デカデカの実を求めて!   作:ナットーごはん

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今回のサブタイ特にお気に入り。



リトルギアソリッド

 世界をぐるっと一周する、アホみたいに長い大陸、赤い土の大陸(レッドライン)

 そんなメチャ長大陸の上には、天竜人とかいう、貴族や王族でさえひれ伏す、物凄〜〜〜く偉い人達が住まう都市があるという。

 その名も『聖地マリージョア』。

 

 基本的に新聞とかそういう固っ苦しい系は読まない俺であるが、流石に天竜人やマリージョアについてはそこそこ知っている。

 ……いやまあ、昔スカーレットやヴィオラから聞いただけなんだけど……

 あいつら王族だから来た事あるんだってさ。世界中の王様達が4年に1回集まって会議する場所がマリージョアだから……っと、話がそれた。

 まあ要するに、天竜人っていう世界一偉い奴らが暮らす、世界一優美な場所、それがマリージョア。そんな感じ。

 

 ……なんでいきなりマリージョアの説明なんか始めたのかって? そりゃあ今、まさに俺が、そのマリージョアにいるからだよぉ!!

 

「おおぅ……流石にやっべぇところに来ちゃったかも……」

 

 俺が乗り込んでた貨物船。あれがまさかまさかのマリージョア行きの船だったのだ。

 赤い土の大陸(レッドライン)にたどり着いた貨物船は、そこから荷物をゴンドラみたいのに乗せて、それで下からマリージョアのある上へと運んでいくのだが……

 船員達に見つからないように荷物の中に隠れていたのが災いし、俺は荷物と共にマリージョアへと運び込まれてしまったのである。

 

「……まあ来ちゃったものはしょーがない。こんなところ滅多に来れないんだから、むしろラッキーとでも思っとこう」

 

 レッツポジティブシンキング。

 途中でなんか大掛かりな荷物検査みたいのが始まったから、見つかる前にこっそり抜け出した。

 だから俺は今、一人でマリージョアの森……? みたいな所を歩いているんだけど……

 

「なんだろ……噂に聞いてた通り、すっげぇ綺麗な所ではあるんだけど……」

 

 な〜んていうか、偽物臭い。特にここに生えている木々。

 トンタッタ族は植物に詳しいから分かっちゃうんだけど、ここに存在している植物は全て人工のものだ。ここの土地に自然に生えたものではない。

 ……いや、ま、別にいいんだけどさ。手入れは丁寧にされてるみたいだし……

 

「てか植物なんか今はどうでもいいんだよ! 俺が旅に出た第一の目的! それを思い出せ! 悪魔の実! そう! デカデカの実を探さなくちゃ!」

 

 何かを探す時に有効となるのは、誰かに聞いて回る事。この場所なら天竜人かな。彼らに聞いて回ろう。

 

 ヴィオラが言うには、天竜人は皆傲慢で自分勝手でイヤ〜な奴ららしいが、まあそんなものは人によるだろ。

 良い感じの天竜人を見つけ、なんとか友達になる事で、世界最高のコネを作るという作戦はどうかな?

 世界一偉い天竜人なら、色んな悪魔の実の情報を手に入れられるだろう。そんでデカデカの実を見つけてもらって、そんで譲ってもらう。

 どうよこの完璧な作戦!?

 

「ふへへへ! ドレスローザに帰れる日も、案外近いかもしれない」

 

 そんじゃあさっそく行動開始。

 向こうに見えるでっかい城……は、なんとなく雰囲気が怖いから、とりあえずはその手前にある城下町みたいな所に向かってみよう。

 誰にも見つからないように隠れて行動。もはやお手の物。でっかい門をスルリと抜ける。

 

「さ〜て、友達になれそうな天竜人は………………は?」

 

 のそのそと足音が聞こえ、そっちの方向に視線を向けてみると、そこにはボロボロの……本当にボロボロで傷だらけの人間が、泣きながら地面を蹲っていた。

 そしてそのボロボロ人間の上には、ち○ぽみたいな髪型をした男が、さも当然かのような顔をして座っていた。

 

(な、なんだ……あれ……?)

 

 その時の俺の心情を一言で表すとすれば、“唖然”。それ以外にないだろう。

 なんだあれは? あの人はなんであんなボロボロなんだ……そんであっちの人はなんでその上に平然と座っていられるんだ。

 

(ま、まさか……あのち○ぽ頭が天竜人……? そんで、下に敷かれた人は……まさか……)

 

「おい、“奴隷”3号! お前遅いえ! もっと早く歩け!」

「も゛、も゛うじわげ……あ゛り゛ま……ぜん……」

「汚い声で喋るんじゃないえ!! 気分が悪い! この! この!」

「ッ!!! ッ!! ッ〜〜!!!」

 

 上に乗っているち○ぽ頭……天竜人が、下に敷いてるボロボロ人間……奴隷の背中を、ナイフでザクザク刺し始めた。

 なんの躊躇も、ためらいもなく。

 奴隷は悲鳴を押し殺しながらボロボロ泣いている。……それはそうだろう……だって背中を刺されてるんだ。痛いだろう、苦しいだろう。痛みで身震いしたら、乗り心地が悪いとまた刺される。

 

「…………!!」

 

 いくら奴隷とはいえ、あんな事したらヤバイだろうと、誰か止めてくれる人はいないかと、辺りを見回してみれば……

 

「な……っ!?」

 

 見渡して見ると、街のあちこちにち○ぽヘアーの天竜人達がいて、そいつらは皆、大きさ、性別、種族問わず、傷だらけでボロボロの“誰かしら”に乗っていたのである。

 

「むふーーん。新しい奴隷は座り心地がいいえ」

「こっちの奴隷は座り心地が悪くなってきたアマス。もういらないアマス」

「座り心地が悪いなんて生意気だえ。死ね」

「兄さま、こっちの奴隷も顔が気に食わないから殺しとくアマス」

「うむ。この前新しい奴隷をたくさん仕入れたから、古いのはどんどん殺してくえ」

 

「…………………………!!?!?!!?」

 

 俺は今、自分の目の前で行われている光景が、本当に現実であるかを理解する事が出来なかった。

 人が死んだ……殺された……

 天竜人によって、銃で頭を撃ち抜かれたのだ。そりゃあ死ぬだろう。誰の目にも明らかだ。

 

「ぁ……ぁ……あぁ……!!!」

 

 気が付いた時には、俺の体は震えていた。ガタガタと震え、自力で止める事は出来なくなっていた。

 右を見る。天竜人が奴隷を鞭で打っていた。あちこち皮膚が破れ血が出ている。

 左を見る。天竜人の子供が笑いながら奴隷の体にヤリを突き立てて遊んでいた。

 前を見る。さっきの惨状だ。何人もの奴隷達が、天竜人によって次々に殺されていってる。

 

「オ゛ェ……ッ! おぇえぇえぇ……!!」ビチャビチャ……

 

 俺はたまらず、胃の中の物をその場にぶちまけた。

 

 なんだこれは? 地獄かここは? 人の命が、まるでプールサイドのありんこみたいにプチプチ潰されていってる。

 怖い……恐ろしい……と、俺は心からそう思った。

 何が怖いって、この惨状を作り出している天竜人が、本当に何も、何も感じた様子を見せていないところが恐ろしい。

 

 この前、船で出会った海賊達。あいつらはこっちの船の乗組員達に対して「殺すぞ!」と脅していた。つまり『命の価値』を理解していたのである。

 だがこいつらは違う……

 足が遅いからナイフで刺す。機嫌が悪いから鞭で叩く。面白いからヤリで突く。飽きたから殺す。

 人間をまるで、使い捨てライターのように……

 

「お、おぇ……おぇぇ……!! はぁはぁ……ううぅ……」

 

 こんな風に人が殺されるのを見るなんて、初めての経験だ。

 前世は日本生まれ。殺人なんてそうそう起こらない国。

 そして今世はグリーンビット生まれ。もしくはドレスローザ。

 グリーンビットのトンタッタ族は皆純粋でイイ奴らだし、ドレスローザは貧乏国家だが、過去800年間一度も戦争が起こらなかった平和な国である。

 

 ヤバイ。異世界舐めてた……

 俺はたぶん平和ボケしてたんだ……

 

 天竜人、こいつら、人間じゃない……

 友達になってデカデカの実を探してもらう? 10分前の俺はなんて愚かな事を考えていたんだ。今はただこいつらが怖い。恐ろしい。悍ましい。サイコパス。

 

「に、にげ……逃げよ……ここから、すぐに……!」

 

 今すぐここから離れたい。だけどあまりの恐怖に足がすくむ。こんな経験も生まれて初めてだ。

 ヤバイ、また胃酸がこみ上げてきた。

 

「おぇ……」

 

「ん? なんの音だえ?」

 

 

 運が悪い事に、俺の嗚咽の音が天竜人に聞こえてしまった。

 うずくまってオエオエしている俺と、天竜人の視線が、交差した……

 その瞬間──

 

「こ、小人だえーー!!」

「えっ!? 小人? どこアマスか! 兄様!」

「そこ! そこだえ! 首輪を着けてないえ! ……って事は、誰の奴隷でもないって事だえ!」

「兄様! わたし小人の奴隷が欲しい!」

「わちしもだえ! とっ捕まえるえー! 行け! 奴隷共ー!」

 

 天竜人がそう声を上げた瞬間、全身傷だらけのボロボロ奴隷達が俺の事を捕まえようとこっちに向かってきた。

 まるでゾンビだ。

 ボロボロ過ぎて動きののろい奴もいれば、信じられない速さでこちらに詰め寄ってくる奴もいる。

 

「う、うわああああああーーッ!!! く、来るなぁあああーーッ!!」

 

 もしも捕まってしまったら、俺もあいつらみたいな、奴隷となってしまうのか。

 絶対に嫌だ!!!

 俺は走った。走って逃げた。もう足がすくむなんて言ってられない。今までの人生で一番かってくらい、必死に走って逃げ回った。

 

「ぜぇぜぇぜぇ! はぁはぁ! ふが、うがぁ……!!」

 

 怖い怖い怖い! 嫌だ嫌だ嫌だ! 助けて助けて助けて!

 息が切れる。心臓が張り裂けそうだ。それでも逃げる。逃げ続ける。

 時間をかけたら人を呼ばれる。だから全力で見つからない場所まで逃げないと。もっともっと、走って走って走って、捕まったら最後だ。

 

「はぁー!! へぇー!! ひぃい……!!」

 

 猛ダッシュでなんとか奴隷達を振り切り、俺はマリージョアの敷地を抜け出した。

 だけどまだ追ってくるかもしれない。とりあえずまだ走る。足を止める事の恐怖が俺を突き動かす。

 人工芝を抜けて、地面が赤い土になってきた。それでも走る。まだ走る。

 

 そして気が付いた時には、俺は赤い土の大陸(レッドライン)の崖端まで来ていた。

 

「ぜぇぜぇ……あぇ……? もうこれ以上は……はぁはぁ……行けな……ふへっ?!」

 

 そこで足がもつれた。

 勢いそのまま空中に投げ出された俺は、赤い土の大陸(レッドライン)の崖の外へと飛び出していた。

 それすなわち……

 

「ぎぃいいいぃぃやぁあああぁあーー〜〜ッ!!!!」

 

 崖からの転落である。

 ちなみに赤い土の大陸(レッドライン)の崖の高さは雲よりも高い位置にある。

 そんな所から飛び出してしまったのだ。真下が地面だろうが海だろうが、こんな高さから叩き付けられたら間違いなく即死である。

 

「イヤッ! イヤッ! イヤァアッ!! 死にたくない! 童貞のまま死にたくない! せめて死ぬならおっぱいに埋もれながらがいい! イヤァアァア!!」

 

 頑張れ俺! 飛べ! 飛ぶんだ! たとえ飛べなくても今だけは飛べ! このままだとマジで死ぬぞ! 

 

「ふんっぎぎぎぎぎぎィイ〜!!」

 

 うおおおお!! トンタッタパワー全開ーーッ!!

 

「とっっっべぇええええ!!!」

 

 両手を翼のように羽ばたかせる。足もバタバタ動かす。そして尻尾はぐるぐる回す。

 

「べぇえええ……!! え゛ぇええ……ッ!!!」

 

 そんな俺の無駄な努力……いや、意味のある努力が実を結んだ。

 空を飛ぶ……とまではいかないけど、落下の速度が明らかに落ちてきている。これは……おおっ! 尻尾の回転のおかげだ!

 

「飛んでる! 飛んでるよ俺! すげぇえ! しっぽコプター!」

 

 例えるならソニックに登場するテイルス。あいつも尻尾を回して空を飛んでいた。あんな感じ。

 

「はぁはぁはぁ……! だけどこれ、めっちゃ疲れる……! 尻尾つりそう……!」

 

 とりあえず下に降りるまでは何とか頑張れ俺の尻尾!

 ゆっくりじわじわ下りていき、ようやく地面が見えてきた。……いや、地面じゃない。今俺の下に見えるのは……

 

「海だぁあーー!?」

 

 バシャーンッ!

 

「ごぼぼぼぉ……!」

 

 着水。とりあえずマリージョアからは逃げられたし、ひも無しバンジージャンプも成功した。だけど今度は……海の中かよ!

 ぶはぁと海面から顔を出して、陸地を探す。しかしどこを向いても海しか広がっていない。あるのは背後にそびえ立つ赤い土の大陸(レッドライン)の断崖絶壁。

 

「はぁはぁ……とりあえず陸に上がりたい……! どこだ……? どっちが陸なんだよ、畜生……!」

 

 こうなりゃヤケだ! テキトーな方向に一直線に泳いでってやる。

 

「我流・トンタッタコンバット……しっぽスクリュー!!」

 

 俺の泳ぎの速さはトンタッタ1!

 尻尾を回転させる事で超スピードで泳いで行けるのだ。

 

「はぁはぁ……だけど流石に、さっきの“しっぽコプター”と合わせて、疲れてきた……! ごぼぼ……」

 

 頑張れ俺、今止まると溺れ死ぬ。

 なんとか、なんとか陸地を見つけるまで、泳ぎ続けるんだ……!

 

「はぁはぁ、ぜぇぜぇ……あぷあぷ……ぶへっ、ひぃひぃ……!」

 

 ……俺がようやく陸地へとたどり着いたのは、それから約24時間後の事であった。

 

 

 

 

 




ラインくんにはまず、ワンピース世界の現実と過酷さを知ってもらいたかったんや……

感想とか評価もらえると喜びます。
次話はたぶん水曜日。
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