デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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ちびっコウカイ

 デカデカの実を探す為、貨物船へと忍び込み、ドレスローザから果てしない海の旅に出掛けたこの俺、ライン。

 前世も合わせて実は初めての船旅である。のんびりまったり楽しみながらデカデカの実を探し回れればいいな〜とか、そんな風に考えていた。

 

 だがしかし、俺は今、想像していた約50倍は大変な時間を過ごしている。それというのも……

 

「海賊だァーー!! 3時の方角に海賊船が出たぞーー!!」

「ギャーー!!」

「ウワー!」

「きゃぁあ!!」

 

 カンカンカンと船の中で異常事態を知らせる鐘が鳴る。俺は「またか……」とため息をはいた。

 そう、大変というのは海賊船と出くわす、その頻度である。この船に密航して何日か経つが、2日に1回くらいのペースで海賊船と遭遇しているのだ。

 

「海賊多すぎだろ……大海賊時代舐めてたわ……」

 

 今から数えて14年前、俺がまだ1才の頃……

 ゴールドロジャーとかいう、世間で海賊王とか呼ばれていた男が海軍に捕まって処刑された。

 

『おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ……探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた』

 

 ロジャーが死に際に放ったその言葉のせいで、世間は今海賊ブームの真っ只中なんだってさ。……なんともはた迷惑な話である。

 海賊王の残した莫大な財宝、“ワンピース”を探して、歴史上類を見ない数の海賊達が今海を荒れ狂っているんだと。

 

 カンカンカンカン! ウー! ウー!

 

「海賊船接近! 物凄い速度です!」

「取り舵いっぱい! なんとか逃げ切れ!」

「行け行け! 左に曲がるんだ!」

 

 だからこっちの船の乗組員達も、海賊船と遭遇するのは慣れっこなのか、早めに発見、早めに逃げ出し、早めに対処と手慣れている。が……

 

「……あ〜、船つけられた。こりゃマズイ。乗り込んでこられるぞ……なんとか逃げ……あ〜ダメだ。逃げられない……あ〜……」

 

 今まではそんな感じで上手いこと海賊船から逃れられていたのだが、今回は海賊側のが対応が良かったらしい。

 気が付いた時には既に海賊船は目と鼻の先だった。

 

「野郎共ォ! 船の積み荷を奪えー!!」

「「「ウォオオーーー!!!」」」

 

 船をつけられ、屈強な男達がこっちの船へと乗り移ってくる。

 うちの船員達の中に戦える者はいない。次々とロープでぐるぐる巻きにされて縛られていってる。

 それを俺は物陰からこっそり見ている形だ。う〜む、ヤバイ。ガチ海賊……

 

「うわあぁ! た、助けてくれぇ! 命だけはぁ!!」

「うるせぇ! 黙ってろ! それ以上騒ぐと殺すぞ! 積荷はどこだ?」

「か、甲板の後ろ……階段を下りていったところ……」

「へへへ、そうかい」

 

 海賊達の目的は殺人ではなく、どうやら略奪にあるらしい。

 船員達が殺されるのではなく、縛られているのがその証拠。だけど大きく抵抗していた奴なんかは、腕や肩を軽く斬られている……

 場合によっては殺人もやむなしってか。そりゃそうか。

 

(さて、俺はこれからどうしよう……)

 

 一番賢い選択はこのまま物陰に隠れておいて、海賊達が帰っていくまでジッと息を潜めておく事だろう。

 俺は小人。しかも俊足。

 本気で逃げ隠れすれば、誰も俺の事を見つけられないし捕まえられないだろう。

 

「……だけどその場合、船の積荷は全部海賊達に盗られちゃうんだよなぁ……」

 

 金目の物だけならまだしも、水や食料まで根こそぎ盗られるとなると、それはちょっと……いやかなり拙い。

 こんな海の真ん中で身一つ放り出されたら100%死ぬ。海の上にレストランが浮いてる訳でもあるめーし。これは由々しき事態だ。

 

「……それに、去り際に海賊達がうちの船員達を傷付けていかないとも限らないし……」

 

 仕方ない……

 ちょいと怖いが、海賊退治、チャレンジしてみる……か……?

 もしダメそうならその時逃げてもまぁ間に合うだろ。俺小人だし。大丈夫大丈夫。

 

 積荷を狙った海賊達が甲板後方にある階段を下り、貨物室へと向かっていく。

 それを俺はこっそり後から付いていく。大丈夫。見つかってない。

 貨物室へとたどり着き……

 海賊達の気が緩んだ……

 その一瞬の……

 隙を突く!

 

 シュバッ! シュバッ! シュバババッ!!

 

「ん? あれっ!? 俺の剣が無ぇ!!?」

「うおっ!? 俺の上着も……ズボンも! なんだ!? 次々消えていく!?」

「どうなってんだこれ!? うわぁ! パンツまで消えたぁ!?」

 

 ふへへへっ! 見たか! ドレスローザで鍛え上げたひったくりのテクニック!

 こちとら伊達に何年も見えない盗人妖精やってねーんだよ。

 目にも留まらぬ早業で、俺は次々に海賊達の武装を解除していく。

 

「ぎゃあああっ!?」

「なんだこれ! オバケだ! 幽霊だ!」

「ひいぃい! 身包み剥がされたぁ!」

「助けてくれ! こえぇよお!」

 

 目には見えない“何か”に、明らかに怯えた様子を見せる海賊達。

 ようし! 今だ!

 

「我流・トンタッタコンバット……あごしっぽ!!」

 

 ビシシシシィッ!!

 

「「「「!!!」」」」

 

 回転しながら飛び上がり、俺は海賊達の顎に尻尾でビンタを喰らわせてやった。

 顎を揺らせば脳が揺れる。

 意識を飛ばされた海賊達は全員その場でバタリと崩れ落ちた。

 

「本物の海賊を相手にするのは、なんだかんだで初めてだったけど、案外なんとかなるもんだな! ふへへっ!」

 

 よっしゃー! よっしゃー! とガッツポーズをしながら飛び跳ねていると、扉がギィッと開いて、今倒した海賊達より一回りデカくてムキムキな男が貨物室へと入ってきた。

 

「お前ら遅いぞ! いつまでかかってん……なんだこの惨状は!?」

 

 床に伏せる海賊達を見て、ムキムキ男は声を上げた。

 あー……もしかして……この海賊団のボスですか? いかにもって感じの海賊ハット被ってるし、雰囲気もなんとなく強そうだし、間違いない。

 

「ん……? 小人? まさかお前が俺の部下達をやったってのか!?」

「あ、やべ、見つかった……」

 

 ピョンピョン飛び跳ねてる場合じゃなかった。こりゃ失敗。ギロリと睨みつけられる。目が怖いよ。

 

「許さねぇぞ! このチビがあ!!」

「うおっと!」

 

 腰にさしていた剣を抜いて、躊躇なく斬りかかってくるムキムキ男。

 だが……遅い!!

 

「俺達トンタッタ族には人間とは比べ物にならない機動力があるのだ! ふへへ! お前も部下と同じようにおねんねしてな!」

 

 そうしてムキムキ男にも“あごしっぽ”を喰らわせてやろうと、回転しながら飛びかかった、その瞬間──

 

 ガシィッ!!

 

「え゛……!?」

 

 気が付くと、俺の体はムキムキ男の大きな手によってガッシリと握り締められていた。

 は? なんだ? 何が起こった?

 

「グゥハッハッ! 馬鹿め! 油断したな! 俺は『ニギニギの実』を食べた、握り締め人間! 銃弾だろうが何だろうが、手のひらに収まるサイズの物なら瞬時に握り締める事が出来るのだ!」

「……!! 能力者だったのか……」

 

 出たよ。悪魔の実による不思議パワー。

 チートだろこれ。これによって何度レオに縫い止められた事か……

 

「グゥハッハ! 素早さが自慢だったらしいが、こうして握り締められちまったら、お前はただの非力なチビ人間! さぁてどうしてくれよう。殺すか? それとも奴隷市場に売り払ってやろうか? グゥハッハッハッ!」

「……馬鹿笑いしてるところ悪いけど、握りがちょいと甘いんじゃないかい?」

「ハ……?」

 

 俺は全身に力を込める。するとムキムキ男の手のひらがグググッとじわじわ開いていく。

 

「な、なんだァ!?」

「ふへへ……お、俺達トンタッタ族が自慢なのは、スピードだけじゃ……ねぇのよ……!!」

 

 小さい事から非力と思われがちな小人であるが、そのパワーは人間とは比べ物にならないくらい強い。

 パンチ一発で人間が住む一軒家くらいなら倒壊させられる程の力があるのだ。

 こんなデカイだけの手のひら、楽々抜け出して……

 抜け出し……抜け……ぐ、ぎぎ……!!

 結構キツイな!? こいつどんな握力してやがるんだよ。おのれ! フルパワー!!

 

「ふんぎぎぎぃ〜〜ッ!!!」

「ぐぅおおっ!? そ、そんな馬鹿な! 俺は新世界の海賊だ!! こんな小人一匹! 抑えてられない訳が……!!」

「どりゃあああーーッ!!!」

 

 抜けたあ!! ギリギリだったがなんとか抜け出せた!!

 よぉくも脂ぎったクッセェ手で握り締めてくれやがったなぁ!?

 続け様に握られないように、こいつの手のひらを踏み付けて叩き落とす。その勢いのまま飛び上がった俺は、回転しながら尻尾を振り下ろす。

 

「トンタッタコンバット……しっぽハンマー!!」

 

 ゴォオンンッ!!

 

「!!!!」

 

 床にめり込むくらいの一撃必殺!

 ムキムキ男は完全に白目を剥いて気絶してしまった。よぉし俺の勝ち。

 

 海賊達を全員ノックアウトした俺は、ナイフ片手に甲板へと上がって行った。

 そして目にも留まらぬスピードでぐるぐる巻きにされていたこっちの船の船員達のロープを切ってやった。

 

「えっ?」

「なんだ?」

「ロープが……」

 

 突然自由の身となった船員達。何が起こったか分からずうろたえている。

 そのうち一人が貨物室へと恐る恐る足を踏み入れ、そして気絶しきった海賊達の姿を見つけた。

 

「えっ!? お、おおーい! みんなー! 海賊共が伸びてるぞー! 全員だー!」

「「「えーーっ!? なんでーーっ!?」」」

 

 何故だか倒れている海賊達。そのうち半数以上がスッポンポン。

 よく分からないが、今のうちだ! と、船員達は海賊達を全員ロープでふん縛った。

 

 ふん縛った海賊達を元の海賊船へと放り込み、そのまま放置。

 船は再び動き出した。……いや、放置でいいのかよ。海賊共、海軍に突き出したりしなくていいの? いいんですか。いいんですね。面倒くさいですもんね。分かります。

 

「それにしても船長、海賊達なんで全員倒れてたんですかね?」

「あの惨状を見るに、積荷を巡って仲間割れでもしたんだろ」

「馬鹿な奴らっすね! はははは!」

「海賊なんてそんなもんさ! ふははは!」

 

 ……能天気なもんだ。

 とにもかくにも船員達に見つかる事なく海賊退治は無事完了。

 感謝される為に戦った訳じゃないし、姿はこのまま隠したままでいいだろう。密航してたのがバレる事の方が面倒くさそうだからな。

 俺は再び船の中へと隠れ潜むのであった。

 

(……それにしても、この船は一体どこに向かってんだろ? いい加減陸地が恋しくなってきたんだけど……)

 

 てっきりドレスローザから一番近場の島へ向かっていく船だと思ってたんだけど、こんな何日も船旅する事になるとは予想外だ。

 目的地が不明なまま乗り込んでしまった弊害がこんなところにあったとは……

 船の食料をちょろまかし、水々しさを失ってきたリンゴをしゃくしゃく食べていると、船員達の会話がうっすらと聞こえてきた。

 

「そろそろ目的地っすね、船長」

「ああ、お前ら、言わなくても分かってると思うが、マリージョアではおとなしくしておくんだぞ」

「分かってやすよ。天竜人の機嫌をそこねたりしたら、そりゃあもう大変ですからねぃ」

「手早く積荷だけ渡して、さっさと帰りたいものですね」

 

(………………は? マリージョア? それって……)

 

 なんかヤバイワードが聞こえてきた気がしたけど、とりあえず聞こえなかったフリをして、俺はリンゴを食べきるのであった。

 

 

 

 




次話、たぶん月曜日更新……かな?
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