「俺がやる! お前ら引っ込んでろ!」と互いに言い合い押し合い喧嘩しながら外に出ていった。
なーにやってんだか……
「ふふ、頼もしいな。では戦闘は彼らに任せて、我々も行くとするか。ライン、エスネ」
「あ、ちょい待ってレイさん」
「どうしたライン?」
帰る前に、ちょいとやるべき事があるのだ。
俺は鍵の束を持って舞台裏へと走っていく。そこにはこの
「よーし! それじゃ全員一列に並んで! 今からお前らの爆弾首輪、外してくから!」
「「「!!??」」」
「助けてやるって言ってんの! 海軍来てるから! 急いでな! ハリーハリー!」
「「「あ、ありがとうございます!!」」」
……別に解放してやる義理はないんだけど、このまま見捨てていくってのも、夢見が悪いからな。ふへへ……
この小説でのレイリーさんは、ラインとエスネの存在のおかげで原作より生活態度がいくらかマシです。
親としてカッコ悪いところはあまり見せられないからね。
だから奴隷ショップに身売りはしていませんでした。