異世界先生ユメセンセー   作:七日 八月

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本日2本目の更新です。


砂の記憶と夢の続き

 

 

 ――その後、問題無くヘルメット団の前哨基地を制圧し、基地内にあった大量の物資を全て破壊して作戦は終了。念の為武器弾薬等は出所を調べる為に一部は回収、今後調査する予定。

 

「……っと、報告書はこんなカンジで良いかな?」

『はいっ、問題無いと思います!』

「ありがとう、アロナちゃん」

 

 あのあとすぐ、戦闘開始直後からホシノちゃんは盛大に、それはもう親の仇と言わんばかりに暴れに暴れてヘルメット団の子たちをあっという間に蹴散らしてしまった。

 シロコちゃんたちの3人はほぼ出番無し、とまでは言わないけれど……殆どが隙を伺うように隠れていた少数の相手をやっつけるだけで終わってしまった。

 

 結果として後輩のみんなは「先生の言ってた事もあながち間違いじゃなかったのでは?」という、嘘から出た実というかなんというか……

 前哨基地を壊滅させた後はホシノちゃんも若干開き直ってたっぽいから、あれはあれで良かったのかな?

 

「ん~……とりあえず襲撃に関してはこれで収まる……わけ無いよねぇ……」

『えっ? そうなんですか? 先生』

 

 こっちで在学中の頃の私なら素直に解決を喜んでいたと思うけど、異世界での経験が私に待ったをかけている、この件はこれで終わりじゃないって。

 

「これはあくまで私の予想なんだけどね? ヘルメット団という不良グループがあれだけの物資や資金を集めるのは流石に無理があるかなって、だからそれらの援助、あるいは依頼という形での前払いが行える規模の組織が裏に居ないと、こうはならないんじゃないかなって」

『な、なるほど……言われてみれば確かにそうですね?』

 

 あくまで予想で確証が無いし、みんなを不安にさせたくないからまだ言っていないけど、似たような経験に覚えがある私は、この件にはほぼ確実にかなり大きな黒幕が潜んでると思っている。

 

 確実に成功するかもわからないような仕事に、自分のお財布の中身を盛大にばら撒くかと言われたら絶対にあり得ない。おそらく資金的に相当余裕のある相手のはず……だよね。

 

「うん、ただこれ以上は今の所証拠も何も無いから何とも言えないね。かつての()()の教えのお陰でここまでは私でも思いついたけど……」

 

『ユメ先生の先生、ですか?』

「うん、私の高校時代の恩師だよ」

 

 先生――ひと教室まるごと(夏季の補習中につき少人数)の異世界召喚に巻き込まれた私たち5人を教え導いてくれた人、まさかあんなに頭の切れる人だとは思わなかったけど、先生が居てくれたお陰で私たちは全員無事に元の世界に帰れた。

 

 そして、アビドス復興という道標を失った、何を目標にすれば良いかわからなくて当時漠然と生きていた私に、学校の先生を目指すという新たな目標、そのきっかけを与えてくれた人。

 高校卒業後もちょくちょく連絡をとって、目標の為のアドバイスなんかも貰っていて……先生が居なかったら今の私はここに居ないんじゃないかな?

 

 ……まさかいざ私が先生になるかどうかっていうタイミングでキヴォトスに戻ってこれる事になるとは思いもしなかったけど……

 

「元気にしてるかなぁ、先生」

『私も会ってみたいです!』

「うん、いつか機会があったらね?」

 

 向こうとこっちは、ほぼ間違いなく時間的に繋がりが無い場所っぽいし、通り道さえあれば会えそうな気がするんだよね。それよりも今は……

 

「うーん、前哨基地から回収した武器弾薬の出所を早く調べないと……けど、今日はひとまずここまでかなぁ~、ん~っ! ふぅ……」

『お疲れ様です、ユメ先生!』

「うん、アロナちゃんもお疲れ様」

 

 シッテムの箱をしまって立ち上がる、窓の外を見ると徐々に太陽が傾き始めているのが見えた。

 

「なんだかんだ色々とあったけど、今日は楽しかったな……」

 

 前哨基地を攻略し終えて学校に帰ってきてから、みんなと色んな事をお話をした。特にみんなが興味津々だったのは私の在学中とホシノちゃんが探した、オアシスに稀少鉱物を使った花火が大量に埋まっているっていう話。

 

 特にセリカちゃんが興味津々で目を輝かせていたっけ、借金の話題が出てちょっと空気が暗くなっちゃった時に咄嗟に再びこの話題を出したら、思いの外盛り上がって雰囲気が明るくなったのはなかなかファインプレーだったんじゃないかな?

 

 なんとなく今日の事を振り返りながら私は屋上を目指して歩いていた。ちょっと風にあたりたかったのと、なんとなく屋上に行きたい気分だったから。

 

 そうして屋上に辿り着くと――

 

 

 

 

 

 

「――あれ? ホシノちゃん?」

「あ……ユメ先輩……」

 

 そこには先客が、ホシノちゃんが屋上から外を眺めていた。なんとなく隣に並んで同じく外を眺めてみる、上から見れば意外と2年前と変わらないように見える街並みだけど、やっぱり砂の浸食はだいぶ進んでいた。

 

「……ここもだいぶ砂が増えたね」

「えぇ……住民もだいぶ減りましたし、校舎内外の掃除もこの人数だとなかなか手が回らなくて……」

 

 ぼーっと眺めながら出てくる言葉は見たままの現実、それは冷たくて暗く私たちにのしかかってくる、けれど――

 

「うん、でもみんな頑張ってるの、とっても伝わってくるよ。それに、アビドスは色々あるけど、みんなが楽しそうでちょっと安心したんだ」

「先輩……」

 

 いつの間にかこっちを見ていたホシノちゃんの視線に気付いて、私もそちらに顔を向ける。目の前の大事な後輩ちゃんは、背丈はあんまり変わりないように見えるけど、髪の毛が伸びたせいか随分と雰囲気が違って見える。

 

「ふふっ」

「な、なんですか?」

 

「ううん、ただホシノちゃんが立派に先輩してるのが見れてうれしいなーって♪」

「か、からかわないで下さいよ……!」

 

 そう言いながらホシノちゃんは不貞腐れた顔をしてそっぽを向いちゃった。

 

「からかってなんかないよ、昼のアレは……私のヘタクソなフォローのせいでちょっと変な事になっちゃったけど……」

「いえ……その、アレは私の日ごろの行いのせいなので……」

 

 今度は下を向いちゃった……だめだめ、そんなお顔はしないで欲しいな?

 

「ホシノちゃん、そんなに自分を卑下しないで? ホシノちゃんは後輩ちゃんたちにあんなにも好かれてるんだから――だから、ホシノちゃんは何も間違えてなんかいないよ?」

「………………!」

 

 ハッとしたようにホシノちゃんは顔をあげた、今日は今まで見た事のなかったホシノちゃんがいっぱい見れる日だなぁ。

 でもそれも当然かな、だってこっちでも2年は経ってるんだもん、この街と一緒で変わらない物なんて無いよね。

 

「……でも、私はあの日も、間違えてばかりで……」

 

 ホシノちゃんが言う()()()……それが指すのがいつかは流石の私でもわかる、ホシノちゃんが何を背負っているのか、私がいつの間にか何を背負わせてしまっていたのか。

 

「そっか……あの日からホシノちゃんはずっと私の事で自分を責め続けてたんだね……」

 

「………………。」

 

 無言で重く頷くように下を向いてしまったホシノちゃん。これは、私の口から言ってあげないと駄目かな。

 

「あれはね、ホシノちゃんのせいじゃないよ。私がああなったのは全部私の責任だから」

 

「で、でも……「めっ!」先輩……?」

 

 後輩ちゃんたちの前ではかなりユルユルな先輩でいたみたいだけど、本当にホシノちゃんって根っこの部分はどこまでも責任感が強くて真面目な子だよね。

 そこはとても良い所なんだけど、だからといってカチコチに凝り固まってしまってるのはよろしくないかな。

 

「いつまでもそうやって自分を責めちゃダメだよ? 自分で自分を責めるって事は許せるのも自分しかいないんだもの、そうやっていつまでも自分を許さないままでいるの?」

「だってこれは……私が、私が……」

 

 あーっ! もうっ! そんな顔しちゃダメダメ!

 

「じゃあそんなホシノちゃんに問題です! 今目の前に居るのは誰でしょう?」

「……え? からかってるんですか? 今目の前に居るのは、ユメ、先輩、で…………」

 

「そうだよ、よく見て? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ……あっ……」

 

「さあっ、これでホシノちゃんが自分自身を責める理由、無くなっちゃったねっ?」

 

 にっこりと悪戯が成功した時みたいに笑いながらホシノちゃんにそう言うと、ホシノちゃんは大きな大きなため息を吐いた。

 

「はぁ……ユメ先輩はずいぶんと口が上手くなったというか、ズルい人になりましたね……」

「それはそうだよ、私はもう前世から数えたら精神年齢アラフォーだよ? いつまでも少女のままじゃ居られないのっ♪」

 

「とか言って、どうせ精神年齢二十歳ぐらいの頃の2度目の幼稚園時代に他の子供と一緒におままごととかして遊んでたくせに……」

「え、えぇっ!? なんでわかったのっ!?」

 

「うへ、本当に遊んでたんですね……?」

「え!? ひょっとしてあてずっぽう!? 私カマかけられたの!? ひぃん……引っかかっちゃった……やっぱりホシノちゃんはイジワルだぁ……」

 

「今日散々引っ掻き回してくれたお返しですよ、うへへ……」

「ひぃん……えへへ……」

 

 あぁ、こうやって穏やかに大事な人と笑い合えるって、とっても幸せな事なんだよね。

 

「はぁ、本当になんだか今日は調子が狂いっぱなしです……あ、そうだ、すっかり言い忘れていました」

「ん? なぁに? ホシノちゃん」

 

 ホシノちゃんは何かを思い出したように呟いてから柔らかい笑顔でこちらを見た。

 

 

 

「お帰りなさい、ユメ先輩」

 

「……うんっ! ただいま、ホシノちゃんっ!」

 

 そうして笑顔で笑い合う私たちを、夕暮れの太陽が優しく照らしていた。あぁ、本当に帰って来たんだなぁ、私の故郷、アビドスに……

 

「ねぇ、ホシノちゃん」

「なんですか、ユメ先輩?」

 

「私ね、実はアビドス在学中にやり残した事でどうしてもやりたい事が一つだけあるんだ」

「一つだけ……アビドスの復興ですか?」

 

 それも大事な事だね、でもね、あの日砂漠でついに動けなくなって、薄れゆく意識の中で一番最期に思った事、それはね。

 

 

 

 

 

 

「――私の卒業式、今からやらない?」




やっと書きたかった話が書ける。

ウソみたいだろ。 まだ対策委員会編の3話目なんだぜ。 これで…
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