シャングリラ・フロンティア~コミュ障ゲーマー、スタミナ全振りで神ゲーに挑まんとす~ 作:葛饅頭
「あれ、もう開戦している」
夜空を照らす真っ赤な光を頼りにまたこの蠍と百足と蜘蛛の地獄にやって来たのだが、到着した時には既に百足と蜘蛛のバトルが始まっていた。
まあ石ころを一つ投げ込むだけで開戦するくらいだし、風かなにかで勝手に開戦することもあるだろうが……先客がいる可能性もある。
「誰かいるかな……」
谷底を覗き込む……おや、あそこで何かバチバチと弾けて……
「半裸の鳥頭……サンラクか?」
ちょっと遠いし物凄いスピードで走り回っているから分かりづらいが、新大陸であんな恰好をしているのはまあサンラクだろう。
しかしとんでもない機動力だな。小蜘蛛の間をスルスルと抜けて大蜘蛛を翻弄し、百足を誘導して激突させている。
おっと、このまま眺めている余裕は無いのだ。でも邪魔しても悪いから俺は上の蠍の方に喧嘩を売るとしようか。レア素材寄越せー!
◇
時間は少し巻き戻る。
「え、俺が居ない間に誰か来てたの?」
「ここにははいってきてないけど、そとですっごくあばれてた……こわい……」
「肯定:次世代原始人類一名が
昨日までシャンフロとは別の世界で大統領になって魔神と戦っていたサンラクがシャンフロに戻って来ると、地下なのに船が置かれているちょっと不思議な空間でずっとトレーニングをしていたウィンプとトレーニングをさせていたサイナから、このシグモニア
サンラクは思案する。
この地下空間は発見されていないようだが、百足や蜘蛛に一人で勝てるということからしてそのプレイヤーは規格外の戦闘能力の持ち主でありシャンフロガチ勢だと考えられる。
シャンフロガチ勢にウィンプやサミーちゃんさんが見つかればどうなってしまうのか。
最悪の場合レアモンスターとユニークモンスターのドロップ目当てに狩られてもおかしくはない。
ウィンプを避難させるならどこに避難させるべきか……そんなことを考えているとサイナより追加の情報が齎される。
「その次世代原始人類の外見的特徴として、「全身に黒色を基調とした防具」、「頭部から蒼い炎のように見える程の激しい魔力の放出」、「手足から蒼い電撃を放出」、「黒い大型の剣を十本浮遊させている」、「巨大化」……
あ、それ知り合いだわ。
……「腕が三本生えている」などの特徴が確認されています」
人違いでした。
いや、確かあの時腕が一本増えるアクセサリーを手に入れてたよな?
色々と考えた結果サンラクが出した結論は、そのプレイヤーはぶんぶん丸の可能性が高く、恐らく説得が可能な相手なのでそこまで心配する必要はないというものだった。
「あー、多分それ俺の知り合いだわ。話が通じる人だからキチンと説得すれば大丈夫なハズ……」
一瞬サンラクの脳裏に浮かんだのはビームで全てを薙ぎ払うぶんぶん丸の姿。
「……巻き添えでここが崩落することはあるかもしれない」
「ひぇえ……」
別の心配が出てきたが、中央部分に攻撃を当てないように言っておけば大丈夫だろう。きっと。
◆
「あれ?」
蠍を盾で殴り倒し、その後四方八方から蠍のビームで穴だらけにされてリスポーン。再び突撃する前にまた谷底の様子を覗いてみたのだが、丁度その時、水晶が広がっている中央の地を支える土台部分、そこの根元の辺りにいつの間にか開いていた穴からからサンラクが這い出て来るのを目撃する。
まさかそんな場所に拠点を用意しているのか? 百足か蜘蛛にやられてしまいそうだが……待てよ? この地形、恐らくあいつらが暴れた結果地面が削れて渓谷になったのだろうが、それなら普通に考えるとすり鉢状に削れていないとおかしいのでは?
こんな中央を避けたドーナツみたいな削れ方になるのは、何かしらの理由があって中央を避けている? 蠍は強いがあの質量の暴力を圧倒できるような強さではない。なのにこんな状況で狙われることなく中央で生存できている……
「……なるほど?」
ハッキリと理解できたわけではないが、恐らくあの水晶のおかげで中央は狙われずに済んでいるのだ。
恐らく百足と蜘蛛が嫌うような成分を出しているとかそういう理由ではない。その逆、百足と蜘蛛がこの狭い空間で殺し合いをしていることを考えると、むしろ引き寄せていると考えるべきだ。
引き寄せてはいるけれど狙われはしない……なんかこう、居心地の良い魔力的なパワーがあの水晶から放たれているのだろう。百足と蜘蛛はお互いにそれを独占したくて殺し合いをしているのだ。
中央に住む蠍は多分消費者であるのと同時に水晶巣崖を広げる旧大陸の蠍みたいにあの水晶を増やせる生産者でもある。だから狙われないのだろう。
「検証!」
ツァーベリルを手に谷底へダイブ!
「すげぇ、露骨にスルーされているぞこれ」
どうやら一欠片でもツァーベリルを所持していれば百足と蜘蛛に直接狙われることは無くなるらしい。全身ツァーベリル装備くらいはする必要があるかもと思っていたのだが、これだけでもいいのか。
それはそれとして攻撃の規模はとんでもないので普通に巻き添えで死ねるが。白旗を掲げていれば戦場のど真ん中でピクニックができるのかという話である。
爆発音と衝突音が響き渡る戦場に飛び込もうとしているサンラクに、その前に声をかけてみる。
「サンラクさん。お久しぶりです」
「ん? うおぉ!? 噂をすれば……相変わらず突然その恰好で声をかけられるとビビる……」
「すみませんねこんな格好で」
装備重量も気にしなくて良くなったし、防具を更新するのもありかな。
でもあの重量負荷軽減アクセサリーは時々オフにする必要があるからそのタイミングで全く動けなくなるのは困る。盾で全部受け止める前提で重すぎない防具の方がいいかな。
「サンラクさんもここで稼ぎを?」
「稼ぎと言えるほど安定はしてないっスね……あ、そうだぶんぶん丸氏。この地面の中に俺の拠点があるから、可能な限り中央には攻撃を当てないようにしてほしいんだけど……」
「やはりこの奥に拠点が……あれ? 穴が塞がっている?」
自動ドア……じゃないとしたら、中でエムルちゃんが待機していて内側から閉めているのか?
「おおっと蜘蛛が……ここで立ち話も危険か。丁度ぶんぶん丸氏にやってもらいたいこともあるし、中で話をしよう」
「え、いいんですか?」
サンラクが石の壁をガンガン叩き始める。
「おーいウィンプー! 客が来たから開けてくれー!」
ウィンプ? プレイヤーかNPCか、中にそういう名前の誰かがいるらしい。
「あー、外がうるさくて聞こえてないか……」
「これ石を積んで穴を塞いでいるいるだけですかね? それなら……」
ニュッと背中から三本目の腕を生やし、石を掴んで……あ、結構しっかり目に組んであるぞこれ。
引っ張るよりも押し込んだ方が……えいっ!
ズボッ!
おっ、腕が中に入った。
広い空間があるようで腕が自在に動く。それと中から二人分の悲鳴が響いてくる。まあ絵面は完璧にホラーだよなこれ。
「その腕、レイド報酬のヤツ? 装備できたの?」
「装備できるようにしたって感じですね……とうっ!」
詰まれた石を崩し、人が入り込める大きさを確保。頭から中に潜り込む。
「ほぎゃぁぁああ中に入ってきましたわぁぁぁあああ!!?!?」
「やだーっ!!? たすけてサミーちゃんーっ!!」
「そんな人を化け物みたいに……」
見上げた先に広がっていたのはそれなりの長さがある地下トンネル。そこを少し歩いた先にはちょっとした地下空間が広がっていた。なぜか船らしきものが地面に埋まっている。
地下空間の壁際で震え上がっているエムルちゃんと……あと知らないNPCが二名と魔力だけ見える大きな蛇? 一匹がこちらを見つめている。
「落ち着けお前たち。この人がさっき話したぶんぶん丸氏だ。失礼の無いように!」
「出会う度にどんどん化け物になっていってますわ……」
「首を二つに増やせるようになったよエムルちゃん」(ドゥーレッドハウルの首を生やす)
「「「うわぁーーー!?」」」
面白い反応するなぁ。
「……個体名称:ぶんぶん丸の肉体から規格外の量の魔力循環を検出。心肺機能と血液の魔力運搬能力に全ての魔力を費やしていると推測されます」
「スタミナ全振り人間であることを初見で見抜かれた……?」
このどこかで見たことがあるメカメカしい鎧を着ている女性、普通のNPCではなさそう。というかなんでこんな所にNPCが?
「それで、やってもらいたいこととは?」
「それなんだけど、ウェザエモンの報酬にインベントリアってあっただろ?」
「ありましたね。俺はあげちゃいましたけど」
「実はその中に最初からある装備の所有権が問題で……」
話を要約すると、現在あのSF装備の所有権はサンラク、オイカッツォ、ペンシルゴン、そして俺の四人で四分割されているらしい。
コナツにあげたのは入れ物だけで、入れ物の中身まではあげていないということになっているのか。
アイテムをクランメンバーで共用可能にするためには所有権を持つ全員からの承認が必要になるらしい。ルストにロボを使わせるためには俺の許可も必要とのこと。
「許可しましたよ」
「よーし! これでルスト計画も無事に進行するぞ! ありがとうぶんぶん丸氏!」
「まあ俺は使わない装備ですし」
ロボットと合体というのはロマンがあるが、スキルと魔法と任意で発動するタイプのアクセサリーが封印されるのがね……それ以上のメリットがあるんだろうけど、今のビルドを投げ捨てるほどかと言われると……
さて、用事も済んだことだし、さっきからツインテールの少女がガチビビりしているからもうここから出るか。
しかし結構沢山盾を用意してきたのにもう大体の盾がボロボロだな……旧大陸の店売りのやつじゃあこの地獄では直ぐに壊れてしまうのか……
鉱人族の都市に買いに行く手もあるが、今は連結スキルを全部解除しているからなぁ。移動距離が長すぎて面倒だ。
「んー、また戻って盾を補充してもなぁ……」
「どうしたぶんぶん丸氏?」
「ああ、実は……」
サンラクに事情を説明すると、ここからそう遠くない場所に
そういえばそんな話があったなと思い出しつつ、サンラクにお礼を言って地下拠点を後にした。
現在竜災大戦を執筆中ですが全然筆が進みません……仕事が忙しくて執筆時間がないのが一番の原因ですが、登場キャラがかなり多いシーンなのでキャラ崩壊や原作設定の矛盾を起こさないように原作を何回も読み直していてそれだけでかなりの時間がかかってしまっています……
ノリでドゥーレッドハウルを撃破した上に主人公を強くし過ぎて原作の流れが無茶苦茶なことになってしまっている……原作と離れすぎて私の執筆力だと展開が迷子になってしまう……
場合によっては暫く更新が止まる可能性があるので予めご了承ください