デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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今までの功績

 ハンコックにボロカス……いや、当たり前なる正論を言われてしまった俺は、情けなくも一人ポロポロと泣き潰れてしまった。

 情けない。本当に情けない……

 5分くらい泣いた後、部屋を出た俺は、この国で一番高い場所である見張り場……? みたいなところへとやって来た。馬鹿と煙は高いところに登るという。馬鹿でチビな俺にはお似合いの場所だな。

 

「はぁ……」

 

 ……別に飛び降り自殺とかをしにきた訳じゃない。ただ黄昏れてるだけ。

 ルフィや女の子達はきっと今も宴で盛り上がっている真っ最中なのだろう。楽しそうな声がここまで響きわたってくる。だけど俺は、それに参加する資格を持ち合わせていない。合わせる顔がないとも言える。

 ハンコックに言われてしまったド正論に、反論する材料を持ち合わせていないからである。

 

「あ、ライン先生。ここにいたんだ」

「…………」

 

 月明かりが照らす空の下、見張り場の手摺りに座って足をぷらぷらさせていると、息を切らしたマーガレットが階段を駆け上がってきた。

 

「……何しに来たんだ?」

「いつまで待っても来ないから、探しに来たのよ。皆待ってるよ。ほら、行こうライン先生」

「…………俺は、先生なんて呼ばれるような男じゃない」

「え?」

「ごめんな……小人流の挨拶とか言って教えたあれ、嘘なんだ……」

「え……」

 

 俺は自分の罪を告白した。

 この国の女の子達が男というものを何も知らないのを良い事に、自分の欲望を優先して好き勝手しまくっていた事を告げ、そして謝った。

 

「──と、いう事なんだ……ごめんな……」

「……」

「ふへへ…サイテーだよな、俺はアルティメットセクハラゴミクズ野郎だった訳だ。ぶん殴られても文句は言えんぜ……」

「……」

 

 俺の話を、俺の懺悔を、マーガレットは黙って聞いてくれた。

 話が終わると、マーガレットは俺の事をヒョイッと両手で持ち上げた。俗に言うたかいたかい。

 

「ライン先生」

「んー?」

「先生が教えてくれた、男と女の違いだとか、子供の作り方とか、男女の青春ラブストーリ〜とか、そういうのも……全部、嘘だったの?」

「あ、いや……そういうのは全部本当だけど……」

「そっか」

 

 そう言ってマーガレットは一人うんうん頷いて、俺を元の場所におろした。

 ……なんだ? 何の時間だこれ? 何を考えてんだ?

 

偽物挨拶(ぱふぱふ)以外は……特に嘘はついてないのよね?」

「そ、そうだけど……」

「そっか……それじゃあライン先生。貴方の事、許してあげます!」

「えっ!?」

 

 ニコッと笑顔を見せて、カラッとそう答えるマーガレット。

 今の俺の心情。一言で表すなら、『ポカン』。

 

「ゆ、許すって……あんなにひっどいセクハラしたのに?」

「……う〜ん、ひどいも何も、私達からすれば、そこまでひどい事されたって感じじゃないし……ある意味男がどういう生き物かって、教えてくれたみたいなものだから……別にいいよ」

「…………」

「ね? 皆もライン先生の事、許してあげるよね!」

「……皆? わっ!?」

「「「「許してあげる〜!!」」」」

 

 マーガレットが声をかけると、階段の陰からわらわらと十数人単位の女の子達が上がってきた。

 ここに来てたの、マーガレットだけじゃなかったのか。……この人数の接近にも気が付けないくらい心乱れてたんだな俺……

 見聞色は冷静でないと上手く使えないのだ。

 

「私、ライン先生の授業! とっても面白かったし、もっと聞きたいと思ったよ!」

「私も! 男と女の恋愛物語とか、聞いてるだけでドキドキしちゃったもん!」

「もっと色んなお話聞かせてくれるなら、ぱふぱふくらいいくらでもやってあげるよ〜!」

「というか私達の方も先生の事ベタベタ触ってたしね!」

「お互い様、お互い様!」

「だからそんなに気にしないで先生」

「元気出して、ライン先生!」

 

「……」

 

 ああ……

 

 今の俺にこれは効く……

 

 女の子達の優しさに、またもや涙が(あふ)れてしまう。自然とぽろぽろ(こぼ)れてしまう。

 今日の俺、すっごい泣き虫な……

 

「ごめん、ごめんな……ありがと、ありがとう……う、うぅ……ぐす……」

「ほら、泣かないで、元気出して先生。ぱふぱふ〜」

「……もうぱふぱふはいいよ。俺はもう、セクハラしないと決めた。今決めた……」

「私達がやりたいの。だからセクハラじゃない。ほぉら、ぱふぱふ〜」

「ううぅぅ……………………柔らかいぃぃ……」

 

 

 ──nowloading──

 

 

 30分後。

 女の子達の献身あって、俺は見事に復活した。

 

「ふへへへ! 俺! 完全復活!! ふへへへへへへ〜!」

 

 やはり落ち込んだ時は人の胸の中で泣くとスッキリしますな。(意味深)

 

「うんうん。それでこそライン先生だよ」

 

 マーガレットの胸の上に胡座をかくように座って、ビシッとポーズを取ると、女の子達は皆パチパチと拍手してくれた。

 

「いや〜、しかし……自分自身を振り返る良い機会だったかもしれんね。これからは見ず知らずの人にセクハラするのはやめておこう」

「そうだね。私も全部脱がされた時は流石にちょっと恥ずかしかったし」

「モテる男になる為には、体だけじゃなく……心だってデカデカになる必要がある。そういう事だなっ! 身も心もデッケェ男に俺はなるぞ!」

 

 頑張れ〜と、引き続きパチパチ拍手してくれる女の子達。

 良い奴らだなぁ、本当に。

 

「……ふへへ……良い奴ら……か」

 

 不意に、ドレスローザの皆の事を思い出した。

 決意を新たにした今の俺を見たら、故郷の皆はどう思うだろ?

 

 レオとマンシェリーは何の疑いも抱く事なく、頑張れ〜と言ってくれるだろう。

 スカーレットは苦笑いして、レベッカは「どーいう意味〜?」と聞いてくるかな。

 モネは「どうせ三日坊主で終わるでしょうけど」とかクールに言ってきそう。

 ヴィオラは……どうだろ。どういう反応するかな? 全然分かんない……

 分かんないけど、たぶん笑ってくれる。あいつはそういう女だ。

 

「ふへへへ……」

「ライン先生、どうしたの? 顔がニヤけてるよ」

「いやちょっとな、好きな奴らの事思い出してた」

 

 今のドレスローザは七武海の一角、ドフラミンゴが王様をやってるらしいが、皆、平和に暮らしてくれていたらそれでいい。

 ハンコックだって七武海の一角で、ここの島の女王様だが、なんとか上手いことやってるっぽいし、きっと大丈夫だ。

 そうに決まってる。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 そんなこんなで元気を取り戻した俺。

 元気になったら腹が減る。腹の虫がグ〜と鳴った。

 

「そういえば宴の最中だったわね」

「私達ライン先生を呼びに来たんだよ」

「ほら、元気になったんだったら行こ! 行こ!」

「美味しい料理、いっぱいあるよ! 先生!」

「分かった分かった」

 

 女の子達に連れられて、見張り場を降りていき、ルフィ達が今も騒いでいるであろう食堂へと向かっていく。

 すると食堂では……

 

「…………」

「ルフィ……気をしっかり持つのじゃ……」

 

 非常に焦った様子で燃えカスのようなビブルカードを見つめるルフィと、そんなルフィを心配そうに見つめるハンコックと、そんなハンコックを心配そうに見つめるハンコックの妹二人と、そんな全員を心配そうに見つめるニョン婆がいた。

 えっと、これどーゆー状況? どう見ても宴しているようには見えないけど。

 

「お〜い、ルフィ。食事はもういいのか〜?」

「ライン! それどころじゃねェよ! 大変なんだ! おれ、ちょっとインペルダウンまで行かなきゃならねェ!!」

「は?」

 

 インペルダウンまで行かなきゃ? ……いきなり何を言っているんだこいつは。

 インペルダウンてのは確か、逮捕された海賊達を閉じ込めておく為の大監獄の名前だ。流石に知ってる。

 俺達が向かう先はシャボンディ諸島のはずだろ? それなのにインペルダウンに行きたいって……

 

「…………自首でもするん?」

「ちげーよ!! エースが処刑されちまうんだよ!! だから海軍と白ひげが戦争する前に、助けにいかなきゃ!!」

「はあ!?」

 

 どゆこっちゃねん。

 

「それじゃあ分からんじゃろう。仕方ニョい。わしが説明してやろうかニョ」

「あ、はい。お願いします」

 

 分かりにくい説明を分かりやすくしてくれる事に定評のあるニョン婆が前に出てきたので説明を聞いていく。

 

「──という訳じゃ」

「なるほどなぁ……」

 

 要するに、ルフィの兄ちゃんであるポートガス・D・エースが海軍に捕まっちゃって、インペルダウンに投獄されたから、それを脱獄させに行きたいって話だ。

 流石は海賊。やべーこと考えるな、こいつら。

 

 世界最強の海賊として知られる白ひげ海賊団。

 その2番隊隊長であり、ルフィの兄でもある“火拳のエース”が、“黒ひげ”とかいう海賊とガチバトル。

 その結果、黒ひげが勝者となり、エースは敗北者

 黒ひげはそのまま七武海となり、エースはインペルダウンに送られた。

 んで、今からちょうど六日後にエースの公開処刑が行われるんだと。

 

「白ひげは仲間の死を決して許さぬ男。エースニョ身柄を取り戻す為、かならずや海軍と戦争になる」

「はぁ……その戦争が起こる前に、ルフィはこっそりエースを助け出したいと……」

「そういうことだ!」

 

 ニョン婆が説明を終え、ルフィがフンッと鼻を膨らませた。

 

「いや出来る訳ねーだろ!? 何考えてんだルフィ!?」

 

 当然俺は否定する。

 プリズンブレイクもビックリな無謀計画である。

 

「できるかできないかじゃねェ! おれはエースを助けに行くんだ!!」

「…………いや、物理的に無理だろ。どうやってインペルダウンまで行くんだよ……六日しかないのに……」

 

 まあルフィの兄を助けたいっていう気持ちは痛い程分かるけど……

 俺だって、(エスネ)が同じ目に合っていたら絶対助けに行くだろうし。

 そんな風に考えていたら、またもやハンコックが俺に突っかかってきた。

 

「ふん、おぬしのような薄情な男に、兄を助けたいというルフィの尊い気持ちが分かるはずもあるまい」

「むっ……」

 

 義妹がいる身として、今の発言には流石にムカッときた。

 言い返そうと思ったら、先にルフィの方が口を開いた。

 

「ラインは薄情なやつじゃねェぞ! シャボンディ諸島でおれと仲間たちを、黄猿から助けてくれた!」

「なに……? 黄猿……じゃと?」

 

 ハンコックが目を細める。

 

「それにラインはエスネを助ける為にマリージョアまで乗り込んでいったやつだぞ!」

 

 あー、そういやルフィには話したなー。マリージョアでのドタバタ騒ぎ。

 クマえもんの肉球ビンタで飛ばされてる間、ヒマだったから色々話したのだ。

 

「ま、マリージョアじゃと!? 乗り込んだ? どういう事じゃ!!」

 

 目を細めていたハンコックが、今度は目を見開いて俺に詰め寄ってきた。

 

「そのまんまだよ。エスネっていう、俺の義理の妹が天竜人に攫われちまったから、赤い土の大陸(レッドライン)の上まで飛んでいって助けにいった」

「飛んでいって……? どうやって」

「こうやって」

 

 俺はしっぽコプターで飛び上がる。

 

「……そ、それで赤い土の大陸(レッドライン)を……超えたと言うのか……ふぅむ……マリージョアに乗り込んで、その後どうなったのじゃ? い、妹とやらは……?」

「助けたに決まってんだろ。まあ他にも、捕まってた奴隷達を助けたり、青キジと戦ったり……なんやかんやあったけど、全員無事生還。そんな感じ」

「ど、どど、奴隷を助けたじゃと!!?」

「だからそう言ってるだろ。5〜60人くらいいたかな? 全員生きてるよ」

「ラインはシャボンディ諸島でも奴隷たちたくさん助けてたよな」

「────ッ!!!」

 

 まるでギャグ漫画世界の住民かのような驚き顔を披露するハンコック。

 世界一の美人がそんな顔すんじゃねぇよ。

 

「なな、何を言うておる……! そ、そそ、そのような大それた真似が、でで、出来る訳が……!!」

「いんニャ、蛇姫よ。おそらくその者……“不可視の怪盗”が奴隷を逃したというニョは真実じゃ」

「ニョン婆」

「これを見るニョじゃ!」

 

 どこからともなく新聞を取り出したニョン婆。

 その新聞をハンコックの前へと掲げる。俺も気になったのでハンコックの肩に乗って覗き込む。すると……

 

 

 ──シャボンディの悪夢再来!! 不可視の怪盗、天竜人を爆殺!? 海軍の最高戦力、大将黄猿、完全敗北を認める!!──

 

 

「「ぶっ!?!?」」

 

 一面に書かれたその見出しに、俺とハンコックはほぼ同時に吹き出した。

 

「なななな!? なんじゃこの記事ィ!? どういう事じゃ!? 小人!!」

「どど、どういう事って言われても……」

 

 俺はそのまま新聞を読み進める。

 新聞に書かれていた内容は、先日起こった事件について。

 微妙に嘘と事実が織り混ぜられた内容だった。

 

 麦わら海賊団、ハートの海賊団、キッド海賊団がシャボンディ諸島で大暴れ。これは真実。

 麦わらのルフィが天竜人を殴り飛ばす。これも真実。

 不可視の怪盗が天竜人を爆殺!? これは真実じゃない!! あれはウソップが原因だろ! そもそも天竜人死んでないし! 見聞色で見てたけど、少なくともあの時点ではちゃんと生きてた。悪くても意識不明の重傷ってとこだった。

 爆殺!? の『!?』の部分に悪意を感じる。誤解させる気満々の書き方だ。

 

「おのれ、マスゴミが……!」

 

 そんでもって俺と黄猿が戦った事もちゃんと記事に乗っている。

 麦わらの一味を逮捕しようとした黄猿。それにより麦わらの一味はほぼ壊滅。後一歩のところで捕まえられるといったところで、不可視の怪盗が乱入。

 

 不可視の怪盗の大暴れにより、黄猿は部下を全滅させられ、さらには麦わらの一味まで逃されてしまうという大失態を犯した。

 

 これについて、黄猿へのインタビュー記事が乗っていた。

 それによると黄猿は……

 

『ン〜……不可視の怪盗には、見事してやられちゃったねェ〜。実はわっしは6年前にもこいつに大怪我を負わされてるんだよ〜。つまり6年前も今回も、わっしの完全敗北ってこと。お〜い、見てるかい? 不可視の怪盗〜。素直に負けを認めたよ〜』

 

 と答えたんだって。

 

 いや、いやいやいやいや!

 確かにあの時、黄猿は「この状況から、見事逃げ出す事が出来たなら、わっしは素直に負けを認めてやろうじゃないか」って言ってたよ!?

 だからって新聞使って大々的に敗北宣言するんじゃねぇよ!! 実際はクマえもんビンタでなんとか助かったって状況だったのに、これじゃあ俺が黄猿をボコボコに打ち負かしたバケモンみたいな感じに思われるじゃん!

 

「…………」

 

 ほら、ハンコックも引いてるし……

 てか腰を抜かしてる。「天竜人を爆殺……奴隷解放……黄猿を倒した……な、なんということじゃ……」とかぶつぶつ言ってる。なんか怖い。

 

 ニョン婆がため息をつきながら新聞をしまった。

 

「はぁ……火拳のエースの公開処刑を前に、よくもまあ、こニョような大それた事件を起こしたもニョじゃ。白ひげ海賊団との戦争を前に、海軍の最高戦力に負けを認めさせるニャど、海軍全体の士気にかかわる問題じゃ。……懸賞金が跳ね上がるニョも無理はない」

「は? 懸賞金? 跳ね上がる? まさか……俺の?」

「そうじゃ。まだ見ておらニュのか? ほれ、これじゃ」

 

 そう言ってニョン婆が1枚の手配書を取り出した。

 見ると、そこには……

 

 

 WANTED

 “不可視の怪盗・ライン”

 懸賞金・1,000,000,000ベリー。

 

 

「じゅうおおおーーくぅうッ!!?」

 

 俺はひっくり返った。

 10億ベリーって、いくらなんでも跳ね上がり過ぎだろ!? 俺、別にどっかの海賊団に所属してる訳でもないのに!!

 

「…………あの……小人……いや、ライン。さっきは色々と言い過ぎた……すまん……」

 

 なんかハンコックが謝ってきてるけど、今はもうそのフェーズじゃねぇから!!

 10億ベリーのショックの方が上回ってちゃってるから!!

 おい、ルフィ。羨ましそうにすんな。これは不名誉な事なんだぞ。

 自分の手配書を手に持ち、俺はガックリと項垂れた。

 

 

 

 




ハンコックが前回で得た情報。

・ルフィ、天竜人を殴り飛ばす。
・ルフィ、背中の紋章を見ても蔑まない。
・ライン、民たちに嘘のセクハラ挨拶を教える。


ハンコックが今回で得た情報。

・ライン、妹の為にマリージョアを襲撃。
・ライン、天竜人を爆殺。
・ライン、大勢の奴隷を解放。
・ライン、黄猿に勝つ。
・ライン、ルフィを救う。
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