デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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ちっさい者は行く

 人間達からレオが偶然パクってきた『“悪魔の実”大図鑑』。

 俺、レオ、マンシェリーの、トンタッタ幼馴染三人組は、興味半分でその本を開いていた。

 

「悪魔の実図鑑〜? 悪魔の実っていうと……お前ら二人が食ったっていう、不思議パワーが宿るおかしな果実だろ?」

「そうれす。僕の奇術、ヌイヌイの力も、ヌイヌイの実を食べてから身に付けたものれす」

「私のチユチユの力も。でもあれ……すっごく美味しくないんれすよね……」

 

 うぇ〜と舌を出すマンシェリー。

 すっごく美味しくないってなんだよ。マズイってちゃんと言えよ。誰への配慮だよ。

 ペラペラと図鑑をめくっていくと、この二人が食べたであろう、悪魔の実についても載っていた。

 

 ヌイヌイの実。

 生物、無機物問わず、ありとあらゆる物を縫い付ける事が出来るようになる。

 

 チユチユの実。

 生物のあらゆる傷を治癒する事が出来る。最上位の技となれば、物質の復元も可能。

 

「お〜、載ってる載ってる。……にしても不思議だよな。こんなアホな名前のヘンテコフルーツ食べるだけで、不思議パワーが使えるようになるなんて」

「泳げなくなるっていうリスクはあるれすけどね」

「……それなんだよな〜。それさえなければ、俺もテキトーな悪魔の実を面白半分で食べてやってもいいんだけど〜」

「何言ってるれすか、ライン。悪魔の実なんてそうそうお目にかかれるものじゃないんれすよ」

「そうか〜?」

 

 レオとマンシェリーは能力者だし、うちの部隊の隊長のカブさんやビアンも確か……ムシムシ? とかいう能力者だったし。

 あとはヴィオラも能力者だったな。ギロギロの実。

 ……うん。どこがそうそうお目にかかれないだよ! 俺の周り能力者だらけじゃねぇか!

 俺は続けて図鑑を読む。

 

「……ベタベタの実、ヒラヒラの実、イシイシの実、イトイトの実、ユキユキの実……マジで色々あるな。だけどまぁ、一生カナヅチになってまで能力者になりたいかって言われたら……やっぱなりたくはないかな〜」

 

 今世の俺は泳ぐのがめちゃくちゃ得意なのだ。

 トンタッタ族はお尻から大きな尻尾が生えていて、その尻尾を高速回転させて泳ぐ“しっぽスクリュー”は俺オリジナルの遊泳方法。

 ジェットスキーかよってレベルの速さで泳げる。あの爽快感を捨ててまで能力者になりたいとは思わない。

 

 ひとしきり図鑑を流し読みして、そのまま本を閉じようとしたその時だった。とある悪魔の実の名が、俺の心に、クイのように打ち刺さったのだ。

 

「…………デカデカの実?」

 

 ドクンと心臓が鳴った気がした。俺はゆっくりとその実の説明欄に視線を落とす。

 デカデカの実。

 自身の体を10倍近くまで大きくする事の出来る、巨大化人間となれる。

 

「……」

 

 巨大化……巨大化? 巨大化! 巨大化!?

 今の俺の身長が20cm弱だから……そこから10倍巨大化したら、約200cm。夢の2メートル! つまり俺は……高身長になれる!? マジか!!?

 

「ぐげごッがはッ!? おははァ!!!」

「!? ら、ライン!?」

「どうしたれすか!? いきなりオバケみたいな声上げて!」

「誰がオバケじゃ! いやっ、なんていうか……その、み、見つけちゃったんだ!」

「見つけちゃったって……何を?」

「で、でか……デカデカ……! でか……デカーーッ!! ふぇっへへへ! うおッホホホぉ!! いやっふふふ!!」

「ラインが壊れちゃったれす!!?」

「大丈夫れすか!? チユポポ出します!?」

 

 俺(の頭)を心配する二人をよそに、悪魔の実図鑑を頭上に掲げながら、俺は一人ラインダンスを踊る。

 ヘイッ! ヘイッ! ヘイッ!

 ついに見つけた。カナヅチになってでも欲しいと思える悪魔の実……!

 俺はきっとこれを入手する為に転生したんだと、心からそう思った。

 

 

 

 ……

 

 

 

「「「「トンタッタ王国を出ていくーーッ!? ほ、本気れすかライン〜〜!?」」」」

 

 次の日、俺はこの国を出て行き、遥かなる大海原に冒険の旅に出ていく事を小人(トンタッタ)族の仲間達に伝えた。

 目的は当然、デカデカの実を手に入れる為である。

 

「……昨日、悪魔の実図鑑を見た時から、もしかしたらって思ってたれすけど……まさか本当に出て行こうって考えていたなんて……」

「思い立ったが吉日、その日以降はすべて凶日って、トリコも言ってただろ? レオ」

「トリコって誰れすか!?」

「まあとにかく、デカデカの実を目指して、俺は旅に出る!」

 

 仲間達が、うぇ〜ん寂しいよ〜出て行かないでよ〜とすがり付いてくるが、俺も一晩じっくり考えた。

 男として生まれたからには! 俺は夢に生きる事を決めたのだ! デカデカの実を食って、ハーレム王に俺はなる!!

 

「……ライン、やっぱり僕も一緒に、キミの旅に……」

「いやいやレオ。俺の夢にお前を巻き込む事は出来ねぇよ。将来トンタ兵長になるんだろ? なら、しっかりこの国の平和を守っていかないとな! 俺が帰って来た時の為にも、ちゃんと平和な国のままにしといてくれよ?」

「……はいれす!」

 

 デカデカの実を探す俺の旅に、レオが同行すると言ってくれるが、そこはしっかり断っておく。

 これは俺の問題、俺のワガママなのだ。何年かかるかも分からない旅に連れ回す事は出来ない。

 それに、この国からレオを連れ出したりなんかしたら、たぶんマンシェリーに一生恨まれると思うし……

 

「ライン……」

 

 そんな事を考えていたら、マンシェリーがズイッと前に出てきた。

 どした? レオは連れ出さないから安心しろ。それともなんだ、同種族として、国を捨てるなんて許さないれす〜ってか? しかし俺の意思は相当に固く……

 

「これ、持っていって欲しいれす」

「え……」

 

 俺の首に、マンシェリーが小さな何か……ペンダントを渡してきた。

 これって昨日レオから奪っ──貰ってた、綺麗な石ころじゃねぇか。マンシェリー、これ大事そうにしてたのに、え? 俺にくれるの?

 

「止めようと思っても、ラインは止まらない人だっていうのは、昔からよぉくしってます。だからせめて、これを持っていってくらさい。それを見て、たとえ離れていても私達トンタッタ族は仲間なんだって、思い出してもらえたら嬉しいれす」

「……あ、ああ、ありがと……」

 

 これにはちょっとグッと来た。レオにツンデレかましてるとこばっかり見てきたから忘れてたけど……伊達に一国のお姫様やってねーわ、こいつ。

 仕方ない。そんなお姫様に、最後に一からかいしてやるとするか。俺はマンシェリーの耳元にズイッと顔を近付ける。

 

「!? な、なんれすか……?」

「ありがとな、マンシェリー。俺が旅に出たらレオはきっと寂しがるだろうから、そこが狙い目だぞ」

「は……」

「レオの心の隙間を、お前が埋めてやるんだ! そんでそのまま押し倒し! 服を脱がせ! 既成事実さえ作ってしまえば──」

「なっ!? なっ!? なーーっ!? 何を言うんれすか!! この馬鹿ラインーーッ!!」

「ふへへへっ! そんじゃーなー、トンタッタの仲間達〜! 今よりずっとデカイ男になって帰ってくるからな〜! あばよ〜!」

 

 そう言っていつも通りヘラヘラ笑いながら、俺はトンタッタ王国を飛び出したのだった。

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 さて、意気揚々とトンタッタ王国を飛び出した俺であるが、どうやって海へ冒険の旅に出かけるのか……?

 その方法は、密航である。

 ちょうど今日、ドレスローザから別の島へと貨物船が出る。それに乗り込むのだ。

 

「密航って……それは悪い事なんじゃ……」

「大丈夫! 船長に許可は取ってある!(嘘)」

「なら大丈夫れすね!」

 

 トンタッタの仲間達とはグリーンビットで別れたが、レオはギリギリのギリまでついて来てくれた。

 まったく、こういう所があるからお前の親友はやめられないんだ。イイやつめ!

 

 荷物は昨日の夜時点で用意しておいた。

 持ち運び用小型キノコベッド、飲み水、りんごクッキー数枚。それらを巾着袋に入れて持ってきた。

 あと……手紙も用意しておいたんだっけ。

 

「レオ、悪いがこの2枚の手紙を預かってくれ。俺が行ったらこの手紙を花畑に住むスカーレットとレベッカ……王宮に住むヴィオラとモネに渡してくれ」

「2枚の手紙れす?」

「そ。あいつらには内緒で出て行くからな。黙って出ていったら怒るかもだし、一応手紙を書いておいたんだ」

「す、スカーレット様やヴィオラ様には挨拶なしで出て行くつもりれすか!? ダメれすよ! 自分で渡せばいいじゃないれすか! この手紙!」

「会ったら決心が鈍るかもしれないだろ!」

 

 あいつらに「お願い! 出て行かないで! 私の体、好きにしていいからっ♡ うふ〜ん♡」とお願いされたら、きっと俺は出ていけない。「あっそ。出ていくんだ。じゃーねー」と軽い感じで流されたら、それはそれで心が折れてしまう。

 だからあいつらには会わずに出て行くのだ。

 

「でも……」

「親友であるお前にしか頼めないお願いだ。この手紙を渡してきてくれ」

「……いつかまた、ちゃんと無事に帰ってくるんれすよね?」

「ああ、帰ってくる! 普段嘘ばっかりついてる俺だけど、これは嘘じゃない!」

「……分かった! 信じるれす! この手紙は、僕が責任を持って渡しておくれすよ!」

「さんきゅ!」

 

 出航するぞ〜! と、貨物船の中からそんな声が聞こえてきた。

 巾着袋を背負って、俺は船へと飛び移る。

 

「それじゃまた! レオ!」

「……! それじゃまた! ライン!」

 

 ザザーンと船が進み始める。レオは海岸ギリギリから俺に向かってずっと手を振ってくれていた。能力者の癖に、そんなに海に近づいたらあぶねーぞ……

 俺も全力で手を振り返す。

 小さなレオの姿はあっという間に見えなくなってしまったが、それでも俺は手を振り続けた……

 

「せ、船長! 大変です!」

「なんだァ!?」

「闘魚です! 闘魚が出ましたー!!」

「何ィー!? こっちの海岸には、闘魚はいないんじゃなかったのかー!?」

「群れからはぐれた奴でしょうか? こっちに向かってきます! うわーっ!!」

 

 ……手を振っていたら、なんか船首の方から慌てふためく声が聞こえてきた。

 

「闘魚〜?」

 

 ここ、ドレスローザの近海には、闘魚という名のツノの生えたデカイ金魚が泳いでいる。

 鉄橋くらいなら軽くへし折る凶暴な魚で、今俺が密航しているこの船くらいなら、きっとオモチャのように沈めてしまう事だろう。

 

「「ぎゃあああ!! もうダメだーー!!」」

 

 見ると、通常個体より2〜3割増ししたデカイ闘魚が、この船に向かって真っ直ぐ体当たりを仕掛けてきてた。

 ……まったく、せっかくの冒険の始まりだってのに、幸先不安だね。

 

「トンタッタコンバット……」

 

 気配を殺し、こっそり、されど超高速で船から飛び出した俺は……

 

「しっぽハンマー!!!」

 

 ゴギャーーンッ!!!

 

「「えーーっ!? 闘魚が勝手にふっとんだーーっ!!!」」

 

 船の奴らに見つかる事なく、見事デカ闘魚をノックアウトしてやったのであった。

 無銭密航しちまった事は、これで水に流してくださいや。ふへへへへっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕には二人の幼馴染がいるれす。

 

 一人は、憎らしくてワガママで意地悪で気まぐれで怒りん坊なトンタッタ王国のお姫様、マンシェリー姫。

 そしてもう一人は、嘘つきでスケベで面倒くさがり屋で猪突猛進でトンタッタ1のトラブルメーカー、ライン。

 

 二人とも自分勝手な困ったさんれすけど、僕にとっては大切な幼馴染でもあります。

 そんな幼馴染の一人が今、国を飛び出して海へと旅立って行ってしまいました。

 

 船に乗って海へ冒険に出掛けるなんて、まるでトンタッタ王国に伝わる伝説のヒーロー、モンブラン・ノーランドみたいでカッコいいとは思ったけど……

 でもやっぱり、実際に旅立たれると少し……いや、とっても寂しいれす。

 

「でも、ラインには夢があるから……仕方ないれすよね」

 

 ラインは昔から、大人間(だいにんげん)のように大きくなりたい、大きくなりたいって、いつも言っていた。

 大きくなって、大人間(だいにんげん)と恋愛がしたいって、そんな事ばっかり言っていた。

 

 そんな事は不可能だって皆言っていた。たぶん、ライン本人も無理だって、内心ではずっと思っていたはずれす……

 だけど、そんな時に見つけてしまった悪魔の実図鑑。その本に書かれていた、『デカデカの実』。

 その実を食べれば、もしかしたら夢が叶うかも……

 そんな希望を持たせられたら、ラインならいても立ってもいられず、すぐに飛び出していってしまうって、思っていたれすよ……

 

「……まったく! 本当に自分勝手なんれすから! 嫌な役目はいっつも僕に押し付ける!」

 

 ラインから受け取った2枚の手紙。旅に出るから書いたという……別れの手紙。

 僕は今からこれを、スカーレット様とレベッカ様、ヴィオラ様とモネさんに渡しに行かなくちゃいけない。

 この手紙を受け取った時、彼女達がどんな反応をするのか……

 泣くか、怒るか、悲しむか。気が重いれす……

 

「って、あれ? 手紙……3枚ある……」

 

 ラインは手紙は2枚だって言っていたのに、なんで3枚?

 封筒に書かれた宛名を見てみると、『スカーレット&レベッカへ』『ヴィオラ&モネへ』と書かれている。それで2枚。

 ではもう1枚は?

 

「あ……」

 

 宛名を確認してみると、そこには『レオ&マンシェリーへ』と書かれていた。

 封筒を開き、僕は中の手紙を取り出した。

 

『レオ&マンシェリーへ。昨日の今日で国を飛び出して悪かった。もう伝えてあると思うが、俺は俺の夢の為、デカデカの実を探しに海へ出る。まあ心配するな。気長にのんびりと無理せず旅する予定だから。……普段は照れくさくて言えないけど、俺と友達に、親友になってくれてありがとう。本当に心から感謝してる。大好きだぜ! 次会ったときはデカデカの実で普通サイズの人間になってると思うけど、デカイからって仲間ハズレにはしないでくれよ。また一緒に馬鹿やって遊ぼうな。それじゃまた!』

 

「……なんれすか、これ……手紙、2枚だけだって、言ってたのに……僕らへの手紙も書いてたんれすか……本当に最後まで、嘘つきなんれすから……ラインは……」

 

 ポタリポタリと手紙に涙が落ちる。

 後でマンシェリー姫にも見せなきゃいけないのに、涙が落ちるのを止められない。

 

「僕だって、ラインと親友で、楽しかったれすよ……! 感謝してるのは……こっちも同じなんれす……!」

 

 グイッと腕で涙を拭う。鼻をすする。

 こんな事で泣いていたら……ラインがいつか帰って来た時に、馬鹿にされちゃうと思うから。

 

「ずびっ、たとえラインがデカデカの実を食べて大人間(だいにんげん)みたいになっても、食べられなくて小人(トンタッタ)のままでも、僕らはずっと……親友同士れすからね……!」

 

 

 

 

 

 




次話、ヴィオラ視点。
明日、もしくは明後日投稿予定。

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