デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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ファインディング・魚人島

 いよいよドレスローザに向けて、リストラック号を出発させた、俺、エスネ、デンスケの三人。

 

 しかしシャボンディ諸島からドレスローザに向かうには、赤い土の大陸(レッドライン)を越える必要がある。

 雲すら突き抜けるあのクソでっかい崖を越えるには、上を行くか、下を行くか……主に2つのルートが存在している。

 

 上からのルートは、政府にお願いしてマリージョアを横切らせてもらうというもの。

 しかし、昨日の今日で俺らがそんな事をしたら、どの口で言うとんじゃー! と、天竜人らにキレ散らかされる事となるだろう。

 警備も強化されてるだろし、船を抱えたままこっそり通るってのもたぶん無理かな。

 

 なので、俺達が行くのは下ルート!

 海の中を潜っていき、深海1万メートルにある魚人島を経由していくルートだ。

 シャボンコーティングさえしていれば、普通の船でもこうして海の中を進んで行けるのである。

 

「ふへ〜、これが海の中の景色か。木の根っ子とか魚とか、何もかもデッカいなぁ……!」

「海の中って暗くて怖いイメージだったんですけど……こうして見ると神秘的で、なんだかロマンチックですね……♡」

『ジ! 海ひろい!』

 

【挿絵表示】

 

 船の甲板からシャボン越しに、三人揃って景色を楽しむ。

 全方位ガラス張りの水族館に来たみたいだな。

 

「ところでエスネ、船の進路は大丈夫なのか……?」

「大丈夫ですよお兄さん。今のところ舵を切る必要はありません。このまま下に真っ直ぐです!」

「オッケ。いやぁ、エスネがいてくれてホント助かったよ。俺一人だったらどうなってた事やら……」

「えへへ〜♡ そんなに褒めても卵子しか出せませんよ?」

「何を言うとるんだお前は」

 

 船の操作、航海術などに関しては……シャボンディ諸島を出る前にレイさんから色々レクチャーを受けたのだが……

 ハッキリ言って俺もデンスケもちんぷんかんぷんだった。

 なので唯一理解出来たエスネが、リストラック号の実質的な航海士となっている。

 耳をピコピコ動かして危険を察知。即座に行動。ある意味ピッタリな役職かもしれない。

 

「魚人島までの永久指針(エターナルポース)は持ってるんですけど……ドレスローザへの永久指針(エターナルポース)が無いんですよね。魚人島で売ってたらいいんだけど……」

「ふへ〜」

 

 永久指針(エターナルポース)

 それは島の磁力を記憶させておく事の出来る特殊な方位磁石の事だ。記憶させた島の方向へと針を指し続けるので、迷う事なく目的地へとたどり着ける便利グッズである。

 

「というかエスネ、魚人島までの永久指針(エターナルポース)持ってたんだな」

「勿論です! むしろこれ無しで航海なんて怖くて出来ませんよ! ………そういえばお兄さんて、航海術も記録指針(ログポース)も無しでドレスローザからシャボンディ諸島にたどり着いたんでしたっけ……?」

「うん。密航して、マリージョアの街をダッシュで駆け抜けて、赤い土の大陸(レッドライン)から飛び降りて、海まで落っこちて、丸一日以上全力で泳ぎ続けたら……なんか着いた」

「あらためて聞いても無謀が過ぎますよ!!」

 

 ごもっともです……

 今思えばあんな無茶して、よく生きてたよな、俺……

 

「もう二度とそんな無茶苦茶な航海はしないでくださいね! というか私がさせません!」

 

 ぷりぷり怒ってモフモフの体を俺にすりつけてくるエスネ。

 今のエスネは獣型だから、見た目はまんまウサギが擦り寄ってきてる感じだな。

 

「…………お兄さん♡ えへへ♡ お兄さんとこんなにくっつける幸せ……♡ んぅ……♡ すんすん♡ ……あ、やべ♡ 興奮してきちゃいました♡ お兄さんしゅきぃ……♡ んっ♡ ふ……♡」

 

 小声で何か呟いたかと思ったら、カクカクと腰を押し付けてきたエスネ。なんだ? ウサギ特有の甘えたポーズかな?

 

「ふ……♡ ふ……♡ んぅ゛っ♡♡」

 

 ……なんか、だんだん動きが激しくなってきてる気がするんだけど……

 

「ふ……♡ ふ……♡ ふ……♡」

『ジ!? エス姉! エス姉! たいへん! こっち来て!』

「な、なんですか? デンちゃん……! い、今……忙しいんですけど……お゛ッ♡」

『おっきいミノタウロスがこっち向かってきてる!』

「はい??」

 

 船の先端へウネウネ見張りをしにいったデンスケが、慌てた様子でエスネを呼ぶ。

 

『はやく! はやく! 来て! 来て!』

「も〜! 寸止めなんて生殺しです!」

 

 腰の動きを止めて、しぶしぶといった様子でエスネが跳ねていったので、俺もそれについていく。

 

「おっきいミノタウロスって……一体何の話ですか? デンちゃん」

『ジーー、あれ!』

 

 短い手を使ってデンスケが指差した先を見ると、そこには……

 

「モォ〜」

 

「でっかァ!!」

「か、海獣ですー!?」

『ジ〜〜!』

 

 そこにいたのは、顔が牛で、下半身が魚の……全長30メートル半はありそうな巨大な海獣だった。

 ……なるほど。インペルダウン出身のデンスケなら、確かにミノタウロスと見間違うデザインだな。

 

「ま、いくらデカくても、このレベルの海獣なら俺の覇気で即落ちさせ……」

「モォ〜モォ〜」

「ふへ?」

 

 覇王色の覇気で気絶させてやろうとして、前に出ると……海牛が何やら口を突き出してきた。

 何だ? 何か咥えてる?

 小さな紙切れのようなものだけど、これは……

 

「? お兄さん。それなんです?」

「手紙だな……」

『ジ。お手紙』

 

 受け取って中身を見てみると……

 

『ラインちゅぁ〜ん! お久しぶりん! ロズオよ♡ 突然の海獣の登場に驚いたかしら? その子の名はモーム。アーロン親分のペットで、大きいけど繊細なかわゆい子よ♡ その子が魚人島までの道案内をしてくれるわん。魚人島の救世主様の到着を、皆今か今かと待ちわびているわよん。それじゃあ気をつけてやって来てねぇん♡ んちゅっ♡』

 

「…………」ぐしゃ

 

 俺は手紙を握り潰した。

 

「お兄さん!?」

「手紙はロズオからだった。この海牛の名前はモームっていって、こいつが俺達を魚人島まで案内してくれるんだと」

「モォ〜」

「そ、そうですか……なんで手紙を潰したんです?」

「キスマークが不快だった」

 

 んちゅっ♡ じゃねーよ。んちゅっ♡ じゃ。

 

『ジ〜〜? ご主人、ろずおってだれ?』

「お? そういやデンスケは会ったことなかったっけ。ロズオっていうのは、ハゲ、デブ、オカマなイカ人魚で……奴隷として捕まってたのを昔エスネが助けたんだ*1。」

へ〜〜(ジ〜〜)

「しかし、こうして迎えを寄越してきたって事は……ロズオは俺達が“今日”魚人島を目指すって、知ってたって事か?」

「確かに! なんで分かったんでしょう。不思議ですね」

『かんかな?』

「そんな馬鹿な」

 

 よく分からんが……何はともあれ、案内係が来てくれたのは非常にありがたい事である。

 

「モーム……でいいんだよな? ふへへ! そんじゃ、しくよろな。モーム」

「よろしくお願いしますね。モームちゃん」

『ジ!』

「モォ〜〜♪」

 

 モームが持参してきた首輪とロープを、リストラック号に結びつける。するとモームはスイスイ船を引っ張って泳ぎ始めた。

 おー、これは楽だし速い。

 

「ところで手紙には、モームは“アーロン親分”のペットって書いてたんだけど……ロズオってアーロンと知り合いだったのかな?」

「知り合いっていうか……あれ? お兄さん、知らないんです?」

「何を?」

「アーロンさんて、一年前に七武海に入ったんですよ」

「なにぃいぃ〜〜!!?」

 

 あ、アーロンが!? 七武海にぃ!? ……マジで?

 ここ一年ほど、新聞読む時はドレスローザに関する記事以外はほとんど読み飛ばしちゃってたからな……

 全く知らんかった……

 しかしあの人間嫌いのアーロンが七武海とは……

 一体どういう心境の変化なんだろ?

 

「七武海になったアーロンさんは、今では魚人島の人達から、“アーロン親分”て言われて慕われてるんですって」

「へ、へぇ〜……想像できないな……」

 

 待てよ……て事は俺、現七武海(アーロン)と元七武海(モリア)、どちらも傘下にしちゃってるって事?

 世界政府にバレたらなんかヤバそうな案件だな……

 よし。黙ってよっと。

 

『ジ〜、モームはアーロンのペットなんだね! デンスケはご主人のペットなんだよ! ペットなかまだね!』

「モォ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 船の進行をモームに任せて、海の中の景色をゆったり楽しんでいた俺達。しかしその景色もだいぶ暗くなって見えにくくなってきた。

 

「なんか暗いし、クラゲとかカニとかが増えてきたな……これ何メートルくらい潜ったんだろ?」

「5〜6000メートルくらいですかね?」

「じゃあ魚人島まではあと半分てとこか」

『ジ! デンスケライトつける! (ランプ)!』

 

 灯貝(ランプダイアル)を使い、ビカーッと目から光を照射し、行く先を照らしてくれるデンスケ。

 

「おー、見えやすくなった。さすがデンスケ」

『ニヘヘヘ〜』

 

 装備している(ダイアル)の力をその身で使いたい放題。

 デンスケの能力は戦闘面以外でも大いに役に立つな。

 

「って、あれ? なんだあの光は……」

「どうしたんです? お兄さ……光? ……こんな深海で?」

『デンスケよりつおい光だ』

「モォ〜」

 

 暗い暗い深海世界で、デンスケ以外にピカピカと強烈な光を放つ“何か”がいた。

 光と言えば黄猿だけど……こんな深海にいる訳ないし、なんだろ?

 

「モォ?」

 

 まるで光に誘われるように、モームがゆっくりと“それ”に近づいていく。すると……

 

「ギャオオオオ〜!!」

 

「モ゛ォ〜〜!??」

「「『わ゛ァーーーッ!!?』」」

 

 そこにいたのは、頭から伸びた光をゆらゆら揺らす、超巨大チョウチンアンコウだった。

 カクレクマノミが主人公のアニメ映画で、こんなシーンあったなぁ……

 

「モ゛ァ! モ゛ァ! モ゛ォア゛〜!!」

「って、うわ!? ぱ、パニクるな! モーム! 大丈夫。大丈夫だから! こんくらいの魚なら、俺の覇王色の覇気で止められるから……!」

 

 涙目になって暴れ狂うモーム。お前が暴れると俺らの船まで揺さぶられるからやめてくれよ。

 なんとかなだめて落ち着かせようとしていると……

 

「んあ? なんら〜? やけに小さい船らなァ?」

 

「「『!!??』」」

 

 超巨大チョウチンアンコウ……それよりもさらに巨大な……

 ずんぐりむっくりひげづらデカデカ“海坊主”が現れたのだった。

 いやデカ過ぎだろ!? なんなんだこいつは? 高身長ってレベルじゃねーぞ! 80メートルくらいあるんじゃないか?

 まさかデカデカの実の能力者……とかじゃないよな? 海ん中だし。まさか素でこのデカさなのか?

 

「お、おっきい人ですね……巨人……いえ、海の中だし……魚巨人族(ウォータン)? いえ、それより大きい……」

『ジ! とりあえず写真とっとこ! ピースして! パシャパシャ』

「なんつービッグサイズ……! ぐぬぬぬぬぅ〜!! いーなー!! 凄いな〜! 羨ましいな〜!!」

 

「……え? も、もしかしておれ、褒められてるろ? な、なんか照れるら……ピース! ピース!」

 

 デンスケのシャッター音に合わせて、ブイサインでポーズを決めてくる海坊主。

 ヒゲモジャでずんぐりむっくりなクセに、しぐさや声は意外とコミカルだな……

 なまった口調も相まって、なんとなくかいけつゾロリに出てくる、イシシ、ノシシを思い出す。

 そのまま巨大海坊主の観察を続けていると……

 

「コラー! ワダツミ! 何をやってんだ! 船を見つけたんならさっさと捕獲しろォ! そして宝をいただくんだ!」

 

 どこからともなく、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。……海坊主の名前はどうやらワダツミというらしい。

 

「バホホホホ! 死人に口なし欲もなし♪ 探せ〜探せ〜、沈んだ宝はおれの物ォ♪ おれは世っ界一の大〜金〜持ーちー♪ キャプテン・バンダー・デッケンだァ〜♪」

 

 声が聞こえてきた方向に視線を向けてみると……

 そこには巨大なオンボロ海賊船に乗った、身長3m半ほどの男が、変な歌を口ずさみながら笑っていた。

 なんだあいつ? 魚人っぽいが……足が4本あって、全身にシャボンを纏っている。

 船の帆には……FLYING DUTCHMAN と文字が書かれていた。

 

「ふりいんごどぅっちまん?」

「フライング・ダッチマンです。お兄さん」

「ふ〜ん……」

「というかフライング・ダッチマン!?」

「知っているのかエスネ?」

「は、はい……フライング・ダッチマン号は、世界的にも有名な幽霊船(ゴーストシップ)の名前ですよ……! 船長の名前は確か……キャンプテン・バンダー・デッケン……!」

「へー、幽霊船(ゴーストシップ)かぁ……でも幽霊島(スリラーバーク)見た後だと、なんかインパクト薄れるなぁ」

「それもそうですね」

『にばんせんジ!』

 

「誰が二番煎じだァ!? 生意気な奴らだ!! バホホホホ!」

 

 幽霊船(ゴーストシップ)の上で、4本の足をドタドタと踏み鳴らしながら怒っているバンダー・デッケンとやら。

 

「バホ!?」

 

「ん?」

 

 そんなバンダー・デッケンと、パチリと目があった……

 瞬間──

 

「バホーーーーッッッ!!?? お、お、お前は……ま、まさか……ッ!! 不可視の怪盗・ライン!!? ──のハズだ!!」

 

「え? あ、はい。ラインだけど」

 

「!!!!」

 

 バンダー・デッケンの黒目が、縦長に見開かれる。まるで海王類がブチギレた時のような目だ。

 え……何? なんでいきなりキレてんの? あいつ……

 

「ら、ライン……! そうかお前がァ……! お前が……!! おれのしらほしをォ!! よくもよくもよくも!! 絶対に許さんッ!! よくもおれの愛しのしらほしをォ゛……!」

 

「は? な、なんだよ!? しらほしって何? んなもん知らんぞ! 見たことも聞いたことも食べたこともない!」

 

「しらばっくれやがって──のハズだ! このおれ自ら叩き潰してやる! やれ! ワダツミ!」

「分かったら! バンらー・れっケン船長!」

 

「!!?」

 

 ヒゲもじゃ海坊主が、フライング・ダッチマン号を掴み上げた。するとそのまま……

 

「いくらよ!! 船長!!」

「突撃だァーー!!」

 

 大きく振りかぶり、俺らの船にぶつけようとしている……だと!? 見聞色でそんな未来が見えた。

 

「ちょちょ!? そんなんぶつけられたら船のシャボンが割れるって! モーム! 逃げろ!」

「モ゛ォ〜!」

「泣いてる場合じゃねーよ! 動け!」

 

 バンダー・デッケンのあの目にビビったのか、モームは泣きながら目をぐるぐると回している。

 見聞色で未来が見えていても、モーム(こいつ)が動いてくれなかったら避けれない! 意味がない!

 くそ、俺個人ならあんな攻撃、500回は連続で躱してやれるのに……

 

「きゃあああ!! 船が! 船が迫ってきます! モームちゃん! お願い動いて!」

『ジィイィ〜〜!! モーム! ダッシュ! ダッシュ!』

「モ゛ォ〜!」

「やべえ! もう間に合わない……!」

 

 差し迫るフライング・ダッチマン号。このままじゃこの船に激突するだろう。そしたらシャボンは弾けて、俺達の冒険はそこで終わり。

 冗談じゃない!!

 

「くそ、こうなったら……!」

「え? お兄さん? 何を……って、きゃああああああーーッ!!?」

『ジーー!!? ご主人〜〜!?』

 

 俺は船の外……シャボンの外……つまりは海の中へと飛び出した。

 

「んぼっ! ごぼぼぼ……!」

 

「おおおお兄さんん!!? なな、何やってるんです!? 戻って!! 早く!! 船の中に!! ここ深海6000メートル以上ですよ!?」

 

 水圧が物凄い。全身が潰されそうになる……が、これくらいならなんとか耐えられる……はず! うおお! 全身武装色! 硬化!!

 

「ごぼぼ! ごんばっばごんばっぼ! ごぼぼぼぼー!(我流・トンタッタコンバット! しっぽスクリュー!)」

 

 船に掴まって尻尾を回す。そしてビート板を押す要領で俺は船を押し進めていく。

 俺の泳ぎの上手さはトンタッタ1ぃ!!

 迫り来るフライング・ダッチマン号から、なんとかリストラック号を躱させる事に成功したのだった。

 

『ジー! ご主人すごおい!』

「た、確かに凄いですけど……助かりましたけどぉ……! む、無茶苦茶が過ぎますよ! お兄さん! 早く船戻って! お願い!!」

 

「ごぼぼ……!」

 

 流石に深海数千メートルにもなると、全身痛苦しいな……これを普通に耐えられる魚人の体ってどうなってんだろ……?

 呼吸も続かないし、とりあえず一旦船に戻って……

 

「逃さねえぞ!!」

「ごぼおッ!?」

 

 目前まで迫ってきていたフライング・ダッチマン号。そこから手を伸ばしてきたバンダー・デッケンに、尻尾をギュッと握られた。

 

「バホホホホ! このまま海の中に引きずり込んでやる! エラ呼吸できねェお前はそれだけでオダブツだ ──のハズだ!」

「んぐごぼ……!!」

「きゃああああーー!! お兄さんーー!!」

 

 野郎に握られる趣味はねーっての! 力比べで俺が負けるか!

 我流・トンタッタコンバット! しっぽスクリュー!

 

「バホ!? うお!? うおおおおおお!?」

 

 尻尾を思いっきり回して、勢いよく弾き飛ばしてやった。

 

「ほぎゃああああーーッ!!?」

「んラァあああーーッ!!?」

 

 飛んでいったバンダー・デッケンは、ワダツミの額に激突して、二人揃ってその痛みに悶え苦しんでいる。

 

「い、痛いら〜!」

「バギャモン! おれの方が痛い──のハズだ! この石頭野郎め! ちゃんと受け止めんか!」

「ご、ごめんなさいら〜! れっケン船長!」

 

 なんかモメてるので、今がチャンスである。

 しっぽスクリューで海中を勢いよく泳ぎ、俺はなんとかリストラック号のシャボンの中へと飛び込めたのだった。

 

「ぶはぁ〜!! すーはーすーはー! 酸素だ〜!!」

「うああああああんん!! お兄さん〜!! 無事です!? 生きてます!? 大丈夫です!? 深海でシャボンも着けずに海に飛び出しちゃうなんて! 私寿命が縮みましたよぉ!!」

『ジ〜〜、デンスケもびっくりした!』

「悪い悪い。心配かけたな。……あ゛〜しんど……」

 

 もしもここが地上だったなら、あんな奴らの相手なんて屁でもないんだが……

 流石に海の中だと分が悪いなぁ……

 船は守らなきゃいけないし、深海って思った以上に体が動かない……

 レイさんに勝てるくらい強くなったとはいえ、やっぱり慢心はできないな。

 

「はぁはぁ……こうなりゃ逃げるが勝ちだよな! モーム! 行け! ダッシュだ! 逃げろ!」

「モ、モ゛ォ〜!」

 

 ようやく正気を取り戻してくれたモームが、全速力で船を引っ張ってくれる。

 

『モーム! ペット魂だ! ジーー!』

「モ゛ォ〜〜!」

 

 ふへぇ……これでようやく幽霊船(ゴーストシップ)を振り切る事ができた。危なかったなぁ……

 

 ……それにしても俺、初対面の相手になんであんな恨まれてたんだろ?

 しらほしがどーのこーの言ってたけど、『しらほし』って何なんだ……?

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「す、すまないら〜! バンらー・れっケン船長! いつの間にか不可視の怪盗を見失ってしまったら!」

「なんだとォ!? このバギャモンが!! ……と、言いてえところだが……まあいい」

「え!? ゆ、許してくれるろ?」

「バホホホ! 逃げられこそしたものの……あの憎っき不可視の怪盗・ラインを……“左手”で触ってやったからな! ──のハズだ!」

「おお! という事は!」

「そうだ! これであいつはおれの“マト”となった訳だ! 40億の賞金首? 魚人島の救世主? そんなもの愛の前では無関係!! おれとしらほしが結ばれる為にも、不可視の怪盗にはかならず死んでもらう必要があァる! ──のハズだ! バホホホホホ!!」

 

 

 

 

 

*1
14話




身長170cmの人間が深海1万メートルの世界に飛び出した場合、その体にかかる水圧は、1万7000トン以上にもなります。

でも、身長20cmのラインの場合、体にかかる水圧はざっくり計算した結果……
だいたい230〜300トンくらいでした。

原作ではハイルディンが万トンヴァイスに打ち勝ってたので、これくらいへーきへーき。
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