デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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まよいこんであいらん……ニューカマー

 通気口の長いトンネルを抜けると変態の国であった。

 ……うん。

 何を言ってるのか分からないだろう? 大丈夫。俺も分かんないから。

 綺羅びやかな大ホール。たくさんの変態たち。飲めや歌えやの大騒ぎ。え〜と、俺は今、世界一の大監獄インペルダウンに…………いるんだよな?

 

「ンフ〜フッフ! 自力でここにたどり着けるとは、流石ね、キャンディボーイ。いいえ……不可視の怪盗、ラインボーイ!」

 

 ポカーンとしている俺の前に、身長4メートル半はありそうな、紫パーマで王冠を被った化粧の濃いオカマさんが、ズモモモモッと近付いてきた。

 シャボンディ諸島で知り合いになったオカマのイカ人魚、ロズオの3倍キャラが濃い。

 俺、思わずタジタジ。

 

「あ、えっと、その……」

「レベル4での戦い、キャンディーズと観戦させてもらっタブルわよ。まさかあのマゼランを倒しティブルなんてね……流石は10億の賞金首ってところかしら?」

 

 腰をくねくねさせながら、俺の前に食べ物と飲み物を差し出してくれる紫パーマさん。……怪しすぎて口にできないです。

 

「……か、観戦してたってどうやって? そもそもここどこ!? あんた誰!?」

「ヴァターシが誰だか知りタブルの? ンフフ、それじゃあ何も知らないラインボーイに……ここの全てを教えて、あげ……あげ……」

「あげ……?」

「あげなーーい!!!」

「「「「教えてあげないのかよっ!! 一本とられたよ!」」」」

 

 紫パーマさんのボケに、まわりの変態たちが一斉にツッコミを入れる。

 新喜劇のような一体感に、俺、ますますタジタジ。

 

「…………」

「まあ冗談はこれくらいにして、教えてあげるわ。ここがどこなのか、ヴァターシが何者なのか、今年流行る化粧水は何なのか、全てね」

「……化粧水はどうでもいいっす」

「ヒーハー!!」

 

 ボケまくりの紫パーマさん。

 話を聞いてみると、彼(彼女?)の名前はエンポリオ・イワンコフ。通称イワ様。

 偉大なる航路(グランドライン)のどこかにある、オカマだらけの国、カマバッカ王国の女王様なんだって。……いや、オカマだらけの国って……一体どうやって繁殖してんだよ……

 気にはなるけど、聞きたくはない。

 もしも女ヶ島と同じ方法とかだったらあまりにもホラー過ぎるから。

 

 まあ、それはそれとして、俺達が今いるこの場所だけど……

 ここはインペルダウンのレベル5とレベル6の中間点、壁の中に作られた、レベル5.5に位置する場所なんだってさ。

 看守たちにバレないように、囚人たちで密かに作り上げた秘密の花園。その名も……

 

「ア〜〜、ニューカマーランド!! ヒーハー!!!」

 

 だってさ……

 レベル5よりさらに下の階層があった事よりも、看守の誰にも気付かれないまま、こんな秘密基地を作り上げちゃった事の方がもっとビックリだわ。

 何十人もの囚人たちが、檻の中からこの場所に、いつの間にやら逃げ込んでるんだろ?

 そんでその何十人が、毎日遊んで暮らしていけるだけの食料、物資が、上の階層から定期的に盗まれていると……

 

 なんでバレねぇんだよ!?

 

 世界一の大監獄の癖に警備ザル過ぎないか?

 ドレスローザでさえ何か物が無くなった時には、妖精のしわざだ〜! って騒ぎになってたのに。

 

「ンッフフ〜、ちなみに獄内の情報はここで飼ってる映像電伝虫で全てキャッチしているわ。ゴミ箱から新聞も盗んでくるから、シャバの情報もバッチリ! だからヴァナタの今までの活躍だって知っているわ、ラインボーイ」

「……そっすか」

 

 ……マジで囚人たちに好き勝手され過ぎだろ、インペルダウン……

 侵入者である俺が言うのもなんだけど、もうちょい厳重に警備しといてもらいたい。仮にも世界一の監獄なんだから……

 

「ところでラインボーイ。ヴァナタもなかなかのやり手ね」

「え? 何が?」

「麦わらボーイを隠れ蓑にして、誰にも気付かれる事なくレベル4まで侵入してくるなんて……」

「え゛……」

「一体の何の目的でインペルダウンに侵入してきたのかは知らないけど、流石のヴァターシも一本取られた気分だったよ」

 

 そう言ってニヤリと笑うイワンコフ。いや、それより……麦わらボーイって言ったか今? それってルフィの事だよな?

 

「る、ルフィが今どこにいるのか、知ってるのか!?」

「ン?」

 

 俺はしっぽコプターで飛び上がると、ブーンとイワンコフのクソデカ顔面へと詰め寄った。

 

「ルフィの居場所、知ってるなら教えてくれ! あいつマゼランから猛毒喰らっちゃってるらしくてさ、すぐ助けに行かなきゃなんだよ!」

「……あら、これは意外ナーブルね。てっきりラインボーイにとって、麦わらボーイは単なる捨て駒で囮なのかと……」

「あいつは友達だ! ルフィがエースを助けたいって言うから俺はそれを手伝いにここまで来たんだよ! それ以上でも以下でもねぇ!」

「あらそうだったの。ン〜フフフ、今日は素敵な友情の花がよく見られる日ねェ……」

 

 イワンコフはドスンと大きなソファに腰を下ろした。

 

「結論から言うと、麦わらボーイはここにいるわ」

「え……? そうなの?」

「麦わらボーイのお友達、Mr.2・ボンボーイがここに運んできたの」

「みすたーつーぼいんぼいん?」

 

 誰だそれ?

 俺がアーロンと出会ったのと同じように、ルフィの方にも不思議な囚人との出会いがあったのだろうか?

 

「麦わらボーイもボンボーイも、瀕死の重症だっティブルけど、()()() 一命はとりとめているわ」

「本当!? 良かった……ここにはお医者さんがいたのか」

「いいえ。ヴァターシの能力を使っタブルのよ」

「能力? ……それってどんな?」

 

 マンシェリーと同じように、回復系の能力者なのかな?

 

「ホルホルの実。それがヴァターシの食べた悪魔の実の名前よ」

「ホルホル?」

 

 掘る掘る……

 アナルを掘る……

 なるほど。その実を食べてしまった影響で、この人はオカマになってしまったのか……

 俺は思わず自分の尻を両手で隠した。

 

「ホルホルとはホルモン。つまり、ホルモン自在人間て訳。性別、体温、色素、成長、テンション……ヴァターシは人間を体内から改造する事ができる、人体のエンジニアなのよ」

 

 ……全然違った。

 ホルモンのホルだったのね。俺は押さえていた尻を離した。

 へ〜、ホルモンを使えば、人体を改造する事ができるのか。

 性別に……体温に……色素に……

 せいちょ……

 

「成長だとぉおーー!?」

「!?」ビクッ 

 

 突然大声を張り上げた俺に、むさ苦しい顔をさらにギョッとさせるイワンコフ。

 

「な、なによ?」

「いや、その……イワンコフ……いや、イワ様! 女王様! 女神様!!」

「なんでいきなり下手(したて)に出っティブル……」

「そそそそのっ! ほほほホルホルの力でっ! お、俺の……俺の身長を大きくできたりとか! しないでしょうか!? どーでしょーか!?」

「身長……?」

 

 もしかしたら、この人なら、この人の能力なら……

 俺の夢を、叶える事ができるんじゃないかと、そう思った。

 思い立ったが吉日! そして即実! 俺はドンッと床にヒビが入る勢いでイワンコフに土下座をした。

 

「俺には! 夢があるんす!!」

「夢?」

 

 土下座したまま、ドレスローザでの暮らし、生い立ちを、俺はイワンコフへとぶっちゃけた。

 ヴィオラの事、モネの事、デカデカの実を探すために故郷を飛び出した事、など……

 あとエスネの事も一応話しておいた。

 

「……なるほどね」

「デカイ男になって、モテモテウヘウヘになりてーんすよ! 俺は!」

「……………………ヴァナタは……デカイ男にならないと、モテモテウヘウヘにはなれないと、そう考えティブルの?」

「?? そりゃそーでしょ」

 

 何を当たり前の事を言ってるんだこの人は?

 

 そりゃあ……体だけじゃなく、心もデッカくならないとモテるようにはならないと、女ヶ島で学んだし……

 ハンコックみたいに自分より小さい男を好きになる女も、存在するとは知ったけどさ……

 

『気持ちは嬉しいけど……ごめんねライン。私は人間であなたは小人。恋愛するにはちょっと体の大きさ……身長が違い過ぎるかなって……』

 

 ……

 

「大前提、小人のままでは、そもそも男としては見てもらえねーんだよ……誰にも……絶対に……」

「…………そう。分かっタブル。それじゃあヴァターシの能力で、ヴァナタを大きくしてあげるわ」

「え!? できるの!?」

「できるわよ」

「マジッすか!!!!???? お、おお、おねが、お願イ゛じまひゅうう!!!」

 

 まさか……まさかまさかまさか! まさかのまさか!!!

 こんな地獄の底で!! デッカイ男になるという夢が!! 叶えられる日がくるだなんて!!!

 

「ついに来たのだ!! 俺の夢の終着点!! ふへへへへへへ〜!!」

「じゃあいくわよ。エンポリオ・顔面成長ホルモン!!」

 

 まるで注射針のように、ニュンッと伸びたイワンコフの爪が、俺の脳天へドスッと突き刺された。

 瞬間、ドクンと俺の体が変わっていく。

 

「お、おお……おおおお……!!!」

 

 伸びてる。大きくなってる! 視界がどんどん高くなっていってる!

 ついに俺は、人間に、夢の8頭身ボディに、ちぇ〜んじを!!

 

「………………って、なんじゃこりゃああああ!!?」

 

 結論から言おう。

 俺の夢は叶わなかった。……いや、大きくなるにはなれたんだけど……

 体の大きさはそのままで、巨大化したのは……俺の頭部だけであったのだ。

 夢の8頭身どころか、これじゃあ0.08頭身だよ!

 

「ふッざけんな!! 元に戻せ!!」

「あ〜ら、顔面成長ホルモンじゃ、お気に召さなかった?」

「召す訳ねーだろ!!」

「やれやれ、せっかく大きくしてあげタブルのに……」

 

 ドスッともう一回爪を刺されて、俺の体……いや、頭は元に戻った。

 

「はぁはぁ……戻った……」

「ヒーハー! それじゃあ気を取り直して、今度こそ真面目にラインボーイの体を大きくして……して……」

「して?」

「してあげなーい!!!」

「「「「してあげないのかよ! 一本取られたよ!」」」」

 

 ワーッ! と盛り上がるオカマたちのやり取りを見て、久しぶりに殺意が湧いた俺であった。

 

「ふざけてんの?」

「まあまあ、落ち着きなさい……いくらヴァターシの能力でも、種族を変える事はできナ〜ブルよ。人間を魚人にしたり、魚人を巨人にしたり、小人を人間にしたり。そういうのは不可能(インポッシブル)よ」

「……そっすか……」

 

 じゃあつまり、俺の夢を叶える為にはやっぱり、デカデカの実が必要不可欠って事か……

 

「そもそも自分の夢を叶える為に、他人の能力を完全にアテにしてすがりついてるところがダ〜メ。奇跡は諦めないものの頭上にしか……」

「とりあえずルフィを治療してくれた事だけはありがと。それだけは礼を言っておくよ。オカマのクソンコフさん……」

「な、なんか呼び方に悪意を感じるわ……」

 

 イワンコフの前に並べられている豪華料理の数々……俺はそこに、こっそりと耳くそを混ぜ込んでやるのであった。

 

「はぁ……ところでラインボーイ」

「……あんだよ?」

「麦わらボーイの件だけどね、実のところ、お礼を言われるのはまだ早いのよ」

「ふへ?」

「ついてらっしゃい」

 

 鼻くそ入りサラダをシャキシャキと口にふくみながら、手招きしてくるイワンコフ。

 ついて行った先にあったのは、鎖やら何やらで厳重に封印された扉であった。

 

「?」

 

「ぐわ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!! ヴワ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

「!!?」

 

 中から、まるで地獄の責苦でも受けているんじゃないかという、悲痛なルフィの叫び声が響きわたってきた。

 

「……こ、これは……?」

「ヴァターシは能力を使って、麦わらボーイの免疫力を過剰に引き出し、マゼランの毒と戦える体に作り変えただけ。助かるかどうかは、これから決まるのよ」

「これから?」

「解毒にかかる時間は約2日。その間、無事生き延びられるかどうかは、麦わらボーイの気力次第ナブル」

「ぇ……」

「心配なら覗いてみるといいわ」

「……」

 

 扉の隙間から、チラリと中の様子を覗いてみる。

 すると中では、鎖に縛られたルフィがめちゃくちゃにグロい事になっていた。

 肉が腐り、剥がれ落ち、新たな肉が再生され、それも腐り落ちる……

 それの繰り返し。正直言って、見ていて吐きそうになった。

 

「こ、これを……あと2日も……?」

「それでも助かる確率は大目に見て、2〜3%ってところかしら?」

「2〜3%……」

 

 なんだそのあまりにもあんまりな確率は。

 それに、助かったとしても2日はかかるってそれ……

 

「……ルフィの兄、エースの公開処刑は確か……明日の15時からだっけ?」

「そうね」

「それってつまり、たとえルフィが毒に打ち勝てたとしても、その頃には既にエースは処刑済みってこと?」

「それは仕方ないわ。諦めるしかない。兄よりもまず自分の命」

「そっか……だよな……」

 

 俺は背負っていたデンスケを、イワンコフへと手渡した。

 

「ん? これ、ヴァナタの電伝虫?」

「こいつをしばらく預かっててほしい」

「それは別にいいけど……ヴァナタ、これから何する気?」

「エースを助けてくる」

「はあ!?」

 

 グッグッと伸びをする。コキコキと骨を鳴らす。

 

「……イワンコフは知らないだろけど、ルフィは毒に強いんだ。だから俺は、ルフィなら2〜3%の確率を乗り越えて、毒に打ち勝ってくれると信じている」

「大した信頼ね」

「……でも、たとえ打ち勝てたとしても、そん時エースが処刑されちゃってたら、ルフィは死にたくなるほど後悔すると思うんだ」

「……」

「だからルフィの代わりに、俺がエースを助けに行ってやる……!」

 

 もしも俺がルフィと同じ立場だったら、何がなんでも、“きょうだい”を救って欲しいって、思うはずだから。

 

「ラインボーイ。ヴァナタ本気?」

「本気と書いてマジである」

「……まァ、ヴァナタの命、勝手にすればいいけど……でも一応、親切心で忠告だけはしといてあげるわ」

「忠告?」

 

 するとイワンコフは、頭のパーマの中から、一匹の黒い電伝虫を取り出した。

 ……お前、そんなところに生き物飼ってるんじゃないよ……

 

「看守たちのやり取りを盗聴して分かっチャブルけど、マゼランはまだ生きているわ」

「!」

「ヴァナタに大鍋に落とされた後……どうやら看守たちに助け出されたみたいナブル」

 

 まあ……そうなるか。

 

「じゃあエースを助け出すには、またマゼランを倒さないといけないって事か……」

「いいえ。流石のマゼランも堪えたみたいで、今医療室のトイレに篭りきりになっティブル。だからしばらく戦闘は無理そうね」

「え? マゼランいないの? それなら楽勝なんじゃ……」

「そこでマゼランは、雨のシリュウを開放する事を決めたそうよ」

「ざーめんのしりゅぅ?」

 

 誰だそれ? クサそう。

 

「看守長、雨のシリュウ。気の向くままに囚人たちを大虐殺するから、檻の中に入れられていた危険人物よ。実力はマゼランとほぼ互角」

「やべぇやん」

「そう。そのやベェ奴と……副所長ハンニャバル。獄卒長サディ。獄卒獣4匹。そして千を超える看守たち……それらの戦力が今、全てレベル6に集められティブルのよ!」

「はあぁあ?! そ、それって、マゼランを除いたインペルダウンの戦力、ほぼ全部って事じゃないの?」

「それだけマゼランはヴァナタにレベル6へと侵入される事を警戒しているのよ」

 

 小人一人に用心なこったで。

 くそ……

 

「……それでもエースボーイを助けに、ヴァナタはたった一人でレベル6へと乗り込んでいく気なの?」

「ぐむむむ……」

 

 エースを助けに行く……それは確定事項だ。

 でも、今教えてもらった戦力をたった一人で相手するというのは、確かにちょっち無謀が過ぎるよな……

 何かもう1ピース、こちら側にも戦力があればいいんだけど……

 イワンコフは……助けてくれないよな……

 助けるメリットが無いもん。むしろデメリットだらけ。

 

「どうしよ……」

 

 そんな風に頭を悩ませていた、その時だった。

 

「話は聞かせてもらったわ!!」

「!?」

 

 それは疾風。

 一瞬、どこからともなく白鳥が迷い込んできたのかと思った。

 

「だ、誰だお前!?」

「あちしは……麦ちゃんの……友達!」

「は?」

「麦ちゃんの兄貴を救出しに行くんでしょ!? それならあちしにもどうか、そのお手伝いをさせてちょうだい!!」

 

 そう言って俺の前でビシッとポーズを決めてきたのは……

 キャラの濃さ、0.2イワンコフくらいの、(オカマ)であった。

 

 

 

 




イワンコフの喋り方、書くのめちゃくちゃ難しかっタブル。
ヒーハー!
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