ラインがマリージョアで起こした大事件から一夜が明けた……
世界政府は今回の事件、その“全て”を隠蔽しようと考えた。……やらかされた内容を考えたら当然の話である。
1・不可視の怪盗ライン。そしてその仲間に、あっさりとマリージョアに侵入される。
2・未知なる“人食い植物”を、神の地のあちこちでバラまかれる。
3・青キジ、赤犬、黄猿、藤虎、緑牛……海軍の最高戦力五人が出撃するも、まとめて返り討ちに合う。
4・マリージョアの“全て”の奴隷達を逃される。
5・ラインとその仲間達は、誰一人欠ける事なくマリージョアから逃げおおせた。
……とてもじゃないが、世間に公表できる内容なんて一つも無かった。
幸いにもこの事件の詳細を知る者は一般人やマスコミの中には存在しなかったので、世間にバレる心配はない……はずだった。
しかし……
「クワハハハ! 素晴らしい! このようなビッグ・ニュースが流れてくるなんて! 撮られている写真も完璧だ! よし、明日の一面はこれに決まりだ!」
……とある“人物”の手によって、この事件の詳細は、
モルガンズはラインの起こしたこの事件を大変面白がった。
「こんな1000年に1度あるかって特大ニュース! いくら大金を積まれたって揉み消しなんてさせやしねェ! さあ運び尽くせ! 社員達! ビッグ・ニュースだ! クワハハハハハハ!!」
こうしてライン達の
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──カマバッカ王国──
「イヤ〜ン! 今日の新聞! 皆、見たァ?」
「まだ見てないわ〜、どれどれ〜?」
「マリージョア襲撃事件!? なにこれ!? なにこれ!?」
今日も今日とて、屈強な
いつもと違うのは、その手には新聞が握られているというところだ。
「犯人は不可視の怪盗ライン……って、これもしかして私達の知ってる、
「デンスケちゃんの事も載ってるわ! 間違いない!」
「なんて危険な事してるのよ〜ん!」
「……でも、とりあえず捕まる事なく無事逃げられたみたいで安心したわー」
「うふふふふ〜ん♡」
「あはははは〜ん♡」
ライン達の起こしたニュースを見て、イヤンイヤンと噂話に花を咲かせるオカマ達。
そんな彼女らを横目に、この国の女王、エンポリオ・イワンコフは非常に真剣な様子で新聞を読み込んでいた。
「ふゥんむ。ラインボーイ……あの子ら、一体何をしでかしチャブルのよ……流石のヴァターシも、一本取られた気分だよ……」
「神の地を襲撃!? これってホントぅ? 流石に冗談よね? ジョーダンじゃないわよーー!! えっ!? 冗談じゃないの!? んがっはっはっは!」
横でクルクル回って騒ぎ立てるボンクレーを尻目に、イワンコフは自身の頭を抑える。
一般人からしたら当然……革命軍の幹部から見ても今回のニュースはあまりにも
今は落ち着いているイワンコフだが、最初見た時など、驚きのあまり飛び出した目で新聞に穴を開けてしまったほどだ。
特に目を引いたのは、奴隷を“全”解放という部分。
「全解放……という事は、ヴァターシ達の同胞、バーソロミュー・くまも解放されっチャブルってこっティブルかしら?」
自我を奪われ、政府の人間兵器へと改造されてしまった、かつての友……
それを思い出しながら、イワンコフはふぅ……とため息をつく。
「とりあえず一度……ドラゴンに連絡ね。彼の指示を待ちましょう。ヒーハー!!」
そう言ってイワンコフは通信用電伝虫をパーマの中から取り出すのだった。
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──女ヶ島、アマゾン・リリー──
なので、島の外でどんな
のだが……
「皆! 見て!」
「どうしたの?」
「蛇姫様が外の世界の新聞を持ち帰ってくださったのよ!」
「? それがどうしたの。外の世界の新聞なんて興味ないわ」
「うふふ、そう思うでしょ? でも一面に載ってるのはなんとね……ライン先生なのよ!!」
「「「「ライン先生!?」」」」
ハンコック率いる九蛇海賊団は、島の外へ度々
そんな彼女らが今回持ち帰ってきた品の中に、今回の世界新聞が紛れ込んでいたのだ。
それは珍しくアマゾン・リリーの女達の興味を引く事となった。
「ライン先生。頂上戦争の時に死んだかもしれないって言われてたのに……やっぱり生きていたのね!」
「流石は私達のライン先生!」
「ライン先生の顔、2年ぶりに見れちゃった〜♡ きゃ〜♡」
「またライン先生に凸凸凸とか、凸凹について教えてもらいたいな〜♡」
「新聞によると……先生は、まりーじょあ? って所に攻め込んでたみたいね」
「奴隷として捕まってた人達を助けてあげたそうよ。よく分からないけど、流石はライン先生だ♡」
新聞に載っているラインの姿を見て、キャイキャイと黄色い声で盛り上がる乙女達。
2年前、この島の
「そうだ! マーガレットにも教えてあげましょうよ!」
「いいわね。あの子、ライン先生がいなくなってから、謎の奇病で倒れちゃってたから」
「確か、コイワズライ? って、ニョン婆様が言ってたわ」
「ライン先生の記事を見せたら、もしかしたら元気になるかもね!」
新聞を握りしめ、乙女達はマーガレットが寝込んでいる居住区へと急ぐのだった。
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──大監獄インペルダウン──
2年前、頂上戦争の舞台となってしまった事で、一階の大部分が消し飛んだりと、大変な被害を被ったインペルダウンだったが……
海兵らの必死の復旧工事により、現在はすっかり元の鉄壁要塞の姿を取り戻していた。
「むっふふふ〜♪ 今日も署長椅子の座り心地は、非常に素晴らしいでございマッシュ! でしょうが!」
2年前の失態の責任を取る形で、降格処分となったマゼラン。
それに代わって新たに監獄署長となったハンニャバルは、今日もご機嫌そうに署長椅子の上で寛いでいた。
「ようやくこの地位まで登り詰める事が出来た。……それじゃあ次は、インペルダウン2号店とか、考えちゃいマッシュか? ゆくゆくは3号店、4号店と広げていき……私が全てのインペルダウンの総支配人に……!」
ニヤニヤ笑いながら、新たな野心を燃やすハンニャバル。
と、そんな時、コンコンと署長室の扉がノックされた。
「失礼、ん〜〜♡ しますわ。ハンニャバル署長」
返事を待たずして部屋の中に入ってきたのは、インペルダウンの拷問係。獄卒長・サディちゃんであった。
彼女の手には今日の新聞が大切そうに握られている。
「おお、サディちゃん。どうかしたのか?」
「実はですね、ハンニャバル署長に……折り入って、ん〜〜♡ お願いがあるんです」
「お願い?」
「はい。ハンニャバル しょ・ちょ・う♡ にしか言えない、ん〜〜♡ 大切なお願い事ですわ。ん〜〜♡」
「署長である私にしか言えない? ふ、ふふふふっ! そうかそうか! 私にしか言えないのか〜!」
血で血を洗い流すような残虐な性格をしている拷問大好き女、サディちゃん。
そんな彼女の、かつてないしおらしい態度に、思わずデレ〜っと鼻の下を伸ばしてしまうハンニャバル。
「そ、それじゃあサディちゃん! このハンニャバル署長に、何でも相談してみなさい! なんでも聞いてやるぞ! なんたって私は! 署長でございマッシュからな!」
「流石は署長! ん〜〜♡ 大変頼りになりますわ!」
「そうだろうそうだろう! わはは! ……で、お願いってなに?」
ドキドキしながら内容を聞いてみると──
「私、サディちゃんは、今日限りでインペルダウンのお仕事を辞めさせていただきます! 今までお世話になりました! ん〜〜♡」
「…………は?」
ハンニャバルのアゴが署長机の上にガツンと落ちた。
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──魚人島──
魚人&人魚達によるお祭り騒ぎが開かれていた。
「ぎゃーー♡ 我らが救世主!! ライン様が生きていたーー♡」
「そりゃそうだ! 赤犬なんかに殺されるはずないって、おれは信じてたぜ!!」
「我らが救世主様は、またもやたくさんの奴隷達を解放したようだ!」
「たくさんなんてもんじゃねェ! 全員だ! 全員!!」
「しかも今回はそれだけじゃなく、大将4人と元帥1人まで、まとめてやっつけてしまわれたらしいわ!」
「い、一体どこまで伝説を広げられるんだ〜!?」
「「「「きゃーー♡ 我らが救世主♡ ライン様〜〜♡♡♡」」」」
男も女もオカマ達も、皆が目をハートにして、ラインの載った新聞をバッサバッサと旗のように振っていた。
「すぐにネプチューン王に報告しないと!」
「流石にもう知っておられるだろう! ネプチューン王様は誰よりもライン様の動向を気にしておられたからな!」
「そうだな! なんせライン様と人魚姫様は……」
「おおっと、そうだ! 1年前、新たに七武海に就任されたアーロンさんにも報告しないと!」
「ライン様の安否を一番気にしてたのはアーロンさんだもんな!」
「忙しくなってきやがったぜ!」
「「「「ラ・イ・ン!! ラ・イ・ン!!」」」」
今回の新聞で、世界中のどこよりも盛り上がりを見せたのは……もしかしたらこの魚人島だったのかもしれない。
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──パンクハザード──
ここは“かつて”政府の研究施設があった島。
化学兵器の暴発事故により、どんな生物も生きられなくなってしまった……と思われている島。
「……ッ!! ら、ライン……生きていたのね……!」
そんな“無いようで有る”、まるで
「……う、ううぅ……ぐす……ぐす……」
「シュロロロロ! なんだなんだァ? 雪のように冷たい女だと思っていたお前が、まさか涙してんのかァ? こりゃ珍しい事もあったもんだ! シュロロロロロロ〜!」
涙の止まらない女性の隣で、独特の笑い声をあげながら飛び回る男がいた。
彼はニヤニヤ笑みを浮かべながら女性に尋ねる。
「お前がそんなに感情を揺らすなんてな! 新聞には一体何が書いてあったんだ? シュロロロ!」
「…………………自分で読んでみたらいいわ」
そう言って女は男に新聞記事をベシッと突きつける。そこに書かれていたのは……
マリージョアが半壊して、奴隷が逃され、海軍の最高戦力が全滅したという内容……
「えーー〜〜ッ!!?」
男はそのままひっくり返った。
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──海軍本部。議事の間──
選りすぐりのエリート海兵、いわゆる将官達が話し合いを行うこの場では、現在……
今回の事件の元凶であるラインについての緊急会議が開かれていた。
「まさか……不可視の怪盗が生きていたとは……」
「2年前の頂上戦争で、奴は赤犬さんのマグマで焼かれて死んだはずだろ?」
「一体どうやって生き延びたんだ……」
「そ、そそ、それより今回の事件だ! ま、マリージョアは壊滅的大被害だそうだ! どうすんだ!?」
「元帥と大将がまとめてやられたなんてシャレにならん」
「うおおん! お、おれの……おれのウサちゃんがァ……!」
沈んだり、パニックになったり、泣き叫んだりと、とにかくネガティブな空気が充満する会議室……
そんな中、司会進行役のブランニュー准将が両手をパンパンと叩いて全員の注目を集める。
「皆さん。お静かに!」
「「「「……!」」」」
「……まずはハッキリと申し上げておきましょう。十二分に評価していたつもりでしたが、我々は不可視の怪盗の力を、見誤っていたと……」
「「「「!!!」」」」
ブランニューの言葉に、ゴクリと生唾を飲み込む海兵達。
「……今まで我々は、不可視の怪盗は一匹狼で、兵力などは持ち合わせていないと考えていました。しかし……」
部屋の壁にウィ〜ンとスクリーンが下ろされ、そこに今回の新聞記事のとあるページが映し出される。
謎の
「今回の事件で……不可視の怪盗は、未知なる人食い植物を使役する事が判明いたしました。詳しい数は分かりませんが、マリージョアに解き放たれた人食い植物の数は、およそ千……!」
「「「「千!?」」」」
「数による恐ろしさの程は、もはや説明するまでもないでしょう」
海の皇帝と呼ばれている“四皇”しかり、海の治安維持を担う“海軍”しかり……
組織の恐ろしさとは“数”。すなわち兵力である。
人食い植物という気軽に使い捨てに出来そうな兵力は……ある意味ザコ海賊の群れよりもやっかいかもしれない。
「不可視の怪盗は一体いくつの人食い植物を操るんだ?」
「数千……へたすりゃ数万とか、それ以上の可能性だってある訳だよな!?」
「ひ、人食い植物なんて、どう対処すればいいんだよ……!」
「ああ、くそ、気が滅入る……」
暗い雰囲気になりかけたところで、滅入るのはまだ早いと、ブランニューは次の画像をスクリーンへと映し出す。
「……植物だけではありません。今回の事件で、不可視の怪盗には“
そうして映し出されたのは、何故か自撮り風画角の、天使の少女。
「不可視の怪盗の仲間。一人目はこの……デンスケと名乗る、謎の少女です!」
「デンスケ……?」
「聞いた事のない名だ……」
「見たところ、まだ子供か?」
「翼が生えている……」
「出生は不明。種族も不明。頭の上に浮かぶ光る輪、背中に背負った電伝虫のような殻、そして白鳥のような翼から、恐らく何らかの能力者だとは思われますが……この少女について分かっている事はほとんど何もありません」
資料を捲りながらブランニューは続ける。
「相対した黄猿さんいわく、攻撃してもダメージは吸収されてしまうそうです。覇気を使う姿は確認されていませんが……相当な速度で空を飛び回るそうです」
「き、黄猿さんの攻撃を吸収!?」
「
「……能力の詳細が分からないのは思った以上にやっかいだな……」
「見た目天使っぽいが、背中の殻が謎だな……あれはなんだ?」
「うう〜ん、分からない……」
デンスケという少女について、色々考察し合う海兵達。
その正体は“ヒトヒトの実・モデル天使”を食べた電伝虫な訳だが、当然その答えにたどり着ける者はいなかった。
「飛行能力に加えて、ダメージ吸収能力。……そして不可視の怪盗という大犯罪者に加担している点から考えまして……」
「
「「「「……!!」」」」
全くの無名だった少女に、2億ベリーの懸賞金。たった一度の事件への介入でだ。
政府がいかに今回の事件を重くみているのかがよく分かる金額設定だった。
「……続きまして、ご存知の方も多いと思われますが……」
「「「「!!!」」」」
スクリーンに映し出される画像が、天使の少女から、ウサギの少女のものへと切り替わる。
瞬間、海兵達の空気が一変した。
「……ここ2年で討伐した海賊は数しれず……最近では、かの海賊女帝や人魚姫にも並ぶ“美女”として話題沸騰中。シャボンディの
ドッドッドッと海兵達の心臓が早鐘を打つ。そして……
「億狩りウサギこと、エスネが! 不可視の怪盗の仲間であった事が判明いたしました……!!」
「「「「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーー!? おれ達のアイドル、エスネちゃんが〜〜!!?」」」」
ハッキリと告げられてしまった、あまりにも残酷な現実に、多くの海兵達が頭を抱えてその場にガクリと崩れ落ちた。
「うおおおん……! 嘘だと言ってくれェ! おれ達のエスネちゃァ〜ん!!」
「おれ、億狩りウサギファンクラブの会員なんだよォ……」
「おれだってそうだよ〜! 会員No.0721!」
「億狩りちゃんのブロマイド! 毎月出るやつ! 必ず買ってたのに! ……いや、これからも出たら買うけど……」
「うおー! たとえ敵になったとしても! それでもおれはエスネちゃんが好きだぜーー!!」
強く、可愛く、美しい。
しかも凶悪海賊を次々に捕まえてくれる、正義の賞金稼ぎ。そんなエスネの存在は……
民衆だけでなく海兵達からも多くの
「……皆さんお静かに。皆さんのショックは大いに理解できます。かくいう私も……億狩りウサギファンクラブ、会員No.0003でしたから」
((((ブランニュー准将、めっちゃ古参ファンだ……!))))
もしも海兵になってくれたら、間違いなく中将クラス……将来的には大将だって夢ではないだろうと噂されていた賞金稼ぎ界のアイドルが……よりにもよってマリージョア襲撃犯の仲間だったなんて……
海兵達のショックは海よりも深かった。
「……ここ2年で億狩りウサギが稼いだ懸賞金額の合計は、90億ベリーを超えています。……もしもこれが不可視の怪盗からの指示で稼がされていたものだった場合……奴は膨大な資金力までも手に入れてしまった事となる。……自らは潜伏して、代わりに部下に稼がせる……恐ろしく狡猾で用意周到な作戦だと言えるでしょう」
実際のところ、ラインが死んでしまったと思い込んだエスネによる、ただのヤケクソ暴走だった訳だが……
そんなの海軍からしたら分かるはずがない。
「“億クラス”の海賊を何人も捕まえる戦闘力、強い覇気、そして人気と人望、知名度から……!」
「億狩りウサギのエスネを……懸賞金8億2000万ベリーの賞金首と致します!!」
「「「「うおおおおーーッ♡ 億狩りウサちゃ〜ん♡♡」」」」
映し出された手配書を見て、何故か無駄に盛り上がる海兵達。
何人かの女海兵達が、「やめんか!!」と男共の頭をしばき倒していた。
「……続きまして、不可視の怪盗の仲間……と決まった訳ではありませんが、今後不可視の怪盗に加担しそうな、実力者を2名、紹介しておきましょう」
そうしてスクリーンに映し出されたのは、マリージョアに奴隷として捕まっていたが、今回の事件で助け出された元七武海2人……ゲッコー・モリアと、バーソロミュー・くまであった。
思わぬ実力者の姿が映し出された事で、ゴクリと息をのむ海兵達。
「……今回の襲撃事件で、ゲッコー・モリアは不可視の怪盗に力を貸している場面が目撃されています。しかもそれだけではありません。不可視の怪盗達がマリージョアから逃げ出した後で発覚した事ですが……天竜人の“影”が、およそ数百人分、盗まれていた事が分かりました!」
「はァ!? 影? 天竜人の!?」
「数百人分!?」
「そ、そんな事が出来るのはカゲカゲの実の能力者であるモリアだけだ!」
今明かされる……
55話にて、モリアがラインの元に合流するのが遅れていた理由……それは天竜人達から影を盗んで回っていたからだったのだ。
転んでもタダでは起きない男。それがモリアなのである。
「お陰で影を奪われた数百人の天竜人達は、太陽の下に出られなくなってしまいました……!」
「さ、最悪だ……!」
「天竜人の影という、とんでもない人質を取られちまったのか……」
「もしかしたら、モリアが影を盗んだのは、不可視の怪盗の指示かもしれんぞ……!」
「そうか! 確かに! 不可視の怪盗ならそうする!」
「七武海を操って天竜人の影を盗ませるなんて……! 不可視の怪盗め!」
「なんて罰当たりな奴だ!」
天竜人の影を盗んだのは……完全にモリアの独断行動によるものなのだが……
何故かラインが影を盗ませた“真犯人”。という空気が出来上がってしまった。日頃の行いのせいである。
「……続きまして、こちらも元七武海の一人……暴君・バーソロミュー・くまですが……!」
「「「「……!!」」」」
「何故かは分かりませんが、くまの自我が、復活してしまいました!」
「「「「はあぁあああああッ!!?」」」」
告げられた、あまりにもまさか過ぎる発言に、多くの海兵達が素っ頓狂な声をあげた。
バーソロミュー・くまといえば、世界一の天才科学者、Dr.ベガパンクの改造手術によって、記憶を消され、自我を奪われ、今や海軍の人間兵器と化した男である。
そんな男の……記憶が復活? 自我が復活?
世界政府にとって、それがいかに危険な事なのか……分からない海兵はここにはいない。
「不可視の怪盗がくまに一体何をしたのか……それは分かりません。分かりませんが……! 結果としてくまは記憶を取り戻す事となってしまった! この先くまは、海軍と敵対する事となりましょう……!」
「そんなァ!?」
「
「それにニキュニキュの実の厄介さはどうする!?」
「もしかして不可視の怪盗は、ニキュニキュの実の移動能力を手に入れようとしているんじゃないのか!?」
想像はどんどん最悪な方向に向かっていく。
ブランニュー准将は、一度ハァ……とため息をつくと、そのままモリアとくまの新たな手配書をスクリーンへと映し出した。
「当然、七武海をやめる事となったこの2名にも懸賞金はつきます。“死者の王、ゲッコー・モリア”。10億9600万ベリー!! そして、“暴君くま”。12億9000万ベリー!!」
「「「「……!!」」」」
元七武海……
最悪の2人が敵に回ってしまった……これも全て、不可視の怪盗のせいである。
「ついでに、ゲッコー・モリアの配下である、ゴーストプリンセス・ペローナの姿も今回確認されましたので、彼女にも一応、6700万ベリーの懸賞金をつけておきます」
もうお腹いっぱいだ……大勢の海兵達がそう思った。
しかし特大のメインディッシュがまだ残っている。
「では、最後に。問題となる、不可視の怪盗・ラインですが……」
「「「「きた……!!」」」」
「上記に述べました多量の兵力!! 配下のネームバリュー!! そして仲間の協力があったとはいえ、元帥と大将をまとめて倒してしまったその戦闘力!! 何より起こした事件の重さに……!!」
「懸賞金40億3232万ベリー!! “不可視の怪盗・ライン”を! 革命軍に並ぶ世界政府の敵対組織……そして! 四皇に次ぐ危険人物とみなします!!」
「「「「ひいいいい〜〜……ッッ!!」」」」
恐れ慄く海兵達。
こうして、それぞれの手配書はその日のうちに、世界中へとバラ撒かれる事となるのだった。