魚人島の港町にて、ケイミー&パッパグのコンビと出くわした俺達は……
なんやかんやあって、パッパグの屋敷に招待される事となった。
お魚タクシーに乗り込んで、揺られる事十数分……
「よーし! 着いたぞ! ようこそお前ら! ここがおれの住んでるセレブの町! その名も──」
「ギョバリーヒルズ! ほら、目の前にある、あの大きい屋敷がパッパグの家だよ!」
「ケイミー、ケイミー……それ今おれが説明しようと……」しくしく
たどり着きたるは、身長50cmのヒトデが住むにはあまりにもデカ過ぎる屋敷であった。
エスネが目を点にして見上げている。
「す、凄いですね……私、こんな立派なお屋敷を見たのは初めてかもしれません……」
「そうだろう! そうだろう! 何せ我が家はギョバリーヒルズでも一番の……」
「エスネ、俺らでぶっ潰したマリージョアの町並みも、これくらい立派だったじゃねーか」
「それもそうですね」
「なんちゅー場所と比べてんだよお前ら!?」
『ジ! インペルダウンよりは小さい!』
「当たり前だ!! おれん家見てそんな感想述べたのはお前らが初めてだ!!」
パッパグの屋敷。
居住スペースは2階より上にあって、1階は“クリミナル”というファッションブランドのお店となっていた。
こいつ、本当に社長だったんだな……
店先で従業員達がペコペコしながら出迎えてくれてるので、軽く挨拶して中に入る。
「気を取り直して……ようこそ! おれの城! 魚人島1のオシャレショップ、クリミナルへ!」
「ふへ〜、やっぱデカい……」
「可愛い服がたくさんです!」
『ジーー』
服に帽子に下着に小物……同じ服を何着も持っている俺からすると、あまり縁のない世界である……
こういうのをキチンと着こなせる高身長がやっぱりモテるんだろうか?
「きゃあーーっ♡♡♡ お兄さんぬいぐるみを発見しました〜♡♡」
小物コーナーにて、さっき話に出ていた俺の等身大ぬいぐるみ……を見つけたエスネ。
小物コーナーか。誰が小物じゃい!?
「か、カワイッ♡ よく出来てる♡ エッロ゛ォ♡」
「エロくはないだろ」
「パッパグさん! これ欲しい! いくらです!? ぼったくり価格でもいいですよ! 足りなかったらそこら辺の海賊狩ってきますから!」
「すげェ勢いだな!? ──だが、嫌いじゃねェぜ! この世は勢いだ! おめェらには2年前の大恩がある! 何でもタダだ! 好きなだけ持ってけ!」
「ほ、本当ですか!? じゃあとりあえず……このお兄さんぬいぐるみは全部貰って……」
「やめーい!!」
「痛い!」
俺はエスネにツッコミチョップを入れた。兄のぬいぐるみを欲しがる妹とか、ブラコン過ぎにも程がある!
「そんなもんあっても仕方ないだろうが! 置き場にも困るし!」
「ううぅ……じゃあせめて3つだけ……観賞用と、保存用と、使う用……」
「使う用ってなんだよ……」
それから俺達は、パッパグのお店の中を色々と見て回った。
デンスケも電伝虫モードから天使モードとなって飛び回っている。
「お兄さん! この服どうです? 似合います?」
『ジ〜! ご主人! デンスケも着替えてみた! どう? どう?』
試着室に出たり入ったりを繰り返すエスネ&デンスケ。女の子ってこういうショッピング好きね。
「お兄さんも着てみてください! ほら、これとかサイズもピッタリですよ!」
「……メダカ用って書いてある……」
魚人という種族は大きさが千差万別。なので、服のサイズもめちゃくちゃバリエーションが豊富だ。俺みたいのでも着られるサイズがいっぱいあるのは嬉しいね。小魚扱いはちょっと嫌だけど……
「パッパグさん、本当に貰っちゃっていいんです? これとか30万ベリーですよ?」
「ヒトデに二言はねェ! 遠慮せず好きなの持っていってくれ!」
「……ありがとうございます」
「良かったね、エスネちん!」
結局、俺達はそれぞれ5〜10着ほどの衣類を貰う事にした。
パッパグは、もっと持っていってくれてもいいんだぞ? お前らが着てくれるとそれだけで宣伝になるのに……と言っていた。
本音透けてんぞ。
「ところでおめェら、魚人島にはどれくらい滞在する予定なんだ? なんだったらこのままうちに泊めてやってもいいぞ」
服をたくさんくれた上に、泊めてくれるとまで言ってくれる親切ヒトデのパッパグ。
しかし、俺達の目的はあくまでもドレスローザだ。魚人島に長居するつもりはない。
この島でドレスローザまでの
「……という訳で、
「うーん……ラインちん。
「え゛……そうなの? ケイミー」
「うん。特に新世界のものとなると貴重品だからね」
そ、それは困ったぞ……
指針無しで新世界の海に飛び出すのは流石に自殺行為……
かといって
「どうしよう」
「どうしましょう……」
『ジーー』
どうしたものかと皆で頭を悩ませていると……
「おめェら! 注目!」
パッパグが短い手を上げた。
「
「!! ま、まさか、ドレスローザにも!?」
「そうだ! ドレスローザまでの
「「「『おお〜!!』」」」
俺達は揃ってパッパグに拍手を送った。
すげぇ! やはり持つべきものはコネのある友達だね!
「ただし、その
「うおー! ありがとう! ホント助かる! パッパグサマサマだ!」
「何から何まで本当にありがとうございます! 流石売れっ子社長!」
『ジーー! パッパグはペットのカガミ!』
「ウッホホイ! よせやい! おれとお前らの仲だろ☆」
俺達は揃って肩を組み、皆で一緒にラインダンスを踊る。
ヘイ♪ ヘイ♪ ヘイ♪ ヘイ♪
……
という訳で……
これからどうしよう? 魚人島観光でもするか、もしくはどっかで修行でも……
「そうだ、ラインちん! せっかく魚人島に来たんだからマーメイドカフェにおいでよ!」
「マーメイドカフェ? なんそれ? ケイミー」
「私が今ウェイトレスしてるお店だよ。オシャレだし、美人な人魚がいっぱいいるよ」
「美人な人魚ッ!!?」
瞬間、俺の脳みそがギュルンっと覚醒した。
最初来た時は、魚人島民たちのあまりの歓迎ムードにただただ圧倒されるだけだったけど……
そうだ……! 魚人島といったら
「マーメイドカフェのスタッフは皆ラインちんのファンだからね、きっとすっごくモテモテになれるよ!」
「も、もて!? モテモテぇ〜↑!?!!?」
衝撃ドーン! 心はギューン! アソコはビーン!
ふ〜ん。そっかぁ……モテモテかぁ……そっかそっか……
ドレスローザでの決戦を前に……英気を養うのはとても大事な事だよな。うん……!
つまり、俺が今からモテモテになりにいくのは、必要不可欠な事だよな。うん……!
「よし! 行こう! モテメイドカフェ!!」
「マーメイドカフェだよ!?」
俺達は揃ってマーメイドカフェへと出発した。
「マーメイDo♪ マーメイドDo♪」
「……お兄さん、嬉しそうですね……」
「そりゃそうだろ! エスネ! なんてったってモテモテだからな!」
「…………」
お魚バスに揺られること、十数分。
マーメイドカフェが見えてきた。
「ここか」
「そうだよ。魚人島名物マーメイドカフェ!」
ドキドキしながらカフェの扉をくぐる。するとそこは……
「あらケイミー。どうしたの? 裏口じゃなくて正面から入ってくるなん……え!? ら、ライン様!?」
「ライン様!? 皆! ライン様が店に来たわ!」
「本当!? きゃ〜〜♡ ライン様〜〜♡」
「マーメイドカフェにようこそ♡ こっち座って♡ 私がつきっきりでお世話するわね♡」
「あ〜ん♡ ずるい〜♡ 私がライン様の担当になるの〜♡」
「だめ〜♡ 私〜♡」
「「「「ライン様〜〜♡」」」」
う お お お お お !??
なんだこれ!? 想像以上のモテっぷりじゃないか!? こんなに凄いのか!? 魚人島での俺の人気っぷりは!!
可愛くて、おっぱいの大きい人魚達が、ぶわっと群がってくる……! ふへひはひー!?
「ライン様の妹君、エスネ様もおられるわ〜♡」
「きゃー♡ 私、エスネ様のファンなんです〜♡ 強い女性って憧れる〜♡」
「私も私も〜♡ 億狩りウサギファンクラブ入ってます♡」
「ブロマイド毎月買ってます〜♡」
「……そうですか。それはどうも。興味ないですけど……」
「「「「粗悪対応感謝祭♡♡♡」」」」
エスネもモテている。……が、あんまり嬉しそうじゃないな。
まあエスネはレズではないし、女にモテても仕方がないからな。……いや、にしても冷たくない? さっき街でキャーキャー言われてた時は作り笑顔とはいえ微笑んでたのに。
なんでだろ?
「わあ! こっちには天使の格好した電伝虫がいるわよ」
「ホントだ! カワイイ〜♡」
『ジ。デンスケだよ』
「「「喋った!?」」」
そしてデンスケも地味にモテていた。
そんなこんなで席につくと、マーメイド達による接客が始まった……のだが……
「はーい♡ ライン様♡ モズクタルトです。お口開けて♡ あ〜ん♡」
「奴隷解放のお話聞かせて〜♡ すごかったんでしょ〜♡」
「や〜ん♡ ライン様、おっぱい見すぎ♡ もっと近くで見るゥ?♡」
「ライン様ならお触りしても…… い い よ♡」
「王様ゲームしましょ♡ あんな事や、こんな事……色んな命令しちゃいます〜?♡」
ここカフェだよな!?
シャボンディでレイさんに連れてってもらった大人なお店よりもえっちぃんですけど!??
右見ても左見ても可愛いマーメイドの貝ブラおっぱい……! これが魚人島……! そりゃ
だ、だが落ち着け……! ライン!!
女ヶ島での経験を思い出すんだ! 女の子にキャーキャー言われ、調子に乗ってセクハラしまくった結果、ハンコックにボロカス言われて後悔するハメになったのを思い出せ……!
俺は成長する男! ここは一つ……冷静な対応を……
「や〜ん♡ ライン様ァ……♡ 水着がズレちゃったぁ♡ ……直してくれる?」
「喜んでーー!!」
冷静な対応なんて無理だろ!!!
だって向こうからセクハラねだってくるんだもん! 人が嫌がるセクハラは(出来るだけ)しない俺だが、向こうが良しとしてくるならモーマンタイ! それが女ヶ島で決めた俺ルール!
なので全力で楽しむ事に決めた。
「ふっへへへへへ〜♪ それじゃあいくぞ〜」
「「「「王様だ〜れだっ!!」」」」
「俺〜!」
「いや〜ん♡ さっそくライン様が王様になっちゃった〜♡」
「一体どんな命令されちゃうのかしら〜♡」
「ふへへへ〜! そんじゃあ皆で並んで、ゆさゆさマーメイドダンスしながら自己紹介! んで、おっぱいサイズの申告もしてもらおうかな〜?」
「「「「きゃ〜〜♡♡」」」」
「……お兄さん、凄いイキイキしてますね……」
『……ジ。デンスケ、なんでか分かんないけど、面白くない……』
ズンドコドコドコ♪ リズムに乗って、美しき人魚達が俺の前に躍り出てくる。
「1番、セイラ♪ バストサイズは……98cm♡ ワイルドな人って好きよ♡ 私」
巻き貝をヘッドホンにしたポニテ茶髪の人魚ちゃん! 大人っぽい色気が素晴らしい!
「2番、メロ。胸のサイズは97cm♡ ライン様の古参ファンやってます♡」
花飾りをつけた青髪美人! 儚げな表情が素敵です! 人魚って青髪めっちゃ合うよね!
「3番、イシリー! おっぱいサイズは98cm♡ ライン様の大大大ファンでーす♡」
黒髪ツインテのそばかすちゃん。どっかで聞いた名前だと思ったら、入国審査の時のおっさんの娘か! エクセレント!
「4番、カイレン。胸は97cm♪ ライン様って面白い人♡」
ウェーブのかかった金髪お姉さん! なーんでパツキンってのはこうも色っぽいんだろうね!
「5番、ヒラメラ♪ 胸のサイズは……99cm♡」
お色気ムンムンピンク髪の人魚さん。ピンクは淫乱! はっきり分かんだね!
いや〜、どの娘もカワイイな〜。思わずメロリンしちゃっていると……
「6番! エスネ! お兄さん専用の104cmおっぱいです!」
『7番、デンスケ! さっきお店で測ってもらったら、89cmだったよ!』
「なんでお前らまで出てくんだよ!?」
人魚の自己紹介タイムだって言ってるだろうが!!
「だってだってだって〜!」
『ジージージー!』
そんな感じで、わいわいガヤガヤしていると……
「8番、ネプチューン! バストは約6メートルじゃもん!」
「「「「「!!??」」」」」
店の中に突然、身長12メートルほどの巨漢なヒゲモジャ人魚が入ってきた……
「チェンジで」
「アホー!!」
「いでっ」
秒でチェンジを指名したら、パッパグに頭を叩かれた。
「あにすんだよ?」
「バカーー! ラインお前! こ、この方が誰だか知らないのか!?」
「こんな体毛の濃い人魚に知り合いはいねェよ」
「バカバカバカ! この方はな! この魚人島……リュウグウ王国の国王だ! その名も──」
「海神・ネプチューン様よ!」
「ケイミー、ケイミー……それ今おれが言おうとしてただろォ……」しくしく
ふーん。なるへそね。
この国の王様だった訳か。どうりで頭に王冠被ってると思った。
「ネ〜〜プチュ〜〜ンヌ!!!」
自分の名前を口にしながら、俺達の目の前に腕を組んで佇むネプチューン王。
爆乳人魚の群れに囲まれている俺を、ジッと見つめてきた。
何だよ? 羨ましいのか?
「……お主が不可視の怪盗・ラインか……」
「あ、うん。そうだけど……」
「…………」
「あの……なにか?」
「……はァ……この男が……魚人島の救世主であり……そして我が娘の………… はァ〜〜」
なんかクソデカため息吐かれたんだけど……
初対面で失礼なヒゲモジャだ。
「……まあよいわ、不可視の怪盗とその仲間達よ。おぬしらを、“竜宮城”へ招待するんじゃもん」
「「りゅ、りゅ、竜宮城〜〜ッ!!?」」
竜宮城と聞いて、目と舌を飛び出させて驚いているケイミー&パッパグ。そしてマーメイズ達。
俺、エスネ、デンスケはポカンだ。
「竜宮城……? それって、浦島太郎が助けたカメに連れられて〜っていう……あの竜宮城?」
「どの竜宮城じゃもん!? ウラシマタロウなんて者は知らん!」
「ら、ラインちん! 竜宮城っていうのはね、このリュウグウ王国の王族達が暮らす王宮の事だよ」
「ふ〜ん」
「ふ〜んて…… 王宮だよ!? 天上の世界だよ!?」
「別に珍しくもないかな……ドレスローザに住んでた頃は、しょっちゅう忍び込んでたから。王宮」
「なんちゅー事言ってんだ!? ライン! もうコワイ! おれはお前がコワイッ!!」
へばりついてくるパッパグをペイッと引き剥がす。
「よく分かんないけど、その竜宮城……? 俺達呼んで何すんの?」
「宴じゃもん。お主達は奴隷にされていた我が国の民を何人も救い出してくれた。その礼をさせてほしいんじゃもん」
「宴かぁ〜……でも俺、今からマーメイドカフェで……もみもみタイムの予定なんだけど……」
「バカ! ライン! 王様が自ら誘ってくれてんだぞ! 城のもてなしと乳! どっちが大切か考えてみろ!」
「乳ィイッ!!」
「即答だな!?」
そりゃそうだろうが、考えるまでもない。
「そう言わず、来てほしいんじゃもん。城の兵士達も、救世主の姿を一目見たいと思ってるんじゃもん……」
「え〜……はぁ……分かったよ。竜宮城。行けばいいんだろ。仕方ないなぁ……」
「……竜宮城に招待して、こんなに喜ばれなかったのは生まれて初めてじゃもん……」
俺はしぶしぶ竜宮城に行くことを決めたのだった。
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「ワダツミ! 武器の準備はできたか!?」
「あいあいさー! バンらー・れッケン船長! 斧と剣、槍に矢……ありったけ集めてきたら!」
「バホホホ! いいぞ! それじゃあそろそろ始めるか! おれとしらほしの一番の愛の障壁、不可視の怪盗・ラインを消す……!」
フライング・ダッチマン号に積み込まれた大量の武器。バンダー・デッケンはそれらを“左手”で持ち上げた。
「バホホ! いくら40億超えの賞金首でも、寝る暇もなく延々と凶器が飛び続けてきたら、いずれ対処できなくなる──のハズだ! 身も心も追い込んで必ず殺してやる! しらほしと結婚するのはおれだァ! バホホホホホホホホ!!」
今日はバレンタインデーですね。
ナットーごはんは中学の頃、仲の良かった女子からチョコを貰いました。それを茶化した男共がヒューヒュー言ってきたんですが……
「これ義理チョコだから。私、自分より小さい男と付き合うとかありえないから」
と、チョコをくれた女子は冷静な口調で言いました。
この時の経験がなかったらたぶんこの小説は生まれてません。
今回の挿絵。
【挿絵表示】
次話予告、しらほし登場!