街に響き渡る、けたたましい獣の咆哮。
『ギャオオオオオオ!!』
新エネルギー研究所へと迫りくる異形の怪獣……バーニング・ベムストラ。
巨大な足跡を響かせて、建物へと侵攻してくる。
もうすぐ研究所内の敷地へ足を踏み入れ、内部の人々は我先にと必死に逃げ惑う。
……そんな最中、逃げる人々の流れに逆らって、一人の人物がバーニング・ベムストラの方へと向かう。
その人物――ユミは手にした最新式ビームガンを構え、バーニング・ベムストラへと狙いを定める。
「……ッ!」
目元の雫が残る彼女の瞳に映るのは、決して決意の炎……引き金を引き、銃口から放たれた光弾はバーニング・ベムストラの目元に着弾する。
急所に近いところを攻撃されて暴れ狂うベムストラ、それにも臆することなくユミは正確無比な射撃を浴びせ続ける。
巨大な相手にも怯むことなく先陣切って戦う様子に、パニックになっていた人々が気付く。
もしかしたらこの状況を打開するのではという淡い希望を抱きながら、それでも抵抗する一人のEGF隊員の背姿を見守っていく。
だがしかし、一人の人間が事態を好転させるには力が足りなかった。
バーニング・ベムストラの口から凄まじい熱量を誇る炎が噴き出す。
先程オライオン・イクスを蒸発させたであろう熱線の一撃が再び飛ぼうとしている。
もはや逃げる暇などない……ユミは既にエネルギー残量が切れたビームガンを構えたまま睨みつける。
――険しい表情を浮かべているその裏、内心は先に散っていった『彼』への謝罪の言葉を呟く。
(ごめん、ハイジくん……もうちょっとで、キミの元へ……)
心の中で弱気な自分の呟きをしながら未だに立ち向かうユミ。
その矮小ながら勇気のある彼女へ、バーニング・ベムストラは容赦なく熱線・ペイルサイクロンを放とうと……。
「トゥアッ!」
――した瞬間、バーニング・ベムストラの顎へアッパーカットによる鉄拳が叩き込まれた。
予想外の一撃を受けてバーニング・ベムストラはよろめき、人々は驚く。
特に最前線にいたであろうユミは、突如現れた巨大な存在に目を見開いて驚いていた。
「きょ……巨人?」
そこに立っていたのは、点を見上げる程の大きな灰色の巨人。
50mは軽く到達しているだろう人型の巨躯には鈍色の分厚い装甲パーツと灰色の体色をしており、何処か機械的な印象を受ける。
鋭利な刃を備え、光輝く双眸と銀色の顔面を有した頭部。
胸には星のような青い光を放つ水晶体。
巨人は腕を交差するような仕草をすると、まるで全身をみなぎらせるように力を込める。
すると、巨人は赤く光り輝き始めた。
灰色の体色は銀色と赤色の二色に変わり、色鮮やかな印象の見た目へと変わる。
まるでTVの中のヒーローを思わせるような外見になったその巨人は研究所を守るように立つと、バーニング・ベムストラへ構えをとる。
一方その頃、とある空間・
光の巨人となったフィクトスの内部に広がる宇宙を思わせる空間に、ハイジの姿があった。
ハイジは巨人の眼を通してバーニング・ベムストラの姿を見ており、冷静さを保ちながら口を開く。
「本当に、戦えるんだな」
『とはいえ、今のオレ達は一蓮托生ってヤツだ。
「十分だ」
ハイジは発破をかけてくるフィクトスに対し短い言葉で切り返すと、意識を集中させる。
少し早く動く胸の鼓動が生きている証とし、その心の意思を原動力に動き出す。
その際に聞こえてきたフィクトスの声が、何故か自然と勇気づけられた。
『今のオレ達は黒と白が合わさった"灰色な超人"……そう、あえて言うならば』
『ウルトラマングレーズだ!』
――『ウルトラマングレーズ』。
地面を踏み出して走り出した光の巨人は、目の前にいるバーニング・ベムストラ目掛けて突撃を仕掛けるのであった。
まず先に動いたのはバーニング・ベムストラ。
近づいてきたグレーズ目掛けて、剛腕を振り回して攻撃を仕掛けた。
素手に気付いていたグレーズは態勢を低くして咄嗟に避けると、鋭い鉄拳でバーニング・ベムストラ殴りつける。
目にも止まらぬ速さで叩き込まれた一撃に一瞬怯むベムストラだが、頭部の鋭い真紅の刃を振り下ろす。
グレーズは体を捻って避けると、その背後にあった建物の一部が斬られる。
斜めに切られ、重力に従ってずるりと落ちる光景を見て、グレーズの内部にいるハイドは眉を潜める。
「あの頭部の刃は危険か。そこはアーストロンと同じということか」
『あの刃には宇宙共通で手を焼かされているからなぁ。しかもバーニング・ベムストラになったことで、その凶悪さはさらに増している』
「……ベムストラ?」
『今戦っている怪獣の名称さ。ベムストラは本来、特殊な方法で生まれる融合獣なんだよ!』
聞きなれないバーニング・ベムストラの正式名称を口にした事で眉間に皺を寄せるハイジ。
リベンジを果たすのためにも詳しく聞きたい所だが、その相手であるバーニング・ベムストラは容赦なく攻めてくる。
口から放つ強烈な熱線の連続攻撃がグレーズに迫る……だが、グレーズは思いっきり地面を蹴りそのまま、飛び上がる。
そして脚部にある装甲が展開、そこから噴射口が生み出され、そのまま吹かして飛び上がる。
上空に浮かび上がったグレーズはバーニング・ベムストラが放つ熱線を避けて、そのまま誘導する。
……狙いは研究所から引きはがす事、そのためにはうまくこちらへ引き付ける必要があった。
どうにかして注意を惹き付けたいハイジは叫ぶ。
「おい、何かおい武器はあるのか?」
『あるぜ。お前がオライオン乗ってた時に使っていた光刃刀を改良したものが今しがた再構築完了した!』
「上等だ、行くぞ」
フィクトスの言葉を聞いてハイジは一瞬目を見開くと、嬉しそうに口角を上げる。
二人が念じると、グレーズの頭部にある刃が光り輝く。
刃に片手を添える形で狙いを定め、そして勢い良く投げた。
『フォトンスラッガー!』
グレーズの頭部の刃・『フォトンスラッガー』がバーニング・ベムストラへと飛んでいく。
バーニング・ベムストラは撃ち落とそうと熱線を連射するが、フォトンスラッガーはその熱線を切り裂き、勢いを落とさぬまま飛んでいく。
不味い、とそう思ったバーニング・ベムストラが回避行動を取ろうとするのもむなしく、フォトンスラッガーは頭部の赤い刃を刈り取った。
『ギャオオン!?』
自慢の武器の刃を切り落とされ、咆哮を上げるバーニング・ベムストラ。
その様子を見ながらグレーズはブーメランの如く周回しながら戻ってきたフォトンスラッガーを回収すると、次なる一手を繰り出す。
『スパークシューター!』
右手を突き出すと光が集結しだし、新たなる武器が生まれる。
生み出されたのは赤と銀色を基調とした
盾の形をした武器・『スパークシューター』を手に持つと、盾の形であるシールドモードとして構える。
新たなる武器を生み出したグレーズに対し、バーニング・ベムストラは再び熱線を吐いてきた。
グレーズはスパークシューター・シールドモードで防御、飛んできた熱線はものの見事に防ぐ。
自身の放った熱線が防がれた事にいら立つ様子を見せたバーニング・ベムストラは未だに空中にいるグレーズを睨みつけると、大きく咆哮。
『ギャオオオオオオン!!』
そして口から凄まじい熱量を誇る熱線・ペイルサイクロンを繰り出した。
迫るバーニング・ベムストラの大技にハイジとフィクトスの言葉が重なる。
『「来た……!」』
スパークシューター・シールドモードを構え、グレーズは迎え撃つ。
そしてバーニング・ベムストラのペイルサイクロンが飲み込んだ……二者の様子を見ていた人々は、ユミは息を呑んだ。
ひり付くほどの熱が肌に嫌でも感じ取った後、ペイルサイクロンの熱線がグレーズのいた場所を中心に爆発。
爆炎が包み込んでいく様子に、バーニング・ベムストラは内心勝利を確信した。
しかし、それが見事に崩れ去ったのは、爆炎の中から出てきた一つの人影を目にしたからだ。
スパークシューターを掴んだ腕で黒煙を振り払いながらグレーズの姿。
先程のペイルサイクロンを防ぎ切った事実を前にグレーズ――フィクトスが勢い良く叫ぶ。
『生憎、ウルトラマンはそんな軟じゃないぞベムストラ! 少なくとも、オレらがそう名乗っているうちは簡単には倒れないんだよ!』
そう言いながら、グレーズはスパークシューターを突き出す。
盾の形であるシールドモードから二又に変形、その中銃身を露わにした形態・バスターモードへと変形させると、バーニング・ベムストラに向けてその照準を定める。
そしてグレーズはそのままスパークシューターの引き金を素早く引いた。
銃口から放たれたのは一筋の青と緑の中間の鮮やかなエメラルドグリーンの射撃。
スパークシューター・バスターモードによる必殺の銃撃『グレーズバスターショット』は銃正確無比の狙撃として、バーニング・ベムストラを撃ち抜いた。
ものの見事に受けてしまったバーニング・ベムストラはゆっくりと倒れこみ、そして大爆発。
劫火を振りまく悪魔を倒した後、グレーズは地上へと降り立った。
街の人々は未知の怪獣を倒した巨人に驚きつつも、賞賛の声を上げる。
グレーズ本人はそれをチラリと見やるような仕草をした後、そのまま光に包まれて空気に溶けるように消えていくのであった。
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バーニング・ベムストラを倒して数十分後。
元のパイロットスーツを着込んだ姿へと戻ったハイジは地面へ倒れこんでいる姿があった。
「……つ、つかれた」
泥や土埃で汚れるのも気にせず、瓦礫と瓦礫の間にできたちいさな広場にて大の字になっていた。
……その理由は、一度死にかけたという物理的な物ではなく、人類を凌駕する未知の超人になったことによる精神的な疲れから来るものであった。
心配そうにフィクトスの声が何処からか響く。
『お前、大丈夫か? 怪我は治っているはずだが……』
「フィクトス、だったな。今のオレはどうなっている?」
『オレと一時的に融合して、消えていた命の灯火を再び燃やしはじめた。暫くはお前の治癒次第だな』
「そうかよ……そう、都合のいい話はないってことか」
ハイジは目を瞑り、泥のように眠りに落ちようとする。
念のために救援信号は送った。あとは回収されるまで安静にするだけだ。
そう思いながらハイジは瞼を瞑っていると、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。
一体誰なのか、と思考に入る前に自分を呼ぶ声が響いた。
「ハイジくん!」
自分の名前を呼ばれ、ハイジは重い瞼をゆっくりと上げる。
視界に見えてきたのは、こちらを見て涙を流しているユミの姿。
ユミは安堵したのか地面へへたり込むと、ハイジの手を両手で握る。
「うぅ……救援信号辿って、来てみれば、よかった、ハイジくん、死んだのかと、おもったぁ」
「落ち着け、テルミ……そう簡単に、死ぬかよ」
「だ、だって、オライオン、ばくはつしたし、でも、あの、巨大な、ミラクル、マンがぁ」
「……ありゃウルトラマンだよ、馬鹿」
言葉もしどろもどろのユミを安心させるために、ハイジは慣れない笑顔を浮かべる。
それを見てユミはポロポロと大きな涙を流し、手を離さないよう強く握る。
どうやら救援部隊の人が来るまで泣いている彼女を宥める必要がありそうだなと思ったハイジ。
『どうやら隅に置けないなぁこりゃ』
ハイジとユミ、二人の様子を見ていたフィクトスは苦笑するしかなかった。
この戦いを機に、スパークピースを巡る戦いは始まったばかり。
それでも、フィクトスは共に戦ってくれるかけがえのない戦友と出会ったのであった。