『先生には黙ってこちらへきてもらいます……抵抗するのなら、武力行使も行いますよ?』
「そんなこと、させると思ってんの!?」
「ん、先生は渡さない」
「最初からそのつもりだったんだ……相変わらずだね、アコ行政官」
『昔からの仲なんですし、そんな敵意剥き出しじゃなくてもいいじゃないですか……ねぇ、カヨコさん?』
ゲヘナの問題児事、便利屋68を捕まえるがためにやってきたゲヘナ風紀委員会。戦闘に立つは特攻隊長の銀鏡イオリと、同い年でありブレーキ役の火宮チナツ。
対するは、追われている張本人である便利屋68のメンバー、陸八間アル・鬼方カヨコ・伊草ハルカ・浅黄ムツキの4名と。
自身の学校の借金返済や、今彼女らがいる土地、アビドスの復旧を目標に日々頑張っているアビドス高等学園の生徒、砂狼シロコ・黒見セリカ・十六夜ノノミ・そしてこの場にはいないが、オペレーターの奥空アヤネの計4名――そして少しのメガネをかけている黒髪単発の男の大人―シャーレの先生。
「うーん……できれば、何事もなして終わりたかったんだけど」
「キヴォトスでそれはあんまり期待しない方がいいよ、特にあの横乳相手は」
『カヨヨさん? 喧嘩なら買いますよ?』
「もう買ってるでしょ……にしても、よくもまぁエデン前にこんな大体なことができるよね。委員長の指示?それとも……あの人のせい?」
『……彼は関係ありませんよ、そもそも話せるはずもありません。話せば確実にここに来るじゃないですか』
「それもそうだね…」
「ねえカヨコ、あの人って誰のこと?」
「……そっか、社長はまだ見たことなかったよね。……ゲヘナの二大テロリスト、そして私達を置いてのナンバーワン問題児を」
「そ、そんな人がいるの!?」
ゲヘナでも屈指の問題児、美食研究会と温泉開発部、それらの比ではないほどの問題児……それを聞きどんな人物なんだ…?と困惑していた一同
「あら、人聞きが悪いわねカヨコちゃん? 私はただ刺激を求めてる、ただそれだけよ♪」
「―――もうさいっっあく」
「な、えっ、いつのまに!?」
「―――ん……」
「あ、貴方は…⁉︎」
「か、カヨコさんから離れてください!!」
いつのまにかカヨコの近くに現れていたその問題児――マカロンは、カヨコから自分を引き剥がそう銃を構えるハルカの腕を片手で掴み、引き寄せる。
「……普段はファだけど、戦闘時はラ…ぐらいかしらね」
「わわわっ!?」
「ちょっと、うちの部下に何してるのよ!」
「あら、これはごめんなさい?……あら?貴女いいわね、ラぐらいは軽く超えているわ」
「ラ、ラ?」
「マカロン先輩…!?な、何でここに…!」
「おはようイオリちゃん、楽しそうだから来ちゃったわ♪」
そう言いながら風紀委員会の方へと向かって歩くマカロン。風紀委員会とアビドスらの中間あたりにまで移動すると、まるで紳士のような態度を取り、お辞儀。
「初めましての方は初めまして。私はマーガレット・マカロン、ゲヘナ学園の三年生で、風紀委員会に所属しているわ」
『ま、マーガレットマカロン!?』
「マーガレット・マカロン…?」
「そっか、先生は知らないんだね。……ゲヘナ最強と言われている空崎ヒナ風紀委員長……その相棒にして右腕。別名――危ない音楽家、クレイジーミュージシャン、タルタルソース狂」
「別名多くない?」
「とにかく危ないやつってこと、ゲヘナも、トリニティも、ミレニアムも……いや、他学園の要注意人物として乗っている程の人間が…あいつだよ」
「超やばい奴じゃないの!!何でそんな大物がここに!?」
「ここに刺激を感じたから……て言うのは建前で」
(建前なんだ)
「本来の仕事は別、勝手に行動をしている風紀委員会生徒らを止めるために来たの……ねえ〜アコちゃん?」
『うっ』
「流石にこれはまずいんじゃないの? いくら便利屋を追ってきてからと言って、他学園の領土に土足で踏み込むのはまずいわよ」
『いえ、しかしそこは』
「まあいいわ、そこはぶっちゃけどうでもいいし」
「どうでもよくはないと思うけどね!?」
マカロンはジッ……と、先生の方を向く。その眼光は完全なる獣の眼、獲物を刈り取る、狩人の目だ。
「力的に言えば……ドね」
「ド…?」
「マカロン先輩は、人の強さをドレミファソラシドで例えることがあるんだよ。つまり先生は一番弱いってこと」
「突然ディスられた……事実だけど」
「……けれど、指揮官としては――シ…ね、アコちゃんと同等かそれ以上……ウフフフッ、面白いじゃない」
「そ、それほどでも……これは褒められてるんだよね?」
「勿論……他の子は、ほとんどがファ――でも貴女は別よ、シロコちゃん♪」
「………………」
シロコの方を見ると、その眼光は敵意丸出しのそれであり、マカロンの事を撃つ気満々でいた。今まで見たこともない彼女の顔に、セリカやアヤネは驚愕。
「シロコ先輩がわかりやすく敵意をむき出しにしてる!!」
「もしかして知り合い?」
「えっと……一年前くらいですかね、マカロンさんがアビドスに遊びに来たことがあるんですけど。そこでシロコちゃんはマカロンさんに勝負を挑んだんです……でもまぁ、お察しの通り、シロコちゃんは完膚なきまでにやられちゃいまして」
「ん、だから今度こそ勝つ。勝ってあの時の屈辱を晴らす」
「あら、いいわよ。来なさい?―――いいえ、むしろ来て!貴女は伸び代しかないと思っていたのよ!」
「ちょっと待って! 今ここで争うちゃダメって話になってなかった!?」
「それは風紀委員と貴女達って意味よ、私個人は私個人の責任なんだし、気にする必要はないわ」
『我々が気にするんですが?』
杖を構え臨戦体制を整えたマカロン、そしていつにも増してやる気満々のシロコ、今にも先頭がはじまりそうな気配だが――ここでマカロンが奇行に走る。
「あっ、ごめんなさい。少し栄養を補給してもいいかしら」
「このタイミングで!?」
「ん、許す」
「許すんかい!」
「じゃあ早速……」
マカロンが懐から取り出した物……それはエビフライが刺さっているフォーク、さらに追加でタルタルソースの入った小皿。
「ディ!ディーディープ! ディップディップ‼︎」
そしてマカロンはエビフライにタルタルソースを突っ込みまくる、突然そんな事をした彼女に対して周りはドン引き、言葉を失う。
「ね、ねぇ貴女?そんなことをしたらエビフライの味がなくなっちゃうわよ?」
「ディップ………便利屋のリーダーさん?、何を言っているのかしら?―――タルタルソースにエビフライをかけているの、エビフライはタルタルを美味しく食べるために存在しているのよ?」
「強いというか怖い!!」
「確かに強いですよね、思想が」
「ん、相変わらずの強敵感」
「シロコ先輩これ絶対に違う」
そしてシロコをじっと見た後マカロンは何かに気付いたのか、エビフライを一口で平らげ、口元を拭き。パチン…と指を鳴らす。
「…今度は何⁉︎」
「なんでピアノが…⁇」
そこからまたマカロンは一曲を奏でる、あまりの美しさに目と耳を奪われる一同、便利屋もアビドスも先生と、風紀委員会ですら見惚れていた。
「―刺激の、夏ね」
『(こえぇぇぇぇぇぇぇ!!!)』
「シロコやめよう、あの子は絶対にヤバい。教師としての感が叫びまくってる‼︎」
「大丈夫、何かあったら喉仏とぶち抜く」
「シロコ!?」
マカロンは杖を構え、シロコも臨戦体勢を取る――その瞬間マカロンから湧き上がるのはピンクと紫が混じった謎のオーラ、それはその場にいる全員の肌をひりつかれるには十分な物だった。
「さあ―――心ゆくまでに、楽しみましょう」