シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
執筆しなきゃいけないのにあと一回だけが止まらない
赤竜を蹴り殺したり黄金のマグマをゲットしたりした翌日。仕事を終えてシャンフロにログインする。
「……火山灰が……」
天井をちゃんと塞がないとログインする度に火山灰のベッドで目覚めることになるのね……
さて、本日の目的は鉱石採掘だ。
この火山灰で潰れていないのが奇跡なボロ小屋の隣にある入り口が塞がっている坑道……そこから採掘すればより珍しい鉱石が手に入る可能性がある。
「まずこれを何とかするところからだな……」
坑道の入り口は冷え固まった溶岩で塞がっている……というかこの感じは多分あの赤竜がこの中に炎を吹き込んだのだろうな。
となると結構奥の方までこうして塞がっている可能性が高い。これは重労働になりそうだ。
「用意しておいてよかった「早掘の鶴嘴」!」
ツルハシって武器としても使えるし鍛冶屋で強化可能なのでは? と思いついて試してみた結果、これ一本作るのに物凄い量の鉱石が犠牲になった。
通常のツルハシよりも軽く、硬い。軽い分一撃の威力が落ちてしまうのを鋭さと特殊効果でカバーしているようで、振り上げる速度と振り下ろす速度に応じたダメージボーナスが発生するようになっている。
因みに片手でギリギリ持てる大きさと軽さに設定されているが、それでも装備条件にある程度の筋力が要求されるので、俺の場合使用する際には何かしらの手段で筋力を補う必要がある。
「やるぞ! 「
片手武器の装備条件を無視しつつ様々なバフを得られるスキルを発動。暫くはこれで問題なくツルハシを振れる。
他にも一時的に筋力を補う手段は存在するからな。ガンガン採掘しよう。
暫くして。
「失念していた……耐久値……!」
耐久値が半分を下回ったことを知らせる警告が表示されている早掘の鶴嘴を見てそう呟く。
最近実質壊れないような武器ばっかり使っていたから忘れていた。道具は……壊れる!
「力業で採掘すると崩落してやり直しになりそうだしなぁ……」
崩落を防ぐ坑木とかも用意しなければならない。あとできれば光源とか。
これは……協力者が必要だ。
「……一日経てばある程度騒ぎは収まっているかな?」
リスポーン地点を更新した今なら聖杯で性別反転も気軽にできる。別にしたくてやっているわけでは無いのだが、やらないとNPCとまともに交流できないのでな……
性別を入れ替え、服装をゴスロリドレスに。
後は息を止めて……もう一度鉱人族の地底都市へ!
……
…………
………………
「酒じゃあああああ!! もっと酒持ってこおおおおい!!!」
「ひょおおおおおおおおおおおお!!!」
テンション高っ。
そりゃそうか、赤竜といういじめっ子が通りすがりの誰かさんにボコボコにされて脅威から解放されたわけだしな。はしゃぎたくもなるか。
ああいうのに絡まれると面倒なので息を潜めたまま比較的まともそうな鉱人族を探して歩く。
やはり鉱人族以外の人間が珍しいのか、それともこの格好のせいか、結構視線を感じるな。
鉱人族は基本的に褐色肌で背が低いのは男女共通のようだ。コナツに教えたら狂喜しそうだな。
そして腕……どうやら鉱人族は名前の通り、何かしらの鉱石のような硬そうな腕を持っている。個体差があるようで、鉄っぽかったり銅っぽかったり……ミダスの腕が金ピカだったのは本当に金と同じ性質を持つ腕だったのだろう。ルインヴァルの反応からしてただの金ではなさそうだが。
お祭り騒ぎな雰囲気の中、比較的落ち着いている鉱人族を見つけて話を聞いて回る。
落ち着いているように見えてもやはりこの状況で気分が高揚しているのか、みんな初対面なのにペラペラとこの地底都市や鉱人族について教えて貰えた。
「伝えなきゃいけない情報がどんどん溜まってゆく……」
へー、ガンダックっていう腕の良い鍛冶師がいるんだ。
……あれ? どこかでそんな名前を聞いたことがあったような……?
……
…………
………………
破壊された坑道を掘り始めて三日が経過した。
今日は金曜日なので夜遅くまでシャンフロができる。坑道もかなり掘り進めることができたし、鶴嘴を当てた時の音からしてそろそろ開通するんじゃないかな?
鉱人族の鍛冶師ガンダックの協力によって鶴嘴を修理可能となり、坑木と光源も用意することができた。作業は順調に進んでいる。
しかしあれからそれなりに時間が経ったのにメールバードが飛んでこないな。
流石にもうリーダー達は深海から帰ってきているだろうし、あのアナウンスが聞こえているのならメールバードを送って来ると思うのだが……もしかしてあのアナウンスはあの場にいた俺にしか聞こえていないやつなのかな?
一応シャンフロの掲示板を確認してみる……うわ、やっぱり全プレイヤーに聞こえているじゃん。ぶんぶん丸はどこだってめっちゃ書き込まれている……
というか【
実際HP特化のプレイヤーが現れたらそっちの方がより生存に特化したスキル構成になるだろうから、その時は【
まあ並大抵の尖らせ方だと俺の常時スタミナ5.5倍+一回完全蘇生は超えられないだろうけど。普通に見てみたいなHP全振りがどれだけタフなのか。
ガガガガガガガガガガガガガガ……
近隣住民が居たら間違いなく苦情が来るであろう騒音だ。そういえばこの火山には
「開通!」
鶴嘴を叩きつけた場所がボロボロと崩れ、穴が空いた。その先を照らしてみると、所々岩が溶けたり煤けたりはしているものの、崩落はしていない坑道の先が見えた。
穴を広げて通れるようにして、早速奥へと進んでみる。
「レア鉱石ないかなー」
まあ見える部分の鉱石は既に採掘された後かもしれないが、シャンフロの鉱石って何故かリポップするからな。ゲームとして考えれば別におかしいことではないのだが。
世界観的な設定があるのかゲーム的な都合かは知らないが、俺にとっては都合のいい話だ。
坑木も黒焦げになったり燃え尽きたりしているので新しい物を設置。
鉱人族が特別な技術を持っているのか元から地盤が固いのか坑木が無くても崩落する気配は無いが、それはそれとして普通に怖いからな……
「ん? ここ分岐があったのかな? 崩落しているけど……」
崩れ落ちた天井の一部が道を塞ぐほど積み重なっており、更にその表面が熱で溶けて一つの塊になってしまっている。これまた面倒そうな……
ゲームなら間違いなくこの先にレア採掘ポイントとか宝箱とかがあったりするものだが、シャンフロだと運営が意図していない事件事故が割とありそうなんだよな……苦労して掘って何もない可能性が普通にある。
「後回しでいいか」
今はこのまま進めるところまで進むことにする。あまり時間をかけ過ぎると前線拠点に帰るのが数週間先になることもありえるからな。
……
…………
………………
「十分な量を確保できたな」
ルインヴァルのインベントリも俺のインベントリもほぼ限界まで鉱石が詰まっている。
一日中レアそうな鉱石を集めた成果を持ち帰る時が来た。
「このボロ小屋、次来た時は完全に崩壊しているんじゃないだろうか……」
一応表札に「ニトロ薬局グレイブヤード積竜火山仮支店」と勝手に書いておいた。短い期間だったけどなんだかんだで愛着が湧くもんだな。
「兎に角東へ飛んで行けば多分行けるだろ。最悪海岸沿いに進めば……」
スキルを発動して空を駆ける。次に来るのは何日後かな……できれば大工とかラメリンさんとかも連れて来たいのだが、流石に距離がなぁ……抱えて飛んだら最悪事故って合い挽き肉になっちゃう可能性が……
……
…………
………………
「何あれぇ……」
ひたすらに飛びまくり、ようやく樹海が見えてきた……と思ったらなんか樹海の一部がビックリするくらい真っ赤なんだけど? テクスチャバグった?
気になったので現場へ急行。あれは……
「赤い……竜巻と、四つ首ドラゴン?」
なんというか、首長竜の首が四つに増えたみたいな……あ、良く見たら尻尾にも頭ついてるじゃん。五つ首かよ。
雑にペンキを被せたかのように全身が真っ赤で超巨大な体躯を持つ五つ首首長竜が背中から竜巻を発生させていて、煙を纏う三つ首ティラノサウルスとガチバトルしているんだが?
「何事……うおぉ!!?」
首長流の尻尾の頭がピカっと閃き、嫌な予感がして回避行動をとったのだが正解だった。
さっきまで俺がいた場所を真っ赤なビームが貫き、夜空へと消えていった。息を止めてステルスしていたのに普通に見つかったな……顔が沢山あるし、目視されたか?
余所見をした尻尾の頭に三つ首ティラノが噛みつき、強引に肉を引き千切る……が、即座に千切れた部分が修復されてゆく。
首長竜の背中の竜巻から赤い塊が飛び出してティラノに襲い掛かるが殆どダメージになっていないようで、ティラノはそれを一瞬で蹴散らしてポリゴンへと変えてゆく。
「大迫力だな……ちょっと見ていこうかな」
三つ首ティラノの方は掲示板で話題の樹海のエリアボス疑惑のやつかな?
五つ首首長竜は……なんだろう。規模からして赤竜レベルっぽいんだけど、赤竜は殺したよな?
よく見れば俺がレベルキャップを解放した開けた場所の端っこの方で戦っているようだ。
上空に居るとまたビームで狙われそうだ。近くにはボロボロの廃屋が複数あるのでその中に身を隠して観戦するとしよう。
遠距離攻撃手段を持つ首長竜を警戒しつつ高度を下げる……距離が近づいて判明したことなのだが、どうやらあの竜巻から飛び出している赤い塊は生きているようで、真っ赤な動物や虫を次々と吐き出しているようだ。なんなんだあの首長竜……?
そして……プレイヤーかNPCかはこの距離ではわからないが、誰かが戦っている。
弓でチクチクと、それ本当にダメージになっているのかと心配になるレベルではあるが、竜巻から吐き出された生物の対処をしているようだ。協力した方がいいのかな?
「すみませーん……」
「えっ、わっ、空から人が!?」
おや、プレイヤーじゃなくてNPCか。というか耳が長──
「おっと」
「きゃっ!?」
飛びかかって来た真っ赤で巨大な蚊をルインヴァルで貫く。
「聞く前にやっちゃった……これ手伝った方がいいやつですか?」
「えっ、あ、はい……お願いします……」
なんか見ていて色々と不安になるなこのNPC達……目の前で死なれても嫌だし頑張るか。
更なる赤
第一形態から主人公を参加させるとずっと空を飛んで逃げ回るだけになりそうなので途中参戦となりました。絵面が地味!
廃坑……元々ドワーフが利用していた坑道の一つだが、赤竜が中にまで炎を噴き込んだせいで落盤……というより天井や壁が溶け落ちて塞がってしまった
シャンフロの設定上鉱石は復活するので塞がった入り口を開通させれば大量の鉱石を確保できるチャンスでもある……実は赤竜撃破後に一部のドワーフから受けられる廃村、廃坑を復興させるユニークシナリオが存在したのだが、主人公がそれなりの期間ここに居座ったせいでこの付近が近づいてはいけない禁域扱いにされてしまい、ユニークシナリオのフラグが圧し折れた
現実の廃坑には危険がいっぱいだし既に掘り尽くされた後だが、これはゲーム。
廃坑には沢山のロマンが眠っている……
???「zzz……」