舞台は地球、迫り来る光の脅威、立ち向かうは謎の超人。
そんな彼らと出会うのは、一人の青年だった。
ウルトラマングレース、いよいよスタート。
それは、悪夢のような光景で死にかけていた時だった。
暗雲立ち込める街、破壊された建物の数々、燃え盛る炎、逃げ惑う人々。
彼らを守るべくかの外敵と戦っていたが、ものの見事に無様に負けてしまった。
体はもはや自由に動かない。自分の命が尽きるのが先か、それとも今も目の前で暴れまわっている外敵に命を奪われるのが先か。
『■■■■ーーーッ!!!』
『凶獣ルガノーガー』。
漆黒の体に三つの頭部を有するその凶悪な怪獣は幾つもの星を滅ぼしてきた存在だ。
この星ごと生命体を食らいつくさんと今も破壊活動を続ける彼らに、『オレ』は立ち向かおうとした。
理屈じゃない。自分の胸にある何かのために止まるわけにはいかなかった。
だが、体はさっき言った通り限界を超えてまともに戦う動くことができない。
木偶の某もいいところだ、と思いながらオレは視界に入ったルガーノガーがこちらへ攻撃しようとする光景に、自嘲した。
――ここまで、なのかよ……。
本当に心が折れそうになっていた時、そこへ彼らは現れた。
暗雲立ち込める黒い空を切り裂くように、一筋の流星が降り立った。
第三者の介入にルガーノガーは驚きの咆哮を上げ、オレは助けにやってきたであろう存在に……感動した。
赤と銀の体、胸に光る青い流星の光、一等星のような輝きを持つ双眸を宿した銀色の顔。
彼の登場は遠い過去の出来事だったとしても、生涯その記憶は鮮明に蘇るだろう。
もしも、世界が誰かによって壊れそうな時、空の彼方から僕らのためにやってきたヒーローがいたら。
その正体が『彼ら』と違って本物じゃなかったとしたら。
果たして、そこにいるのは贋物なのか、それとも……。
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日本、関東地方のとある都市。
今現在、そこでは高速建築物の間を舞台に二体の怪獣が争っていた。
『ギャオオ!』
一体は『古代怪獣ゴメス』。
甲殻や鱗状の代表組織を持つ原子哺乳類に類するといわれている怪獣であり、爪の生えた巨大な腕による怪力が特徴的だ。
『グルルルル!』
もう一体は『凶暴怪獣アーストロン』
黒い体表と頭部に鋭い一本角が特徴的な怪獣で、鉄の如き硬い体と口から発するマグマ光線が武器だ。
それぞれ生息地も違うはずの二体の怪獣がこうして争っているのは何故か。
そんな事を考える暇もなく、ゴメスとアーストロンは近くの建物を破壊しながら今も戦いを続けている。
二体の怪獣達の力強い巨躯による暴れっぷりに小さな人々は逃げ惑うしかなかった。
ゴメスとアーストロン達を背に走って逃げる一般市民達。
必死に積み上げてきたこの街を目の魔で壊されていくしかないのか。
だが、逃げ惑うそんな彼らの頭上を、一つの機影が飛び越えた。
『ギャオ……ギャン!?』
その機影はその人間のような手の形をした巨大な拳を以て、アーストロンと戦闘を繰り広げるゴメスの頭部を思いっきり殴りつけた。
あっけなく吹っ飛ばされ、そのまま地面へと倒れ伏すゴメス。
いきなりゴメスが殴り倒れた様子に何事かと思ってアーストロンが警戒して振り向く。
――そこには灰色の基調とした体色を有する鋼の巨人が立っていた。
鋭利な刃を備え、鋭い眼光を有するツインカメラを持った頭部。
無骨かつ分厚そうな装甲を纏った胸部アーマーに加えて、肩には大型ミサイルポッド、両腕には次世代型の
重武装な姿を有した鋼鉄の巨人……その内部に設けられた操縦席には一人の
「リンドウ・ハイジ、及びオライオン・イクス。只今該当区域に現着。これより戦闘行動に入る」
パイロット用のヘルメットで頭を覆い、静かな口調で告げる青年のパイロット――『リンドウ・ハイジ』。
彼は手元に握る操縦根を握り締め、思いっきり動かす。
その操縦に連動して、鋼鉄の巨人――『オライオン・イクス』はアーストロン目掛けて動き出していった。
【第1話:嘘と真の狭間の超人】
重武装にも拘らず凄まじい出力による見た目に反した機動性で接敵していくオライオン・イクス。
まずアーストロンへ叩き込んだのはレールガンによる連射を当てて、すぐそばまで迫ると両腕の拳を握って接近戦に持ち込む。
右、左、右、左という具合にアーストロンへ拳を振るうオライオン・イクス。余りの猛攻にアーストロンは殴打の連続を食らい後ろへと退いた。
『グルルルルッ!!』
唸り声を上げながらアーストロンは口から高熱光線・マグマ光線をオライオン目掛けて吐き出す。
両腕のレールガンを向けて射撃による牽制を行うオライオン。モニター越しにアーストロンを狙い定めているハイジは激戦下でも関わらずポツリと呟く。
「その光線は当たると装甲が融けそうなんだよなぁ……整備士泣かせはなるべくしたくないんだよな」
放たれるマグマ光線を巧みに避けて、アーストロンとの間の距離を取るオライオン。
中々攻撃が当たらないアーストロンは地団駄を踏み、さらにマグマ光線を浴びせようと攻撃が苛烈になっていく。
鉄すら容易に融かせるほどの灼熱の光線が鋼鉄の巨人を焼き尽くそうと迫る……だが、オライオンはそれを見据えたかのように、新たなる一手を決める。
「高機動スラスター、噴射!」
脚部の高機動スラスターを起動させ、オライオンはアーストロンのマグマ光線を飛び越えて避けた。
今までとは異なる速度で飛び上がったオライオンにアーストロンは目を丸くして驚愕……そのアーストロンの頭上を通り過ぎた後、肩のミサイルポッドが展開。
ハイジのいる操縦席の操縦根のスイッチに指がかけられ、そしてごく自然のように、王手をかけた。
「ミサイル、発射!」
――それは、一瞬の出来事。
オライオンがアーストロンの頭上を飛び越えたその直後、いくつものミサイルが降り注ぐ。
アーストロンが気づいた時には既に遅し、眼前に迫ったミサイルが着弾。
凄まじい轟音と共に閃光が炸裂し、大怪獣の断絶魔があたり一帯に響き渡った。
やがて舞い上がった土煙と硝煙が晴れると、そこには命の灯火が今にも消えようとするアーストロンの姿だった。
アーストロンは眼の光を失うと、力尽きるようにその巨体をゆっくりと地面へ倒れ伏した。
オライオンの鮮烈な攻撃によってアーストロンは倒された……後に佇むのは、鋼鉄の狩人たるオライオンと、ようやく起きあがったゴメスだけだった。
『ギャオオン……』
先程まで敵対していたアーストロンを片付けたオライオンの姿を見て、ゴメスは後退……そして、逃げるように去っていった。
まるで強者に背を向けて立ち去る弱者という野生動物の習性の話を思い出し、ハイジは徒労の言葉を漏らす。
「どうやら連戦は避けられたようだな……はぁ」
戦いの緊張から抜け出せたハイジは割と座り心地のいいコックピットの背もたれに自身の体を投げ出す。
倒されたアーストロンの死体を傍らに、オライオンは帰投命令が下るまで少しの休息を得るのだった。
ハイジの駆っていたオライオン・イクスから、そう遠くない場所に位置する建物……城南大学附属新科学エネルギー研究所。
その最深部の大型カプセルに収められている小さな欠片がまるで呼応するように光り輝いたような気がした。
~~~~
時間は少し流れ、翌日。
Earth・Guardian・Force……地球防衛組織『EGF』。
怪獣が引き起こす怪獣災害や宇宙人が引き起こす怪事件へ対策するためにこの地球に設立された大規模な防衛組織であり、特にこの"日本支部"では頻発する事件を解決するべく動いていた。
日本支部、メカニック・ドッグ。
既存の戦闘機型メカや戦車型メカが何十機も格納庫では、整備作業を受けているオライオン・イクスの光景があった。
前回の戦いで不利に陥る事なく怪獣であるアーストロンを撃破し、見事防衛任務をやりとげたオライオン・イクスだったが、それでももしもの時の不備をあってはいけないため、定期点検や調整を受けていた。
そんな愛機と言ってもいい鋼鉄の巨人を整備されている光景を近くの渡り廊下で見ている人物が一人。
男らしく短く整えた黒髪と赤色を含んだ黒い瞳を有した青年――リンドウ・ハイジ、その人だ。
戦闘時のパイロットスーツから、整備士達の手伝いもかねてのツナギ姿になっていた彼は手元に握った缶コーヒーを握り、静かに呟いた。
「……大したもんだなイクス。今回もお前さんのお陰でなんとかなったよ」
少しだけ中身の残った缶コーヒーを口元へ持っていくと、一気に飲み干した。
ほろ苦い苦味とそれをマイルドにさせる甘さを舌で感じながら、まだ渇きが残っている喉を潤していると……。
「お疲れ様、ハイジくん」
……と、ねぎらいの言葉と共にハイジの頬にひんやりとした感触が伝わる。
目を見開いて驚きながらそのハスキーボイスの人物の姿を確認すると、そこには見知った若い女性の姿があった。
胡桃色に近い明るいショートカットに琥珀色の大きな瞳、丸く小綺麗な小顔。
仮にも防衛組織の建物であるであろうこの場に似つかわしくない愛らしい容姿をした彼女は、意外にもEDFの特殊チームの隊員を示すジャケットを身に纏っていた。……程よく実った柔らかそうな太ももを露わにしているほどの黒のショートパンツなのは、彼女の女性としてのこだわりなのか分からないが。
そんな女性隊員が冷たさの感触の正体であるペットボトルを渡してくる様子に対し、見知った仲なのか少し安堵したハイジは彼女の名を口にする。
「君か、テルミ。驚かさないでくれ」
彼女――『テルミ・ユミ』はハイジに名前を呼ばれ、にこやかな笑みを浮かべる。
ハイジの知る限りでは、歌手でもアイドルでも通用しそうな見た目に反してEGFの若いエースと言われており、その実力は折り紙付きだ。
既に何件もの宇宙人事件を解決しており、近々とあるチームに編入されるという噂が流れていた。ユミが着用しているそのジャケットは、それの証なんだろう。
ユミからの労いの贈り物であるペットを受け取ると、彼女は上機嫌に話しかけてきた。
「ねぇ、ハイジくん。先のアーストロン撃退、お疲れ様」
「それはどうも」
「んん、なんだかあんまり嬉しそうじゃなさそうだね? 何かある?」
「ちょっとした懸念があるだけだ。テルミが気に掛けることじゃない」
仮にも怪獣を打ち取り市民を助けた英雄でもあるはずのハイドの浮かない様子を感じ取ると、ユミはすかさず訊ねた。
こういう時に限って機敏な彼女に、仕方がないといわんばかりにハイドは自分が感じ取った違和感について話す事にした。
「あの時戦ってたアーストロンとゴメス、何かに呼ばれてやってきた。オレはそう感じた」
「ふぅん、二大怪獣大激突したのは何か理由があるってこと? 例えば、そう、何か外的要因にひかれてやってきた、とか?」
「……いいところつくな。あの二匹の怪獣の近くに何かがある。それがまた別の問題を引き起こすんじゃないかって、そんな感じがしてな」
ペットボトルを開けて中身の烏龍茶を飲み、自分の感じた違和感をユミへと語るハイジ。
彼の言葉を聞くと、少し困ったような笑みを見せてからユミはニコリと返答した。
「ハイジくんの直感は嫌でも当たるかなぁ……そうだね、私それ調査してみるよ。上にも打診してみる」
「いいのか。精鋭チームになったばかりのお前がこんな当てずっぽうの言葉を」
「お前じゃない、テルミよ。あ、それともユミって呼んでいいからね!」
「……」
ユミが向けてきた満面な笑顔に対し、目線を背けて黙り込むハイジ。
まるで恥ずかしがる子供か、それとも呆れている様子なのかは分からないがハイジのいつもの態度にユミは変わらず花のような笑顔を浮かべていた。
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宇宙の何処か。
遠くの星々の光が輝き、真空の暗闇が満ちるその空間で一筋の青い流星が流れていた。
その名は『宇宙怪獣ベムラー』。
宇宙に名を轟かす悪魔とも言われている宇宙怪獣だが、ベムラーは必死に飛んでいた。
まるで捕食者から逃げる獲物の如く、星間移動のための青い殻を纏いながら逃げているのだ。
そのベムラーを追って、一つの眩い光がすさまじい速度で飛んでいく。
赤く輝くそれは、まるで太陽の如く輝きながらベムラーへと迫る。
必死にその赤い光が逃げるベムラー……だが、健闘空しくその赤い光と激突。
ベムラーの首に手が伸び、その首を締めあげる。
『クギャアッ!?』
短い悲鳴と共に、何とか逃げ出そうとするベムラー。
だが、ジタバタしても身動きはできない……その命が、自分を掴んでいる【存在】の空いた片手によって刈られる。まさにその瞬間だった。
振り下ろされたその手を、巨大な刃によって阻まれた。
その巨大な刃が赤い光るの主にぶつかった隙に、ベムラーは振りほどいて一目散に逃げだした。
赤い光の主は、逃げ出すベムラーを追撃しようとするが、彼の目の前に別の赤い光が出現。
二つの赤い光は、口を開いて話し出す。
『貴様、何をする』
『ベムラーは放っておけ。アイツもまた、欠片に引き寄せられたにすぎない』
『アイツが持つ欠片はオレが回収する。邪魔をするな』
『お前がどう思おうが勝手だが……アイツは今、欠片がもっとも降り注いだ星へと向かっている』
巨大な刃の主であろう、その赤い光はベムラーが逃げた方向へと視線を向ける。
――その先にあったのは、地球だった。