ウマ娘 Meteor Oscillates Between   作:別れました

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1話 血と汗と

私の足が速いのは母親がウマ娘だったから。

 

ただ、それだけ。

 

 私の地元は、ウマ娘なんて私と母親しかいないくらい小さな町だった。

 

 小学生の頃は足が速いだけでモテた。なんて巷では言われるが、そんなことはない。

 

 だって私はウマ娘だから。足が速くて当然。あいつは出来て当たり前。そう言われ続けてきた。教師も概ねそんな反応だった。

 

国語の授業では作家の子供が褒められた。

 

英語の授業では外国の子供が褒められた。

 

図工の授業ではクリエイターの子供が褒められた。

 

 私には何が違うのか分からなかった。

でも、きっと私がウマ娘じゃなかったら褒められたんだろうなとか、子供ながらに思っていた。

 

 その想いは歳を重ねるたびに積み重なって、私の足を重くした。

 

 そんな時にコンビニで1つの雑誌が目に入る。ファッション誌だったと思う。表紙には金髪のウマ娘がモデルとして写っていた。その金髪のウマ娘は、日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園に在籍しているらしい。トレセン学園という場所にはトレーナーや教官を除いてはウマ娘しかいないらしい。

 

 条件が同じなら私も認められる、褒めてもらえる。とにかく今から逃げ出したくて、トレセン学園に来て━━━━

 

 

 

 

 

 汗による不快感で目が覚める。

 

 また、この夢…

 

 いつもより天井が近く感じて、今手を伸ばしたら届くんじゃないかなんて思って伸ばして、届かなくて、あぁなんだ…いつも通りじゃん。とほっとする。

 

 汗も気持ちも全部洗い流してしまおうとシャワールームに入る。

 

 寝ぼけ眼のままシャワーを浴びていると、一瞬、お湯が冷水に変わって一気に目が覚める。冷たくなるだけでも充分不快なのにちゃっかり水圧まで上げてくるなと心の中で悪態をついた。

 

 髪を軽く拭いてタオルで纏め、身体を拭いてから再度髪を拭き、乾かし、とく。

 

 今日もちょっと毛先がはねてるなと思いながらヘアアイロンで整える。髪の生え際と耳が近いものだから、たまに挟んで火傷することもあるけど、今日は図らずとも冷水のお陰で冷静に対処できた。

 

 ホカホカの髪の毛が頬に当たったとき、一日の始まりをひしひしと感じる。いつも通りのルーティンをこなしても時間はまだたっぷりとある。何をするでもなく、ただソワソワと部屋の中を歩き回った。

 

 今日の私は浮き足立っていた。それもそのはず、トレセン学園に来てはや1年、念願のトレーナーがついたのだから。

 

 この学園ではトレーナーの有無が勝敗を決すると言っても過言ではない。やはり教官とトレーナーではひとりひとりにかけられる時間があまりにも違う為、それが影響しているのではないかというのが定説となってる。

 

 もっと速くなれるかもしれない。あの頃の私を喜ばせてあげたいなんて心の隅で思っていた。

 

 そんな期待とは裏腹に、それを覆い隠してしまうほど大きな不安を抱えていた。

 

 トレーナーはこの間のレースを見ていない。私をスカウトした理由は余っていたから。つまりは誰でもよかったのだ。

 

 

 私はこの間のレースでビリだった。それはもう圧倒的な大差で。

 

 檻の外にはもっと大きな檻があった。ただそれだけの事だった。

 

 本気を出してもまるで敵わないという現実を目の当たりにしてしまうと涙すら出ないと思っていたけれど、それでも悔しくて泣いた。

 

 いっそヘラヘラと笑ってしまえれば楽なのだろうと頭ではわかっていても、気丈に振る舞えるほど器用ではない。

 

私は皆のように上手くは生きられない。

 

 

 結果を知らないから私をスカウトしたのだろうと思うと少し複雑な気分ではあるけれど、私は心の中で誓った。これが最後のチャンスかもしれない。二度とない可能性であるならば死ぬ気で頑張って頑張って頑張って頑張って━━━━

 

 

トレーナーを騙し切ろう。と

 

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