漏瑚はジッとこの戦場を分析した。
戦闘に対して意欲的なのが2人。
1人はまったく呪力0の男。
まず、その時点で信じられない。人間には普通、微細ながらも呪力があるはずだからだ。
遥か昔から生きている漏瑚が知る情報から導き出された答えはただ一つ。
天与呪縛。
呪力を失うことと引き換えに、何らかの力を得ていると考えてまず間違いないだろう。
例えば領域展開。
これは呪力を内に閉じ込める結界術において、効果を発揮するはずだ。
もしかしたら、呪力を認識できないため、建造物などと同じ扱いになり、自由に領域ないを駆け巡られる可能性すらある。
「領域展開は使えんな。もう1人は…」
黒装束の少年。
はっきり言って、こっちの方が厄介だ。
呪力が身体に流れているのは確認できるが、それを一切使っていない。未知数の力と先ほどの卍解という掛け声と共に、一気に上がった圧力。
先ほど領域に閉じ込められていた5人の中で、陀艮を倒せるとしたらコイツしかいない。残りは呪術師だが、誰も特級クラスではない雑魚だ。
「宿儺うんぬんの話ではなくなってきたな」
呪霊といえども、ともに手を組んでいる仲間だった。
陀艮の敵討ちをせねばなるまい。
「おい」
一護が話しかけた。
「何だ?」
漏瑚は答えた。
「さっきから、俺やアイツのことを分析してるつもりか?」
「それがどうした?」
「これから死ぬ奴が、死なされる奴のこと分析して何の意味があるかって聞いたんだよ」
刹那。
一護は動いた。
その速さに漏瑚は、一つ目をまんまるくして驚いた。
それもそのはず、あまりの速さと斬月のスピードを捉えてられなかったのだ。
「グワァッ!」
漏瑚は右腕を切断された。
同時に、地面から小規模の火山を二つ生み出す。その火山口から一護に向かって炎を二つ発射した。
それをサッとかわす一護。
その隙に漏瑚は距離を取った。
強者どうしの戦い。そこに加わるべく、今度は甚爾が一護目掛けて突進する。
ガキン!!!
振り下ろされる游雲を一護は卍解によって細く変形をとげた斬月で受け止める。
コイツ、さっきから妙だと思ったら意識がないな。誰かに操られているのか?
いや、強い奴に向かってくる、ただの人形か。
「時間はかけたくねぇな。何故なら…」
一護は背後から漏瑚が攻撃を繰り出そうとしている気配を察知した。
斬月の力で甚爾を游雲ごと叩き落とす。
そして、すぐに漏瑚に向き合った。
「もう回復したのか。そういう仕様か?」
一護は切断したはずの漏瑚の腕が新しく生えていることに驚いた。
「…お前に教えるものか。どんな能力かは知らぬが、人である限り大地を畏怖する感情を持っているだろう? どこまで行ってもその一部にしかなり得ないのだよ」
漏瑚は喋りながら、頭の上の火山の部分から、ポンポンと音を立てて丸い物体を複数個、吐き出した。丸い物体は変形していき羽を生やした奇妙な蟲の姿になった。
「火礫蟲(かれきちゅう)」
10匹は超えるだろう。
漏瑚の周囲で小型の蟲の呪霊たちが、一護めがけて向かってきた。
「未知の攻撃か。だが…」
斬月を振う。
ババババ!
卍解状態ではよりスピードが増す。
蟲たちは一護に触れる前に全て払い落とされた。
だが、漏瑚には奥の手があった。
全ての蟲が真っ二つにされて、地面に落ちる瞬間、蟲たちは爆発した。
ボンッ!!
360度炎に包まれる一護。
「こんなものか。未知の力といえども、何百年と生きてきた自然呪霊の前には弱者にしか思えんな」
漏瑚は燃える一護を見ながらつぶやいた。
遠くから見ていた七海、真希、直毘人、伏黒は、格の違いを見せつけられて動けない。
ビュン!
そこに、先ほど一護に吹き飛ばされた甚爾が、游雲を持って、漏瑚に向かってきた。
「次はお前か」
漏瑚は呪術を繰り出そうとした。
「待てよお前ら」
蟲の爆発の炎が霊圧で吹き飛ぶ。
中から多少やけどを追ったものの、あまり効いていなさそうな一護が出てきた。
背後にいる一護に反応したものの、甚爾は漏瑚へ向かうスピードを緩めない。
一方の漏瑚は、一護の異様な力に気づいていた。
『--月牙天衝』
卍解状態での月牙天衝は、さきほど領域内で陀艮を切った始解状態の月牙天衝の5倍ほどのスピードと威力がある。
甚爾はもちろん一護の月牙天衝に気づいたものの、あまりの刃の速さに避けることができなかった。
真っ二つになる甚爾。
そしてさらに勢いを増した月牙天衝の刃が渋谷の壁を切りながら漏瑚に迫る。
相殺できるか⁉︎
燃える大質量の隕石をぶつける。
漏瑚の目の前に現れた隕石と月牙天衝がぶつかる。隕石が割れる。
しかし、そのわずかな衝撃で刃のスピードが遅れたおかげで、漏瑚はギリギリ避けることができた。
「ヒイイイ! こりゃまずいな」
漏瑚は逃げる体制に入った。
【同時刻 渋谷トイレ内】
虎杖は脹相と交戦し、負けて気絶させられれた。しかし、トドメを刺そうとした脹相の頭の中に突如流れて混んできた存在しない記憶。それにやって虎杖をほったらかしにして、どこかに行ってしまった。そして、今、虎杖の前に別のピンチが待ち受けようとしているのであった。