シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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仕事がトラブル続きでめちゃくちゃ忙しいのでまた暫く更新頻度が週一にまで落ちると思います
同僚が入院して数ヶ月戻って来ていない分俺の仕事が増えまくっている……


暴徒と第二の赤

『殺す殺す殺すコロスァァァァアアアアア!!!!!』

 

「うわ」

 

 地面に叩きつけられた赤竜が長い脚をシャカシャカと動かして火山を駆け登っている。

 あれだけ脚が長いと歩幅も大きいため地上を移動するのも速いようだ。肉を限界まで削ぎ落したような軽量な体なのもそのスピードに貢献しているのだろう。

 

 正直虫みたいでキm……今はそんなこと考えている場合じゃないな。スキルの制御に集中しよう。

 

「スキルの効果時間中はずっとルインヴァル投げてりゃいいな」

 

 奴の攻撃は範囲も射程もあるがどれも直線的だ。スピードさえあれば回避は容易。

 しかし「天国への階段(ステアウェイ・ヘヴン)」、「冥界下り(キ・ガル・シェ)」、「時律変速(トランスミッション)」を使ってしまった今、残る有効な機動力系スキルは「宇宙の旅(ツィオルコフ・トラベル)」のみ。しかもこのスキルはスタミナが続く限り効果時間が続くものの、バフの倍率がどんどん上がってゆくせいで最終的に制御不能になる危険性も秘めている。

 移動に使うだけなら最後に地面でもみじおろしになるだけですむのだが、戦闘中だと大きな隙に繋がることになる。連結すればいいってもんじゃないな……

 

 どこかで生じることになる隙を如何にしてカバーするか。

 ルインヴァルを次々と投擲し続けながら思考を巡らせる。

 

「おっと」

 

『死ねェェェェエエエエエッ!!!!!』

 

 スキルの効果が切れたのと同時に奴のブレスが放たれた。

 「鳥の舞【鶻落】」で落下速度を引き上げて回避。地面に激しく激突したがこの程度のダメージなら問題ない。

 

「「宇宙の旅(ツィオルコフ・トラベル)」。引き撃ちは基本!」

 

 最初は歩幅を小さく、加速を重視。

 ある程度加速したらそこからは跳ねるように空気を蹴り、それ以上の加速を抑える。

 

 「御茶の子さいさい」も発動。このスキルはスタミナが減少する条件が緩和されるスキルであり、小走りやちょっとしたジャンプくらいならスタミナ消費が無くなる。

 スタミナ管理がしやすくなるし、小走りでも過剰なくらい加速する「宇宙の旅(ツィオルコフ・トラベル)」との相性が非常に良い。

 

 機動力系スキルが尽きた時の為にスタミナをなるべく温存しておく。

 今の俺にとってスタミナは何をするにしても必要なもので、逆に言えばスタミナがあれば大体のことはできる。常に余裕を持たせておきたい。

 

『あああああウゼェんだよさっきから逃げ回りやがってよぉぉぉおおお!!!!!』

 

 完全に頭に血が上っている奴の炎を後ろ歩きしながら避けつつルインヴァルを投げる。

 「反響鳴音(エコー・パルス)」で地形情報は頭の中に入っているからな。後ろ歩きでも転ぶことは無い。

 

「【怨嗟の言霊】ぁぁぁあああああ!!!」

 

『ガァアッ!!?』

 

 口から放たれた蒼い稲妻が奴の顔面を焼き、動きが止まる。

 その隙を逃さすファントムが次々と奴の全身の突起の内側へと潜り込み──

 

「【感染爆発(パンデミック)】!!」

 

 奴の背中と両手両足の突起から激しく炎が噴き出し、奴が再び地面に叩きつけられる。

 このまま地道に削っていては一日中戦っても決着がつかないかもしれないからな。攻める時は攻める!

 

 【魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)】に「大血界(ユミル)」、極短時間の間ヒット数を百倍にする「雷霆万鈞」、その他あらゆるバフを乗せて……

 

「鳥の舞【目白押】! 配置につけ!」

 

 倒れ伏した奴をぐるりと囲むように俺とファントムが並び、晶王笏(クリスタル・セプター)を装備した俺とファントムの動きが連動する。

 

「「煌めく六閃(コリュタイオロス・デュランダル)」!!!」

 

 漆黒の攻撃エフェクトが、真っ赤なダメージエフェクトが、蒼い稲妻が、奴の顔面でそれぞれが一瞬にして六百回分弾ける。

 更に奴の四肢を、胴体を、尻尾を、ファントムが同時に斬り裂いた。

 

 残念ながら【目白押】はダメージ倍率まではコピーしてくれないのでファントムがヒットした部分は普通に素早く六百回斬っただけのダメージしか入らないが、それが十カ所なら六千ヒットだ。

 そして顔面という急所に俺のスタミナ全てを乗せた攻撃が六百発もクリーンヒットすれば……

 

『グ……ガッ……!?』

 

「これで頭が凹むだけって相当タフだなお前……」

 

 顔面がボコボコに凹んだ赤竜が呻き声を発する。

 今のでかなりのダメージが入ったはずだ。即座に起き上がれはしないだろう。

 

 この隙に次なる大技の為の溜めを開始。

 大きく息を吸って~……吸って~……まだ吸って~……!

 

 溜めているだけなのでこの時点ではスタミナ消費が発生せず、少し回復速度は落ちるがスタミナは自然回復する。

 「大血界(ユミル)」によるスタミナ急速回復と「消えぬ残り火」によるスタミナ切れでも一時的に動ける効果のシナジーにより、溜めている間に0になっていたスタミナが既に半分以上回復している。

 

 更に咆哮の威力を高めるために呪業【狼影】を、動きを止めるために【腕触の淵深う誘へき暗(スビア・ブオ・ィテニサンイ)】を重ねて発動。

 

『ギ……グオォオオ……!! テメェ……!?』

 

 アメンボのような細い体を蛸の触腕が締め上げる。

 噴射で逃げようとしても無駄だ。蛸には吸盤があるのだ。そう簡単に引き剥がせると思うなよ……!

 

 下半身は蛸に、上半身は狼の姿へと変貌し、更に大きく息を吸う。

 既にこの時点で俺の周囲の空間が若干青みを帯びており、影を纏っていなければスリップダメージを受けていただろう。

 

『クソが……!! この程度の力で俺様を止めようなどと……思い上がってんじゃねぇぞウジ虫がァ!!!』

 

 腹の炎を噴射し、四本の脚を力尽くで動かして拘束から抜け出そうとする赤竜。

 更に肩の突起をこちらに向け、その先端から光が漏れ出す。

 

 一手遅かったな。チャージはもう終わっている。

 影に包まれている中で晶王笏を構え、狼の口を更に大きく開く。

 

『死ね!!! 死ね!!! 死ねェェェェエエエエエッ!!!!!』

 

「お前が死ね!!! 「法界号令(D・D・D)蒼穹(スカイブルー)】」!!!」

 

 絶叫と同時に視界を青が埋め尽くす。

 炎が迫り、青に呑まれ、青空へと塗り替えられてゆく。

 

 ブレスのように見えて実際にやっていることは現実の改変。

 故に押し返すのではなく塗り潰す。これが正しい挙動らしい。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

『グロァァァァァアアアアア!!!!?』

 

 大地が抉れ、奴の背後の火山もその表面の一部が青空へと置き換えられて削れて行く。

 影の触腕も巻き込まれて掻き消されてしまっているが、そこは削れても俺にダメージが入らない部分なので問題ない。

 

 奴の全身から激しくダメージエフェクトが飛び散り、それさえも青空へと塗り替えられる。

 この攻撃は肺の中の空気を全部吐き出すまで終わらない。【魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)】や「大血界(ユミル)」によって拡張された分だけ肺活量も増えている。

 

 「大血界(ユミル)」はフレーバーテキストを見る限り、血を撒き散らしてできる周囲の暗い空間を拡張された俺自身の呼吸器として扱うというこれまた一種の現実改変らしいからな。

 【魔勁修羅(マヘーシュヴァラ)】によってその範囲も拡大しており、範囲内に入り込んだ相手は酸素とマナを奪い取られる。なぜかついているデバフ効果はそういうことらしい。

 

『ァ……ガァ……テ、メェ……!! タダで死ねると思うなよ……ッ!』

 

「ゼェ、ゼェ……これでもそんなに効いていないのか……」

 

 息切れしてスキルが終了したが、奴はまだ足で立つ元気を残しているようだ。これ後何回ぶち込めばいいのかな……

 ゲーム的に考えてボス級のモンスターが七連結スキルを数十人で一斉にぶっ放して瞬殺とかされたら運営が困りそうだし、めちゃくちゃタフに設定していそうなんだよな……

 

 喋る上にあの巨体であることを考えると、運営がわざわざ用意した何かしらの役割を持つモンスターだろうし、恐らくこの火山地帯の探索を妨害するボス的な役割だと思うんだよね。

 見つからないようにこっそり探索するか、大規模な討伐パーティを組んで撃破してから探索するか。もしかしたらこの火山の地下にいる人らしき存在と協力してなんとかするべき相手だったのかもしれない。

 

『潰れろ蛆虫がッ!!!』

 

「「魔素溶血(MDIV)」……!」

 

 MPを消費してスタミナを回復するリキャストタイム一秒のスキルを連打。

 「大血界(ユミル)」の反動で900程までしか回復しなくなっているスタミナを強引に回復しつつ、【馬修羅埴(ヴァジュラパーニ)】で影を纏い駆ける。

 

 今はリキャストタイムを稼ぐことに集中する。

 この影の装甲があればちょっと炙られたくらいなら耐えられるしスピードも出せる。

 

 ここを耐えきることができれば、理論上は戦闘開始からここまでの流れをミスなく繰り返すことでいつかは奴のHPを削り切ることができる。

 ……第二形態とかが無ければの話だけど。ボスっぽいしあってもおかしくないんだよなぁ……

 

 それにシャンフロのAIは優秀だ。その上喋れるモンスターとなれば一度やられた戦法は学習して対策して来るかもしれない。

 となればシンプルに対策の難しい戦法を続けるのが安定……引き撃ちが一番だな!

 

 

 

 

 

 

 グレイブヤード積竜火山。

 赤き竜が生まれ、棲まい、そして果てゆく場所であるのと同時に、この火山の地下には赤き竜に気付かれぬようにひっそりと広がっている地底都市が存在していた。

 

「なんなんだ、アレは……!?」

 

 突如地底都市ホルヴァルキン全体に響き渡った謎の咆哮。

 憎き赤竜のそれとは違う、全身が痺れて硬直する耳を劈く轟音。

 

 赤竜とはまた別の脅威の接近に鉱人族(ドワーフ)はパニックを起こしかけていた。

 そんな中でも正気を保っていたドワーフを纏める立場のミダス28世がこの騒ぎを治めるため自ら動いた。

 

 慎重に地底都市と地上を繋ぐトンネルを通り、覗き見た先で繰り広げられていたものは……憎き赤竜に、ただ一人で挑む……人型の化け物としか形容できない何か。

 頭から蒼き炎と稲妻を放ち、十本の漆黒の剣を従え、空を駆けるそれは赤竜と比較すれば圧倒的に小さい体躯であるにも拘らず、赤竜をも上回りかねない威圧を放っていた。

 

 そしてその者の手に現れては投げられ、赤竜の鱗を貫いては消え、またその者の手に現れる一本の柱のような輝ける巨槍。

 恐怖心すら捩じ伏せ、見る者を魅了するその輝きには心当たりが有ると言えば有る。無いと言えば無い。

 

 その輝きは正に輝ける槍と呼ぶに相応しく、しかしどの輝槍の伝承とも異なる未知なる輝き。

 そして……ミダスはその槍から視線のようなものを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

その腕をよこせ(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 ミダスの黄金に輝く腕。

 

 或いはそれと同質の地の底より湧き出でし黄金。

 

 それこそがあの輝ける槍が求める物であるとミダスは理解した。




ルインヴァル「アレ食べたい」

主人公に呪い耐性が無かった場合、ルインヴァルの精神誘導でミダスと遭遇したら初手脅迫になっていた。その腕捥ぎ取られたくなければ「黄金」の在処を言え的な……勿論ドワーフと敵対するルートに突入する。リュカオーンが刻傷をつけていなければヤバかった

リュカオーン「感謝してもいいのよ」

ファントム「出て行け」


「御茶の子さいさい」……スタミナ消費条件を緩和するスキル。地味に助けられる場面が多いがやっぱり地味
盾で防いだ時のスタミナ消費にも影響するので実はタンク向けのスキルでもある。衝撃耐性に優れた盾と組み合わせると掠りヒットや小ダメージの多段ヒット攻撃ではスタミナが減らなくなると言えばその有難さがわかる人もいるかもしれない
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガィン(骸骨車輪の攻撃を盾受けして多段ヒットでスタミナを消し飛ばされる音)


「雷霆万鈞」……ヒット数百倍という割ととんでもないことが書かれているスキルだが、効果時間があまりにも短い。総ヒット数や扱いやすさでこれを上回るスキルが結構あるので思ったほどではない……と思いきや、その極短時間で複数ヒットさせられる手段があれば一気にヒット数が伸びるので結局は組み合わせ次第


魔素溶血(MDIV)」……リキャストタイム一秒。MPをスタミナに変換するスキル
これのHP消費バージョンと空腹値消費バージョンも主人公は保有しているが現在連結中である
実はその三つをレベル150で進化させてから連結すると出現するリキャストタイム一秒の隠し連結スキルが存在する
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