真人がくりだしたのは三体の二速歩行型の改造人間だった。しかし、今までとは感じが違う。おそらく、呪力とやらをたくさん込めているのだろう。夜一はそう推測した。
良い流れだ。
もう少し「瞬歩」のスピードを上げて様子を見るか。
タン!
真人と三体の改造人間は踏み込んで来た。
真人が一番後方で、途中で6つの手を広げてこちらに触れるタイミングを伺いつつ、前方は三体の改造人間で攻める。改造人間たちは、あいにく武器という武器を持っておらず、素手で挑んできた。
これは、単純な五:五の分裂じゃないな。強度が強く、スピードにも対応していることから、力の配分は真人二:改造人間八といったところだろう。
あまり力を見せたくなかったが仕方がない。回り込むやり方は捨てて、改造人間を正面から白打で叩く。
バキン!
何?
儂の白打と互角⁉︎
しまった、回り込まれたか!
近くにいたもう一体の改造人間が夜一の横腹を切り上げる。
ドゴッ!
立ち並ぶ高層ビルの一つに吹き飛ばされる。
バガッ!
ガチャガチャ!
そのまま勢いは衰えることなく、夜一は上空に舞い上がった。ビルのガラスとぶつかる。割れるガラス。そのまま夜一は床と天井に頭を打ちながら奥まで転がっていく。
「ははっ。ナメてっから」
真人本体は身体に翼を生やして空を飛んだ。夜一のところに先回りして、身体に触れる作戦のようだ。
しかし夜一には全て見えていた。
前方から改造人間が一体。そして後方に回ってくる真人本体。残りの改造人間はまだビルの下にいる。
「仕方がないのう」
転がった先にいる、待ち構えている真人。
手が触れそうになる。
「俺の勝ちだ!」
刹那、夜一は消えた。
いや、消えたように見えたのだ。
実際には「瞬歩」によって高速移動しただけだった。
前方から迫ってくる改造人間の頭を白打で沈める。改造人間は夜一が思っているほど手応えはなく、頭が潰れた。
あれだけパワーがありながら、手応えはがない…。複数の寿命を一瞬で燃やし尽くすことで爆発的なパワーを得たわけか。超攻撃型改造人間。それが残り2対。そして…。
「なんだ? 瞬間移動か⁉︎ 面白い!」
真人がこちらに迫ってくる。警戒心がないやつだ。おそらく儂の術じゃ倒せないと鷹をくくってあるのう。良い油断だ。このまま、それが続くことを願ってまずは下の二対だ。
すでに本気の「瞬歩」を見せてしまった。もう手加減せずに済みそうだ。
夜一はまた消えた。
そして次の瞬間には、改造人間一体を、さらに消えて、もう一体を瞬殺した。
「チッ」
真人は先ほど夜一がいたビルから地面に着地した。
「幾魂異性体が三体いて仕留められなかったか」
真人は考えていた。この色黒の女。特級である真人すら目で追うことができないほどのスピードを持っている。こっちから攻撃を当てるのは困難だろう。ならば、別の手を使う。領域対策がない限り回避不能の即死技。
「領域展開 自閉円頓裹」
真人の周囲が黒く染まる。そして背後からあらわになる無数の手。それらが意味するもの。それは相手の魂の形を必中で変形させて死に至らしめることができるということだ。
「来たか!」
夜一は記憶を遡っていた。
一ヶ月前。
浦原商店。
「いやー夜一サン。この前の呪術師との会合どーでしたかー?」
どんぶりと書かれた掛け軸の下で、酒をたしなんでいた夜一の元に、いつのも調子でやってきた浦原は尋ねた。
「五条悟とかいうヤツ、お前が言っていた通り、かなりのやり手だ。無下限という力も喜助が言うとった通りだった。ただし、あの高校生たちは微妙じゃのう。あれじゃ、大虚(メノス・グランデ)が相手でもきついかもしれんな」
「まぁまぁ、高専の生徒サンたちまでは、協力関係に入ってませんよ。要は五条悟。彼に恩を売っておくことができればそれで良い」
「そちらは任せる。あとは、呪霊と言うのがどれほどの強さなのかということだな」
夜一はお酒を入れて、声色が太くなっていた。
「その件なら調べておきましたよ。呪霊というのが何者なのかということまでね」
「そうか…」
じん太が雨がホワイトボードをガラガラと引いてきた。そして浦原にペンを渡す。
「さて、少し講義の時間ですね」
そこからは、浦原が独自に調べた呪霊とはなんなのか、どういう技を使って人を襲うのかということが約二時間かけて発表された。最初は、興味深々に話を聞いていた夜一だったが、次第にお酒の酔いが回ってきてぐったりしてしまっていた。
「で、結局は何が一番が強いんだ?」
「そりゃーーもちろん。必中の攻撃ができる領域展開に対する対抗策を考えることデス。そして、夜一サンはすでにそれを持っている」
「持ってるって何を?」
「反鬼相殺ですよ」
「反鬼相殺って相手の鬼道に同じ質・量を持った逆回転の鬼道をぶつけることで相殺させるヤツだろ。呪霊は鬼道じゃなく呪力という力使う。何も意味ないじゃろ」
「ふふふ…私が何も無しでこの話をあなたにすると思いました? すでに持ってきたんスよ。とっておきを」
浦原はそう言って上着のポケットに手を入れた。