デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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VSマゼラン

 レベル4、焦熱地獄。

 一言で説明するなら、このフロアはクソでっかい鉄釜で出来ている。釜の中身はグツグツと煮え滾る血の池、そして炎の海。

 そこから立ち上がる蒸気やら熱気のせいで、立ってるだけでも辛い、そんなフロアだ。

 釜の上にかかっている石橋から、滑って転んで落下してしまったら……火傷程度じゃあすまないだろう。

 

 そんな焦熱地獄の石橋の上にて、ついに始まってしまった俺VSマゼラン。

 なのだが……

 

「処刑の時間だ……」

 

「ムリーー!!」

『ジーー!!』

 

 ハッキリ言おう。

 勝てないと。一方的な戦いになると。

 だって相手の体、毒まみれなんだもん! 触れないんだから勝つなんて無理だよ!

 

「不可視の怪盗、貴様の事は海軍本部より伺っている……」

「え゛っ」

「大将“黄猿”にも勝る強さらしいな……?」

「や……別にそんな……」

 

 黄猿が勝手に言ってるだけですそれ……

 俺、全然黄猿に勝る強さじゃないです…… だからその、あんまり買いかぶられても、困ると言いますかぁ……

 

「だが、何にでも“相性”はある……体術主体の貴様では、おれの能力には絶対に勝てんぞ……! 毒竜(ヒドラ)!」

「ひいいっ!! サザンドラ〜!」

 

 マゼランの体から、再び三つ首の毒液ドラゴンが出現する。

 俺に向かってドラゴンの首を何度も伸ばしてきて、ドパンドパンとぶつけてこようとする。

 めちゃくちゃ怖ぇ!

 

「うわっ!? ちょ!? たたたっ! 危なっ!」

 

 見聞色を使えば、毒液ドラゴン自体(そのもの)を躱す事はさほど難しくはない。

 だが、攻撃の余波で毒液がビチャビチャと飛び散ってくるのが非常に厄介である。飛び散る液体にはマゼランの意思が無いから、見聞色で読み辛いのだ。

 

『ジーーッ! ジ〜〜ッ!』

「で、デンスケ、落ち着け! あんな攻撃、一生かけても俺には当たんないから! だから大丈夫だ……! あぶっ! おっと!」

『ジィイィ〜……』

 

 マゼランが攻撃してくる度に、俺の背中に乗っているデンスケがジージー騒ぐ。

 大丈夫。大丈夫と、何度も口にして、なんとか落ち着かせるも……正直戦況はかなり悪いと言えよう。

 あちこちに飛び散る毒液のせいで、行動範囲が少しずつ狭められていってるのがキツイ。

 

(ぐぅぅ……! ジリ貧てやつだ、これ……!)

 

 パワー、スピード、見聞色。

 身体能力だけで言うなら、俺の方がマゼランよりも強い……とは思う。

 武装色は知らんけど。

 

 だがその分、こいつはドクドクの能力があまりにも厄介過ぎる。

 一発でも喰らえばほぼアウトな毒攻撃を、向こうは馬鹿みたいに連発してくるというのに……

 こっちはそもそも触る事が出来ないという理不尽さ。

 う〜ん、無理ゲー! ずっと相手のターン! マゼラン(こいつ)って倒す事の出来ないギミック系ボスなんじゃないか。

 

「とっ、とりあえずっ! 避け続けるっ! しかないっ! よな! ほいっ!」

「ふん……流石は黄猿に勝った男……想像以上の身のこなしだな……」

「ふ、ふへへ、お前の毒がどんなに……よいしょっ! す、凄くても、当たらなければ、どうという事はない!」

「ならば……毒・雲(ドクグモ)!」

「!?」

 

 攻撃が全く当たらない事に痺れを切らしたのか、ムハァ〜と、紫色の息を吐き出してきたマゼラン。

 口臭攻撃? いや、毒息攻撃か!

 

「辺り一面、毒の空気で満たしてしまえば、いかに貴様が素早く動こうとも意味はない」

「なるほど賢い手だ。だけど毒ガスなら吹き飛ばせる! 我流・トンタッタコンバット、しっぽコプター!」

「!!?」

 

 床にしがみつき、マゼランにケツを向け、ブオーンと勢い良く尻尾を回す。

 超強力な小型扇風機となった俺の尻尾は、マゼランの口臭を吹き飛ばす。

 

「……毒霧を払い除けたか……!」

「ふへへ、さらにこのまま……そおりゃッ!!」

「なにっ!?」

 

 尻尾の回転と腰のひねりを利用して、俺は空気の塊……風の刃をマゼランに向けて発射した。

 おお! もしかしたら出来るかもって、思い付きで試してみたんだけど、本当に出来た! やったぜ!

 名付けて『しっぽセンプウ』。俺はついに遠距離攻撃の手段を手に入れたのだった。

 

「よっしゃあ! 行っけぇ!!」

 

 カマイタチとなった風の刃(しっぽセンプウ)がマゼランへと迫っていく、が……

 

毒竜(ヒドラ)」ドパンッ

 

 ……毒竜で普通にガードされてしまった。弱っちいな、俺のしっぽセンプウ……

 

「ここまでの風圧をそんな小さな動きで起こすとは……エンポリオ・イワンコフの瞬きのようなものか……」

「誰だよイワンコフって! 喰らえ! 連続しっぽセンプウ!!」

「……!! ふんっ!」

 

 ようやっと手に入れた念願の遠距離攻撃。

 調子に乗って連発するも、今度は毒竜すら使わず両手でガードされてしまった。

 

「……この程度か?」

 

 ダメだ。効かねぇ。

 今の俺に起こせる風は精々『バギマ』。ボス戦ならせめて『バギクロス』くらいの火力は欲しかった。

 

「今度はこちらからいくぞ。毒フグ! プッ!」

「うおわっ!? 汚ぇ!」

「毒フグ! 毒フグ! 毒フグ! 毒フグ! 毒フグ!」

「ひぃいい〜〜!! 待て待て待て待て!!」

 

 毒液の塊を連続して口から飛ばしてくるマゼラン。

 まるで痰を吐き捨ててるみたいで、絵面が非常によろしくない。付け焼き刃の遠距離攻撃しか持たない俺では、なす術が無い。

 

「さ、流石に無理! 暑いししんどいし、も〜!! ここは一時退却だ。逃げるぞデンスケ!」

『ニン!』

 

 引き返す事にはなっちゃうけど、こうなりゃ逃げるが勝ちである。

 光の速度で動ける黄猿とは違い、マゼランにはそこまでの機動力は無い。

 速さだけで言えば俺の方が圧倒的に格上。きっとすぐに逃げ切れる。

 

「逃がすと思うか! 毒の道(ベノムロード)

「うわっ!? なにその移動方法!?」

 

 俺に向けて毒竜の首を高速で伸ばしてきた……と思ったら、あろう事かその毒竜の中をニュルニュルと泳いで通ってきたマゼラン。

 まるで排水口を流れるウンコのように。

 

「で、デンスケ、ちょっち急ぐぞ! 加速!」

「!!」

 

 斬新な移動方法ではあるが、それでも速さはまだまだ俺の方が上である。

 橋は一本道。このまま走っていけばとりあえずマゼランを振り切る事は出来そうだ。

 そんな風に考えていると……

 

「ブモォオ!!」

「オオォォ!!」

 

「うわっ!? またあいつらかよ!? なんで!?」

 

 俺が逃げていく先、橋の向こう側から、さっき倒したはずのミノタウロスとミノコアラがドタドタと走って来たのである。

 完全に気を失わせたと思っていたのに、なんでもう復活してんだよ!?

 

「ふっ、どうやら覚醒した動物(ゾオン)能力者の生命力を甘く見ていたようだな。ミノタウロス! ミノコアラ! 不可視の怪盗を通すな!」

 

「ブモォオ!!」

「オオオッ!!」

 

 二匹並んで、グッとファイティングポーズしてくるミノミノコンビ。

 

「ぬぅぅ……どんだけタフなんだよ……!」

『ジィイ〜〜!』

 

 背後からはマゼラン、正面からは獄卒獣二匹。

 一本道だから逃げ場は無し……

 強いて言うなら空中が空いているが、しっぽコプターで飛んでるところを毒竜とかで狙い撃ちされたら流石に避けきれない。

 

「ヤバイな……どうする……?」

 

 そんな風に考えていたら、もう目の前にミノミノコンビが迫ってきていた。

 

「ブモォオオオ!!」

「オオオッ!!」

「ああっ! くそ! 邪魔ァ!!」

 

 橋の狭さから見て、こいつらの横をすり抜けていく事はほぼ不可能。

 せめて一匹だけなら無視して通り抜けられたのだろうが……二匹ってところが地味に厄介だ。

 倒して先に進んでいくにしても、こいつらを相手取ってたら確実にマゼランには追いつかれる。

 

「ぬうぅ……!」

 

 どうする? どうする?

 道は塞がれた。逃げる事は出来ない。マゼランはもうすぐそこまで迫ってきている。

 考えろ、考えろ……!

 どうやったら獄卒獣二匹とマゼランを同時に相手取れる?

 

 獄卒獣には普通に勝てる。マゼランに勝つには……素手じゃダメだ。

 奴に勝つには、攻撃を通す為の武器が必要だ。

 だけどそんな武器……ここには何も……

 

「………………ん? 武器……? あ、そうだ! ちょうど目の前にいるじゃん!」

「ブモッ?」

「オオッ?」

 

 ミノタウロスとミノコアラ……こいつらの事を敵だと思うからいけなかったのだ。

 

「ふへへへへへ!」

 

 こいつらは…………“武器”だ!!

 俺の元に都合良く走って来てくれた“武器”である!

 

「いくぜ! おらあ!」

「モ……ッ! モォオオッ!?」

 

 俺はまず、ミノタウロスの拳をかわすと、そのままミノタウロスの足元へと潜り込み、グイッと足を掴んで持ち上げてやった。

 

「オオォォッ!!」

 

 ミノコアラがすぐにミノタウロスのサポートに入ろうとしゃがんできたが、その体勢は隙だらけだぞ!

 

「我流・トンタッタコンバット! 人間ハンマー!!」

 

 ゴチーーンッ!!

 

「「…………ッッッ!!??」」

 

 ミノコアラの脳天目掛けて、俺はミノタウロスを思いっきり振り下ろした。

 頭に大きなタンコブを作って、二匹はぐったりと気絶してしまった。

 

「ミノタウロスとミノコアラを倒したか……だが、お陰でおれが追いついたぞ。もうこれ以上は逃げさせん……! 覚悟しろ、不可視の怪盗!」

「ふへへ、もう逃げる必要はなくなったんだよ」

「なに?」

 

 俺は右手にミノタウロス、左手にミノコアラを構えて、マゼランへと向き直った。

 

「マゼラン! お前の毒を喰らいたくなかったら、要するに素手で触らなきゃいいんだろ? ふへへへ!」

「は? 何を……ま、まさか……!?」

「獄卒獣二匹を使った二刀流! これが俺の答えだ!」

「!!?」

 

 流石のマゼランも獄卒獣を武器に使われるとは思っていなかったらしく、ぐるんぐるんと振り回される二匹を見て目を見開いている。

 武器にするにはちょいとデカくて扱いにくい二匹だが、俺の怪力ならば全然余裕で振り回せる。

 

「さあ〜、マゼランくん。仲間を武器(盾)にされていても、君はお得意の毒攻撃をしてこれるのかな〜? ふへへへ〜」

「鬼か貴様ッ!?」

 

 心底ドン引きした様子のマゼラン署長。

 だが、使える物は何でも使うのが俺の戦闘スタイルである。

 黄猿の部下を使って黄猿をボコボコにさせた事だってあるのだ。今更躊躇なんて無い!

 

「よーし、デンスケ! 俺の背中から落ちないように、しっかりしがみついておけよ!」

『ニ、ニンッ!』

「我流・トンタッタコンバット……獣の呼吸!」

 

 気分は嘴平伊之助。

 ミノタウロスとミノコアラを引きずりながら、俺はナルト走りでマゼランの元へと突っ込んでいく。

 猪突猛進! 猪突猛進!

 

「ぐ……っ! ひ、毒竜(ヒドラ)!」

 

 俺が獄卒獣を抱えているからだろうか? 一瞬だけ攻撃するのを躊躇したマゼランだったが、必要な犠牲だと割り切ったのだろう。毒竜を伸ばしてきた。

 しかし……甘いな! 今俺の手元には、それを振り払うのにちょうどいい、俺の体よりもでっかい武器があるのだ!

 

「獣の呼吸! 参ノ牙 喰い裂き!!」

 

 ドパーーンッ!!

 

 ミノタウロスとミノコアラを使って、俺はマゼランの毒竜を斬り裂いた。

 獄卒獣に毒ダメージを与えながら、自分の身は守れるという、一石二鳥な技である。

 

「おのれ……!! 毒ガス弾(クロロボール)!」

 

 続いてマゼランはサッカーボール程の大きさの毒玉を口から飛ばしてきた。

 俺の見聞色によると……あの毒玉は3秒後に爆発して、辺り一帯に猛毒ガスを撒き散らすとみた。

 

「そうなる前に……受け止めろ! ミノコアラ!」

「アガッ!?」

 

 飛んできた毒ボールを、俺はミノコアラの口を使って受け止めさせた。

 すぐに口を閉じさせると、中でボンッと毒ガスが炸裂する音がした。

 

「○☓△△■■☠〜〜!!?!?」

 

「マジで人の心無いな!? 貴様!!」

「元はと言えばお前の毒だろ! ダメだと思うなら撃ってくんな!」

「貴様がおとなしく捕まればすむ話だ! 毒竜(ヒドラ)!」

「させるか! 獣の呼吸! 投げ裂き!!」

 

 顔が紫色になったミノコアラを、俺はマゼランに向かって思いっきり投げつけた。

 

「ぐはっ!?」

「〜〜☠」

 

 毒竜をドパンッと飛び散らせながら、ミノコアラの巨体はマゼランへと見事命中。

 橋の上から吹っ飛ばされる二人。ここだ! ここで決める! 獄卒獣もマゼランも、全員一網打尽にしてやんよ!

 ミノタウロスをブンブン振り回しながら、俺は吹っ飛ぶマゼランの真上へと飛び上がった。

 

「ど、毒フグ!」

 

 苦し紛れに毒液を乱射してくるマゼランだが、そんなもの当たらんよ。

 

「これで終わりだ! 我流・トンタッタコンバット! 獣の呼吸! 投げ裂きィッ!!」

 

「!!!」

 

 マゼラン&ミノコアラ目掛けて、俺はミノタウロスを、思いっきり投げ落とした。

 

 バコォオオンッ!!!

 

「ぐふォおおおッ!? ふ、不可視の怪盗! 貴様ァ……!!」

 

 猛スピードで落ちてくるミノタウロスを、空中へと投げ出された状態だったマゼランは受け止めきる事が出来ず、勢いそのまま、錐揉みしながら落下していく。

 マゼラン、ミノタウロス、ミノコアラ。彼らが落ちていく先にあるのは、レベル4、焦熱地獄の代名詞……

 すなわち……血の池地獄である!!

 

 ドボォンッ!!

 

「ごばっ!? お゛っ、ごぼっ、おぼ……あ゛ッッ…………ゴボババ……!!」

「……ブ……モ゛ォ゛ォ……」

「…………☠」

 

 マゼランも獄卒獣達も、全員が能力者なので……血の池へと落ちてしまったら自力ではまず上がってこれないだろう。

 ズブズブと沈んでいく三人を眺めながら、俺はナ〜ム〜と手を合わせた。

 

「…………なんとか勝てた……か……」

『ニ〜〜♪』

 

 ぱちぱちと拍手してくれるデンスケを床へと下ろし、俺もその場に座り込む。流石に疲れた。

 でもそんな事言ってる場合でもないよな……

 

「ふぅ……とりあえず一難は去った訳だけど、これからどうしようか、デンスケ」

「ジ〜〜?」

「俺的にはルフィがどうなってるかを見に行きたいんだよなぁ……」

 

 マゼランはルフィを処刑したって言ってたけど……まさかもう死んでたりはしないよな?

 

「大丈夫……きっと大丈夫だ……」

 

 俺は知ってる。ルフィは毒に強いんだ。

 女ヶ島にて、ヘタスリャシヌダケを食べてしまった時も、常人なら数日は寝込んでしまうはずの毒を、あいつはたったの数時間で回復してしまった。

 だから、今回もきっと大丈夫のはずだ。

 

「………」

 

 そんな感じで、座りながら色々と思考を巡らせていた、その時だった……

 

『ジッ!?』

 

 デンスケが何かに気が付いたのである。

 

『ジ、ジー! ジーー!』

「ん?」

 

 デンスケが気付いたそれに、俺は気が付けなかった。

 マゼランとの死闘を終えて、たぶん気が抜けていたんだと思う……

 

『ジーー!!』

 

 デンスケの視線の先にあるのは、俺の真上。元々このフロアに吊るされていた鎖のオブジェクト。そこに、さっきマゼランが乱射していた毒液が、たまたまベチョッと引っかかっていたのである。

 

 ニュル……ニュル……

 

 鎖を伝って、ちょっとずつ垂れてくる毒液……

 デンスケがそれに気が付けたのは、普段から見張りの仕事をしていたからだろうか?

 

『ジジジー!! ジー! ジィイ〜〜!!』

「どうしたデンスケ……俺の上に何かあんのか? 一体何が………えっ?」

 

 ぽたりっ

 

 気が付いた時には、もう遅かった。

 垂れてきた毒液は、もう俺のすぐ目の前まで迫ってきていた。

 座っている今の体勢からは、もうかわしようがない……

 

(あ、やべ……)

 

 そう思った、次の瞬間──

 

『ジィッ!!』

「……えっ!?」

 

 ビチャッ

 

 デンスケが、俺に向かって飛び付いてきたのだ。

 そのせいでデンスケは、俺の代わりに毒液を浴びる事になってしまい……

 

「で、デンスケーーーーッ!!!?」

 

『…………ジ……ィィ……』

 

 デンスケはぐったりと倒れ伏した。

 

 

 

 

 




はい、あけましておめでとうございます。
皆様のおかげで、去年はなんとかエタらずにすみました。

だけど、そろそろもうヤバイ……! はぁはぁ……! ぶへぁ……ぐったり……そんな感じ。
高評価と感想が僕のえねるぎぃ。
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