デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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インペルダウンのんびり珍道中

 監視電伝虫ことデンスケに跨がり、レベル2へと出発した俺は、移動しながらデンスケの殻についている外付けの機械をイジっていた。

 

「ふんふ〜ん♪」

 

 カチャカチャ

 

「よし、これで取れた」

 

 ポロリ……

 

 電伝虫っていうのは、要するに人間が色んなパーツを装着させて電話にしたりビデオカメラにしたりしているのだ。

 そのパーツさえ外してしまえば、こいつはもう監視カメラとしての役割を果たす事は出来ないという訳である。

 

「ふへへ、今このフロアではルフィ達がドタバタ暴れまわってるからな。電伝虫の一匹や二匹使えなくなってても不思議には思われんだろ」

『ジーー……』

 

 パーツを外され、野生状態となったデンスケは、嬉しそうにも不服そうにもせずに、真顔で俺へと視線を向けてきた。

 

「うんうん。これでデンスケに顔を見られても俺の情報は看守達には送られない」

『ジ〜〜』

「どうだ? デンスケ。俺の顔を見た感想は? なかなかのナイスガイだろ!」

『ハァ……』

 

 こいつ、ため息つきやがった……!

 どうやら軟体動物には人の顔の良し悪しは理解出来ないみたいだな。

 

 ……そんなこんなでデンスケに乗っかって進んでいく事、数十分……

 

「……」

『……』

 

 最初の地点からだいたい数百メートルくらいは進んだ……かな?

 う〜ん、電伝虫の背中に乗って移動するって発想自体は、安全だし、ナイスなアイディアだったんだけど、こいつカタツムリだからか進むスピードがクッソ遅いな。

 

「……なあデンスケ〜。お前もうちょっと早く進めないの?」

『ジーー! ジッ! ジーー!』

「?? 乗せてやってんだから文句言うなってか?」

『ジィ!』

「しゃあねぇなぁ……」

 

 まあ慌てて行動して看守に見つかってしまうよりかはいいか。

 ルフィ達は全速力で先に進んで行ってるみたいだけど、俺はゆっくり確実に進んで行こうと思う。

 ウサギとカメでもカメさんの方が先にゴールしてたしな。急がば回れである。

 

「……しっかし、暇だな〜。暇だからデンスケ、話し相手になってくれよ」

『ジ?』

「デンスケはなんでインペルダウンの見張りなんてやってんの? 給料とか出てんの?」

『ジー、ジージー、ジィジ〜、ジー』

「うんうん」

『ジジジージ・ジージジ』

「なるほど……ははは、何言ってっか全然分かんねーや!」

『ジィ゛イ゛ーーッ!!』

「怒るな怒るな」

 

 流石に電伝虫語は理解できない。

 仕方ないので後ろからデンスケのほっぺたをぽにょぽにょ触ってなだめてやる。

 カタツムリだからねとねとしているのかと思いきや、意外とその感触はふにゃふにゃだった。

 具の少ないおまんじゅうみたいな触り心地である。

 

 

 

 

 

 

「……ここがレベル2へ下りる階段か?」

『ニン』

 

 デンスケに乗って進む事およそ30分。

 俺達は下へとおりる階段のある場所までたどり着いていた。

 

 今いるレベル1は紅蓮地獄。

 バギーいわく、ここのフロアにはトゲトゲの草や木やらが生えてるエリアがあって、囚人達はそこで地獄の苦しみを味わっているらしい……が、わざわざそんな危険なとこを通っていく必要はない。

 職員用の階段を使えば、安全かつ楽ちんにレベル2へとおりて行けるからだ。

 

「よーし、それじゃこのまま行くぞ! デンスケ!」

『ジーィ〜』

 

 俺達は小さいから鉄格子の隙間も通り抜けられる。鉄格子を抜け、扉を開けて、そのまま階段の壁をにゅるにゅると進んでいく。

 途中、何人かの看守達が俺達のすぐ真横を駆け抜けて行ったが、案の定俺達を気にかける者は誰一人としていなかった。

 うん。やっぱデンスケを仲間にして正解だったわ。こいつと一緒にいるだけで誰にも気にされない。

 ドラえもんでいう、石ころぼうしみたいなヤツだ。

 

 そんな感じで、何のアクシデントもないまま俺達は階段の壁を下りていき、レベル2がある扉の前までやって来た。

 

「この扉の先がレベル2……」

 

 バギーいわく、魔界の猛獣達がウロウロしてる危険な場所らしいが……しかし俺達、このフロアにはそもそも入る必要はないのである。

 何故ならレベル1とレベル2を結ぶ階段は、そのままレベル3にも直通していたからだ。

 

「ふへへ、ラッキー! このままレベル3へGOだ!」

『ニン』

 

 デンスケはコクリと頷いてまたうねうねと進み始めた。

 レベル2は完全無視でオーケー。いや〜、楽だね。

 ……そういやルフィはどんな感じで進んでいってるんだろう?

 まさかとは思うけど、紅蓮地獄や猛獣地獄のど真ん中を、馬鹿正直に突っ込んでいってたりはしてないよな? 流石にそんな無謀な事は……

 

「ぎゃ〜!! 落ちるゥ〜〜!!」

「スフィンクスの野郎! フロアの床をブチ抜きやがった〜〜!!」

「この下はレベル3だガネ〜〜!」

 

 ……なんかレベル2への扉の向こう側から、不穏な声が聞こえてきたんだけど……

 まあ、上手いこと乗り越えてくれてる事を祈ろう。捕まっちゃってたら、その時回収してやればいい。

 見聞色で見た感じ、ブルゴリも看守達も手強そうに見えなかったし、大丈夫だろ。

 

「仮にも3億の賞金首だしな、そう簡単にゃ捕まらんでしょ。案外ルフィ一人でもスルッとエース助けちゃうかもな」

『ジ〜〜ジ〜〜』

「うんうん。俺達はあくまでルフィが失敗した時用の保険として行動しよう」

『ニ〜』

 

 目と目の間の部分。たぶん……頭? をよしよしと撫でてやると、デンスケはくすぐったそうに身震いした。

 

 そんな感じでうねうね時間をかけてたどり着きたるは、レベル3、飢餓地獄。

 このフロアは……なんていうか……本当に建物の中なのかと疑ってしまうような階層だな。

 端的に言うとフロア全体が“砂漠”なのである。

 一面砂だらけで、檻の中に閉じ込められている囚人達は皆干からびかけててカラッカラ。ミイラ寸前って感じ。

 

「怖ぁ……てかあっついなぁ、このフロア……どうやって管理してんだよ……」

『ジーー』

「デンスケはこの暑さ平気なの?」

『ニ〜』

「タフだねぇ……」

 

 辺りを見渡してみると、このフロアにもデンスケ以外の電伝虫が何匹か配置されている。

 どうやら電伝虫という生き物はある程度の暑さには強いらしい。

 

「大丈夫ならいいや。それじゃあデンスケ、レベル4へ行く為の階段……場所分かる?」

『ニン』

 

 レベル1、2、3を結ぶ階段は全部繋がっていたが、どうやらレベル4への階段は別の場所にある模様。

 俺にはその階段がどこにあるのかさっぱり分からないが、インペルダウン育ちのデンスケには分かるらしい。

 

「よーし、それじゃあ同じように連れてってくれ!」

『ニ〜〜!』

 

 にゅるにゅると移動を開始するデンスケ。マジで有能だなこいつ。暑さにも強いし。

 

「ふーーっうぅ……にしてもあちぃなぁ……」

 

 ちなみに俺は暑いのは苦手だ。汗だくの水着美女とかが近くにいれば全然耐えられるのだが、残念ながらそんなものはここにはいない……

 仕方ないので尻尾を回してあおいでみるも、空気が熱いからあまり意味はなかった。

 

 

 ……

 

 

 

「……あ゛〜づぃぃ……喉かわいたァ゛……」

 

 あれから、2〜30分くらい……経ったかな?

 俺とデンスケはまだレベル3内をうねうねしていた。

 歩みが遅いから仕方ないんだけど……このフロアに長時間いるのはなかなかにしんどい。

 つか広いな、ここ……

 

「う゛〜……ダメだぁ……このままだと脱水症状なる……一回休憩しようか、デンスケ」

『ジーィイ?』

 

 すぐ近くの檻の影のところ……

 他の監視電伝虫の目が無く、休憩するにはちょうどいい場所があったので、俺はそこにレジャーシート(普通のハンカチ)を敷いて腰をおろした。

 

「ふぅ……どっこらしょ。一休み〜」

『ジ〜』

 

 被っていた帽子を取り、間のところをパカッと開ける。

 

「ふへへへ、こんな時の為に、持ってきてたんだ〜」

 

 前にも言ったが、俺の被ってる帽子は小物入れ兼用なのである。財布やら着替えなんかを入れてあるのだ。

 そして今回、インペルダウンへの潜入任務の為に、俺は軽食やら水筒なんかを持参していた。

 女ヶ島を出る時にマーガレットが持たせてくれたのだ。

 

「うんうん。ちょっち萎びかけてるけど、まだ食べれるな」

 

 帽子の中からリンゴを取り出し、俺はそれをパカッと半分に割った。

 

「ほれ、デンスケ。お前のぶんだ」

『………………ジ?』

「なにポカンとしてんの? はんぶんこだよ。食うだろ?」

『ジ、ジ〜〜♪』

 

 デンスケは嬉しそうにリンゴを食べ始めた。うんうん。美味いよな、リンゴ。

 俺もジャクジャクとリンゴを齧り、水筒の中の水をごくごく飲む。

 

「……ぷはぁ! ただの水なのにめっちゃ美味い! めっちゃ喉乾いてたからな〜、デンスケも飲むか?」

『ジーー♪』

 

 くぴくぴと喉を潤すデンスケの姿は、ちょっとだけかわいいと思った。

 そんな感じで、デンスケと一緒にブレイクタイムと洒落込んでいた時だった。

 

「シャ〜ハッハッハ!」

 

 俺達のすぐ近くにあった檻の中から、痛快そうな笑い声が聞こえてきたのである。

 

「この大監獄インペルダウンの飢餓地獄で、まさかのんびりピクニックを楽しもうって奴がいるなんてなァ!」

「……ふへ?」

「なんで檻の外にいるのかは知らねェが、流石だぜ! 不可視の怪盗さんよォ! おれが憧れた男なだけはある! シャ〜ハッハッハ!」

「……?? えーっと……誰?」

 

 独特な笑い声をあげながら話しかけてきたのは、身長2メートル半くらいの、肌が青く、すんごいギザギザで長い鼻をした人間……いや、魚人であった。

 このクソ暑い中、めちゃくちゃしんどいだろうに、何故かハイテンション。俺の姿を見てニッコニコ。何だこいつ?

 

「おれの名はアーロン。“ノコギリのアーロン”だ! まさかこんな所で会えるとはなぁ、“不可視の怪盗”ライン!」

「のこぎりのあーろん? なんで俺の名前知ってんの?」

「シャハハ! よーく知ってるぜ! あんたはおれのヒーローだからな!」

「はあ?」

 

 よく分からん。マジでよく分からん。

 いつの間に俺はこのギザッ鼻のオールマイトになっていたんだ?

 う〜ん……

 てかあらためて見ても思い切った鼻してるなぁ……

 ウソップとかバギーも変わった鼻してたけど、こいつのはその比じゃないわ。ギザギザだし、俺の身長くらい長いし。

 そんな鼻じゃあ女の子とキス出来ないだろう。かわいそうに……

 

「……なんだよ? その哀れみの目は? ハッ、確かに今のおれァ情けねェよ。人間のガキなんぞに負けて、最弱の海を追い出され……その後、あんたや大アニキの真似をしようとして、失敗してこんなところにブチ込まれてるんだからな!」

 

 俺からの哀れみの目を、なんか変な方向に解釈してしまったアーロン。

 ガツンと悔しそうに頭を地面に叩きつけている。

 

「いや、待て待て! 勝手に落ち込むな! 何の話をしてるのかさっぱりだよ! お前は俺の事知ってるかもしれないけど、俺はお前の事なんにも知らないんだぞ?!」

「あァ……? そうか……悪かった……じゃあ聞いてくれるか? ……おれの哀れな魚人生を……」

「ぎょじんせい……」

 

 …………あれ? これ聞かなきゃいけない流れ?

 

『ニ〜〜』

 

 見るとデンスケはすっかり聞き入るポーズだ。

 仕方ないので俺も足を崩して座り直した。そんな俺を見て、アーロンはぽつりぽつりと自身の魚人生とやらを語り始めた……

 

 

 

 




次話、アーロン視点。
シャハハハハハハハハ〜〜ッ!!
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