シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
旧大陸と新大陸を往復し、鉱石を採掘して納品する日々。
鉱石の採掘ポイントは火山以外にもありそうだが、量も多いしレアっぽいの沢山あるしでここ以外の場所を探すよりも、ここで必要量を集めて納品した方が確実そうなんだよな。
さて、そろそろ新しい装備が完成している頃なんじゃないだろうか?
納品を済ませてまずはラローリーさんの工房へ。
「いらっしゃーい! 待ってたよぉ!」
「ぐえっ」
どういう原理か毎回訪問するタイミングを先読みされて玄関で待機されている。
そこまでは良いとしてなんで中へ引きずり込むんだ……
「……これですか?」
「そう! これこそがぶんぶん丸君から預かった
作業台の上に支えを使って立てて置かれている人間の子供の腕くらいの太さがある真っ赤な二本の釘……そもそもこれは釘なのか? 特に片方は形状的にはピストンを引っこ抜いた注射器みたいだぞ? 太さ的には注射器というよりも斜めに切った鉄パイプだが……
中に真っ赤で半固形状の何かが詰まっているし……というかこの中身蠢いていないかこれ?
「釘? が……二本?」
「二本で一つのアクセサリーだよ。双剣みたいなものだと思えばいいよ。素材にしたアレの力が強すぎて、釘一本に効果をまとめきれなかったんだよねぇ……」
まあ元が一つでアクセサリースロットを二つ埋めるアクセサリーなんだからゲームバランス的には当然ではあるな。寧ろ釘にできるだけでもヤバすぎる。
呪啓者は色々とぶっ壊れ要素が多いけど、個人的には一番ヤバいのが呪い釘だと思う。掲示板で見た一般的なアクセサリーと比べてどれも効果が強すぎる。
デメリットがあるけどその分強い系ってバランス調整難しいんだろうな。ナーフはサービス終了まで見逃してくれ運営。
さて、効果を見てみよう。
・
呪啓者及びその派生職でのみ装備可能。
この
この
赤き力を用いて作られた
赤き力の凝固たるこの釘は使用者に新たなる部位を与える。
使用者の任意で発動可能で、発動中は任意の部位を一つ得ることができる。
この
この
「赤棺開封」状態になってから30秒経過する度にランダムに1つ部位が追加される。これにより部位が6つ追加された時、装備者の種族が「
霊穴に直接突き刺して装備する
「ガチ目の呪いの装備じゃん……」
一度装備すると外せなくなるのもそうだが、使いすぎた時の効果が色々とヤバすぎる。
AIによって操作されるとか書かれているが、どう考えても敵味方関係なく皆殺しにするようなAIだろこれ。
じゃあ使いすぎないようにしようと気を付けても割と緩い条件で勝手に発動するし、正に呪いの装備だなこれは……
しかし色々と気になる点が多いので先ずは検証してみたい……のだが、一度装備すると外せないのがなぁ……アクセサリースロットもギリギリだし……
「装備する時はこれをこうして〜……」
ラローリーさんが二つの釘を手に持ち、注射器のような形状の釘の頭の面にある穴にもう片方のシンプルな形状の釘を差し込む。本当に注射器みたいだな……
「こう!」
俺の左胸に釘の先端が向けられる。
「……心臓に?」
「そう。チクッとね!」
絶対チクッじゃすまないだろ。グサッだろ。
装備するかどうかはラローリーさんの説明を聞いてから決めることにしよう。
さて、今回は何時間で解放されるかな……
……
…………
………………
色々と検証を済ませてムンクさんの工房へとやってきた。
「ムンクさんこんにちは」
「おう……?……おぉ……遂に人間を辞めたか……」
「まだ人間ですよ」
左肩の後ろ辺りから生やした鋭い爪と鱗を持つ大きくて真っ赤な腕を見せたら人外扱いされた。
遂にってムンクさんにいつか人間を辞めるだろうなって思われていたということなのでは?
「連続で使いすぎなければ大丈夫ですよ。刻傷もありますし」
「そうか……なら良いんだがよ……」
検証の結果、刻傷のおかげなのか
逆にわざと
何回かテストで
改宗と言えばルインヴァルはどうなったのかな?
「ルインヴァルも深化させといた。癖が強くなっとるから気をつけな」
「うお、眩しい……」
そう言ってムンクさんが持ってきたルインヴァルはめっちゃ眩く輝いていた。松明替わりに使えそうなレベルで輝いているんだけど?
このサイズでこの輝きだと最大サイズにしたら目潰しに使えるんじゃないかないかこれ?とりあえず受け取って効果を──
金煌槍ルインヴァル
槍
我は求む。竜を、英傑を。
血を捧げよ。我が杯を満たせ。
・抱擁されし槍
ルインヴァルの所有権を有している間、所有者の種族が「
・認識の槍
ルインヴァルを自由に出現、消滅させることができる。また、ルインヴァルを出現させる時、その所有者が体感する負荷、重さ、長さ、大きさは所有者の望み通りになる。(ルインヴァルの価値と所有者の歴戦値によって上限、下限が変動する)
・意識の槍
ルインヴァルの状態と所有者の状態を連動させることができる。
・末那識の槍
ルインヴァルの所有権を有している間、所有者は追加のステータスポイントを獲得し、獲得したステータスポイントは所有者の最も高いステータスに自動で振られる。また、経験値、歴戦値、習熟値、感覚値、信頼値、野生値の獲得量とアバター操作に補正がかかる。(ルインヴァルの価値によって獲得ポイント、補正値が変動する)
・阿頼耶識の槍
所有者が死亡した時、その直前の所有者の歴戦値によってルインヴァルの価値が変動する。(PCの場合、リスポーンした直後と死亡する直前の歴戦値を比較する。NPCの場合、ルインヴァルを入手した直後と死亡する直前の歴戦値を比較する)
・竜を屠る槍
特定カテゴリのモンスターに対するダメージ量を強化する。また、該当するモンスターとの戦闘終了時にモンスターのレベルと野生値に応じてルインヴァルの価値が高まる。
・「
所有者のSTMが6000以上の時に使用可能。ルインヴァルとその所有者から黄金のマナの結晶が生える。(ルインヴァルの価値と所有者の発動時のスタミナと歴戦値によってこのスキルの性能が強化される)このスキルの効果時間終了後、スタミナが全て消費される。
・──[封鎖]──
竜の血を注ぐための杯、英雄の血で濡れた杯。事実だけが、真実を満たす。
「……なるほど。これはかなり癖が強い」
ルインヴァルを手にした瞬間、俺とルインヴァルがリンクしたような不思議な感覚を覚えた。
そして脳に直接情報を流し込まれたかのように一瞬で理解する。
この中で特に気をつけなきゃいけないのは「意識の槍」だ。
この効果は律と名がつくスキルやローエンアンヴァ琥珀晶を用いたアクセサリーに匹敵するじゃじゃ馬だ。
簡単に言えば、迂闊に意識しようものなら俺へのダメージがルインヴァルと連動してルインヴァルがぶっ壊れたり、逆にルインヴァルへのダメージが俺と連動して俺が死ぬといったことが起こり得る。
その逆として、俺がダメージを受けた時、ダメージを受けていないルインヴァルと連動することでダメージを分散させたり、俺の回復と連動させて回復の一部を分け与えてルインヴァルを修復したり……そういったことも可能ではある。俺の状態異常をルインヴァルと連動させて疑似エンチャントなんてこともできるようだが、できることが多い分複雑な上にやたらと感度が高いので、常にダメージを受け続けている俺はそれをルインヴァルに押し付け続けないように常時それなりに気を配る必要がある。
まあ俺のHPは10しかないからダメージをルインヴァルに押し付けた所で短い時間なら掠り傷にもならないだろうけどな。
そして封鎖されている能力……これの解放にはルインヴァルを用いて真なる竜種の討伐が必要だ。調伏ではダメっぽい。
しかし、その討伐するべき真なる竜種はまだこの世界にいないようだ。恐らくどこかしらのタイミングでアンロックされる要素なのだろう。
「考えなきゃいけないことがどんどん増える……!」
おかしい。そもそも俺は何も考えずに武器をぶんぶん振り回したいからスタミナ全振りを目指したはず……なのに実際はどんどん考えなきゃいけないことが増えている……
「はぁ……まあいいや。とりあえず準備はできたので、進化した
「わかった。ちょっと待ってな」
深化した
今から強敵との戦いが始まると思うとやはり緊張するな。箱の中から放たれる威圧感もかなりのものだ。
「
「それは今にわかる。開けるぞ」
「お願いします」
ゆっくりと開けられた蓋の隙間から漏れ出すのは……暗くて蒼い炎?
「ぶえっ!?」
箱の中から噴き出した炎に呑み込まれる。
……これ箱の正面に立つ必要あるんだろうか?
『
『
『竜狩りが開始されました』
……
…………
………………
「この世界は曇り空なんだな」
ファントムの時と同じように白い地面が広がっているが、空には分厚い雲で覆われている。
そんな空の下で俺と俺を見つめる巨大な存在の二人きりの状況だ。
「でっか……」
ファントムもそれなりのサイズがあったが、こいつはさらにデカいし、ファントムのように細くもない。赤竜やジークヴルムと同じくらいはあるぞこれ……
元はそんなに大きい武器じゃないのに随分とでかくなったな。
そいつの首から下は馬に近い体格をしていた。
脚の先には蹄があり、尻尾は馬のように長い毛で覆われており、竜っぽさはあまり感じられない。
それに対して首は太く長く、頭には竜らしい鋭い牙と大きな角がついている。
そんな若干のちぐはぐさがある奴に統一感を与えているのは奴の全身を覆うまるで鎧のような白い装甲。見るからに頑丈そうで斬撃は効果が薄そうだ。
そして装甲の隙間からは暗くて蒼い炎が噴き出しており、あれにダメージ判定があるのなら隙間を狙って刺突攻撃をするのも難しいだろう。
一応翼はあるがその翼には飛膜がなく、代わりに金属質なブレードが重なっている。飛べるのかそれ?
「さあ、お前は何をして来るんだ?」
「グルルル……」
その時、ポツリと頭に何かが落ちてきた。
「……雨?」
ポツポツと強くなっていく雨。
態々天候なんてものを用意するということはこれが奴の能力なのか?
ポツポツと降っていた雨はどんどん降水量を増してゆく……
「ちょ、ちょっと待て。これどこまで強くなるんだ……!?」
大雨なんて生温い。
バケツをひっくり返したような、滝に打たれているかのような……時間と共にどんどん視界が悪化し、雨の音しか聞こえなくなくなる。
「いだだだだ!? 間違いない、これだんだん重くなゴボボボボ……!?」
超多段ヒットの雨粒が俺のスタミナを恐ろしい勢いで削ってゆく。
スタミナで肩代わりしてもどうしようもない質量の暴力が俺を地面に叩きつける。地面に溜まった水でまともに呼吸が出来なくなる。
「うぎぎぎぎ……!」
高熱を放つ俺の体に触れた水が一瞬で蒸発し、蒸気で視界をさらに悪化させている。
「ぶべっ!?」
何もわからないまま何かに跳ね飛ばされて俺は死んだ。
ルインヴァル「真なる竜種いねぇ……」
ヘヴィウェザー「でなおしてまいれ」
生やせる部位はグレイブヤード積竜火山で死んだ歴代赤竜の体の一部に限られる。なので旧大陸で死んだクレプトクルムの部位は生やせない。生やした部位は若干デフォルメされる
主人公が呪いに強すぎるせいでデメリットがデメリットになっていないという
本来は侵食されすぎないように使用を控えていても、HPが減ると勝手に赤い翼や腕が生えてきてオートガードしてくれる代わりにどんどん侵食されて歯止めが効かなくなり、最終的に暴走するというデザインなのだが、呪いに強いせいで全然侵食されないしそもそもHPが30%以下に一瞬しかならない模様