デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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VS黒ひげ

 ……ズズン……ズズン……

 

 時刻は午前10時前。

 俺、ルフィ、エース、ジンベエ、ボンクレー、イワンコフ、オカマ〜ランドの住民たち、そしてデンスケによる、インペルダウン脱出大作戦!! は始まった。

 

 レベル5.5、オカマ〜ランドは、レベル1やレベル2など、各フロアにそれぞれ抜け穴が繋がっている。なので俺一人だけならそこから脱出してしまうのが一番手っ取り早いのだろうが……今回は大勢での脱出が目的である。

 という訳で……

 俺達のインペルダウン脱出大作戦!! は、監視電伝虫の目の無い、レベル5・極寒(ごっかん)地獄(じごく)からスタートする事となった。

 のだが……

 

「ぶぁああ……!!? さ、ささ、さっぶぅうう……!!!」

 

 ここのフロア! 流石に寒すぎないですかね!?

 俺はガタガタと震えながら、自分の尻尾をギュッと抱きしめた。

 レベル4・灼熱地獄の時は、あまりの暑さに尻尾の毛を全部剃ってしまいたいとか言ってたけど、剃らなくてホント良かった……

 

「皆、よく聞いて! ラインボーイの活躍で、インペルダウンの戦力は今ガタ落ち状態ッチャブル! それでも看守がゼロになった訳じゃない。援軍が来てるかもしれない。気を引き締めて、充分注意しながら上を目指すわよ!」

「「「「ウォオオオ〜〜!!」」」」

 

 震える俺を尻目に、イワンコフがオカマたちに号令をかけている。

 ……気合い入れるのは良いと思うけど、そういうのはレベル5.5ですませとこうよ……わざわざこんなクソ寒いところでやらなくてもさ……

 

『ジジジジジジジジジジ……』

 

 ほら、デンスケとか可哀想なくらい震えちゃってるし……電伝虫は寒さに弱いんだぞ。

 仕方ないのでデンスケはイワンコフの頭の中にこっそり入れておく事にする。モジャモジャパーマの中なら、ちょっとは温かいでしょ。

 

「さァ行くわよ! 麦わらボーイ! エースボーイ! ラインボーイ!」

「二人ならもう先行っちゃったよ」

「自由か!! ヒーハー!!」

 

 極寒地獄の中を、いち早く駆け抜けていったルフィ&エース。それに続いていく形で、俺たちもずんずん先へと進んでいく。

 

「行くぞー! 続けーー!!」

「「「「オオオオーー!!」」」」

 

 ……ズズン……ズズン……

 

 道中、看守たちが何人か立ち塞がってきたものの……マゼラン、ハンニャバル、ザーメンのシリュゥ、サディちゃん、獄卒獣など……お相手のメイン戦力はあらかた片付け終わっているので、レベル5とレベル4、拍子抜けするくらいあっさり突破する事ができた。

 

「んがーはっは! ラクショーねい!」

 

 溢れ出るヌルゲー臭。ボンクレーもいつもより多く回っております。

 このまま誰一人かける事なく、無事インペルダウンからすんなり脱出……できればよかったのであるが……

 そうは問屋が卸さないのが人生である。

 

 ……ズズン……ズズン……

 

 “問題(ハプニング)”はレベル3・飢餓(きが)地獄(じごく)にて起こった。

 いや、出くわしたという表現の方が正しいだろうか……

 俺たちの目の前に、どう見ても看守ではない、謎の怪しげ5人組が現れたのである。

 

「おおっ?! エースじゃねェか! ゼハハハハ!! まさか本当に解放されてるとはな!」

「ウィーハッハ〜! こりゃ驚いたぜ!」

「運命に偶然などないのである……つまり……」

「お前は……運がいいな……ゲフッ」

「ホホホ!」

 

 現れた怪しげ5人組。

 汚ぇ髭面のメタボ男と、マスクを被ったムキムキ男と、変なメガネのヒョロヒョロ男と、今にも死にそうなゲッソリ男と、色白のシルクハット男……

 全員が身長3メートル半程度の高身長たちだ。うん。ムカつく。

 

 一体こいつら何者なんだ?

 インペルダウンの極秘戦力……って訳でもなさそうだし。見聞色で見た感じ、な〜んか不気味な気配がする。

 訳が分からず首を傾げていると……

 

「…………!! ティーチ……!!」

 

 髭面メタボ男の顔を見たエースが、ギリリと歯を食いしばって、その表情を怒りに染めた。

 ……?? どうしたエース……って、ああ! こいつか! エースを敗北者にして、インペルダウン送りにして、七武海の称号を得たっていう、海賊は!!

 通称……黒ひげ。

 この騒動の全ての元凶と言える人物だ。なんでここいんの?

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「ゼハハハ! まさかまた生きて会えるとは思わなかったぜ、エース隊長!」

「……何が隊長だ。お前は白ひげ海賊団唯一の掟、仲間殺しの大罪を犯したクソ野郎だ。サッチの無念はおれが晴らす!」

「それが出来なかったから今ここにいるんだろうが! なあ? エース“隊長”! ゼハハハハハハハハ!!」

「火拳!!」

「ブオッ!?」

 

 高笑いしている黒ひげの顔面に向けて、いきなりエースが炎の拳を叩き込んだ。

 見事な不意打ちである。

 

「ぐわっちちち!! あぢィイ!! 何しやがるエースこの野郎!!」

「それはこっちのセリフだ! 今度こそ落とし前つけてやるぞ! ティーチ!」

「あ〜? ゼハハハハ! ……出来ると思ってんのかァ?」

 

 グッと構え、睨み合うエースと黒ひげ。

 ……え? もしかして戦う気? 今ここで!? いやいやいやいや! 俺は慌ててエースにすがりついた。

 

「待て待てエース! 今はインペルダウンからの脱出が最優先事項だろ! こんなのと戦ってる時間ないって!」

「ならお前ら先に行け! 一度向き合ったら、おれは逃げない……!!」

「はぁ?!」

 

 意味分からん。

 俺達はお前を助けに来たんだ。置いてける訳ないだろうが。

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「エースさん。気持ちは分かるがここは一度……」

「おれは逃げねェ!」

「エースボーイ! こいつらの相手をしてる時間はナショナブル」

「おれは逃げねェ!!」

「ジョーーダンじゃな〜いわよ〜〜!」

「おれは逃げねェ!!!」

 

 ジンベエやイワンコフ、ボンクレーが説得しても、全く動こうとしないエース。

 えーー…………なんで逃げないんだよ。

 一度負けてんだろ? 勝てる見込みもないんだろ? なのになんで立ち止まるの? たとえ勝てたとしても、時間失うデメリットの方が今は大きいと思うよ?

 

「……エースは昔から、絶対に逃げないって癖があるんだ」

 

 混乱している俺に、ルフィがエースについての説明をしてくれた。

 なるほど。絶対に逃げない……か、いや全然分かんないし!!

 

 俺の座右の銘は……『逃げるが勝ち』『大は小を兼ねる』『おっぱいがいっぱい』である。

 強敵からは逃げに逃げまくってきた俺からすると、エースの“逃げない癖”は理解不能だった。

 許せないのは分かるけど……俺たちは脱獄中なのだ。今は逃げ一択の時だろう。

 

「よし! エースがやるなら! おれもやってやる! ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)!!」

 

 そしてルフィも行ったぁ!? ヤバイ。本格的に戦闘になってしまう。

 

「ゼハハ……闇水(くろうず)!!」

「うあ……っ!?」

 

 ……って、なんだ!? 黒ひげの手から、黒いモヤみたいなのが出てきて……ルフィの体を吸い寄せて、そして──

 

「喰らえ!!」

「ぎゃああああ!!!」

 

 黒ひげはそのままルフィを掴んで地面へと叩き付けた。血が吹き出し、絶叫して痛がるルフィ。

 は? な、何が起こった?

 今の黒ひげは覇気を纏っていなかった。それなのになんでルフィに打撃が効いた? あいつ、ゴムなのに。

 

「ゼハハハハ! おれのヤミヤミの力の前では! いかなる能力も無力!! エースでさえ歯が立たなかったおれに、お前ごときが勝てるはずないだろう! 麦わらァ!」

 

 あ、自分からネタばらししてくれた。

 どうやら黒ひげはヤミヤミの実とかいう悪魔の実の能力者だったらしい。

 ヤミヤミ……病み? いや闇か。

 まるでラスボスが持っていそうな能力だな。強そう。

 

「ルフィくん! エースさん! くっ、戦うしかないのか……魚人空手……!!」

「ウィーハハハ! 七武海のジンベエだな! やらせねェぜ!」

「ゼハハ! 全員まとめて、闇に引きずり込んでやる! 闇穴道(ブラックホール)! 〜 解放(リベレイション)!」

「「「「ぎゃあああ!!?」」」」

「黒ひげ! ヴァナタよくも私のかわいいキャンディボーイたちを! DEATH(デス) WINK(ウィンク)!!」

「ホホホ、イワンコフ。船長の邪魔はさせませんよ」

 

 ……ズズン……ズズン……

 

 な、なんか総力戦みたいな雰囲気になっちゃってる……!

 まずいぞ……こんな所でちんたら時間使ってたら、マゼランが復活して来ちゃうかもしれない! そしたら全員まとめてザ・エンド。

 この戦い、さっさと終わらせないといけない。その為には……!

 

「よっし! 黒ひげ、俺が相手だ!」

 

 ルフィとエースをピョインと飛び越えて、俺は黒ひげの前へと降り立った。

 戦いをさっさと終わらせる方法……それはやっぱ、敵の首領である黒ひげをさっさと討ち取ってしまう事だろう!

 実は俺には、ここでしか使えない一発限りの“秘策”があるんだ。ふへへへ!

 

 ……しかし、前に出てきた俺を、エースは手で制した。

 

「ライン、そしてルフィ……悪ィが手出し無用で頼む……こいつはおれの元部下だ。おれがケジメをつけなきゃならねェ!」

「エース……!」

 

 あ〜、なるほど。そういう感じですか……

 

「分かったよ……エース」

 

 仕方ないので、俺はそのままエースの後ろに戻る……と見せかけてエースのスネに蹴りを入れた。ゴキッ

 

「い゛ァ……っ!?」

「手出し無用で頼む……キリッ! じゃねぇよアホ! 黒ひげに負けて、インペルダウンに捕まって、俺に助け出されて……そんな今のお前にワガママ言う資格はねー!」

「………ぐっ!」

「こんな言い方はしたくないけど、俺はお前の恩人だ。だから今回だけは俺の言うこと聞け! 下がってろ!」

 

 ぺっぺっぺっとエースを追い払う。エースは何か言いたげな表情だったが……何も言い返せなかったのか、渋々引き下がった。

 

「と、いう訳で、俺が相手だ! 黒ひげ! しくよろな!」

「ほお? あの頑固なエース隊長を引き下がらせるとは……ゼハハ! 知ってるぜ。お前不可視の怪盗だろ? 海軍大将や天竜人に喧嘩を売った、イカれた小人……!」

「……俺、世間でそんな風に言われてんの?」

「ゼハハハハ! 面白ェ! どうだ不可視の怪盗! お前、おれの仲間にならねェか?」

「………は?」

 

 バトルの前の突然の勧誘。

 なんだこいつ? フリーザ様か? もしくはバーン様。

 

「おれたち、良い仲間になれると思うんだ! お前が協力してくれるのなら、おれの計画はほぼ100%成功する! 不可視の怪盗! おれと一緒に世界を取ろう!」

「……いや、世界とか言われても……」

 

 怪訝な表情を浮かべる俺に、黒ひげはさらに言葉を続ける。

 

「もしもお前に意中の悪魔の実とかがあるんなら……手に入れるのを手伝ってやってもいいぜ? 俺は能力者をぶっ殺して、悪魔の力を奪い取る方法を知ってるんだ」

「………」

 

 ──ちょっとだけ、ドクンとした。

 黒ひげのその言葉に……ほんのちょっとだけ、惹かれてしまったのだ。

 でも、俺の答えは変わらない。NOだ。

 俺は人を殺してまで、自分の欲望を優先するような、そんな“ちっせぇ男”にはなりたくないから!

 

 そう言って黒ひげの勧誘をけってやろうとした、その時だった──

 

「ふざけんな! ラインはな! お前なんかの仲間にはならねェ! ラインはおれの仲間になるんだ!」

 

 俺より先に、ルフィが否定の声をあげてくれた……って、いやいやいや! そうじゃねーだろ! 俺はお前の仲間にもならねぇって、前にちゃんと断っただろ!?

 そんな風に思っていると──

 

「ヴァナタたち! 待ちなさい! ラインボーイはヴァターシたち、革命軍が狙っている逸材なのよ! 勝手に勧誘してんじゃナッシブル!!」

 

 イワンコフ! お前もか!?

 どうやら俺は革命軍にまで狙われてたらしい……

 うん。普通にやだよ! オカマだらけの危険な組織とか! ルフィの父ちゃん(ともだちのちちおや)がボスってところも嫌だ! ぜってー入りたくねー!

 そんな風に思っていると──

 

「ま、待て! お前たち! ラインさんは魚人島の救世主なんじゃ! 勝手なこと言うんじゃない!」

 

 ジンベエまでもが声を上げてきた。……もうええわい!! 俺への勧誘合戦!!

 

「全部断らせてもらう! 俺を自由に出来るのは、俺が愛する女だけなんだよ!!」

「ゼハハハハ! そうか、そりゃ残念だ!」

 

 俺は尻尾に武装色の覇気を込めた。

 

「あんまり長引かせたくないんでね……黒ひげ、このバトルは……一発で決めてやる!」

「ほお? 出来るもんならやってみやがれ」

「我流・トンタッタコンバット……」

「!!」

「しっぽインパクトォ!!」

「ぐぶォオオッ!!」

 

 ドンッッッ!!! と、今の俺に出せる最高火力。尻尾の一撃が、黒ひげの鳩尾にモロに入った。

 勢いそのまま背後に吹っ飛んでいく黒ひげ。だが……

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「ゲホッ……! ガハッ……! はぁはぁ、なんて一撃だ……小人の常識を超えてやがる……! しかし、これがお前の言う一発ってやつなら、期待ハズレもいいところだ……ゼハハハ……」

 

 ふ、普通に耐えられた……!?

 武装色を使ってガードされた訳じゃない。本当に、モロに入ったはずなのに……耐えられた……

 どんだけタフな野郎なんだよ!!?

 

「じゃあこんどは、こっちから行かせてもらおうか? なあおい! 不可視の怪盗! ゼハハハハハハハハ!!」

 

 そして反撃とばかりに、両手から巨大な闇の塊を作り出してきた黒ひげ。な、なんかヤバそう……

 

「闇に死ね! 闇黒星(ダークマター)!!」

「ぐ!? うお……!! これは、引力……!?」

 

 ヤバイ! 吸い込まれる!

 

「ゼハハハ! ゼハハハハ! ゼハハハハハハハハ!!」

 

 あ〜……ダメだ……これは抵抗できない。やられる……

 黒ひげは七武海。エースをも倒してしまった男だ。そんな男に、俺ごときが勝てるはずなかったんだ……

 一発で決められなかった時点で、この勝負は俺の負け……

 

「………………な〜んて、言うと思ったか? 黒ひげ!」

「ゼハ……は?」

 

 闇に吸い込まれていく絶体絶命な状況の中……俺はニヤリと笑みを浮かべた。それを見て黒ひげが表情を歪める。

 何かがおかしいと思ったか? だがもう遅い!

 

「言ったよな? “一発で決めてやる”って……その一発を決めるのは……実は俺じゃないんだよな〜〜!! やれ! アーロン!!

 

「了解だ! ラインの大アニキ!!」

 

 ガチャン

 

「は?」

 

 瞬間、黒ひげの目が点になった。

 突然サメの魚人が背後から出てきて、自分に“何か”をしてきた……黒ひげからするとそんな状況。

 だけどその“何か”を避けれなかった時点でお前の負けだ。

 

 何故ならこれが俺の言っていた秘策。一発で決めてやるというのは……背後に隠れていたアーロンが……

 お前に海楼石の手錠をハメてやるという意味だったのさ!!

 

「な、なんじゃこりゃァあああ!!??」

「シャ〜ハッハッハ! ざまあみろ! 人間!!」

 

 うろたえる黒ひげ。

 海楼石の手錠は能力者の力を封じ込める海の力を持った手錠である。

 それをハメられた事で、黒ひげは闇を作り出せなくなり、俺は闇の中から解放された。

 

「ふ〜、危な……ふへへへへ! よくやったぞアーロン! ナイスタイミングだった!」

「ラインの大アニキの為なら! おれァなんだってやってやるぜ! シャハハハ!」

 

 イエ〜イ! とアーロンとハイタッチ。

 唐突なるアーロンの登場により、黒ひげ海賊団は勿論のこと、ルフィも、エースも、イワンコフも……この場にいる全員が驚愕の表情を浮かべている。

 ……特にジンベエはあり得ないくらい目を飛び出させていた。

 

「ア、アア、アーロン!?」

「ん? おお! ジンベエのアニキじゃねェか。久しぶりだな」

「久しぶりだな。じゃないわい! アーロン! お前、こんな所で何をやっとる!?」

「何って……ラインの大アニキの舎弟だよ。見りゃ分かるだろ」

「大アニキ!? 舎弟!? ええええええ〜〜!!?」

 

 ふへへへ、そうなのだ。覚えているかな? レベル3でアーロンと会った時……俺は『いくつかアーロンと取り決めをして』それからレベル4へと下りていった。

 

 その時の取り決めというのがこれである。

 

 

 

 ───────

 

 アーロンの魚人生を聞き、俺の事もちょっぴり伝えた、その後の話だ……

 

『ラインさん……いや、ラインの大アニキ! おれをあんたの舎弟にしてくれ! あんたの作る世界が見たいんだ! 頼む!!』

『は……?』

 

 檻の中のアーロンが突然俺に向かって土下座をしてきて、舎弟にしてくれと懇願してきたのである。

 

『…………』

 

 それを聞いた時、俺は……

 たぶんめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていたと思う。

 だってアーロン(こいつ)って、人間の村を支配とかしてたヤベー奴なんだろ? そんな奴を舎弟にするとか、普通に嫌だわ。

 そんな風に考えていると……

 

『役に立たないと思ったら殺してくれて構わねえ! ラインの大アニキの言う事は全部聞く! だから頼む……! ラインの大アニキみたいなでっけェ男に、おれはついて行きたいんだ!』

『…………え? で、でっけェ男……? 俺が……?』

『もちろんだ! ラインの大アニキほどでっけェ男は他にいねェ!』

『…………ふへ』

 

 俺は悩んだ。かなり悩んだ。

 正直言って……断りたい。でも、なんかこいつ悪い奴じゃなさそうだし……真剣(ガチ)って雰囲気は伝わってくるし……ハチの奴とも知り合いみたいだし……

 俺ってほら、でっけェ男だし! ふへへへへ……

 

『む〜ん……し、仕方ないにゃあ……分かったよ。舎弟にしてやろう』

『……!! やった!!』

 

 悩み悩んだ末、俺はアーロンを舎弟にしてやる事を選んだ。

 ……先に言っておくが、でっけェ男って言われたのが嬉しかったからとかじゃないぞ? 違うぞ? 違うからな?

 

 ……まあ、そんなこんなで、アーロンの手錠と檻の鍵を外してやった俺は、エースを助け出してくるまでの間、アーロンに檻の中での待機を命じた。

 戻ってきた時、もしも俺が強敵と戦っていたら……そん時は俺の戦闘をサポートしてくれとも言っておいた。

 

 今外してやった手錠を使って……とな。

 

 これがレベル3で行われていた、俺とアーロンとの取り決めである。

 

 ───────

 

 

「ふへへへへへ! 作戦成功!」

「シャハハハハ! 流石は大アニキだ!」

 

 幸運だったのは、アーロンにハメられていた手錠が、海楼石の手錠だったってことだな。

 おかげで黒ひげは一発ノックアウトだ。能力者はツライね。

 

「ぐっ!? クソ! 能力が使えねェ! 力も抜ける……海楼石か!? 畜生ォ!!」

「ふ〜へへへへ〜! 俺との戦闘中、まさか海楼石の手錠を持ったアーロンが、背後からこっそり忍び寄ってきてるとは、思わなかっただろ? 黒ひげ〜」

「ぐうううううう……ッ!! なんてこざかしいやつだ!!」

 

 腕をガチャガチャ動かして、なんとか手錠を外そうとしている黒ひげだが……

 海楼石の強度はダイヤモンド並み。外れんよ。ふへへ……

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「せ、船長がやられちまった……!」

「まさか……そんな……!」

「……これも運命か……」

「ゲホッ」

 

 首領を失った黒ひげ海賊団のメンバーは……まあ、そこそこ強い連中の集まりって感じである。

 そしてそこそこ程度の奴らに倒されるほど、俺たちは甘くない。

 

 バキッ! ボカッ! ドカッ! ズムッ!

 

「はい。これにて黒ひげ海賊団、討伐完了! これで文句ないでしょ? エース」

「……あ、ああ……そうだな……ライン、ありがとう……」

 

 檻の中にぶち込まれ、全員ボッコボコ状態の黒ひげ海賊団。それを見て、嬉しい! ……というよりは、絶句。という表情のエース。

 

「……ま、まさかこんな方法で、こんなあっさりと黒ひげを倒してしまうとは……」

「ヴァターシ、今日はもうずっとラインボーイに驚かされっぱなしッキャブル……」

 

 そしてジンベエとイワンコフも、絶句という表情を浮かべていた。

 まあ驚くよね。こんな形で決着つけちゃうとは。

 アーロン舎弟にしておいて良かったなぁ〜。してなかったらここで詰んでたかもしれん。

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「くそっ! ふざけんな! おれの計画がこんなところで終わっていいはずがねェ!! 出せ! 今すぐここから出せェ!!」

 

 檻の中からギャーギャー騒いでいる黒ひげ。

 ざまあである。

 

 ……ズズン……ズズン……

 

「畜生!! ようやく白ひげと海軍の隙をついて、ここまで入り込んで来られたってのに……! こんなところで捕まっちまうなんて……!」

「ふへへへ……へ?」

 

 ……ん?

 何だ今の黒ひげの発言は? 何か違和感があったような……

 白ひげと海軍の隙をついてここまで入り込んできた? それって……どういう意味だ?

 

 ……ズズン……ズズン……

 

 …………それとさ、ずっと気になってたんだけど、さっきから鳴ってるこの地響きみたいな音と振動はなんなんだろうね?

 ズズン、ズズンてやつ。な、なんか……凄く嫌な予感がしてきたんだけど……

 

 ……ズズン……ズズン……

 

 

 

 黒ひげを倒した俺たちは、そのままレベル3を抜け、レベル2、レベル1の階段を駆け上がっていった。

 この階段を抜けたらそこはもう正面玄関。つまりインペルダウンからの脱出まであと一歩。そう思っていた。

 しかし──

 

 ズズンッ!! ズズンッ!!

 

「………………は?」

 

 階段を駆け上がり、正面玄関にたどり着いた俺は、まず天井を見上げた……いや、見上げられなかった。

 何故ならそこには、天井など存在していなかったからだ。

 代わりに広がっているのは空。曇天の曇り空……というか、天井だけじゃなくて壁も無い。

 インペルダウンの地上1階が、床以外、全て破壊しつくされていたのだ。

 

 ズズンッ!! バキッ! ピュィン……ドドォオン!! グツグツ……ドガァアンッ!! カチ、コチ……ズババババッ!!

 

 そして見える、聞こえる、まるでこの世の終わりのような光景。

 

「グララララ……!!」

大噴火(だいふんか)!!」

「ブリリアント・パンク!!」

鳳凰印(ほうおういん)!!」

氷河時代(アイスエイジ)!!」

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)!!」

「キシシ……! 角刀影(つのとかげ)!!」

「メロメロ甘風(メロウ)!!」

超過鞭糸(オーバーヒート)!!」

 

 インペルダウンの地上1階で! 白ひげ海賊団と海軍と七武海が! 戦争してるんですけどーーッ!!?

 

 

 

 




次回、絶望のライン。
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