シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
ストーリーや世界観のベースはコミック版となります
オリ主視点でシャングリラ・フロンティアを楽しむ作品となっております。原作の流れに合流するまでそこそこかかります
原作で描写されていない部分や判明していない設定が多いので独自設定や独自解釈が多めになります。予めご了承ください
一話4000~5000文字を目安にしています
『シャングリラ・フロンティア』
数十年先の未来からやってきたと言われても納得できるほどのクオリティを持つフルダイブVRMMOであり、今から大体一年くらい前に発売されたそれは世界中に凄まじい衝撃を与えたとかなんとか。まあ所謂おま国ゲーであり海外からのプレイは困難なのだが。
既に総プレイヤー数は三千万人を超えてるとか言われていたような気がする。俺はプレイしていないからあんまり詳しいことは知らない。
「遂に買っちゃったよシャンフロ……」
チェア型フルダイブVRシステムに腰掛けて、ディスプレイに表示されているダウンロードしたシャングリラ・フロンティアを眺めて、俺はため息をついた。
動画配信サイトで何回かプレイ映像を見たことがあり、ほんの少し見ただけでも恐ろしい程に作りこまれていることがわかるのだが、これまでずっとプレイを躊躇っていた。なぜかって?
ヒント:コミュ障で人見知り
だって真っ当なMMOって協力プレイしなきゃ駄目なやつじゃん。
周りに見える人間全部敵で挨拶も無しにぶっ殺してもいいゲームなら喜んでやるのだが、そんな鯖癌や幕末じみたゲームが神ゲーと呼ばれるはずもなく、調べた限りではPKは可能だがメリットよりもデメリットの方が遥かに大きいように思える。
それにAIのレベルがかなり高いようで、NPCと哲学について語り合うことさえも可能であり、それはすなわち普通にNPCのお店で買い物とかするだけでも最低限のコミュ力が必要になるということでもある。
まあ他にも積んでいたゲームの消化とかゲーム内のイベントとか色々とあったのだが、そんなこんなで今日までシャンフロから逃げていたのだ。
「でもやっぱり気になるよなぁ……」
ネタバレにならない程度に調べてみれば、ソロプレイは茨の道とかソロ殺しと言われるボスが序盤の避けられない場所に居るとか恐ろしい情報ばかり入ってくる。
最適なステ振りやスキル構成を意識すればまだマシになるのだろうが、俺はそういう最適解に素直に従わないで難易度に文句を言うタイプの面倒なゲーマーである。
「とりあえず飲んでから考えるか」
やっぱり悩みがある時はアルコールだ。アルコールは大体の問題から目を逸らさせてくれる。解決はしてくれない。
「今日はクソ暑くて嫌になるな……そんな暑い日にはやっぱりこれよ」
グラスに氷を入れて、冷蔵庫で冷やしておいた日本酒とライオットブラッド・アンデッドをまぜまぜして、仕上げにライムをお好みで絞り入れたらはい出来上がり!
ぐびっと飲み干せば冷たさと爽やかさがダルさや悩みを全て吹き飛ばしてくれる。
アルコールとカフェインが全身を駆け巡り脳を覚醒させ、疲労に効く多種多様な成分が仕事で溜まった疲労を消し去ってゆくのが実感できる。
ライオットブラッドとお酒を混ぜるのは危険だとかよく言われているが、別に混ざり合うと化学変化が起こって危険な成分になるとかそういうことは無いようで、飲みすぎなければ何も問題はない。
まあ混ぜ方によってはなぜかどれだけ飲んでも泥酔しなかったり、逆に一口でノックアウトされることもあるのだが。合法な飲料と合法な飲料を合法な方法で混ぜただけなので当然合法である。
「あ~……よしよし、一気に不安が見えなくなった。俺の視界には神ゲーへの希望しか映っていない……」
酔うと独り言が多くなってくる。特にフルダイブ中だと勝手に口が動いて余計なことを口走りそうになるのでこの悪癖はなんとかしたいところだ。
酔った勢いで買っちゃったVRチェア(中古で八十万円)に再び座り、シャンフロの起動準備を進める。このままアルコールパワーの勢いに任せて突き進もう。
「まあ何とかなるっしょ!レッツシャンフロ!!」
「キャラメイクはかなり拘れるタイプのゲームなのね」
早速プレイ開始、の前にキャラメイクだ。
これから先暫く使うことになるのだからしっかり作らないと後で後悔することになるだろう。作り直しとかできないらしいしね。
因みに俺はキャラメイクとか下手くそなタイプの人間だ。人の顔を普段からまともに見ていないのもあってまともな顔というものがよくわからないのだ。
何が正しくて何が間違っているのかわからず、延々と消せない違和感に翻弄され、最終的にテンプレを使うことになるのがいつものパターンだ。
「あー、身長も弄れるのね。リーチを取るか身軽さを取るか……」
現実と違いすぎる体形にすると違和感が出やすいものだが、シャンフロはその辺りの調整がかなりうまくて違和感が殆ど無いのだという。ここは思い切って極端な体形にしてみようかな。
「あ、先にステータス面も決められるのね」
ステ振りだけでなく、なんかやたらと細かく分けられているジョブとステータスに補正が入る以外にもなんか特別な効果がある出身を決められるようだ。
「悩み過ぎると先に進めないし、勢いで決めちゃうか!事前にどんなキャラにするかはある程度イメージを固めておいたしね」
というわけで顔はテンプレから選んだやつの目尻をちょっと上げて、瞳の色を黄色にする。キャラメイクで困った時はこうしておけばなんかいい感じになる。髪は黒でいいや。
身長を限界まで高くして、若干細めに……いや、ここまででかいのに細いと不安になるな、ちょっとだけ筋肉つけるか。
ステータスポイントは全てスタミナに振る。今の俺は特化キャラを作りたい気分なのだ。
なんか調べた限りではこのゲームにおいて極振りキャラは作るのが非常に難しいらしく、最低限それ以外のステータスにも振らないとまともに戦えないらしい。だからこのゲームにおける極振りは必要最低限他のステータスに振って残りを特化させたいステータスに全て注ぎ込むというものらしいが、まあスタミナ全振りでも何とかなるだろう。
ジョブは傭兵(片手剣)にしておこう。特化型キャラにしたいなら傭兵がオススメらしい。なんか(片手剣)とか付いているけど別に片手剣しか使えないわけじゃないらしいしこれでいいだろう。
二刀流も気になるが、扱いが難しいし、手数の分スタミナ管理が面倒になる予感がしている。
出身は美食屋にしよう。食事効果補正にスタミナ補正の二重の補正でスタミナを更に尖らせる。
一部食材を未加工だと食べられなくなるのとMPにマイナス補正があるが、魔法は必要になれば味方に使ってもらえばいいだろう。味方ができるかはわからないが。
初期装備以外に何か一つ持ってスタートできるようだが、どれも大した効果が無いし、後で上位互換が簡単に手に入るようなので、適当に口を開けて舌を出している犬の覆面、歓喜の犬面を選ぶ。
何故かこの時点で装備を売ってお金に換えられるようなので、多少防御が犠牲になるが、初期装備の皮の帽子を売って代わりに歓喜の犬面を装備した。開いた口から若干中の顔が見えているのがシュールだ。
「名前はいつも通り適当でいいか、スタミナ極振りだから……『スタミナ全振り右衛門左衛門』……いや長いな、もっとシンプルに……『ぶんぶん丸』にしよう、そうしよう」
スタミナ管理とか気にせずに好き放題武器を振り回すのは気分がいい。そんな思いを名前にしてみた。
名前を決める時はいつも色々と候補を並べてみるが、結局どれもしっくり来なくて最終的に〇〇丸という名前にしてしまう。面白さが足りていないがまあいいだろう。
さて、これでキャラメイクは終わりだ。
長身なのに加えて顔が覆面で隠れているのもあってだいぶバケモノ感あるが、まあいきなり初期装備全部売って半裸になるよりかはまだマシな見た目だろう。
「それでは今度こそ、レッツシャンフロ!!」
『遥かな太古、神代と呼ばれる時代があった』
『偉大なる神人達は後世に命を紡ぎ、その姿を消した』
『 時は流れ、神人の遺志継ぐ我々は彼らが願ったように地に広がり、そして大いなる命の流れを紡いでいく……』
『今を生きる我々は、歴史と遺跡の中に息づく過去の遺産から神人達の軌跡を辿る』
『貴方は開拓者。東よりの風と共に現れ、幾度となく膝をつき、されど進み続け……そして風と共に消えるかもしれない者』
『貴方の生きる意味は?』
『一振りの剣に己が身命を託す?』
『魔道の深淵を覗いて魔道の高みを目指す?』
『あるいは戦いの道を選ばないことも出来る。その全てがここにある。その全ては貴方の中にある』
『さぁ、一歩踏み出して。 未知を、未来を、そして可能性を切り拓いて』
『それがこの地に生まれ落ちし、神代よりの子らに課せられた使命なのだから』
取説で読んだなこれ。なんか考察要素ありそうだけどそういうのは考察サイトでも見ればいいか。
『WELCOME TO SHANGRI-LA FRONTIER』
「お?」
フルダイブした意識と新たなボディが同期し、視界が切り替わると、そこは活気溢れる街だった。
頭の上に名前が表示されているのは他のプレイヤーだろうか?最初の街だからか似た装備の人が多い。半裸も居るが悲鳴が上がることはない。なぜか殺し合いしている人も居るが盛り上がっている観客が結構いるし雰囲気からして喧嘩ではなさそう。
ここがファス……ファス……あ、ファステイアだ思い出した。
大体の人はここからシャングリラ・フロンティアを始めることになるわけだ。一部の出身を選んだ人はいきなり街の外からスタートしたりもするそうだが。
「えーっと、最初は何をすべきなんだ?」
とりあえずメニュー画面を開いて色々と確認してみる。
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PN:ぶんぶん丸
LV:1
JOB:傭兵(片手剣)
4,500マーニ
HP(体力):10
MP(魔力):1
STM (スタミナ):70
STR(筋力):10
DEX(器用):10
AGI(敏捷):10
TEC(技量):10
VIT(耐久力):10(11)
LUC(幸運):10
スキル
・スピンスラッシュ
・ナックルラッシュ
装備
右:傭兵の直剣
左:無し
頭:歓喜の犬面(VIT+2)
胴:皮の服(VIT+3)
腰:皮のベルト(VIT+3)
足:皮の靴(VIT+3)
アクセサリー:無し
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「うーん改めて見ても清々しい程に尖っているな」
流石に序盤の敵ならこのステータスでも火力不足や耐久不足とかにはならないはずだ。
スタミナは沢山あるんだから反撃を許さずに殴り続ければええねん。
「よお、そこの開拓者さん」
「ん?」
誰か話しかけてきた。なんだこの禿げ頭は。
「あんた見ない顔だな、もしかしてここに来たばかりなんじゃないか?よければ俺がこの街を案内してやるよ!」
あ、これチュートリアルだ。
よく見たらプレイヤーネームが表示されていない。NPCは頭の上に名前が表示されないようだ。
「よ、よろしくお願いします……」
「ん?なんだって?」
「ア、ソノ、エット……」
俺はもうダメかもしれない。
原作開始の一ヶ月ほど前のつもりで書いています
シャンフロ原作を何周もしてコミック版も最新刊まで購入していますが、Twitterや感想返しに隠されている設定が多すぎて何かしら矛盾が発生していそうで震えています……