東京のビル群をぬけてガタンゴトンと揺れる車内。朝日が車窓を突き抜けて三人の頬にあたる。椅子に並んで座っているのは虎杖、伏黒、釘崎の三人だった。彼らは揃って、まぶたを閉じて寝ている。実際は呪術師としていつでも対処できるよう仮眠に近い状態を維持していたわけだが、それが他の一般人に伝わる訳もなかった。
『まもなく、空座町。空座町です』
マイクごしの車掌の眠気を感じさせない声が響く。
「うーす。起きろよ!」
虎杖が隣にいた伏黒を膝でつついた。
「目を瞑っているだけで寝てる訳じゃない。俺の左隣のやつは違うみたいだけどな」
「んあ? そんな訳ねーだろ。これから任務かもしれないんだから集中してただけだ」
釘崎が歯をむき出しにして伏黒と虎杖を睨んだ。
「それにしても空座町か。休日にこんなところまで呼び出すなんて、きっと重要な任務なんだろうな。お前らこの町来たことあるか?」
「ない」
「私はつい最近まで東北に居たんだから来たことある訳ないでしょ」
「そっか、俺もない。でもなんかこの町、匂うんだよな」
「………」
「………」
「えっ、なんだよ! なんで無言?」
虎杖はびっくりして聞き返した。
「いや、あんたもそんなポエマーみたいなこと言うだなと思って」
釘崎の返答に伏黒も頷いた。
「まぁ、何はともあれ着いたことだし、待ち合わせ場所まで行こうぜ!」
虎杖は先頭に立って駅のホームに降り立った。
虎杖、伏黒、釘崎の三人はスマホに連絡があった場所に向かって歩いて行った。名は「浦原商店」と言う駄菓子屋だそうだ。店前に看板があるから近くに来たらすぐに分かるよと、グループチャットには書いていた。
「あった!」
虎杖が指差す。
果たしてその通りになった。
「うん? なんだお前ら?」
野球バットを持った少年が店前で素振りを止めて、虎杖たちに質問をした。
「あのー俺たちここにようがあってきたのですが、五条という者は来ていますか?」
「ああ、あの目隠しか。それなら、中で菓子食ってる。あっ、紹介してやるよ」
少年は一方的にバット肩に乗せながら、店の中をのぞいた。
「おーい! 待ち合わせのお客さんが来たぞー!」
「じん太くん、ありがとう。以外と早かったね。ほらほら、中で食べなよ」
店の中から現れたのは五条悟だった。手には食べかけのうまい棒を持っていている。
「げっ、五条先生。朝からそんなヘビーなもの食ってるんですか⁉︎」
釘崎がありえないとつぶやく。三人が中に入ると、テーブルにオレンジ髪の青年と、中心に黒猫が寝ていた。
「これ、どういう状況?」
虎杖はオレンジ髪の青年から目を離さずに尋ねた。
「ああ、彼ね。黒崎一護くん。君たちと合わせたかった子だよ。ほらほらお互い自己紹介しちゃって」
虎杖、伏黒、釘崎は五条の手招きで、テーブルに座らされた。虎杖はまだ黒崎一護という人物から目を離さない。理由はオレンジ髪が珍しかったとか、ヤンキーぽいとかそういうのじゃない。純粋に戦い慣れている。だけど呪力は一般人と変わらない。呪力ではない何かが彼にはある。そう直感が語っていた。
「五条さんが言っていた高校生の呪術師ってあんたらのことか。俺は空座第一高等学校一年。そして死神代行の黒崎一護だ。よろしく」
「俺は東京都立呪術高等専門学校一年の虎杖だ。高校一年生同士ってことはタメか。よろしく」
一護と虎杖は握手を交わした。
「じゃあ次は私ね。と言っても虎杖と同じ高校の一年の釘崎野薔薇。よろしく」
「同じく呪術高専一年の伏黒だ。よろしく」
「おう、よろしくな。二人とも」
伏黒と釘崎も一護と握手をする。
「ニャァー」
テーブルの中心にいた黒猫が一声鳴いて、畳の床に降りた。
「じゃあ挨拶も済んだし、そろそろ本題を話しますか。じゃあ、まずこちらの一護くんだけど挨拶にもあった通り死神代行と言ってね。斬魄刀で虚から現世を守る役割を与えられた死神なんだ」
五条は喋りながらテーブルの下に潜り込もうとしていた黒猫を捕まえて抱き寄せた。黒猫は嫌がって抵抗しようとしたが、どうやら途中から何かを感じたのか諦めたようだ。
「あのー先生」
虎杖が手を挙げた。
しかしわ五条はそれを手のひらを見せて制した。
「ふっふっふ。いつもは生徒の質問に寄り添ってあげるところなんだけどね。いきなり死神だか、虚だか、言ってもわからないと思うから、最後まで説明するよ。君たちも知っている通り呪術師の人手不足が深刻化していてね。そして最近になって未登録の特級呪霊が手を組み始めた。僕もあっちこっち飛び回らないといけなくなるかもしれない。だからこちらの死神代行さんと協力関係を結んでおこうと思ってね」
「だから、俺たち同い年の高専生が選ばれなたってことですか。仲良くなってもらうために」
伏黒はどうやら察しがついたようだ。
「ナルホド! さすが伏黒」
虎杖は伏黒の頭を、黒猫を撫でる五条をまねて撫でようとしたが殴られた。
「ちょっと待って先生。協力関係とは言ったものの、このオレンジヤンキー強いの? 死神何ちゃらとかよく分からんし」
「誰が、ヤンキーだ! 俺はヤンキーが嫌いなんだよ。あと指差すな!」
一護は釘崎に言い返した。