「……って、信じられるかぁ~ッ!?」
「ひぃん!?」
何一つ偽らず、ところどころややこしい所とかは端折ったりしながら赤裸々にキヴォトスに戻って来るまでの事を語ったのに、最初に飛び出したリアクションはもう一人の一年生、黒見セリカちゃんによるちゃぶ台返しだった、なんでー!?
「っていうか、今時そんな設定の話バイト先に置いてある漫画でも見ないわよ!? 嘘つくならもっとマシな嘘を吐きなさいよね!?」
「う、嘘じゃないもんっ!? ほ、他のみんなは信じてくれるよねっ!?」
追撃で客観的に見て真っ当と言わざるを得ない反論が飛んできて、涙目になりながらもセリカちゃんの言葉を否定しつつ周りを見渡してみるものの……
「ん……ユメ先生はテレビの見過ぎで現実と空想がごちゃごちゃになってると思う」
「あはは……し、信じてあげたいのですが、これは……」
「う~ん、ちょっと無理がありますね☆」
「ユメ先輩……怒りませんからちゃんと正直に話しましょう?」
「ひぃんっ!? 誰も信じてくれてないよぉ!?」
今日初めて会った後輩ちゃんたちはまだしも、ホシノちゃんすら信じてくれてないという事実に思わず崩れ落ちそうになった……けど、ここで天啓が閃いた――!!
「そ、そうだ! 向こうの身分証明書を見せたら流石に信じてくれるよねっ!?」
「う、うーん……確かにユメ先輩の言葉を証明する判断材料の一つにはなるかもしれませんが……」
「だよね!? 待っててね! 今お見せするから……!!」
そう言って服のポケットや秘密の収納スペースもごそごそと漁って身分証明書を探す私、だったのだけれど……
「あ、あれっ? あれれっ? えっと、あれぇ?」
「どうしました? ユメ先輩?」
「………………な、ない……」
「あぁ、シャーレの本部に忘れてきちゃったんですか? 何というかユメ先輩らし……
「……む、むこうの世界のおうちに置いてきちゃったみたい……」
「………………あ˝~……」
涙目になっている上に恐らく顔が青くなってしまってる私をホシノちゃんが残念な物を見る目で見ている、他のみんなも似たような、なんというかかわいそうな生き物を見るような目で見ている……ひぃん……
「ん……なんだか、罪悪感が湧いてきた……」
「ですねぇ……なんだかイジメてるみたいです」
「ここまで必死に証明しようとしているという事は、本当の事なのでは……?」
「え、なにこれ私が悪いの……?」
「はぁ……しょうがない、ユメ先輩?」
「なぁに……ホシノちゃん……?」
多分どんよりとしたオーラが出てるであろう私に、ホシノちゃんが少しだけ真面目な顔をして呼びかけてきた。
「今から幾つかユメ先輩と私しか知らない質問をしますので、それに答えて下さい。さっきの荒唐無稽な話は兎も角、少なくともそれをちゃんと答えられればユメ先輩が本人である事は私が保証できます、みんなもそれでいいよね?」
「ホシノちゃん……!!」
ホシノちゃんの言葉に素直に頷く後輩ちゃんたち。やっぱりホシノちゃんは頼りになるなぁ、困ってる私をこうやって助けてくれる所は変わってないみた……何だか若干ひっかかる所があった気がするけど、ホシノちゃんの為にもちゃんとお答えしなくちゃ!
「じゃあまず最初の質問です、枯れた大オアシスに宝探しに行って、地面を掘っていた時の服装は?」
「あー、懐かしいなぁ、あの時は二人とも学校指定の水着だったね、結局お宝の花火は見つからなかったけど……楽しかったよね!」
懐かしい思い出話が出てきて思わずニコニコしてしまう、私からすればもう二十数年以上前の話だけど、昔アビドスに居た頃の思い出はどんなに時間が経っても色褪せないし鮮明に思い出せる……これは私の大事な宝物だ。
「ん? 大オアシスの……」「お宝……?」「花火!」「その話詳しく!!」
「わっ!? えっ!? ちょっ!?」
聞き捨てならないと言わんばかりにずいっとホシノちゃんと私に迫ってきた後輩ちゃんたち、食いつきが凄いね!? そんな後輩ちゃん達をホシノちゃんがちょっと慌てた様子で抑えた。
「待った待った! 後で教えてあげるから! ……じゃあ次の質問ですが――――
そうして私はホシノちゃんから出される質問に一つずつ答えていった。
後輩ちゃんたちはみんな本人確認の為の質問――という名の私とホシノちゃんの思い出話に興味津々だった。
うん、後でみんなもいっぱいお話しようね、私もみんなの思い出話が聞きたいし!
そして……
「――――次が最後の質問になります」
「ごくり……」
ホシノちゃんの雰囲気が少し変わった気がする、なんだか「この質問だけは絶対にちゃんと答えてもらう」みたいな気迫を感じる……
……ただ、少なくともホシノちゃんの中では既に私は間違いなく梔子ユメ本人だってほぼ確信してるみたい。
多分だけど、ホシノちゃんが一番聞きたかった質問は多分コレなんだろうなぁって気がする。さて、ホシノちゃんは何を聞きたいのかな?
「ユメ先輩の生徒会長手帳、あれはどこに隠したんですか……?」
「………………っ!」
……そっか、もしかしたらホシノちゃん、この2年間ずっと私の手帳を探してくれてたんだね……
だ、だとしたら
急に挙動不審になった私を見てその場の全員が訝し気な顔をしてる、ど、どどどどどうしよう……!?
「……どうしたんですか? ユメ先輩、答えられないんですか?」
ホシノちゃんの視線がだんだん鋭くなっていく、ひぃん……これ、正直に言わないと駄目だよね……!? うぅ、しょうがない……正直に話そう……
「あ、あのね、ホシノちゃん……?」
「はい」
「怒らないで聞いて欲しいんだけど……」
「はい……はい?」
「これ……」
そう言って上手に笑えてるか怪しい顔のまま、私は秘密の収納スペースからホシノちゃんの求めている答え――生徒会長手帳を取り出した。
「――――……へ?」
ホシノちゃんが目を真ん丸にして、私が他のみんなにも表紙が見えるように両手で持った生徒会長手帳を凝視している。
他のみんなもホシノちゃんと私の様子がおかしい事にざわざわしちゃってる、うわぁ……とっても空気がよろしくないよぉ……
「……ど、どこに、隠してたんですか? ずっと、ずっと、ユメ先輩からのメッセージをたよりに、その手帳を探してて……」
「あー……えっと、そのね? 本当に、本っ当に、怒らないで聞いてね……?」
「は、はい……」
そう、これは不可抗力、ホシノちゃんが見つけられなくても仕方がない、だってこの手帳は……
「その、ね? 私が転生した所に一緒についてきちゃったみたいで……」
「………………? ……!?」
一瞬私が何を言っているのかわからないといった顔をした後に、徐々にその言葉を理解したのか目を白黒させるホシノちゃん。そうだよね、そういうリアクションになるよね?
メッセージ通りの場所に行ったのに肝心の物が無いんだもん、すごく探したんだろうなぁ……でもでも、こればっかりは私は何も悪くないから仕方ない、よねっ?
「……そうですか……そうですか……!!」
「うん、そうなの!」
「……ユメ先輩らしいというか、なんというか……っ!!」
「え、えへへ…………って、ひぃん!?」
そう言いながら俯いていたホシノちゃんだったけど、不意にホシノちゃんの手が手帳に素早く伸ばされて、思わず私は手帳を咄嗟に下に下げてホシノちゃんの手を避けた。
「……?」
「……??」
お互いに首をかしげる私とホシノちゃん……えっと、なんでだろう? ホシノちゃん、無表情に近いのにかなりおめめがキマっちゃってる気がする!?
「ユメ先輩、なんで、よけるんですか、その手帳の、中身を、見せて下さい」
「だ、だめっ! これは! その! 見せられない! やつに! なっちゃったの!」
抑揚の無い声で腕を伸ばすホシノちゃんとそれを避ける私……ひぃん!? ちなみに後輩ちゃんたちは唖然としたまま私たちの応酬を見物してる。
うん、そのまま見てるだけでいてね! ホシノちゃんに加勢したりしないでねっ!?
「見せて下さいよ! 私に何か残した言葉があったんですよね!?」
「そうだけど!! だめっ!」
「見せて下さいっ! 私がどれだけ探し回ったと思ってるんですかっ!?」
「それは不可抗力とはいえ申し訳ないと思うよ!? けどだめっ!?」
「早く! 観念して!! 見せて下さいっ!!」
「だめったらだめっ!?」
「こうなったら……っ
――ズドドドドドンッ!!
「ひぃんっ!?」
突然響いた大きな音にびっくりして思わず胸に手帳を抱えつつしゃがみこんでしまった私、ホシノちゃんからの追撃は……ない。あれ?
「あれれ? 今の音は、銃声? 外から?」
私が顔をあげると、みんなアヤネちゃんの方を向いていた、そのアヤネちゃんは端末を見て何かを調べているみたい。
「これは……! 武装集団の襲撃です! 対象は、カタカタヘルメット団!!」
この世界のバナナとりの手帳はこういう経緯で発見不能になってました。
本日もう1~2話更新すると思います。