シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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シャンフロと言えば蠍ですよね。私も蠍は好きです。あの殺意高めのフォルムが良い
まあリアルで遭遇したらガチ逃げするでしょうけど


暴徒と水晶狩り

 あれから運よくモンスターと出会うこと無く、聖水が尽きる前にフォスフォシエへと到着することができた俺は早速集めた素材で何か作れないか確かめるために鍛冶屋に寄ってみた。

 

「アンデッドが落とす武器にはよ、主に三つの使い道があるんだ」

 

 鍛冶屋のおっさんは俺が見せたジェネラルデュラハンの剣を手に語りだした。

 

「一つ目は普通に武器として使う方法だ。勿論これをそのまま使っても弱いが、きちんと鍛え直せばこいつは元の姿を取り戻せるだろう」

 

 こんなボロボロになっても元に戻せるものなのか。凄いな鍛冶屋のおっさん。

 

「二つ目は金属素材として再利用する方法だ。こいつは良い素材が使われている。新しい武器の素材としても優秀だろうよ」

 

 元の綺麗な状態に戻すか、新しく生まれ変わらせるかということか。ではあと一つは?

 

「三つ目は……これをアンデッドの素材として呪いを利用する方法だ。呪われた武器にはデメリットがあるが、その分メリットもある。こいつを素材として別の武器を進化させれば、呪いを引き継ぐ代わりに強力な武器へと生まれ変わるだろうさ……どんな呪いになるかはやってみないと分からないけどよ」

 

 つまりはガチャか。呪いのデメリットがあまりデメリットになっていないのを引けたらローリスクで強力な武器が使えるというわけだ。

 

「じゃあ、三つ目の方法で……この剣を進化させてやってください」

 

「ほう、この剣でいいのか?中々に使い込んでいるようだが……」

 

「大丈夫です。お願いします」

 

 俺は黒白の薄刃剣をおっさんに差し出した。

 このゲームを開始してから途中で進化させつつもずっと使い続けてきた武器でそこそこ愛着があるのだが、産廃になるかもしれないからと適当な武器を用意するのもつまらない。今日はギャンブルをしてみたい気分なのだ。適当な武器を進化させてそれが大当たりだとなんか素直に喜べないし、仮に大外れを引いてもまあ何とかなるだろう。

 

「一応他にもアンデッドが落とした素材があれば、それを使ってもっと強い呪いにすることもできるが……」

 

「じゃあこれを使えるだけ使っちゃってください」

 

 インベントリから渓谷で集めてきた全てのドロップアイテムを取り出してカウンターに山積みにする。インベントリに入るギリギリまで素材を集めておいて正解だったな。

 

「お、おう……一応言っとくが、握るだけでくたばっちまうような呪いの武器になっても弁償はしないからな?」

 

 むしろそのレベルでヤバい呪いなら道端に置いてトラップにできそうだな……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「まあ死んでも生き返るんだし、ログアウトする前に一度覗いてみるとしようか」

 

 「エクストリームランニング」によってほぼ垂直の壁であろうが足の裏をつけて腹筋に力を入れれば壁登りが可能なのを利用して、奥古来魂の渓谷の崖を駆け上ってゆく。

 この上にある隠しエリアは水晶巣崖と言うらしく、瘴気の霧で見えなかった崖の上の方まで足を進めると、次第に崖の一部が水晶のようになっているのが見えてきた。登れば登るほどに岩と水晶の比率は逆転してゆき、最終的にほぼ全てが水晶となっている崖の縁を掴んで登り切った。

 

「水晶が沢山あるフィールドを想像していたが、それどころか崖の上全部水晶でできてるじゃん……」

 

 崖の上に到着して周囲を確認してみると、辺り一面全てが水晶で満たされており、大小さまざまな水晶の柱が乱立していて、月光を複雑に反射して大地が眩く輝く様はとても幻想的ではあるのだが、そんな景色を堪能していられたのは一瞬だけだった。

 

 前に数歩出たその時、水晶の台地がひび割れ、全身が水晶でできていると思われる蠍型の……生き物なんだろうかこれ?ゴーレムとかじゃないのか?まあその話は置いといて、とにかく巨大な蠍が地面から湧いてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三十匹くらい同時に。

 

「……なるほど、鍛冶屋のおっさんがやめておけと警告するわけだ」

 

 俺一人相手に明らかな過剰戦力で押し寄せる水晶の蠍たち。これが一匹だけならまだスキルをフル活用してワンチャンあったのかもしれないが、この数だと袋叩きどころかそのまま轢き殺されるだろう。

 仲間に激突しながらもこっちに突っ込んで来るその姿は正に水晶の津波である、横一列じゃなくて蠍の後ろにも蠍が居て、更にその後ろにも蠍が居る。一匹止めたところで後ろから別の蠍に押し込まれて結局ミンチになること間違いなしだ。

 

「こいつら殺意高すぎんだろ……仲間を突き飛ばしてでも小さな人間一匹相手にここまでやるのか……」

 

 もう正面から戦ってどうにかするのは絶対に不可能だと判断した俺は少し下がって崖の縁ギリギリに立ち、ちらりと崖の下を確認してスタミナを回復できそうな水晶の出っ張りを探す。

 

「そのまま突っ込めば崖から落ちて死ぬぞー……マジか、それでも止まらないつもりか?」

 

 ならば好都合。水晶の津波が俺に届くその直前、「エクストリームランニング」を発動した足の裏を崖の縁に当てて重心を後ろに傾けた。

 ほぼ垂直な壁を走ることを可能とするこのスキルは当然壁を駆け降りる場合にも有効だ。水晶で凸凹とした崖でもそれは変わることは無く、下の方に見えた休憩するのに丁度いい水晶の出っ張りへと駆け降りる。

 

「すげー、水晶の滝だ……」

 

 勢いがつきすぎて止まれなかったのか、後ろから別の蠍に押されたのか、無数の蠍が次々と崖の下へと落下していく様は正に水晶の滝。

 蠍が垂直の壁だろうと這って追跡して来る可能性や実はゴーレム系モンスターで変形して空飛んで来たりしたらどうしようかと考えていたのだが、流石にそこまで鬼畜ではないようで、普通に崖の下へと真っ逆さまに落ちていった。

 

「今ので流石に死んでるかな?下に人が居たらヤバいことになってそうだが……」

 

 これで落下した蠍が他プレイヤーに直撃した場合って罪になるのだろうか?MPK扱いかな?

 

 美しくも恐ろしい水晶の滝は直ぐに涸れ、蠍が落下してこなくなってから少し間が空いて、俺の追跡を諦めたのか踏み止まれた蠍たちが崖から離れていったのであろう足音が上の方から響いてきた。

 そして戦闘が終わってレベルアップしたことを知らせるウィンドウが目の前に表示されて……は?

 

「はぁッ!??!!???レベル83!!!????!!!!?????……えっ、なんっ……今ので経験値入るの!?」

 

 これは……最悪BANされかねないヤツでは?この方法で蠍を倒すのは止めにした方がいいか……?いや、それ言い出したらクラウンスパイダー落下死もだいぶアレだが……

 まあいつか修正入るだろうなと思いつつ、崖を降りて落下死した蠍の素材を回収した。運営の想定外の可能性はありそうだが、調べてみたら結構やっている人が多かったクラウンスパイダー落下ハメが修正されたりはしていないから落下死狙いはシステム的には真っ当な攻略手段の一つの筈だし、一回だけなら許されるだろう。多分……

 

「うわ重……流石に全部持って帰るのは無茶か……?でも捨てるのも勿体ないし、遅くなるだけなら最悪死に戻りして街で売ればいいか」

 

 デスペナの一定時間ステータスダウンはログアウトしていてもカウントが進むらしいしな。

 

 そして俺は渓谷の瘴気によって呪われ、HPが尽きて死んだ。聖水買い足すの忘れてた。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

————————————

PN:ぶんぶん丸

LV:83

JOB:傭兵(片手剣)

31,400マーニ

HP(体力):10

MP(魔力):1

STM (スタミナ):500(125)

STR(筋力):10

DEX(器用):10

AGI(敏捷):10

TEC(技量):10

VIT(耐久力):10(1250)

LUC(幸運):10

スキル

・獣鏖無尽

・蜂巣装甲

・穿孔発条Lv.1

・全力全壊

・リボルバーフィスト

・剣舞【紡刃】

・セツナノミキリ

・合気Lv.6

・ブリンクLv.1

・回避術【走兎】

・六艘跳び

・ソニックブレスLv.1

・抗害の息吹

・ダイナブレスLv.1

・活力湧出

・フューエルコンバートLv.1

・ハイエスト・エンデュランス

・アイドルリダクションLv.6

・リブートLv.7

・リスタートLv.8

・リワード

・パーシスタンド

・アクロバットLv.1

・ホバリング

・フィドラー・シザーズ

 

装備

右:火山鉄鞭(ボルケーノ・ケイン)

左:無し

頭:歓喜の女帝犬面(VIT+350)

胴:女帝蜂の胴衣(VIT+350)

腰:女帝蜂の腰帯(VIT+300)

足:女帝蜂の細袴(VIT+250)

アクセサリー:豊穣と節制の円環

アクセサリー:女帝蜂の梵天飾り

アクセサリー:黄玉の腕輪

アクセサリー:紅玉の腕輪

アクセサリー:黄玉の首飾り

————————————

 

 

 遂にスタミナが500を突破した。もうレベル99までそう遠くはないので、ここからは装備やスキルでスタミナを伸ばすのがメインになってくるだろう。

 しかし早速あの蠍の素材で良いアクセサリーを作れないかNPCの店員に聞いてみたのだが、なんと『私の技術力ではこの素材を加工しても硬いだけの飾りにしかできない』と言われてしまった。加工の難易度が高すぎて秘められた力を引き出すにはもっと腕の良い人に頼らないといけないそうだ。

 とは言ってもコネとか何もない訳だがどうしようか。総当たりで店に突撃してこれを加工できないか聞いて回るのも大変だし、プレイヤーを頼るにしても腕の良いプレイヤーは既に先の方の街に行ってしまっているだろう。

 

 レア素材だろうから売るのももったいなくてインベントリに大量に突っ込んであるせいでゆっくり歩くことしかできない。これでは先のエリアに進むこともできないのは間違いない。

 

「掲示板で聞いたらなんかいい答え帰ってこないかな……いやでも下手すると偶然レア素材手に入れた初心者としてPKに狙われる可能性も……」

 

 一部残して売ってしまうのが一番手っ取り早いのかもしれないが、もう手に入れられない可能性を考えるとなぁ……

 

「倉庫借りたりとか……そうだ、一部売ってその金で小さな倉庫買えるんじゃないか?」

 

 ……倉庫ってどこで買えばいいの?




垂直の崖を重力を無視していそうな挙動で登り降りする主人公。でも実はガッツリ重力の影響は受けているので腹筋に力を入れないと後頭部を崖に強打する模様

この時主人公はまだ運営に目をつけられていない&何度も繰り返し崖落としをしなかったことでこの時点ではまだ蠍の崖落としは修正されていません。メタ的にはここで崖落とし修正は原作主人公に与える影響が大きそうなのでそういうことにしてあります

追記:原作者によって蠍を崖から落とした場合は素材が木っ端微塵になって回収不可になることが判明しましたので、この二次創作小説では主人公が蠍落としで素材を稼いだのをサーバーがヤバいと判断してサンラクが次に蠍落としをする前に修正したということにしておきます
便利だねシャンフロサーバーが勝手に修正する設定!
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