シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~   作:葛饅頭

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この話から主人公が一気にヤバいプレイヤーになっていきます


暴徒と呪いの剣

 倉庫のことは一旦置いといて、とりあえず預けておいた剣の様子を見にノロノロ歩いて鍛冶屋にやってきたのだが……。

 

「おう、来たか」

 

「……あの、あそこにある凄く良からぬオーラを発している物は……」

 

「……それな、それがお前の剣が進化した姿だ」

 

「ええ……」

 

 鍛冶屋の隅の方の壁に立てかけられた鞘に納められた直剣が明らかにヤバいドス黒いオーラを放っている。

 鞘から剣が抜けないようにするためなのかなぜか鎖でグルグル巻きにされているのだが、誰も触っていない筈なのに時々鎖からメキメキと嫌な音が聞こえてくる。

 

「完成した瞬間からあまりの呪いの強さで俺が死にそうになったから教会を頼って封印したんだが……早い所あれを持って帰ってくれないか?俺が作っておいてこういうのもあれだが、あれが置いてあるだけで俺の命が危ねえんだよ……」

 

「なんかその、すみません……」

 

「別いいいさ、死にかけたのは俺が未熟なだけだからな。だが暫くは呪いの武器の取り扱いはしたくねえな……」

 

 完成した瞬間死にかけるって、これ今後強化とか修理とかするのに人に預けたら最悪その人死ぬんじゃないかな……

 

「どんな進化をしたのやら……」

 

 ガタガタガタガタガタガタ……!!

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛動いた!?動いたよこの剣!!?」

 

「お、落ち着けよ。噛みついたりはしな……しない筈だが、呪いの武器だからある意味では噛みついてくるだろうな……」

 

「ひえぇ……」

 

 剣に近づいてみると剣が急にガタガタと震えて黒いオーラが鞘から噴き出す。これ大丈夫?掴んだら手首噛み千切ってきそうなオーラ出てるんだけど……。

 恐る恐る剣に手を伸ばし、ゆっくりと柄を握ったその瞬間、剣を封印していた鎖が千切れ飛んだ。

 

「ウオァアア!!?」

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

「ビックリした……心臓止まるかと思っ──

 

 スパッと肉が切れる音がして、赤いポリゴンが飛び散る。

 一瞬何が起こったのかわからなかったが、よく見れば赤いポリゴンは俺の首から噴き出していた。

 

 自分のステータスに目を向けると、HPバーが増えたり減ったりガタガタと震えている。これはまさか……

 

 

 

 

 

黒蝕の喪白剣

片手剣

喪失骸将(ジェネラルデュラハン)の呪いが込められた血を求める剣。首を失った胴体は首がある者全ての首を狙う。そこに生者と死者の区別は無く、その性質を受け継いだこの剣は所有者の首さえも狙う。故にこの剣は呪いの剣である。

 

・この剣を装備した者はこの剣の所有権を有している限り死亡するまで1秒毎に最大HPの40%のダメージを受ける。

・この剣の所有者は所有権を放棄しない限り永続的に「特殊状態:戦禍の呪い」が付与される。

・この剣の所有者が死亡した場合、この剣は所有者のインベントリ内に収納される。

・この剣の所有権は他者に譲渡することでしか放棄することはできない。

・この剣は霊体に干渉できる。

・首に対する攻撃の際、ダメージに補正が入る。

・攻撃を命中させると対象に「斬首の呪い」を蓄積する。命中した部位が首に近い程蓄積量が増える。

・攻撃を命中させるとその部位に「破壊属性」を蓄積する。

・この剣によって発生したダメージに応じて血液ゲージが蓄積される。

・血液ゲージが高い程ダメージに補正が入る。

・この剣の耐久度が削れている場合、自動的に血液ゲージを消費して耐久度を回復する。

・「ヨコセ」……血液ゲージを消費して使用者のスタミナを回復させる。

・「ハキダセ」……血液ゲージを消費して武器に血液を纏わせる。

 

※特殊状態「戦禍の呪い」……対象の全身に傷跡が浮かび上がり、アンデッド系モンスターとの遭遇率に補正がかかる。他の呪いに対して抵抗を得る。NPCとの会話で補正がかかる。

※状態異常「斬首の呪い」……対象の首に継続的に破壊属性を蓄積する。この呪いにかかっている状態で首に破壊が発生した場合、対象の肉体のVITとLUCで判定を行い、判定に失敗した場合即死する。

 

 

 

 

 

「1秒毎に最大HPの40%ってアホだろ、リジェネ無かったらもう死んでるじゃん……」

 

 これ俺のHPが10しか無いからアクセサリーのリジェネで耐えられているけれど、下手にHPに振ってたら三秒で死ぬじゃねぇか。しかも装備していることが条件じゃなくて所有していることが条件なせいでインベントリに入れていても呪いを回避できない。今インベントリに入れたのにHPがガタガタ震えているので間違いない。下手したら倉庫に入れてどれだけ距離を置いても所有権があるとダメなんじゃないだろうか?

 昨日買って装備した紅玉の腕輪にリジェネ効果があり、今のところこれだけで回復が間に合っているから豊穣と節制の円環は外しておこう。ダメージに反応してそこそこの値段がするポーションが無駄に垂れ流されてしまう。

 

 ただ呪いの装備はその分強くできるというのは確かなようだ。昨日寝る前に少し調べてみたのだが、素材にはリソースとやらが設定されているようで、これが多ければ多い程耐久度を高めたり特殊効果を自由に設定したりすることが可能であり、更に見た目やエフェクトの設定にもこれを使うんだとか。呪いの素材は装備にデメリット効果が付与されてしまう代わりにリソースが高めに設定されているらしい。

 プレイヤーの鍛冶師が作った装備の中には見た目があまりにも普通なのにとんでもない性能の剣があったり、耐久を投げ捨てて一発で壊れる程に脆くしてその分のリソースを他に回したり、見た目だけ勇者の剣にそっくりな見た目全振りの贋作があったりと中々に愉快なことになっているらしい。

 ではNPCが作ったものが弱いのかと言えばそんなことは無く、基本的に真面目に作ってくれるので耐久度と性能のバランスが取れている上に見た目も良い感じにしてくれて、更にリソースポイントの多い素材を使えばプレイヤーの発想力を上回るような効果を装備につけてくれることもあるそうだ。正しくこの武器こそがそのパターンだろう。

 

「俺もここまでの武器になるとは思わなかったぜ……これだけの呪いの素材ならもしかしたらいけるんじゃないかと気合を入れすぎちまったな……」

 

 鍛冶屋のおっさんはそう言いながら俺との距離を少しずつ離している。まあこんな首から赤いポリゴン……恐らくNPCには血に見えているであろうものを撒き散らしている人間スプリンクラーには近づきたくはないだろう。

 どうやらこの剣は血を吸っているようで、こうして首から血を噴き出す度に少しずつだが血液ゲージが蓄積されているのがわかる。どうやらこの剣が血を吸っているおかげで床が血塗れになったりはしないようだが、こいつのせいで出血しているのでなにもありがたくは無い。

 

 こうして俺は人として大切な物と引き換えにめちゃくちゃ強い武器を手に入れたのであった。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「想像よりも遥かにデメリットがでかい……!」

 

 この呪いの剣を手にして一番最初に出てきた感想がこれだった。

 

 ドバドバと首から血を噴き出す犬の覆面を被った大男とか俺なら出会った瞬間死を覚悟するわ。そんな恰好で街中を歩けばめちゃくちゃ注目を集めるのは当然のことだった。

 NPCは悲鳴を上げて逃げるし、買い物どころか会話すらできずに店から追い出される。そんな騒ぎを聞いたプレイヤーはなんだなんだと見物しにやって来て一部のプレイヤーは声をかけてくるのだ。

 

 つまりこの剣、NPCとの交流がまともにできなくなるのでプレイヤーとの交流を避けられなくなるという人見知りコミュ障にとって最も凶悪なデメリットを持つ呪いの剣だったのだ。

 HPが割合で減るだけならリジェネアクセサリー一つで簡単に相殺できるし大当たりじゃんとか思ってたらこれだよ!今まであらゆるオンラインゲームで基本的に他プレイヤーと殆ど喋らないでプレイしてきた俺にはあまりにも辛い呪いだ。おいそこの撮影は許可してないぞ散れ散れ!

 

 嫌ならこの剣を叩き折るか他プレイヤーに押し付ければいいのだが、折角NPCとは言え人に作ってもらった物を直ぐに手放すのはなんかなぁ……しかしこれは俺の人見知りコミュ障を改善するいい機会なのかもしれない。今までプレイしてきたオンラインゲームではずっと無言だったが、やっぱり人と人が喋っているのを見ていると楽しそうだなといつも思ってはいるのだ。せめて人の目を見て喋れるようになりたいな……

 

 でも宿屋に泊まれなくなるのはマジでどうかと思う。寝れないからリスポーンポイントを更新できない。

 そりゃあ普通は首から常に血をダラダラ流しているやつにベッドを貸したら次の日には真っ白なシーツが赤黒く染め上げられていること間違いなしだ。いくらこの剣が血を吸うから大丈夫です!と言われたところで俺ならそいつを宿から追い出すわ。

 

 となると、他プレイヤーの家で寝るしかない……?自分の家をこの状態で買うのは困難だし、買えたとしても新しい街に行く度に家買ってたらお金無くなるわ。

 

「会ったばかりの野良プレイヤーとか信用できないし、マジでどうしようかな……」

 

 人の目線に耐えられなかったので人通りの少ない裏路地に逃げ込んで必死に考える。

 路地裏は治安が悪いことが多く、カツアゲとかしてくるNPCと遭遇しやすいらしいが、それっぽい強面のNPCが俺に近づいてきては血液スプリンクラーにビビッて逃げ出していく。こういう時はメリットになるからオンオフできればいいんだが……

 

「蠍の素材も何とかしないと歩くことしかできないんだよな……」

 

 売らずに持っていた蠍の素材のせいで行動も大幅に制限されている。売ろうにもこれでは話を聞いてもらえるかも怪しいからなぁ……かと言ってプレイヤーの店で売るのも目立ちそうだし……

 

「首から血が出ているのが問題なら、めちゃくちゃ怪しいけど服を脱いで首に巻けば出血を誤魔化せるか……?」

 

 試しにやってみようと服を脱いだことで俺はあることに気が付く。

 

「なんじゃこりゃ……体中いつの間にか古傷だらけになってるぞこれ……」

 

 しかも傷跡から明らかに黒くてヤバいオーラが出ている。これが戦禍の呪いというものなのか?もう一度服を着て確認してみるが、よく見れば禍々しいオーラが服を貫通して若干漏れ出しており、俺の周囲が少しだけ薄暗い感じがする。出血は隠せてもこっちは完全には隠せないっぽいな……でも出血だけでも隠せばいけるのでは?

 

 試してみた。駄目だった。普通に追い返された。

 

「NPCとの会話で補正ってこれのことか……!」

 

 首から血を垂れ流しているのは勿論ヤバいが、それ以上にこっちの呪いの方がNPCにとってヤバいものらしい。恐らく「こいつ呪われてんじゃん近寄んな呪いが移る!」みたいな反応をされているということなのだろう。

 

「うーん……仕方ない。プレイヤーが運営する店に行くか……これ買い取ってもらえるかな……」

 

 このままでは冒険すらできないので、勿体ないけどまず蠍の素材を売ってしまおう。一匹分で何マーニになるかな……




呪いの素材で装備を強化した時にどんな呪いが付与されるかは素材の影響はある程度は受けつつもランダム要素も強いという設定です。主人公はクリティカルでもありファンブルでもある呪いを引き当ててしまいました
本来なら武器の性能が一部劣化したり条件を満たすまで外れなくなったり攻撃の度に自傷ダメージを受けるようになったりとそのくらいで、NPCとの会話にまでガッツリ影響が出る呪いはユニークモンスター級のヤバいやつということになります

喪失骸将(ジェネラルデュラハン)「許さん……お前だけは……!」

ここから先主人公はNPCからは基本的に常に首から血を噴き出している上にある意味ユニークモンスターの呪いよりもヤバい呪いを抱えているやべー奴という扱いになります。ゲーム的には何をしても信頼値が地の底に落ちたまま上がりません
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