デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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小さくて大きい悩み

 ヴィオラ、モネと遊んだ後、ドレスローザ王宮から抜け出した俺とレオは、トンタッタ王国へ帰る為にドレスローザ東に位置する花畑へとやって来ていた。

 この場所にドレスローザからグリーンビットまでを繋ぐ秘密の地下通路があるからだ。

 

「うん。それにしても花畑……この場所はいつ見てもすんばらしい眺めだな!」

 

 見渡す限りの花! 花! 花!

 この広大なひまわり畑は、ドレスローザ1美しい場所と言っても過言じゃないだろう。

 何を隠そう、このひまわり畑は俺達小人(トンタッタ)族が人知れず育て上げ管理している土地なのだ。 

 トンタッタは植物を育てるのがとても上手い。もちろん俺も例外ではない。

 

「……いつもサボってばかりの癖に、こういう時だけ我が物顔れすね」

「うるせーぞレオ! あの辺のひまわりは俺が育てたやつだろーが。ほら、あの辺とかも!」

 

 そう言って俺が指差した場所には、一軒の小さな家が立っていた。

 この広大な花畑に似つかわしくない……いや、ある意味似つかわしい可愛らしい家が。

 

「……ついでに寄っていくか!」

「え? ちょっ! ラインー!」

 

 レオが止めようと手を伸ばしてくるが、甘い! そんな短い腕、届きはしまい!

 俺は小屋までチャカチャカ走っていき、ノックも無しに中へと突入した。

 

「おーっす! ライン様のご登場だぞー!」

「あ、ラインだー!」

 

 家の中に入ると、そこにはピンク色の髪の毛をした幼い少女が、木彫りのミニカー(前に俺が作ってやったやつ)で遊んでいた。

 彼女の名はレベッカ。訳あって両親と共に世間から隠れてこの場所で暮らしている、6才の女の子である。

 

「あらライン。また遊びに来てくれたの?」

 

 そしてそんなレベッカの背後、台所にて立つ女。ピンク色の髪の毛を三つ編みポニーテールにしたボンキュッボンの美人さん。彼女の名はスカーレット。

 レベッカの母親であり、俺より10歳年上の25歳。

 何を隠そう、今世の俺の“初恋”の相手だったりする。……見事にフラレたけどな!

 

「ふへへ、まあ通りかかったからな。それよりもスカーレット……」

「ん?」

「また少し胸大きくなったか?」

「えっ」

「成長期は終わってるはずなのに、不思議だな〜? これは直接触って、確かめさせてもらわな……い゛ヴェッ!!?」

 

 手をワキワキさせながらゆっくりスカーレットに近付いていくと、次の瞬間、俺の脳天に鋭いゲンコツの一撃が炸裂した。

 

「痛ってぇーッ!! 何だぁ!? キュロス、お前か! 何すんだよ!」

「それはこっちの台詞だ! それ以上人の妻に近付くな! ライン!」

「んだとコラァ? 後ろ髪、モゲモゲの癖に!」

「そっちこそ、チリチリ頭だろう!」

「なんだと!?」

「なにがだ!」

「「ぐぬぬぬぬ〜」」

 

 バチバチと俺にメンチを切ってくるこのモゲモゲ男の名はキュロス。えーっと、34歳……だったっけか? ロリコンめ。

 スカーレットを奪い、結婚し、妊娠までさせてしまった、世界一のドスケベあんぽんたんモゲモゲあほあほ剣闘士である。

 身長がアホみたいにでかいのがまた鼻に付く。縮めばいいのに。ばーか。

 

「はいはい、二人とも。顔合わせる度に喧嘩しないの」

「そうれす! スカーレット様の言う通り、二人とも仲良くするれす! ……というかライン! ここの三人の事は静かに見守ってるだけにしようって、皆でそう決めたじゃないれすか。何勝手に侵入してるんれす!」

「ふ〜んだっ!」

 

 いつの間にか家の中に入って来ていたレオがぷんぷん怒りながら俺に詰め寄ってきた。

 だからぷいっと顔を背ける。俺はこいつらがこの場所で暮らしている事、まだ認めていないんだ。

 

「いいのよレオ。ラインは私達の事を心配してくれてるだけなんだから。ね?」

「……心配してるのはスカーレットとレベッカだけだ。このモゲモゲ男の事はどーでもいい」

「もう、素直じゃないわね」

 

 俺の初恋相手、スカーレットの正体は、実はこの国の第一王女である。

 つまりはヴィオラの実の姉である。髪色は全然違うけど、おっぱい辺りに遺伝子の繋がりを感じ……おっと話がそれた。

 つまり、スカーレット達親子が王宮を出て、この花畑で慎ましく暮らしている理由とは、スカーレットが王女をやめてこのモゲモゲ男と駆け落ちしてしまったからなのだ。

 

 ……まあ駆け落ちと言っても、王様も皆も、この二人の結婚を事実上は認めてるんだけど。ぐぬぬぅ……

 まあつまり、どういう事かというと……

 王宮での優雅な暮らしを捨てて、こいつらはこの場所で愛に生きる事を選んだのである。

 羨ましーなーちくしょーめ!

 

「えへへ、ライン! 一緒に遊ぼ!」

 

 ゲシゲシとキュロスの足を蹴っていると、ミニカーを走らせたレベッカが近付いてきた。

 うーむ、良い子だ。ロリ過ぎて恋愛対象には入らないが、俺はこの子を姪っ子みたいな感覚で可愛がっている。子供っていいなー。俺も欲しいよ。

 

「レベッカ〜。お前は良い子だなー。将来大きくなって、ボンキュッボンなお姉さんになった時は、俺と結婚してくれよ〜?」

「おい……! 何親の目の前で、堂々と娘を口説いているんだ……!」

 

 うるせーぞモゲモゲ男。ちょっとした冗談だろが。本気で口説いてはいねーよ。

 レベッカが初めて喋った言葉が『おとーさま』じゃなくて『らいん』だったからって嫉妬しやがって。ぷぷー。

 

「えー? でも、おかあさまが、にんげんはこびととはケッコンはできないって、いっていたよー?」

「…………」

 

 純粋な表情、純粋な笑顔で、レベッカはへらりとそう言ってのけた。

 

「………………」

「ライン?」

「あ、いや、うん。ふへへ、いやぁ……その通りだな! 一本取られたぜ! ははっ! 人間と小人じゃあ、恋人関係は無理だよな!」

「だっておおきさがちがいすぎるもん!」

「だよな! ふへへへへっ!」

 

 ヘラヘラ笑いながらレベッカとハイタッチする。6才の子供が相手だってのに、それでもしゃがんでもらわないと、俺の手は届かない。

 

「……」

 

 チラリと視線を横に向けてみると……スカーレットも、キュロスも、レオも……なんとも言えない表情で俺の事を見つめていた。

 ……なんだよ。その顔は。やめろよ……

 

 

 

 ……

 

 

 

 ひとしきりレベッカと遊んだ後、俺とレオは花畑の隠し通路を通り、グリーンビットにあるトンタッタ王国へと帰還する。

 通路を移動している間、レオはずっと無言だった。

 

「……」

 

 変に気を回されてる。しまったな……こんな変な空気を作るつもりはなかったのに。

 

 なんとなく気まずくって、手持ち無沙汰で、俺は背負っていた巾着袋を前へと回し、それをギュッと抱きしめる。

 この中には、ヴィオラ、モネ、そして街の人達から奪った戦利品であるパンツらが入っている。

 

(何やってんだろ……俺……)

 

 俺は小人。

 人間とは恋愛する事の出来ない種族。

 その寂しさを、俺は下着を盗むというサイテーなやり口で埋めてしまっている……

 何が合法的に下着を盗める国だ。アホか俺は……

 

 ヴィオラやモネと遊んでいた時の事を思い出す。

 ほっぺたをつつかれたり、わざわざしゃがんでもらってからハイタッチをしたりと……

 あの二人からも、どう考えても、男性扱いはされてなかったよな。

 どちらかといえばぬいぐるみ扱い。前世から何も変わっちゃいない。

 

「……」

 

 もしも、もしも俺の体がもっとデカかったなら……

 もっと高身長であったなら……

 そしたらちゃんと男として見てもらえたのかな?

 俺も普通に恋愛出来たのかな……?

 

「…ぅ…ぐす……」

「………」

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 地下通路を通って、トンタッタ王国へと帰ってきた俺とレオ。

 するとそこで待っていたのは、俺とレオにとってはもう一人の幼馴染、トンタッタ王国の姫君、マンシェリー姫だった。

 

「もう! 二人とも遅いれすよ!」

「「げっ」」

「げっとは何れすか! げっとは!」

 

 我らが小人(トンタッタ)族のお姫様は、とぉ〜っても優しい事で有名である。

 しかしレオいわく、憎らしくてワガママで意地悪で気まぐれで怒りん坊なお姫様だそうだ。

 いや、まあそれはどう見てもただのツンデレであるのだが……

 

 マンシェリーはレオの事が好きなのである。

 だからレオだけにはワガママに甘えてしまっている……それだけの話だ。

 だが当のレオはあまりの鈍さゆえ、姫からの好意に全く気付いていないのだ。まったく子供だね。笑える。

 

 ……ちなみに、マンシェリーは俺に対しても当たりが強い。これは俺もマンシェリーに好かれているから……とかでは決してなく、ただ単に雑に扱われているだけである。

 幼馴染あるある。片方は惚れられて、片方は雑に扱われる。俺はそれの後者なのだ。

 まあ俺もマンシェリーの事はただの幼馴染、友達としか思ってないから別にいいんだけどね。

 だけど、一つ問題があって、それは……

 

「レオ! 姫である私を待たせるなんてどういうつもりれすか!」

「えっ!? ま、待たせるも何も……僕らは姫とは別に待ち合わせしてたりしてないれすよね?」

「私が待ってたと言ったら、それは待ち合わせをしてたって事なの! だからレオは、誰よりも私を優先しないといけないの!」

「出たれすよ! 姫のワガママ! 誰よりも自分を優先しろとか、自分勝手にも程があるれす!」

「カチーン! レオのバカ〜!」

「なっ!? バカって言う方がバカなんれすよ〜!」

 

 こいつらの、この無自覚イチャイチャを見せられるのが……最高にウザいんだよ!

 

(まったく……一国の姫に惚れられてるってのに、それに気付かないとはレオも馬鹿なヤツだ)

 

 しかしまぁ、今はまだ自覚はないようだが、レオもマンシェリーの事は憎からず思っているはずだ。だから何だかんだ言いながらもずっと近くにいる。

 この先、10年以上二人の関係がこのままって事は恐らくないだろ。

 きっと近い将来、二人は恋人関係となる。

 ……そうなると、トンタッタ幼馴染グループの中で俺だけが独り身となるのか。ハブられちゃうなぁ……

 

「………」

「? ねぇレオ。ラインはどうしたのかしら? 何だか元気がないように見えるけど……」

「え……えっと……それは……れすね……」

「ん? ふへへっ! 別に元気ねー事ねーよ。人間達から色々パクって来るのに、ちょっと疲れただけだ」

「そうだったんれすね。お疲れ様れす」

 

 どんな嘘でもすぐに信じてくれる。こういう時、トンタッタという種族が仲間で良かったと本気で思えるな。

 

「今日は人間達から一体何を貰ってきたんれすか? レオ」

「え、えっと……僕は、時計と上着と本と綺麗な石ころれすね」

「流石はレオね♡ それじゃあこの綺麗な石は貰っておきます♡」

「出た! 姫のワガママ!!」

「レオの物は私の物♡ 私の物も私の物よ♡」

 

 どこの剛田武だよ。うちの姫さんは。

 

「ちなみにラインは何を貰ってきたんれすか?」

「パンツとブラジャーと網タイツ」

「とあーっ!!」

 

 殴られた。

 顔面パンチ。やはりジャイアンか。

 

「これは没収! ビアンさん達の部隊に、ちゃんと元の持ち主に返してもらってくるれす!」

「そ、そんな! 俺の生き甲斐が……」

「ラインはもっと別の生き甲斐を見つけなさい!」

 

 下着の山が入った巾着袋を、マンシェリーに奪われる。くそっ。

 マンシェリーはツーンツーンとした顔をしながら、今度はレオの荷物を漁り始めた。

 

「ところで、レオが持ち帰ってきたこの本は、一体何の本れすか?」

「タイトルは見てないから何の本かは知らないれす」

「知らないで盗ってきたのかよ!? 家計簿とかだったらどうするよ。マンシェリー、その本のタイトルは?」

「え〜っとれすね、この本のタイトルは……“悪魔の実”大図鑑……」

「!!」

 

 その本との出会いが、この先の俺の人生を大きく動かす事になろうとは……

 今の俺には想像すらできていなかった。

 

 




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