-MIDNIGHT- ぼっち・ざ・ろっく! ぷらす   作:レティス

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ここへ来てようやくぼざろ第一話の話に行けます。
オリ主が扱うショルキーの通称、どうしよう…。


継ぎ接ぎの“結束”

誰も手をつけなかったという“大剣のごときキーボード”を購入してから翌日、いつものように退屈な授業。先生の話を聞いては黒板に書かれた事をノートに写すだけの繰り返しだ。

俺の席にはそんな自衛手段を入れたケースを置いて…はいない。本当は教室の中にも持ち込もうとしたが、流石に無理そうだった。

 

 

「…流石に、ここじゃ“あれみたい”みたいには誤魔化せないか…。」

 

 

ギターケースを堂々と教室内に持ち込んでいる同じクラスの“後藤ひとり”とかいうピンク髪の陰キャみたいに、あれを楽器ですとか言って誤魔化すのは長さと重量的に無理だな。理論上楽器ではあるが。ケース変えても誤魔化し切れなさそうだ……そうか…カモフラージュ全く考えてなかったな…。

 

俺はバンドグッズをある程度身に付けた後藤の姿を少しだけ見ながら己の失態を小さく呟きながら少し反省した。一応、持ってきてない訳ではない。“とある場所”に隠してある。もうじきホームルームのはずだ。回収しながら下校した後、そろそろ新しいケースを買わないと。適正サイズは購入した後に自宅で計測済み。後はあの“剣盤”が入るケースを買うだけだ。

 

 

「さて、終わったから帰るか。」

 

 

ホームルームが終わり、俺は鞄を持って学校を出る前にとある場所へ向かう。巧妙に隠してはいるが、先生にバレてねぇといいけど…まぁ、その時は同じとこに二度と隠さないだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

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今日も高校生の1日が虚しく終わった…高校に入ってから1ヶ月が経とうとしているのに…バンド出来てない…全く友達とか出来てない…人と全く話せていないッッ!

 

あぁ何てこった…占いで高校人気部活第一位は軽音部って言ってたはず…だったらギターを持ってる私に声がかかると思ってたはずなのに…どこぞのバンドみたいなTシャツ着込んだりとかCDとかグッズとか持ってバンドしませんかアピールしてたのに…避けられてる始末……。

 

 

うん、やっぱり他力本願ってよくないね(今更)。ここは私から声を掛けるべきかな?よし後藤ひとり。ここは行き当たりばったりだ。誰かを誘うべきだ…………え、でも誰を誘えばいいの?もうサークルとかとっくに出来てる頃合いだし、さっきみたいに避けられたら…ああどうすれば…!

 

 

「…?」

 

 

刹那、私の後ろを横切って誰かが教室を出ていこうとしていた。あの銀髪の男子は確か、入学早々に部活動の勧誘を払い除けていったという逸話を成した…“中津君”だったっけ?誰かと一緒にいるのを見たことないな…私と同じく友達がいない者なのかな…?入学式後のあの行動は怖かったけど、もしかしたら…!

 

私は荷物を纏めるとすぐに中津君の後を追う。もちろん、バレないように…バレないように…バレたら終わりだ…!

 

 

「?」

「っ!?」

 

 

途中、バレそうになったけど何とかやり過ごしたりして、中津君が校舎を出るとこまで来た。すると、すぐには学校からは出ずに何故か木々が立っているところの下の“草むら”に目を向けていた…あれ、そんなところに草むらなんてあったっけ?

 

 

 

 

 

ガシッ! ファサファサッ ゴォンッ

 

 

 

 

 

「………………ぇ?」

 

 

えっ…それカモフラージュだったの?全然気づけなかった…ってか、でかい…多分あのケース2mぐらいありそう。あんなものよく隠せたね…あれが噂のニンジャって奴なの!?しかもゴォンッって鈍い音まで聞こえたよ!?中に絶対ヤバイもの入ってる…いや、多分あのケース自体が変形してビームとか撃ってきそう…どうしよう、下手に中津君に話しかけたら…話しかけたら…!

 

 

 

 

 

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『光になれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』(ビーム発射)

 

 

 

 

 

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「……うん、あれは無理だ。」

 

 

私は中津君の後を追うのをやめた。もしかしたらという希望はあったんだよ?ぼっち同士は惹かれ合うとかのジンクスを見出だしてたんだよ?けどね、あれはぼっちのベクトルが違い過ぎる。命幾つ合っても足りない…。

 

私はそのまま中津君が下校していくのを黙ってみていた。うん、今回ばかりはこの判断は本気で正しかったと思うの…うん…。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…結局なかったな。」

 

 

この剣盤の新しいケースを求めて、俺は下北沢までやってきていた。下校する時に何故か“ピンク色のナメクジ”の視線を感じたが、俺は無視した。向こうの方から諦めてくれたようだし、気にする事はないな。

俺はお目当てだった店を何件か回ったが、何れも店には並んでいなかった。この剣盤、1.9mもあって幅広のせいで普通の楽器ケースはおろかサバゲー用のガンケースにさえ入らないというデカさだったのだ。何かないかと調べた結果、一応あった。スキー板やスノーボードを入れる用のケースが。あれなら丁度良く入ると思いながら店を回ったが、季節外れの影響で仕入れてないという結果だった。

 

 

「…仕方ない、一旦こいつを自宅に置いて新宿辺りまで買いにいくか…。」

 

 

よくよく考えたら今はまだ春だし、時期的にまだ入荷してないというのも無理はない。荷物置いて新宿や渋谷までいくか。あそこなら季節外れでも売ってはいるはずだ。

 

いくつか店を回ってコンビニで休憩していた俺はコーラを飲み干して空き缶をゴミ箱に捨てると、一旦自宅に向かうために小道に通る。俺の現在の自宅はある程度駅から近い距離のところだ。ちなみに一度俺は自宅に戻ってから着替えてある。秀華高校の制服から黒一式のシャツとズボンに藍白色のジャケットを着ている。現在位置からだと駅の向かい側まで歩く事になる。二度手間だが仕方ない。

駅から近いとこの賃貸は大体高いのがお約束だが、俺には関係ない。それを言ったら家出してから現在までずっとそうしてきたからだ。人だかりは嫌いだが、アクセス手段はあった方がいい。それに目立つ駅のど真ん中でだ、白昼堂々とスマッシュブラザーズしてくる世紀末モヒカン共など流石に………いや、“最近は増えてきたか”。まあ、それ言ったら俺が今歩いている小道も大体危なそうだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~~~~~~~!!丁度よくいた~~っ!」

「っ…!?」

 

 

刹那、目の前の少女が何か叫んでいた。白いワンピースに水色のカーディガンを羽織って赤い蝶々結びの帯を襟に通している金髪の左ロングサイドテールの少女だ。もう一人はギターケース背負った上半身ピンクジャージの…………あれ、こいつさっきも見なかったか?明らかに向こうも「あっ…。」っていう表情しながら見てはいけない生物に会っちゃったみたいに震えてるし。

 

 

「あっ、突然叫んじゃってごめんね。私は下北沢高校2年の伊地知虹夏。」

「…中津鍵人だ。」

 

 

名無し扱いされるのも嫌なので俺も一応名前は名乗っておく。突然話しかけてきた少女・虹夏はほぼ身長が後藤と変わりないが、俺と後藤と比べて一つ年上らしい。

 

 

「それとこの子が「後藤ひとり。俺と同じ高校で同じく1年。そして同じクラス。」あ、ひとりちゃんの同級生だったんだ。」

「あっ…ぇっ…さ、先ほど……ぶり…。」

「ど、どうしたのひとりちゃん!?」

 

 

こいつのコミュ障は周知の事実とはいえ自分から名乗らなそうだったので俺が代わりに後藤はただの同級生だと説明した。何を見たのかは知らないが後藤は震えながら会話もままならず、虹夏に心配される始末。

 

 

「用が済んだのならこれで。じゃあ。」

「待って!君にも頼みがあるの!」

 

 

そのままスルーして立ち去ろうとした時、その手を掴まれながら制止された。“君にも”…?もしや、後藤も虹夏に連行されてここまできたのか…?

 

 

「実は私、この後ライブがあるんだけど人数が不足してたから急遽サポートとなるバンドメンバーを集めてたの。さっき丁度ギター担当でひとりちゃんが加わってくれたけど、それでも不安で。」

 

 

あぁ、だから後藤も強制連行されたって訳か。ギターケース背負ってるし、多分黄昏てるところを運良く拾われたって感じか。その割にはめちゃめちゃ暗いけど。

 

 

「その背負ってるの、楽器だよね?だったら今日1日だけ私のバンドでサポートお願いしてもらえないかな?お願い!」

 

断る…いつもなら威圧的に吐き出して立ち去ってた。その言葉が何故か反射的に即答できなかった。いや、やりづらい状況だったといっていい。背負ってるのは“楽器”というのは間違いではないが…。

虹夏は目を強く瞑りながら手を合わせて必死に助力を懇願してきた。人にこんなにも強くお願いをされたのは初めてだ。暴力と憎悪を浴びてきた俺が誰かに頼られる事なんてないと思ってた。

目の前の少女…虹夏は純粋無垢に助けを求めていた。そんな純粋な心が俺は……

 

 

 

 

 

 

「…チッ」

 

 

俺は“嫌い”だった。軽く舌打ちする程にだ。そんな懇願で揺れ動くとでも思ったのか?馬鹿馬鹿しい…危うく頷くところだった。それにバンドのサポートだって?即席なのは丸分かりだ。誰がそんな烏合の衆なんかとバンドなんてやr

 

 

「よしありがとう。ライブハウスは丁度ここなんだ!早速中へ入ろう!」

「はっ?おい!?」

 

 

舌打ちが聞こえなかったのか、俺の返答を待たずに虹夏は俺の手を掴んですぐそこだという地下のライブハウス(『STARRY』という店名らしい)に連行された。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「おっはようございま~す。」

 

 

挨拶しながら入る虹夏に続いてライブハウスに入る俺と後藤。中は全体的に黒一式で、階段を下り終えてすぐ左側には受付兼バーカウンターがあり、振り返るとステージがあり、アンプ等の機材は一通り揃っているといういかにも箱なライブハウスだった。とあるテーブルには別のバンドグループと思われる女子高生達がおり、バーカウンターには二人ぐらいのスタッフがおり、そしてステージ向かい側にある柵で仕切られたミキサーがある場所には黒髪ロングに両耳にリングを付けたPAと思われる女性がライブ前の音響調整をしていた。

ライブハウスに入ったのは何年ぶりだろうな…まぁ、知識はあるがそんなもの嫌いだから今となっては関係ないが。

 

 

「…で、あっちがPAさんだよ。」

「おはようございます…。」

「…。」

「!?…い、いいいイキってすみません…ッ!」

「急にどうした!?」

 

 

ライブハウスの簡素な説明をする虹夏。そのうちにPAさんの事も紹介する。低い声で挨拶するPAさんに恐れ戦いたのか、ビビり散らしながら何故か謝罪する後藤。

 

 

「やっと帰ってきた。」

「リョウ~。あ、紹介するね。この子はベーシストの山田リョウだよ。」

「よろしく。」

 

 

突然現れた少女…山田リョウと紹介された、肩に葉っぱのようなプリントがされた黒いシャツを着た青髪ショートの少女が歩み寄ってきた。どうやらサポートメンバーを収集しにいった虹夏の帰りを待ってた様子……ん?なんかこっちに視線向けてないか?……いや違う。視線を向けてるのは、俺の“背負ってるやつ”か…?

それより後藤、睨まれてると勘違いしてやっぱりビビってないか?

 

 

「リョウは表情が出にくいの!変人と言ったら喜ぶよ。」

「嬉しくないし。」

 

 

めっちゃ表情出てんじゃん。パァ~っとしながら照れてるし。

 

 

「リョウ、この子は後藤ひとりちゃん。奇跡的に公園にいたギタリストだよ。それで彼が中津鍵人君。帰ってきた直後にSTARRYの入り口前に偶然いたんだ。彼は…えーと「虹夏。」…ん?」

「彼、“キーボーディスト”だよ。それも“肩に掛けるタイプ”の。間違いない。」

「ええええ!?君、キーボード弾くんだ!キーボード歴は何年なの?」

「っ!?……ブランクはあるけど、基礎なら一通りは…。」

「全然大丈夫だよ!よし、キーボードまで揃ったならばもう安心!」

 

 

バレた。リョウの鋭い洞察力の影響で背負ってるのがショルダーキーボードだとバレた。その瞬間、虹夏に演奏履歴を尋ねられた。中津さんと住んでいた頃、キーボードの手解きを受けてもらった事はあるから大体は弾ける。役に立たないと啖呵切ってやったが。

それとリョウとか言ったか?何でバラすんだよ。私がそう判断したと言いたげに誇った顔を隠す気もなく出してんじゃねぇよこの“ダブスタ草オカピ”!!

 

 

「そういえば店長が、まだライブまで時間あるから今の内に練習しとけだって。あと虹夏が勝手にライブハウス出た事を怒りながら買い出し行った。」

「ひいっ!?まずいまずい!早く練習いこ!」

 

 

店長の名が出た途端、冷や汗を流して慌てながら練習へいくよう促した。そういやこの剣盤のケースを探してる最中、なんか不機嫌な顔した金髪ロングのヤンキーそうな怖いお姉さん見かけたけどもしかしてあれか…?

 

 

「ほーら、ひとりちゃんと鍵人君も!」

「あっはい。」

「……はぁ…。」

 

 

後藤は萎縮しながらも返事をし、俺は諦めと呆れ混じりにため息をついた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

練習部屋に入る俺達。スタンドにはリョウのものと思われる白いベース、ギタリストを求めてたという発言から察してはいたが虹夏はドラマーのようだ。

後藤はギターケースからギターを出す。黒いレスポールタイプのギターらしい。

 

 

「鍵人君も早速楽器を見せて。」

「…分かったよ。」

 

 

虹夏に促されるように俺は台にケースを置く。

 

 

「そういえば鍵人君のケース、かなり大きいね。キーボード2つ入ってるのかな?あ、それともシンセサイザーも入ってたりして。」

「虹夏、彼の持つキーボードはその辺のキーボードとは訳が違う。」

「え?」

「…見れば分かる。」

 

 

質問してくる虹夏をリョウが制止する。ケースに書かれている『GORAND』というロゴを見て何かに気づいた様子だ。なお、後藤はさっきから蚊帳の外で黙っている。

 

俺はケースのファスナーを開いて件のショルキーを外へ出した。

 

 

 

 

 

 

それは、キーボードというにはあまりにも大き過ぎた。

 

大きく

 

ぶ厚く

 

重く

 

そして大雑把(?)過ぎる鉄塊だった。

 

 

「……ひぃ…!?」

「えっ…何これ?“武器”?」

「やはりこれは…間違いない…。」

 

 

怯えた様子の後藤、そのショルキーを見て“武器”と表現して大困惑する虹夏、そして確信に至ったかのような表情をするリョウ。反応は以下の通りだった。

 

 

「このショルダーキーボードはGORAND社製の『SW-DragonSlayer』。ドラゴンをも殺せそうな剣をモチーフに、シャープなフォルムと重厚感、そしてキーボードとしての最高クラスのスペックを兼ね備えており、スピーカー内蔵型かつ特殊合金性のフレームと外装を使用して楽器屈指の耐久性をも併せ持ったパフォーマンス特化のキーボード。けどその結果、その総重量はボディビルダーや軍人がやっと保持できるレベルにまで重く、ショルキーの利点にしてコンセプトだったパフォーマンス性が損なわれ、元々の演奏難易度も合わさって非常に演奏しにくい方向性が失われた一種のジョークグッズと化した。生産台数は“僅か3台”。当然、このプロジェクトに携わった者達は全員解雇されたと言われている。」

 

 

リョウは俺が購入したショルキーの詳細をすらすらと解説した。なるほど、こいつを購入する時メーカーと機種は全く度外視だったが、こいつは僅か3台しかないのか。

 

 

「これ何処で手に入れたの?」

「御茶ノ水。売れ残り扱いだったって聞いたけど。」

「勿体無い…“お金”が。」

 

 

いや余計なお世話だ。どう買おうが俺の自由だ。まぁでも、これの詳細を知れただけいいか。

 

 

「あ、忘れてた…これ今日のセットリストと楽譜。あとあたしたち今回はインストバンドだから。」

 

 

気を取り直した虹夏は俺と後藤にセットリストと楽譜が一通り記入された書類を渡してきた。うん、難しくはない譜面なのは確かだ…けど

 

 

「キーボードの譜面がないけどどうすればいいんだ?」

「あっ、ごめんね。キーボードまでは全く想定してなくて。譜面に合わせるように演奏してくれて大丈夫だから。」

「それでいいんかよ…あとお前はいつまでゴリラしてんだ?」

「フンッフンッフンッ…」

 

 

確かにこの手のバンドでキーボードはあまり聞かないけどさぁ…。

 

俺は簡素だがキーボードを想定していない譜面とさっきから片手でドラミングしている“ゴリ藤”に呆れた。

 

 

「それじゃあ早速、合わせてみようか!」

 

 

色々と脱線してしまったが、リハーサルを開始するようだ。ショルキーを買った時、必要ないと割り切りながらも渋々動作確認はした。音は鳴るし、パネルもエフェクタースイッチもスクラッチも機能する。電池もしっかり入っているので問題ない。

 

俺はアンプとショルキーをシールドで繋ぎ、チューニングを行っておく。あぁ、確かに問題ない音質だ。一応キーボードはアンプを通して音を出す機種が基本だが、音源持ちのものも存在している。アンプが故障した時はこいつだけで音が出せるから緊急時には重宝するだろう。まぁ、今回限りの無駄な知識だが。

 

全員が位置につき、虹夏の合図でインスト曲のリハーサルが始まった。

 

 

 

 

 

~数時間後~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして!“結束バンド”でーす!今日は皆も多分知ってる曲を何曲かやるので、聴いてくださーい!」

 

 

出番が回り、いよいよ本番となった。ドラマーの虹夏がMCを担当。簡素に観客達に告げた。俺は“バイク用のフルフェイスヘルメットを被って何故かマフラーを巻いた”状態でステージに立っている。虹夏にはこっちの正体をバラしたくないという理由でこいつを貸してもらっている。

別にいいだろう?だって俺の目の前で『完熟マンゴー』の段ボール被って隠れた“ボッチ・スネーク”がいる時点でもう手遅れなんだよ!?

 

 

 

 

 

 

「…んだあれ?てかデカっ。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ミスりまくった~!」

「MC滑ったね。」

「「…。」」

 

 

結果は案の定、“大失敗”だ。虹夏のドラム捌きが中途半端だったとMCが下手だったのもそうだが、“ぼっち”のやつがずっと段ボールに隠れてるせいで折角の“あのギターの腕前”が曇っていたのだ。これじゃバンド慣れしていると思われるリョウのベースも意味がないし、俺がアドリブで何とか補強しないと成り立たないレベルで酷かった。これじゃ継ぎ接ぎ同然だ…。

ライブ終了後、二人はミスを連発した事を反省している様子だし、ぼっちに至っては潰れたダンボールで項垂れていた。

 

 

「それにしても“ガッツ君”、本当にキーボードのブランク長かったの?結構上手かったけど。」

「うん。ただでさえ重すぎるあのキーボードを背負って演奏するだけでも一苦労なのに、“まともな楽譜無しでしかもアドリブ”まで入れてくれたのは凄い。」

「…。」

 

 

“ガッツ”呼ばわりされて俺は視線を反らして無視しながらショルキーをケースに仕舞う。気に入ってないんだよそのあだ名…。

 

 

「ちょっと~!視線反らさないで~!こっちは褒めたつもりで言ってるんだけど!「ガッツ呼ばわりでマイナスになった。」えぇ…。」

「人の好意は素直に受け取る。これは常識。」

 

 

勝手にあだ名をつけた虹夏に対して俺は辛辣に返した。リョウが何か言ってるが知らん。

 

 

「あ、あの!」

 

 

刹那、先程までダンボールで項垂れていたぼっちがゾンビのように立ち上がると、フラフラ揺らめきながら近づいてきた。

 

 

「つ、次のライブまでにはクラスメイトに挨拶できるくらいになっておきます!!」

「何の宣言!?」

「目覚ましい成長…。」

「…。」

 

 

そして突然、訳の分からない宣言を吐き出したぼっち。困惑してツッコミを入れる虹夏と謎の感銘を受けてハンカチを涙で濡らすリョウ。本当に訳の分からない光景だ。

 

 

「よーっし!結束バンドの新メンバーを記念して、ぼっちちゃんとガッツ君歓迎会兼反省会するぞ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断る。」 

 

 

 

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

虹夏のテンションをばっさり落とすかのように俺はそう告げた。時間かかったがようやく言い出せた…こんな烏合の衆のバンドに無理矢理付き合わされてイライラしてたんだ…。

 

 

「悪いがここまでだ。俺は今回限りのサポートって話だったはずだ。今後のライブ活動は三人だけでやりな。じゃあな。」

 

 

俺は荷物を纏めると、そのまま練習部屋から出てSTARRYの外へ出た。店長とPAさんの鋭い視線を感じたが知ったことか。もうこれで終わりだ。ここに来ることも、この“ショルキー”を楽器として扱うのも最後だからな…。

 

 

 

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無駄なバンドの手伝いをしたせいで夜になってしまったので、俺は途中でラーメン屋に寄ってそこで食事をする事にした。

 

 

「…。」

 

 

もうラーメンも5杯目だ。名無しだった頃はまともに食事が出来なかった。中津さんに拾われてからは食事こそ唯一俺が安らぐ時間になった。

だがさっきから腹の虫が全然収まらない。食欲よりも先程の怒りの方が勝っているからだ。

結束バンド(あいつら)…人の否応なしに勝手に巻き込みやがって…“何も知らない”くせに、一回限りのはずなのに正式加入とかほざきやがって…!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「いいか鍵人、バンドをやる上で大事なのは…どれだけ音楽を愛せるかなんだ。いつかお前も分かるはずだ。」

 

 

 

 

 

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怒りに煮えたぎりながらラーメンを啜る。そして思い出すのは、まだ小学生だった頃に中津さんと一緒にライブハウスへ行って、ライブを見た記憶だった。

初めて聴いた時の衝撃、迫力、素晴らしさ…ああ、バンドは楽しいものか…バンドは人を熱くさせるよな…

 

 

 

 

人を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が音楽を愛した事なんて…一度もない…。

 

 

俺が“人”に見えるのか?俺が音楽で心が弾むと思うのか?

何教えてくれてんだよこの馬鹿野郎が…。

 

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